日常

蜘蛛の行方

2023/11/29 20:25
───妖ノ山、琥珀宅───



雪白:こーーんにーーちはーー!!

……………。

小豆:いないのですかね?

千草:でも、こいつの家4人も住んでるだろ?誰もいないなんてこと……。

茜:………人ん家の前で何騒いでるの……。
(引戸を開けながら三人を見下ろして)


小豆:あーくん!丁度良いところに……!

茜:……………ん?
(ふと目に入った少女を見て)


雪白:あ………ひゃくめのおにいさん?はじめまして……?

茜:もしかして……『あんたも』俺に用事……?

雪白:えっ?

千草:あんたもって……僕達より前に誰か来たのか?

茜:…………黒喰だよ。

雪白:クロさま!?

小豆:クロさんも来てたですか……。

千草:入れ違いになったっぽいな。

雪白:クロさまは……?クロさまどこ行ったかきいてる……?

茜:………………あいつは……。
(ここまで言ったところで黙り込み)


小豆:…………?あーくん?どうしたですー?

千草:…………なんか顔色悪くないか?こいつ………。



ドサッ…



三人:!!?

小豆:あーくん!!?
(突然倒れ込んだ茜に駆け寄り身を起こして)


千草:おい!っ…………熱が高いな……小豆、早く運ぶぞ!
(茜の額に手をあてつつ)


小豆:合点承知です!

雪白:……………。
(目の前の事を見ながらその場で青い顔で立ち尽くしていて)


小豆:ゆきちゃん……?どうしたのです……?

雪白:……………わ、わたし……いったん帰るね……!

小豆:えっ!?

千草:ちょっと、おい!!










───儀式の祭壇・最深部───



雪白:クロさま!!わたしだよ!!帰ってきたよーーっ!!

(洞窟内に声が響く。しかし、呼んだ相手は一向に現れる気配がなく)

雪白:な、なんで………どうしていないの……?
(目に滲む涙を拭いつつ、周囲の岩影等を手当たり次第探して)


雪白:あと……探してないのは………あっ…!
(散々周囲を見るも痕跡すら見当たらず。最深部の隅にひっそりと佇む水晶の祀られた祠の前に、折り畳まれた紙と彼がいつも巻いていた襟巻きが置いてあり、見つけて駆け寄り)


雪白:………こ、れ………てがみ……?
(折り畳まれた紙には綺麗な字で『雪白へ』と書いてあり。恐る恐る手に取りそれを開いて)






『私は君に相応しくない
私抜きで、君は生きてくれ』






雪白:わたしは、きみに………なに……?読めないよ………こんなのいやだよ……クロさま………!どこに行ったの………!
(手紙にはぼろぼろと涙が落ち文字を滲ませ。襟巻きを手に取り握り締めて)

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