hello solitary hand・番外編
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※本作はサイト5周年の節目に託けて、登場人物達が自らの行いが夢小説的にアリかナシか、まさかのクイズ形式且つ独断と偏見に基づいて今更あれやこれやジャッジメントされる、狂気の催しである。
本編の人物・団体・事件などには一切関係なく、好き勝手に云いたい放題云い争っています。「わん!」時空くらいの緩いノリでお楽しみください。
****
文「皆さんまいどー!ウチは文、よろしゅう!で、こっちがブラちゃん。ほらブラちゃん。挨拶挨拶」
ブラ「ブラム・ストーカー伯爵である。余は闇の帳を治めし王。領主にして暴君。天にして魔。而るに──」
文「あーもう!そう云い難しい話はええから、もっと簡単に!」
ブラ「……余はブラム伯爵。この催しの司会進行を乞われた魔の化身である」
文「っちゅー事で今回はサイト開設5周年を記念して、恒例の“HSH徹底生討論会”改め、“HSHクイズ大会”を開催するでぇ!そして解説者は皆さんお馴染みの この二人や‼」
安「いつもお世話になっております。内務省異能特務課参事官補佐、坂口安吾です。職場内でちらほらと申請され始めた夏季休暇の皺寄せで、もう一週間程自宅に帰れない日々を送る中、またしてもこの不思議空間に転送されました。一先ず、速やかに僕の代役を現場に派遣して下さい。そうすれば前回、前々回分の特別手当は請求しません」
国「武装探偵社調査員、国木田独歩だ。事務所内の空調設備の故障に伴い、社員の半数が熱中症を理由に欠勤し業務が滞っている。現在俺が辛うじて現場を回している状態だったが、此処に転送されてはそれも叶わん。早急に帰還できんならせめて、俺の代わり仕事を回せる奴を派遣してくれ。この儘では、政府直々の重要な依頼に穴を開ける事に……」
文「うわぁ…。何か二人共、出だし早々豪い辛気臭い顔してんなぁ……」
ブラ「ふむ。己が職務に準じるその精神、見事也。其方達、我が国の官職に着く気はないか?」
文「いや。その誰彼構わずスカウトするスタンス、やめといた方がええでブラちゃん」
ブラ「何故?優れた者が我が配下となり政を執り行えば、国は富み、ひいては領民の幸福へと繋がるのだぞ?」
文「う~ん…。まぁ、そうかもしれんけど……」
安「あぁ…、毎度毎度どうしてここ一番と云う大事な所でこんな目に…っ」
国「クソ…。俺の予定は…俺の理想は完璧だった筈なのに何故……」
文「ブラちゃん。ホンマにあの二人の上司やりたいん?」
ブラ「……ふむ。余の意向を伝える伝言役がもう一人欲しい所であるな」
──ドォォォオオオン!!
国/安/ブラ「「「!?」」」
文「きゃあ!っえ⁉何?一体何なん⁉」
ブラ「下がれ娘!其方は疾く安全な場所へ逃げよ!」
安「ゴホン。あー…申し訳ありません不死公主。派手な粉塵を巻き上げていますが、恐らくあれは敵襲ではありません」
文「へ?せやったらあれは何?一体何が来たん?」
国「はぁ…。悪いな文…。“何”と聞かれると明確には答えられんが、強いて云うなら──三人の莫迦が来た 」
文/ブラ「「は?」」
中「うるっせぇんだよゴチャゴチャと!!いいから黙って責任者の首差し出せコラァァァァアアア!!」
文「ひぃぃい!?」
ブラ「何だあれは⁉小人か⁉」
中「誰が小人だ、あ゛あ゛ぁ゛ん!?」
安「中也君。落ち着いて下さい。時代が違うとは云え、彼は欧州の一国を治めた領主。日本人である我々と彼では基準となる平均身長が違うのです」
太「そうだよ中也。現代でも170糎 以下は人権無いんだから、身長160糎 の君は小人扱いされても仕方ないじゃないか」
ドス「そうですね。ぼくの祖国でも男性は平均175糎 以上はありましたので。きっと祖国の人々が中也さんを見たら、ドワーフとして各紙に取り上げられる事でしょう」
中「よし判った。この場の身長170糎 以上は全員其処に並べ。責任者諸共170粍 以下に圧縮してやる」
国「待て待て、俺は無関係だろう!勝手に巻き込む──っ!うおっ⁉」
中「何が“無関係”だ。次巫山戯けた口利きやがったらその眼鏡ごと頭蓋叩き割んぞ探偵社」
文「ちょ…、何なんアンタさっきから!一体ウチらが何したって云うん⁉」
中「お前は関係ねぇよ餓鬼。何なら、そこの胸像野郎が口滑らせたのも今は許してやる。だがなぁ──
それ以外のボンクラ共。手前等全員死ぬ覚悟はできてんだろうなぁ、あぁ?」
太/ドス/国/安「「「「………」」」」
文「え…?何?国木田、アンタこのお兄さんに何したん?」
国「国木田“さん”な。…はぁ。一応心当たりはあるにはある……。が、正直奴等と同じ扱いは納得いかんな……」
安「ええ。少なくとも僕と国木田さんに関しては、情状酌量の余地を見込まれて然るべきかと……」
ドス「おや。お二人共自らの過ちを認めないお心算ですか。何とも人間らしい、罪深い自己防衛ですね」
国/安「「主犯 は黙っていろ/いなさい」」
ブラ「ふむ…。どうやらあの魔人、また善からぬ悪事を働いた様であるな」
文「そうなん国木田?」
国「国木田“さん”な!…まぁ、そんなところだ…。昨年末、数年振りに本編が更新されたのだが…。その内容が、控えめに云って地獄と修羅場の重ね盛りだった。主にあの魔人の所為で」
安「しかもその“地獄と修羅場の重ね盛り”で、特に甚大な被害を被った犠牲者の一人が中也君の想いび──うわっ⁉ちょっと、照れ隠しで瓦礫飛ばさないでくれま──わぁっ⁉もうまた‼」
中「つまりだ。彼奴に手ぇ出したこの溝鼠は死なす。彼奴の周りに居てそれを止められなかった手前等も死なす。何より、全部知った上で指咥えて見てたこの糞鯖は100回は死なす‼」
太「………」
ドス「おや。どうしたんですか太宰君。此処で沈黙とは貴方らしくもない。中也さんの暴言には千倍の皮肉で返答する。それが貴方の流儀でしょう?」
太「………」
ドス「それとも、返す言葉もありませんか ?現に中也さんの云う事は事実ですからね。普段は知略と操心術を売りにしておきながら、ここぞと云う所で情に絆され、用意していた策の悉くを完封された挙句、彼女の心を折る手段の一つに利用されてしまった訳ですか──」
太「中也。ちょっと此奴の顎引っぺがしてくれる?」
ドス「構いませんよ?その場合、中也さんが次のぼくになるだけですから」
太「その後私が君を殺せば万事解決だ。さぁ中也早く。これで“天人五衰編”とか云う無限地獄を、少なくともアニメ5期時点で完結させられる」
中「それより手前の頭で此奴の頭叩き割った方が手っ取り早ぇだろ。此奴は消えて手前も死ねて俺も清々しい気分になれる。つまり三方良しだ死ね」
?「はいはいストーップ!場外乱闘はそこまでですよ皆さん!」
全「「「!」」」
?「くかか!随分と活きの良い連中が揃っておるではないか。これは存外楽しめそうじゃ」
安「この声は…」
国「クソ…よりによって聞き覚えのある…」
燁「特殊制圧作戦群・甲分隊《猟犬》副長、大倉燁子じゃ!突然見知らぬ場所に移されたと思えば、随分と面白そうな事をやっておるではないか下郎共!!」
樋「皆さんこんにちは!ポートマフィアの樋口一葉です。お三方共各々に因縁があるとは思いますが、此処は男らしく、そして夢小説らしく“ドリームクイズ”で勝負を付けましょう!」
中「樋口お前何でこんなとこに…⁉つーか何なんだ“ドリームクイズ”って?」
太「うーわ、態々聞いちゃったよ中也」
ドス「真面な答えなど返ってくる訳がないでしょうに」
中「ボソボソ煩ぇぞ陰険コンビ!!」
樋「よくぞ聞いてくれました!ゴホン…えー、いいですか?先ず、貴方がたには“夢小説に綴られるキャラ”としての自覚が足りません!」
燁「聞く所によるとお主ら、乙女に甘々ドキドキのときめきを与える夢小説を謳っておきながら、その実、殺伐とした血も涙もない展開で多くの読者の胃を痛めつけているそうじゃな」
樋「特に、先日数年振りに更新された本編に至っては、過去最大級のドシリアス展開で貴重な読者の皆さんのSAN値をゴリゴリ削ったとの事。こんなあり様でもし“無限地獄”と名高い“天人五衰編”が更新されようものなら、地獄と地獄の相乗効果で阿鼻叫喚地獄が生み出される事は火を見るより明らか。
よって、読者の皆様の心の平穏を守る為、今一度貴方がたの日頃の行いが夢的にアリかナシか見定めさせていただきます!!」
燁「と云う事でじゃ。今より提示する状況 の中で、貴様等は各々がどう動くかを答えよ。その返答が乙女に甘々ドキドキのときめきを与え得るか否か、儂等が断じてやる」
文「ほな審査員も来て全員揃ったし、ぼちぼち始めよか!はいブラちゃん、開催宣言お願い」
ブラ「うむ。ではこれより、サイト5周年記念特別企画──
『HSH5ANNIVERSARY☆ドリームクイズ大会』を開催する!!!」
太/ドス/中/国/安「「「「「………は?」」」」」
****
文「ほな、改めてルール説明や!回答者三人は、これから出題されるシチュエーションで“自分ならどうするか”を答える。で、審査員はアリと思った回答に札を上げて加点するで」
ブラ「尚、出題されるのは“喜怒哀楽”それぞれの感情に因んだ4つの状況 である」
樋「真に相手を想うなら、病める時も健やかなる時も共に在るのは当然ですからね」
燁「然り。さぁ、貴様等の実力が如何程のものか、とくと見せてもらおうではないか!!」
太「はい。棄権したいです」
樋「却下です」
ドス「はい。審査員の変更を求めます」
燁「却下じゃ」
中「詰まるとこただの晒し者じゃねぇか…。クソ、何でこんな目に…」
ブラ「これも宿命也。諦めよ」
文「ほな早速第一問!」
安「国木田さん」
国「はい」
安「僕ここの攻略対象じゃなかった事に、今心から感謝しています」
国「奇遇ですね。俺もです」
文「“今日は大好きなあの子の誕生日!喜ばせたい貴方は素敵なプレゼントを贈ることにしました☆さぁ貴方は一体何を用意したでしょうーか?”」
太「待って何そのハイテンションな問題文?」
文「さぁ?そう云えばこのクイズって誰が作ったんやろ?ブラちゃん知ってる?」
ブラ「うむ。天人五衰の中に丁度クイズを好むものがあった故、その者に任せた」
中「おい。何してくれてんだ」
ドス「ぼくに云われましても」
燁「喧しいぞ!無駄口叩いとらんでさっさと手元のフリップに回答を書き込まんか。制限時間は1分じゃぞ」
安「制限時間があるのは有難いですね」
国「ええ。これで少なくともシンキングタイムで間延びする心配はなくなりました。しかし…最初の問題が誕生日のプレゼントとは……」
安「過去に臼井さんの誕生日のエピソードは番外編で描かれましたが。あれから三者三様、関係性に変化がありましたからね。果たしてどう答えるか……」
文「何か…あんだけやる気無かったんに、始まった途端急に解説っぽくなったな、あの二人……」
ブラ「ふむ。職務に対する切り替えの速さ、見事也。矢張り我が国の官職に迎えたい人材である」
樋「はいそこまでー!では皆さん一斉に回答をどうぞ!」
中(──ロマネの45年もの)
太(──私♡)
ドス(──花束)
文「ロマネの45年もの…って何や国木田?」
国「国木田“さん”な。恐らく高級ワインのロマネ・コンティの事だろう」
安「しかも45年ものと云えば、その中でも特に値の張るヴィンテージ品になります。少なくとも数千万は下らないでしょう」
ドス「成程。彼女では一生手が出ないであろう高級ワインを贈る事で、ご自身の莫大な財力をアピールしようと云う思惑ですね。想い人の心を金で買収しようとは、流石ヨコハマの闇を統べるポートマフィア五大幹部です」
太「判ってないなぁドストエフスキー君。この蛞蝓が高級品を贈るのはね、暗に“お前は俺にとってそれ以上の価値がある女なんだZE☆”ってメッセージの現れなのだよ。あ!それから、さり気なくワインの知識をひけらかしたいのもあるかなぁ。孰れにしろ、蛞蝓らしくジトジトした回りっくどい愛情表現で──」
中「汝、陰鬱なる汚濁の許容よ──」
太「はい人間失格ー」
国「まぁ想い人の誕生日に高級ワインと云うのは悪くない選択だろう。それより太宰。お前は大喜利でもやっているのか?」
太「やれやれ、これだから国木田君は国木ぃー田君なのだよ。愛する人の生まれた記念すべき日に贈るプレゼントなら、彼女が世界で一番欲しくて堪らないものであるべきだろう?そう!つまりプレゼントは
──わ・た・し♡」
安「物は云いようですね」
国「詐欺師の常套句だな」
中「つーか手前、プレゼントに託けて彼奴とイチャつきてぇだけだろう。見え透いてんだよ下心が」
ドス「抑々貴方、以前菫さんの誕生日に同じ云い分で迫った結果、真面目な勤労を望まれていませんでしたか?」
太「あー!あー!なんにも聞こえなーい!と云うか君達、私の回答を酷評する前に、もっとツッコむべき所があるんじゃないかい?」
国/安/中「「「………」」」
ドス「おや?皆さんどうされました?」
太「“どうされました”はこっちの台詞だよ。君、その回答は一体どうした訳?」
ドス「? 菫さんへの贈り物を問われたので、お答えしただけですが?」
国「それが…花束だと…?」
ドス「はい」
安「正気ですか……」
ドス「はい」
中「何かの隠語じゃけねぇだろうな?」
ドス「花束に一体どんな隠語が?」
太「もしかして、今度こそ本物の別人格“綺麗なドストエフスキー”が……」
ドス「生憎と最初から最後までずっとぼくはぼくですよ」
全「「「………」」」
ドス「何か?」
国「信じられん…っ、原作と本作であれ程の悪逆非道を働いてきたあの魔人の誕生日プレゼントが“花束”だと……っ!」
安「百歩譲ってぬいぐるみや装飾品の類なら、いつもの盗撮盗聴目的と云う事で納得できますが……」
ドス「ふむ…。『取り敢えずプレゼント送るなら、今度からお花とかにしといた方がいいと思うよ』と云う友人の助言に従ってみたのですが、どうやら不評の様ですね。矢張りプレゼントは一生消える事のない鮮烈な記憶を──」
中「花束でいい!花束にしとけ!」
太「君本っっ当に善い友達を持っているね!」
文「うーん…最初の問題の答えは“高いワイン”に、“自分”に、“花束”か…。ブラちゃんどう思う?」
ブラ「ふむ。強いて云うなら総じて貧相であるな。余であれば、妃の生誕祭は城の大広間に国中の民を呼び寄せ、楽隊の演奏と共に盛大な祝福を──」
文「あー。ブラちゃんに聞いたウチが莫迦やったわ。兎に角!此処からはドッキドキの結果発表や!って事で審査員さん!札をどうぞ!!」
燁(──ドストエフスキー)
樋(──ドストエフスキー)
太/中「「な゛っ!?」」
安「これは…」
国「満場一致…だと…⁉」
ドス「おや。ふふふ、友人の助言には従ってみるものですね」
中「ちょっと待て!何でよりによって糞鼠に票入れてんだ手前等‼」
太「そうだよ!納得いいかない!ちゃんと説明してくれ給え!!」
燁「いや。儂酒飲まんし」
中「誰が手前にやるっつったよ!!」
樋「芥川先輩が私に自らをプレゼントとして差し出すなどありえません!!解釈違いです!!」
太「差し出されるの私だし贈られるの菫!!」
燁「と云う訳で、消去法ではあるが魔人の選択は悪くない。何より、この中で一番隊長が贈ってくれそうな品じゃ」
樋「ええ。花束は芥川先輩でも、もしかしたらギリギリ気まぐれで渡してくれそうな気がします。……多分!!」
文「うーん。っちゅー事は、第一問は彼奴の勝ち云いう事になるんか?」
ブラ「その様だ。正直遺憾ではあるが…」
中「おいチビ!次だ次!さっさと次の問題読み上げろ!!」
文「な!誰がチビやねん!それ云うたらアンタかて──」
太「文ちゃん。中也が粗暴な口を利いてごめんね?でもここは私に免じて次の問題を出題してくれるかな?早く」
文「え…?あぁ、うん。そんなに云うんやったら……」
燁「何じゃ彼奴等、急にやる気を出しおって」
樋「魔人に一人勝されたの、そんなに悔しかったんでしょうか?」
安「まぁ、そう云う事です」
国「単純な奴等め」
文「ほな続いて第二問!
“ある日貴方は、冷蔵庫に美味しいそうなプリンを見つけて食べてしましました。しかし!それは大好きなあの子が楽しみに取っておいた、期間限定のプリンだったのです。当然彼女はカンカン。しかも販売期間を過ぎて同じプリンはもう二度と手に入りません。さぁ、貴方はどうやってこの危機を乗り切るでしょーか?”」
国「次の問題は喜怒哀楽の“怒”と云う訳か…」
安「しかも怒らせた原因が“プリン”と云う点が絶妙ですね。やり様によっては誤魔化して有耶無耶にしたり、逆上して相手が折れるよう誘導する事も出来る。先程の問題以上に、個々の性格が出る問題と云えるでしょう」
ブラ「そこ迄!では皆の者、回答を見せよ!」
中(──出来るだけ似たようなもん買って詫びる)
太(──『ごめんよ?私のこの顔に免じて許して♡』と全力の頬染め上目遣いのワンコ系お強請りフェイスで許しを乞う)
ドス(──『ご馳走様でした』と云う言葉と共に食べ終わった容器を返却する)
安「ふむ。矢張り中也君は誠実に“謝罪”と云う方法を選びましたか」
国「常識的に考えれば、それが当然の対応ですからな」
太「でもでも~、それで許してくれなかったらどうする?『あのプリンが食べたかったのに~!中也なんかもうキライ!』ってさ」
ドス「食べ物の恨みは恐ろしいと云いますからね。特に菫さんは甘いものが大好物な上、味覚も敏感ですから、果たして代替品で納得して下さるかどうか……」
文「うわぁ…。何かここぞとばかりにねちっこいイチャモン付けに行っとんな、あの二人…」
ブラ「うむ。双方、捻じ曲がった性根が如実に見て取れる反応であるな」
中「はぁ……。オイ、手前等何勘違いしてんだ?俺は別に、許されてぇ訳じゃねぇよ 」
全「「「?」」」
中「そこの眼鏡も云ってたが、“悪ぃ事しちまったんなら謝る”のは当然の事だ。それでどうなろうが後の事は、そん時決める」
全「「「……」」」
中「詫び入れて許してもらえるんなら御の字。許せねぇって云うんなら、俺に出来んのは精々受け入れて引き下がるくらいだ。大体、許す許さねぇなんざ相手の問題だろうが。少なくともやらかした側が無理強いするもんじゃねぇよ」
全「「「……」」」
中「? 何だ手前等、急に静かになりやがって」
文「……なぁ、マフィアのお兄さん」
中「あ?」
文「何でアンタ、そんな真面なんにマフィアなんかやっとんのん?」
中「はぁっ!?」
ブラ「同意である」
安「以下同文」
国「くっ…!何故こんな真っ当な人材ではなく、あんな社会不適合者が我が社に…っ!!」
太「待って国木田君、それ誰の事云ってるのかな?」
ドス「おや。判らないなら解説して差し上げましょうか?」
太「黙ってろ同類」
中「だぁあぁ!!煩ぇ煩ぇ、兎に角だ!自分の非で彼奴を怒らせちまったんなら俺は詫びる!そんだけだ。文句あっか碌でナシ共!!」
安「いえ。寧ろ貴方になら碌でナシと云われても仕方がない気すらします」
国「あぁ、人として実に理想的な答えだ。それに比べてこの人格破綻者共ときたら…」
ドス「おや、心外ですね。太宰君は兎も角、ぼくは真剣に思考した上で真面目にお答えしていると云うのに」
安「だとしたら、どう云う意図でそんな回答を?僕には手の込んだ自殺にしか見えませんが…」
ドス「お忘れですか?ぼくは菫さんに並々ならぬ憎悪を向けられる身。そんなぼくに楽しみを奪われたとなれば、最早何をしても彼女の怒りが治る事はないでしょう。
ならば寧ろ、普段温厚な彼女がぼくだけに見せる貴重な怒りの表情を、少しでも多くこの目に焼き付けた方が有意義です」
中「……おい太宰。通訳しろ」
太「いや無理。と云うか判りたくもない」
ドス「ふふ。ぼくに楽しみを奪われ、その残骸を突きつけられて怒り狂う菫さん…。嗚呼…想像するだけで胸が高鳴ります…」
安「寧ろ其方が彼女の胸を高鳴らせるべき立場なんですが」
国「人に嫌がらせをして悦に浸るとは…。太宰の同類と云われるのも頷けるな」
太「国木ぃー田君ごめん!流石にこのタイミングでの同類認定はやめてくれる?私だって人並みに傷つくのだよ?」
中「なぁにが傷つくだ。方向性違うだけで、火に油ぶち込んでんのは手前も同じだろうが」
安「まぁ正直プリンの件は許した上で尚、刃傷沙汰になってもやむなしの奇行ではありますよね」
太「待った待った!君達は問題の字面に捉われ過ぎだよ。今回のシチュエーションに於いて、“大好きなあの子”とは則ち菫の事であり、私は彼女が楽しみに取っておいた期間限定のプリンを食べてしまったと云う事だろう?ならば彼女の恋人として断言しよう…
プリンくらいなら上目遣いで謝る程度で菫は普通に許してくれる!と云うか、実際許してくれた‼︎」
中「いや、実体験かよ!」
ドス「呆れますね」
安「まったく、いい歳して何してるんですか…」
太「はっはっは何とでも云い給え!実際に許されている以上、誰がなんと云おうと私の答えはこれが正解なのだよ。……まぁ仮に許して貰えなからったら形振り構わず全力で謝り倒すけど」
国「なら最初から素直に謝れ唐変木」
ブラ「ふむ。ともあれ二問目の答えが出揃った訳だが、どう見る娘?」
文「う〜ん。やっぱマフィアのお兄さんの答えが一番真面やない?……まぁ、他が色々問題あり過ぎんのもあるけど…」
ブラ「確かに己が過ちを認め、謝する事はいつの時代も尊ぶべき行いに相違ない。しかしこの場に於いて、その是非を決するのは彼の者達。故に断ずるがよい!この問いの勝者は、果たして誰なるぞ!」
燁(──太宰)
樋(──ドストエフスキー)
国/安「「はぁ⁉︎」」
太「う〜ん残念…。2得点纏めて取る心算だったのに…」
ドス「太宰君は相変わらず欲張りですね。寧ろあの回答で加点して下さった猟犬の彼女に感謝するべきですよ?」
安「いや貴方達二人共普通は論外ですって!これは一体どういう事ですか審査員⁉」
燁「あの三つの回答をそれぞれ隊長で脳内変換して想像した結果──
頬染め上目遣いのワンコ系お強請りフェイスの隊長と云う新たな扉を開いた!!」
安「特殊性癖にも程があるでしょう!!」
樋「先輩の…先輩の食べ終わったプリンの容器を下賜された上に、『馳走になった』なんてお言葉まで賜れるなんて…。もう私はそれだけでどんな過酷なブラック労働も耐えられます…っ」
国「ええい!此処に真面な感性を持った審査員は居ないのか!?」
中「……おい、餓鬼」
文「っ!…え?な、何?」
中「次だ。次の問題さっさと読み上げろ」
文「う、うん…。判った」
ブラ「あの男…。なんと凄まじい殺気か…」
安「拙い…。この侭では催しが終わる前に会場ごと潰されかねませんよ…」
太「まぁまぁそうムキにならないでよ中也ぁ~?こんなのただのお遊びじゃないか。ねぇドストエフスキー?」
ドス「ええ太宰君。一人だけ一点も獲得できていなかったとしても、何ら恥じる事はありません。所詮は無意味な遊戯 ですから」
国「水を得た魚の様に煽り出すな悪魔共!!」
文「はいはい、次の問題読むでぇ!第三問“ある日大好きなあの子が一人隠れて泣いていました。どうやら仕事で理不尽な目に遭った様子。さぁ、涙に暮れる彼女を前にして貴方は一体どうするでしょーか?”」
安「喜怒哀楽の“哀”についての問題ですね。しかし泣いている女性を前にした時の対応とは…中々の難問を…」
国「ええ。今回は菫相手ですからまだ話が通じるでしょうが…。場合によっては良かれと思って伝えた問題点や今後の改善点に対し、“今はそう云いう話じゃない”と余計に泣かれて収集が着かなくなりますからね…」
燁「あー、此奴モテんじゃろうな」
樋「仮に恋人が出来てもすぐに破局するタイプですね」
文「ホンマ乙女心が判っとらんなぁ国木田」
国「はぁあ!?何だお前達、俺の何が間違っていると云うのだ!!」
安「ちょ、落ち着いて下さい国木田さん!」
燁「お。そろそろ時間じゃな。そら、回答を見せよ下郎共」
中(── 気が済むまで泣かせてやった後、飯に連れてく)
太(──優しく慰めてあげる)
ドス(──問題点や今後の改善点を一つ一つ丁寧に数時間掛けて提示して差し上げる)
国「うぉい待て!!何の嫌がらせだドストエフスキー!?」
ドス「嫌がらせだなんてとんでもない。純粋にぼくと貴方の思考が、偶然にも合致しただけの事です。菫さんは生真面目で理性的な女性ですから、それが自分にとってどれだけ都合の悪い内容でも、“正論”である限り決して反論せず粛々と受け入れます。つまり問題点や改善点を提示している間、ぼくは“悲しみと悔しさに歯を噛み締めながら反論も出来ずに受け入れるしかない”菫さんを、数時間に渡って堪能できると云う訳です」
中「やっぱ此奴今此処で殺しとくか」
安「落ち着いて下さい中也君。無暗に殺害した所で、どうせ蘇ってきますよこの魔人」
太「気をつけ給え国木田君。一歩間違えば君もあれと同類になってしまうよ?」
国「ち…違う…っ。俺はただ良かれと思って…。そんな心算は微塵も…」
中「手前に悪気がねぇのは判るぜ眼鏡。ただな…女ってのは共感性の生きモンだ。今度からは百の正論より、先ずは相手の話聞いた上で一言でいいから『そうだな』って云ってやれ」
ドス「おや。そう仰る割に、中也さんの回答は助言と食い違っている様ですが?」
中「普通の女なら大体それで何とかなる。が、彼奴の場合『大した事ない』っとか云って口割らねぇだろうからな。なら先ずは気が済むまで泣かせてやった方がいい。何があったかは、その後落ち着いて美味い飯でも食いながらゆっくり聞いてやるさ」
文「見てみぃ国木田!あれがモテ男の答えやで!」
国「あぁ…手帳にもしかと書き残しておこう…。あと国木田“さん”な」
安「まぁ想い人への対応と云うよりは、頼れる先輩の対応にも思えますが。孰れにせよ、人間関係に於ける正解には違いないでしょう」
太「はいはいちょっと待ち給え国木ぃー田君。確かに中也の回答は万人受けするかもしれないけれど、傷ついた乙女心に対する配慮が全く足りていない。どうせメモするなら乙女心を熟知したこの私の神対応を書き記すといいよ!」
安「待ちなさい太宰君。一応確認しておきますが、その“優しく慰めてあげる”と云うのは決して疾しい意味など含まれていないでしょうね?」
太「もう、安吾は心配性だなぁ。“優しく慰めてあげる”と云うのは言葉通りの意味さ。具体的に云うと、『どうしたんだい?よかったら話聞くよ?』から切り出す」
ドス「あぁ、ぼくこれ知ってます。ジャパニーズナンパの序文『ドシタンハナシキコカ』ですね」
太「確かに菫は、内容が深刻であればある程口を噤んで溜め込んでしまうきらいがある。が!そこは私の腕の見せ所!さり気ない誘導と絶妙な相槌で優しく彼女の本音を引き出すのさ。勿論、『うんうん、それは相手が悪いよね』や『大丈夫。君の頑張りはちゃんと私が判ってるから』等のフォローも欠かさない」
中「あー。そう云やぁ昔情報収集ん時、そんな感じの台詞吐いて女に擦り寄ってったっけな手前」
太「そうして溜め込んだ悲しみを全て打ち明け、私への信頼度と好感度が上がりきった所でこう決めるのさ──
『そんな奴の云う事なんて、もうどうでもいいじゃないか。君の価値も判らない見る目の無い愚か者と私、──君はどっちの言葉を信じるの?』」
安「以上。太宰君のナンパ講座“傷心の女性に付け入る方法”でした」
国「小賢し過ぎてメモする気も起きんな」
太「君達は私の回答に難癖付けないと死ぬ呪いにでも掛かっているのかい?」
文「ま、まぁ取り合えずこれで回答出そろったな。ほな審査員さん、採点どーぞ!」
燁(──太宰)「隊長の『どしたん話聞こか』でキュンキュンしたい!!」
樋(──太宰)「先輩に“自分だけは判ってるムーブ”されてトキメキ倒したい!!」
国「最早願望になってるぞお前等!!」
安「う~ん。此処にきて太宰君の真っ当に女性受けしそうな回答が真価を発揮してきましたか…」
ドス「流石太宰君。長年女性関係にだらしない生活を送ってきた甲斐がありましたね」
太「おや。もう負け惜しみかいドストエフスキー君?どうせなら、次の最終問題で全ての決着が着いてからにし給えよ」
ドス「もう勝った気ですか?」
太「それ以外に何の結末が?」
中「……」
太「あぁゴメンネ中也~?中也には全然関係ない話しで盛り上がっちゃって~?」
ドス「そう気を落とす事はありませんよ中也君。寧ろ我々を相手にクイズと云う苦手分野の中、健闘した自身を誇るべきです」
中「おい餓鬼。最後の問題頼む」
太「えぇまだやる気かい?もう勝てないの確定してるのに?」
ドス「気を落とすなとは云いましたが、自ら無駄な労力を割く事もないのでは?」
中「確かにこんな巫山戯けた催しで勝とうが負けようが何にもならねぇ。
それでもなぁ──
勝てねぇからって一度始めた勝負放り出すのは違ぇだろ」
──スッ…、安(──中也)国(──中也)文(──中也)
太「ちょっと何勝手に札上げてるのさ君達⁉」
ブラ「案ずるな。これは正規の得点ではない。が、この身が万全であったなら余も一票投じたかった。それ程に見事な覚悟である」
ドス「良かったですね中也さん。死票とは云え一瞬でも我々に並べて」
中「手前は嫌味でしか人と会話出来ねぇのか陰険もやし。ったく…、おらさっさと最終問題出しやがれ。それ答えて終いだ」
文「よっしゃ、ほな第四問や!“大好きなあの子と休日が被った貴方!折角だから逢引 に誘っちゃおう☆さぁ貴方は一体どんな逢引 プランで彼女を楽しませるでしょーか?”」
国「四問目は逢引 プランか…」
安「この問題で最終的な勝者が決まる訳ですが…。果たして三者どう答えるか…」
文「そこまでや!ほな三人共、回答見せて!」
中(──ツーリング)
太(──遊園地)
ドス(──演奏会)
国「おぉ…何と云うか…、思いの他定番所が揃ったな…」
安「ええ、確かにどれも定番と云えば定番ですが…。良いんですか太宰君。臼井さんの性格上、人で賑わう場所は鬼門では?」
太「チッチッチ…。甘いよ安吾。乱歩さんが愛飲している苺牛乳より甘い。確かに菫は人混みが苦手だ。だがそれはそれとして、人気スポットに対しては人並みの興味を待ち合わせているのだよ」
国「あぁ…そう云えばお前達、以前も逢引 で大型ショッピングモールに行っていたな」
太「そう!私と一緒なら菫は苦手な人混みを安心して歩けるし、私は“異能無効化の為”と云う大義名分でベタベタしても許される。と云うか寧ろ菫からくっついてきてくれるだろう」
中「マジでそう云うとこ小賢しいよな手前」
太「うふふ、人気アトラクションではしゃぐ菫。園内フードを美味しそうに頬張る菫。マスコットに恐る恐る近づく菫。そして最後は夜空に咲き誇る花火に目を輝かせて、『また来ような!』と私に満面の笑顔を見せてくれる菫…。嗚呼!我ながら最高の逢引 プランだ。戻ったら早速誘ってみよう!」
ドス「果たしてそう上手くいくでしょうか。遊園地逢引 とはその煌びやかな印象に反して、大半がアトラクションの行列に並ぶ待機時間で消費され、広大で入り組んだ構造から要所要所で道に迷い、徐々に蓄積された疲労に伴って精神も摩耗してきた頃に会話の種も尽きる事によって、結果的に破局を招く“恋人達の試練場”と聞きますよ?」
国「悪印象が過ぎる‼」
安「ですが…、一概に事実無根と云い切れないのが恐ろしい所ですね…」
太「人の心配ができる立場かいドストエフスキー君。君の場合、抑々逢引 に誘う時点で戦闘不可避だと云うのに」
ドス「ええ。なのでぼくは先ず“子供を人質に取る所”から始めます」
国/中/安/文「「「「ちょっと待て/待ちなさい/待たんかい!!!」」」」
ドス「そう驚く事もないでしょう。冷静に考えてみて下さい。──人質もなしにぼくが菫さんと逢引 出来ると思いますか?」
太「それ…自分で云ってて悲しくならない?」
ドス「全く」
中「無敵か此奴」
ドス「却説。菫さんと逢引 すると云う前提を成立させた所で、最初は仕立て屋ですかね。ドレスコードと迄はいきませんが、それなりの正装は必要です。彼女のサイズは全て把握していますので、予め発注しておき、着替えて頂いてから演奏会にお連れします。できれば演目はチャイコフスキーかボロディンが好ましいですね。その後は晩餐を楽しみながら談笑。以前祖国の料理に興味を持っていらっしゃったので、露西亜料理とお酒が美味しい店がいいでしょう。帰りはご自宅まで送って差し上げて終了です」
文「いや待ちぃ!人質どないしたん⁉」
ドス「それはまぁ…その時の菫さん次第と云う事で」
太「あ、これ興が乗ったら普通にトラウマ級のバッドエンドに突入する奴だ」
中「マジで此奴自分の欲望しか優先しねぇな」
ドス「耳が痛いですね。所で、そう云う貴方はどれ程彼女を慮った逢引 プランを描いておいでで?」
中「はぁ…。まぁ逢引 って程でもねぇが…。仮に彼奴と出かけるってんなら“ツーリング”だな。静かな山道でも転がして、眺めがいい所に差し掛かったら休憩がてら弁当広げてよ。で、日ぃ暮れてきたら落ち着いた旅館でもとって、美味い酒と飯を好きなだけ食わせてやって…」
太「で、後は温泉に浸かりに行った菫を覗きに──」
中「行く訳ねぇだろ!!」
太「あぁ、じゃあ泥酔した後の寝込みを襲って──」
中「するかボケ‼普通に風呂入って寝て帰るわ手前と一緒にすんな色魔‼」
ドス「太宰君。誰もが貴方の様に日々色欲に溺れている訳ではありません。彼は四年間の絶縁期間と敵対組織と云う吊り橋効果、そしてお酒の力と催春剤の力を借りて漸く手が出る程の腑抜…ゴホン、理性ある紳士なのですよ」
中「煩ぇよ陰湿野郎!オラ全員答えたぞ!さっさと審査しやが──」
燁(──中也)(──中也)
樋(──中也)(──中也)
太/中/国/安/文「「「「「はぁ!?」」」」」
ドス「得点札を…」
ブラ「両手持ち…だと…っ」
国「待て!何だこれは、説明しろ!」
燁子「判らんか痴れ者め…。隊長と旅館にお泊りじゃぞ…。つまり…
隊長の脱ぎたて靴下を採取できるのみならず!隊長が一晩寝入っていたシーツと掛け布団まで手に入るのじゃ!!これ以上の至福がこの世にあるか、否ない!!!」
樋「芥川先輩とお泊り…、それ則ち…
今度こそ湯上りの先輩に、保湿用化粧水とボディークリームとヘアオイルとサプリで完璧なアフターケアを施して差し上げられる!否、寧ろ!露天風呂付の個室を予約して入浴時点からサポートを!!」
燁「──ハッ⁉それならば態々男湯に忍び込む手間も省ける上に、隊長のお背中を流して差し上げる事も出来る!お主天才か!?」
安「ただの狂人です」
太「ちょっと待ち給え!流石にこれは納得いかないよ!」
ドス「本筋の“ツーリング”は審査に一切加味されていませんしね」
中「正直釈然としねぇ…」
文「う~ん。確かに、ちょっとこれは正義の味方的にもモヤモヤすんなぁ…。どうしよブラちゃん?」
ブラ「ふむ…。致し方ない。そこな探偵社員。暫しこの娘の耳を塞いでおけ。娘、其方も目を閉じよ」
国「何だ急に?」
ブラ「訳は云えぬ。…が、必要な事である。双方、余の許しがあるまで決して開けるでないぞ」
文「え?うん?判った…」
ブラ「却説。聞け平民達よ。本来であれば、此度の催しはこれにて幕引きである。しかし、斯様な結末では皆腑に落ちまい。故に特例として、其方達にはもう一度だけ問いに答えてもらう」
安「? しかしクイズは全て回答済みです。これ以上、一体何に答えろと?」
ブラ「これなるは愛故に抱く感情に因んだ問い。則ち──“裏問題”である」
太/中/ドス「「「!」」」
ブラ「ふむ。どうやら察した様であるな…。本来であれば、斯様な祝いの催しで晒すものではないが。遺恨を残した侭終わらせるよりはよかろう。故にこの問いの勝利を以て、『HSH5ANNIVERSARY☆ドリームクイズ大会』の勝者とする──
では往くぞ、裏問題!“貴方は1週間遠方で泊まり掛けの大仕事の後、漸く自宅に帰ってきました。一刻も早く寝たい貴方は寝室に直行。すると何と云う事でしょう!ベッドの上には貴方の理想の装いをした彼女が居てこう云ってきました『お仕事お疲れ様。ご褒美に今日は何でもして、あ・げ・る♡』さぁ、貴方は一体どうするでしょーか!!”」
安「何ですかこの雑な18禁ものの冒頭みたいな問題!?」
国「確かに此奴には見せられんな…」
ブラ「さぁ、今度こそ正真正銘の最終問題である。其方達の回答は如何なるぞ!」
中(──帰りを待ってた事に礼を云ってから普通に寝る)
太(──いただきます)
ドス(──元凶の異能力者を見つけ出して消す)
安「何と云うか…。此処まで潔いといっそ清々しいですね太宰君」
太「いやだって考えるまでもないだろう。“1週間遠方で泊まり掛けの大仕事”って事は1週間菫に会えなかった訳だ。それだけでも我慢の限界なのに、向こうから態々セーラー服着て誘ってくれてるんだよ?寧ろ断る方が失礼まであるよ」
国「セーラー服はお前の願望だろうが」
ドス「そう云う趣味でもあるんですか」
太「まったくこの朴念仁達は…。いいかい?実際の年齢差もあって菫は隙あらば私に年上ぶってくるが、本来の彼女は構われたがりの甘えん坊さんだ。そんな彼女に敢えて学生の装いをさせる事で、年上としての矜持を手放し易くさせると云う訳さ。
何より、少女の様な装いで顔を真っ赤にしながら潤んだ目で『太宰お兄さん』なんて甘えてくる菫とか最高過ぎるだろう。ねぇ中也?」
中「俺に振んな。大体彼奴、真面目なだけでそんなに年上ぶったりはしてねぇだろ」
国「俺も多少の気安さは感じるが、お前や敦達程目に見えた保護者扱いをされた覚えはないな」
安「もしや太宰君が矢鱈と年下扱いを受けるのは、ご自身のだらしなさが原因なのでは?」
ドス「では菫さんに少女の演技をさせずとも、ご自身が人間的に成熟されれば全て解決しますね」
太「私は既に成熟した立派な大人だよ。少なくとも、答えたくないからって問題を曲解して逃げる君よりはね」
ドス「別に逃げた訳ではありませんよ。先程の問題と違い、彼女が自らの意思で状況を作り出している以上、精神操作か現実改編の異能が働いているのは確実です。
そうでなければ、修道服に身を包んだ菫さんがぼくの働きを労い、身を差し出してくるなどあり得ません!!」
中「おい趣味嗜好が漏れ出してんぞ糞鼠」
太「修道服…。成程アリだ。際立つ清楚感と背徳感が実にいい」
国「お前は黙っていろ」
ドス「ぼくの福音たる彼女を意の侭に操るなど、許されざる行いです。速やかに異能力者を見つけ出し、異能諸共に抹消した後、正気に戻った菫さんにはそれまでの経緯を映像付きでご説明します」
安「臼井さんへの嫌がらせに対するその飽くなき執念は何処から湧いてくるんですか?」
ドス「孰れにせよ、ぼくは事実に基づいた思考の結果をお答えしたまでの事。“逃げ”と云いうなら、寧ろ中也さんの方ではないですか」
中「悪ぃがこちとら裏家業の大本だ。“1週間遠方で泊まり掛けの大仕事”とくりゃあ、帰る頃には体中血と硝煙の匂いが染みついちまって女抱くどころじゃねぇわ。まぁ、帰りを待っててくれたってのは有難ぇし、“何でもしてくれる”ってんなら日ぃ跨いでから頼むさ」
太「因に、中也は想像の中で菫にどんなコスプレさせてたんだい?」
中「はぁ⁉云う必要ねぇだろんなもん‼」
ドス「前回の討論会を鑑みるに、ゴスロリですか?」
中「だから違ぇって!」
太「白状しなよ中也ぁ。でないと、“中原中也は理想のコスプレにゴスロリを掲げる森さん予備軍”って、全ポートマフィア構成員に一斉送信するよ?」
中「~~~っ…まぁ、あれだ…。女らしい恰好は似合うだろ彼奴」
ドス「例えば?」
中「スカートだの…、ワンピースだの…そう云う…」
太「もっと具体的に」
中「……色は黒で…フリルとリボンが着いてる…エリス嬢みてぇなやつ」
太「ゴスロリじゃん」
ドス「ゴスロリですね」
中「うるっ……せぇなぁ!!!手前等の変態趣味よか万倍マシだろうがよぉ!!!」
安「却説。孰れにせよこれで裏問題とやらの回答が出そろいましたね」
国「はぁ…これで今度こそ帰れるのか…」
ブラ「然り。さぁ審判の時ぞ!栄えある勝者に札を上げよ審査員!!」
燁/樋「「………」」
太「あれ?」
ドス「おや」
中「おい?どうしたんだよ。さっさと札上げろよ」
燁/樋「「………り」」
安「はい?」
国「何だ?聞こえる様にもう一度…」
燁「じゃから!隊長をベッドに誘うなど無理じゃーーーー!!!」
樋「だから!先輩をベッドに誘うなんてムリですーーーー!!!」
全「「「は?」」」
燁「無理、無理、無理じゃー!隊長に儂がそんな事…っ!!~~~っ、あーーーっ畏れ多過ぎて絶対に無理じゃーーー!!」
樋「せせせ先輩に、そんな…っ破廉恥な…。駄目ですムリです!大体物事には順序と云うものがですね!!」
国「何をもんどり打っておるのだ此奴等」
安「どうやら、思いの他純情な心の持ち主達だったみたいですね」
中「いや純情な心の持ち主は相手の食い終わったプリン容器や脱ぎ捨てた靴下収集したりしねぇだろ」
ドス「しかし困りましたね。これでは今まで以上に真面な審査など期待できそうにありません」
太「やれやれ仕方ない…。国木ぃー田君、文ちゃんから手を放してくれるかい?」
国「む?だが…」
ブラ「構わぬ。嵐は過ぎ去った故な」
国「まぁそう云うなら…。おい文、もう目を開けていいぞ」
文「はぁ~、退屈やった!…って、え?何これ、どう云う状況?」
太「う~ん。過程を省いて結論だけ云うと、審査員の二人が錯乱しちゃって勝負が着かなくなってしまったのだよ。だから文ちゃん。君が勝者を決めてくれないかい?」
文「え?ウチ?」
太「うん!君はこのクイズ大会の司会として、これまでの回答を把握しているし。何よりここに居る女性の中で一番感性が真面だ」
男性陣「「「確かに」」」
太「と云う事で、君の判断なら皆納得するだろう。さぁ文ちゃん、勝者を選んでくれ給え。それでこの気の狂った催しもお開きだ」
文「う~ん…。うん、判った!ほなウチが決めたるね。『HSH5ANNIVERSARY☆ドリームクイズ大会』優勝は──」
全「「「……(ゴクリ)」
文「──ナシ!全員失格や!」
太/中/安/国「「「はぁぁあああ!?」」」」
太「え?ちょっと文ちゃん、何失格って⁉どう云う事⁉」
文「どうもこうもあるかいな!先ず探偵社のお兄さん、アンタもうちょっい“誠実さ”云うんを覚えた方がええで。“女の怒りはポイントカード制”や!相手がニコニコしとるからって調子に乗っとると、その内大目玉食らうで⁉」
太「ぐはっ!!」
文「それからマフィアのお兄さん!アンタは押しが足らんわ!確かに相手の事優先するんはメッチャ大事やけど、時には強引にいかんと他の男に取られてまうで!」
中「がはっ!!」
文「最後にアンタ!」
ドス「はい」
文「アンタは論外!!」
ドス「はぁ」
文「兎に角!アンタ等全員ドキドキもトキメキも程遠いわ!大体乙女心っちゅうんが判っとらへんねん。ええか?女の子って云いうんはな──」
国「拙いな…。これは長くなるぞ…」
安「とは云え、全員失格である意味収まりもいいですし、幕の引き時としては妥当でしょう。いかがです不死公主?」
ブラ「うむ。些か拍子抜けではあるが、これも運命 か…。
魔である余にとって、5年と云いう月日は暁の前の夜露に同じ。だが、人の身に於いては意味ある時間であろう。故に感謝を。そしてこれより先も、彼の者達の生き様を刮目して見届けるがよい。
ではこれにて、『HSH5ANNIVERSARY☆ドリームクイズ大会』を閉幕とする!!」
本編の人物・団体・事件などには一切関係なく、好き勝手に云いたい放題云い争っています。「わん!」時空くらいの緩いノリでお楽しみください。
****
文「皆さんまいどー!ウチは文、よろしゅう!で、こっちがブラちゃん。ほらブラちゃん。挨拶挨拶」
ブラ「ブラム・ストーカー伯爵である。余は闇の帳を治めし王。領主にして暴君。天にして魔。而るに──」
文「あーもう!そう云い難しい話はええから、もっと簡単に!」
ブラ「……余はブラム伯爵。この催しの司会進行を乞われた魔の化身である」
文「っちゅー事で今回はサイト開設5周年を記念して、恒例の“HSH徹底生討論会”改め、“HSHクイズ大会”を開催するでぇ!そして解説者は皆さん
安「いつもお世話になっております。内務省異能特務課参事官補佐、坂口安吾です。職場内でちらほらと申請され始めた夏季休暇の皺寄せで、もう一週間程自宅に帰れない日々を送る中、またしてもこの不思議空間に転送されました。一先ず、速やかに僕の代役を現場に派遣して下さい。そうすれば前回、前々回分の特別手当は請求しません」
国「武装探偵社調査員、国木田独歩だ。事務所内の空調設備の故障に伴い、社員の半数が熱中症を理由に欠勤し業務が滞っている。現在俺が辛うじて現場を回している状態だったが、此処に転送されてはそれも叶わん。早急に帰還できんならせめて、俺の代わり仕事を回せる奴を派遣してくれ。この儘では、政府直々の重要な依頼に穴を開ける事に……」
文「うわぁ…。何か二人共、出だし早々豪い辛気臭い顔してんなぁ……」
ブラ「ふむ。己が職務に準じるその精神、見事也。其方達、我が国の官職に着く気はないか?」
文「いや。その誰彼構わずスカウトするスタンス、やめといた方がええでブラちゃん」
ブラ「何故?優れた者が我が配下となり政を執り行えば、国は富み、ひいては領民の幸福へと繋がるのだぞ?」
文「う~ん…。まぁ、そうかもしれんけど……」
安「あぁ…、毎度毎度どうしてここ一番と云う大事な所でこんな目に…っ」
国「クソ…。俺の予定は…俺の理想は完璧だった筈なのに何故……」
文「ブラちゃん。ホンマにあの二人の上司やりたいん?」
ブラ「……ふむ。余の意向を伝える伝言役がもう一人欲しい所であるな」
──ドォォォオオオン!!
国/安/ブラ「「「!?」」」
文「きゃあ!っえ⁉何?一体何なん⁉」
ブラ「下がれ娘!其方は疾く安全な場所へ逃げよ!」
安「ゴホン。あー…申し訳ありません不死公主。派手な粉塵を巻き上げていますが、恐らくあれは敵襲ではありません」
文「へ?せやったらあれは何?一体何が来たん?」
国「はぁ…。悪いな文…。“何”と聞かれると明確には答えられんが、強いて云うなら──
文/ブラ「「は?」」
中「うるっせぇんだよゴチャゴチャと!!いいから黙って責任者の首差し出せコラァァァァアアア!!」
文「ひぃぃい!?」
ブラ「何だあれは⁉小人か⁉」
中「誰が小人だ、あ゛あ゛ぁ゛ん!?」
安「中也君。落ち着いて下さい。時代が違うとは云え、彼は欧州の一国を治めた領主。日本人である我々と彼では基準となる平均身長が違うのです」
太「そうだよ中也。現代でも170
ドス「そうですね。ぼくの祖国でも男性は平均175
中「よし判った。この場の身長170
国「待て待て、俺は無関係だろう!勝手に巻き込む──っ!うおっ⁉」
中「何が“無関係”だ。次巫山戯けた口利きやがったらその眼鏡ごと頭蓋叩き割んぞ探偵社」
文「ちょ…、何なんアンタさっきから!一体ウチらが何したって云うん⁉」
中「お前は関係ねぇよ餓鬼。何なら、そこの胸像野郎が口滑らせたのも今は許してやる。だがなぁ──
それ以外のボンクラ共。手前等全員死ぬ覚悟はできてんだろうなぁ、あぁ?」
太/ドス/国/安「「「「………」」」」
文「え…?何?国木田、アンタこのお兄さんに何したん?」
国「国木田“さん”な。…はぁ。一応心当たりはあるにはある……。が、正直奴等と同じ扱いは納得いかんな……」
安「ええ。少なくとも僕と国木田さんに関しては、情状酌量の余地を見込まれて然るべきかと……」
ドス「おや。お二人共自らの過ちを認めないお心算ですか。何とも人間らしい、罪深い自己防衛ですね」
国/安「「
ブラ「ふむ…。どうやらあの魔人、また善からぬ悪事を働いた様であるな」
文「そうなん国木田?」
国「国木田“さん”な!…まぁ、そんなところだ…。昨年末、数年振りに本編が更新されたのだが…。その内容が、控えめに云って地獄と修羅場の重ね盛りだった。主にあの魔人の所為で」
安「しかもその“地獄と修羅場の重ね盛り”で、特に甚大な被害を被った犠牲者の一人が中也君の想いび──うわっ⁉ちょっと、照れ隠しで瓦礫飛ばさないでくれま──わぁっ⁉もうまた‼」
中「つまりだ。彼奴に手ぇ出したこの溝鼠は死なす。彼奴の周りに居てそれを止められなかった手前等も死なす。何より、全部知った上で指咥えて見てたこの糞鯖は100回は死なす‼」
太「………」
ドス「おや。どうしたんですか太宰君。此処で沈黙とは貴方らしくもない。中也さんの暴言には千倍の皮肉で返答する。それが貴方の流儀でしょう?」
太「………」
ドス「それとも、
太「中也。ちょっと此奴の顎引っぺがしてくれる?」
ドス「構いませんよ?その場合、中也さんが次のぼくになるだけですから」
太「その後私が君を殺せば万事解決だ。さぁ中也早く。これで“天人五衰編”とか云う無限地獄を、少なくともアニメ5期時点で完結させられる」
中「それより手前の頭で此奴の頭叩き割った方が手っ取り早ぇだろ。此奴は消えて手前も死ねて俺も清々しい気分になれる。つまり三方良しだ死ね」
?「はいはいストーップ!場外乱闘はそこまでですよ皆さん!」
全「「「!」」」
?「くかか!随分と活きの良い連中が揃っておるではないか。これは存外楽しめそうじゃ」
安「この声は…」
国「クソ…よりによって聞き覚えのある…」
燁「特殊制圧作戦群・甲分隊《猟犬》副長、大倉燁子じゃ!突然見知らぬ場所に移されたと思えば、随分と面白そうな事をやっておるではないか下郎共!!」
樋「皆さんこんにちは!ポートマフィアの樋口一葉です。お三方共各々に因縁があるとは思いますが、此処は男らしく、そして夢小説らしく“ドリームクイズ”で勝負を付けましょう!」
中「樋口お前何でこんなとこに…⁉つーか何なんだ“ドリームクイズ”って?」
太「うーわ、態々聞いちゃったよ中也」
ドス「真面な答えなど返ってくる訳がないでしょうに」
中「ボソボソ煩ぇぞ陰険コンビ!!」
樋「よくぞ聞いてくれました!ゴホン…えー、いいですか?先ず、貴方がたには“夢小説に綴られるキャラ”としての自覚が足りません!」
燁「聞く所によるとお主ら、乙女に甘々ドキドキのときめきを与える夢小説を謳っておきながら、その実、殺伐とした血も涙もない展開で多くの読者の胃を痛めつけているそうじゃな」
樋「特に、先日数年振りに更新された本編に至っては、過去最大級のドシリアス展開で貴重な読者の皆さんのSAN値をゴリゴリ削ったとの事。こんなあり様でもし“無限地獄”と名高い“天人五衰編”が更新されようものなら、地獄と地獄の相乗効果で阿鼻叫喚地獄が生み出される事は火を見るより明らか。
よって、読者の皆様の心の平穏を守る為、今一度貴方がたの日頃の行いが夢的にアリかナシか見定めさせていただきます!!」
燁「と云う事でじゃ。今より提示する
文「ほな審査員も来て全員揃ったし、ぼちぼち始めよか!はいブラちゃん、開催宣言お願い」
ブラ「うむ。ではこれより、サイト5周年記念特別企画──
『HSH5ANNIVERSARY☆ドリームクイズ大会』を開催する!!!」
太/ドス/中/国/安「「「「「………は?」」」」」
****
文「ほな、改めてルール説明や!回答者三人は、これから出題されるシチュエーションで“自分ならどうするか”を答える。で、審査員はアリと思った回答に札を上げて加点するで」
ブラ「尚、出題されるのは“喜怒哀楽”それぞれの感情に因んだ4つの
樋「真に相手を想うなら、病める時も健やかなる時も共に在るのは当然ですからね」
燁「然り。さぁ、貴様等の実力が如何程のものか、とくと見せてもらおうではないか!!」
太「はい。棄権したいです」
樋「却下です」
ドス「はい。審査員の変更を求めます」
燁「却下じゃ」
中「詰まるとこただの晒し者じゃねぇか…。クソ、何でこんな目に…」
ブラ「これも宿命也。諦めよ」
文「ほな早速第一問!」
安「国木田さん」
国「はい」
安「僕ここの攻略対象じゃなかった事に、今心から感謝しています」
国「奇遇ですね。俺もです」
文「“今日は大好きなあの子の誕生日!喜ばせたい貴方は素敵なプレゼントを贈ることにしました☆さぁ貴方は一体何を用意したでしょうーか?”」
太「待って何そのハイテンションな問題文?」
文「さぁ?そう云えばこのクイズって誰が作ったんやろ?ブラちゃん知ってる?」
ブラ「うむ。天人五衰の中に丁度クイズを好むものがあった故、その者に任せた」
中「おい。何してくれてんだ」
ドス「ぼくに云われましても」
燁「喧しいぞ!無駄口叩いとらんでさっさと手元のフリップに回答を書き込まんか。制限時間は1分じゃぞ」
安「制限時間があるのは有難いですね」
国「ええ。これで少なくともシンキングタイムで間延びする心配はなくなりました。しかし…最初の問題が誕生日のプレゼントとは……」
安「過去に臼井さんの誕生日のエピソードは番外編で描かれましたが。あれから三者三様、関係性に変化がありましたからね。果たしてどう答えるか……」
文「何か…あんだけやる気無かったんに、始まった途端急に解説っぽくなったな、あの二人……」
ブラ「ふむ。職務に対する切り替えの速さ、見事也。矢張り我が国の官職に迎えたい人材である」
樋「はいそこまでー!では皆さん一斉に回答をどうぞ!」
中(──ロマネの45年もの)
太(──私♡)
ドス(──花束)
文「ロマネの45年もの…って何や国木田?」
国「国木田“さん”な。恐らく高級ワインのロマネ・コンティの事だろう」
安「しかも45年ものと云えば、その中でも特に値の張るヴィンテージ品になります。少なくとも数千万は下らないでしょう」
ドス「成程。彼女では一生手が出ないであろう高級ワインを贈る事で、ご自身の莫大な財力をアピールしようと云う思惑ですね。想い人の心を金で買収しようとは、流石ヨコハマの闇を統べるポートマフィア五大幹部です」
太「判ってないなぁドストエフスキー君。この蛞蝓が高級品を贈るのはね、暗に“お前は俺にとってそれ以上の価値がある女なんだZE☆”ってメッセージの現れなのだよ。あ!それから、さり気なくワインの知識をひけらかしたいのもあるかなぁ。孰れにしろ、蛞蝓らしくジトジトした回りっくどい愛情表現で──」
中「汝、陰鬱なる汚濁の許容よ──」
太「はい人間失格ー」
国「まぁ想い人の誕生日に高級ワインと云うのは悪くない選択だろう。それより太宰。お前は大喜利でもやっているのか?」
太「やれやれ、これだから国木田君は国木ぃー田君なのだよ。愛する人の生まれた記念すべき日に贈るプレゼントなら、彼女が世界で一番欲しくて堪らないものであるべきだろう?そう!つまりプレゼントは
──わ・た・し♡」
安「物は云いようですね」
国「詐欺師の常套句だな」
中「つーか手前、プレゼントに託けて彼奴とイチャつきてぇだけだろう。見え透いてんだよ下心が」
ドス「抑々貴方、以前菫さんの誕生日に同じ云い分で迫った結果、真面目な勤労を望まれていませんでしたか?」
太「あー!あー!なんにも聞こえなーい!と云うか君達、私の回答を酷評する前に、もっとツッコむべき所があるんじゃないかい?」
国/安/中「「「………」」」
ドス「おや?皆さんどうされました?」
太「“どうされました”はこっちの台詞だよ。君、その回答は一体どうした訳?」
ドス「? 菫さんへの贈り物を問われたので、お答えしただけですが?」
国「それが…花束だと…?」
ドス「はい」
安「正気ですか……」
ドス「はい」
中「何かの隠語じゃけねぇだろうな?」
ドス「花束に一体どんな隠語が?」
太「もしかして、今度こそ本物の別人格“綺麗なドストエフスキー”が……」
ドス「生憎と最初から最後までずっとぼくはぼくですよ」
全「「「………」」」
ドス「何か?」
国「信じられん…っ、原作と本作であれ程の悪逆非道を働いてきたあの魔人の誕生日プレゼントが“花束”だと……っ!」
安「百歩譲ってぬいぐるみや装飾品の類なら、いつもの盗撮盗聴目的と云う事で納得できますが……」
ドス「ふむ…。『取り敢えずプレゼント送るなら、今度からお花とかにしといた方がいいと思うよ』と云う友人の助言に従ってみたのですが、どうやら不評の様ですね。矢張りプレゼントは一生消える事のない鮮烈な記憶を──」
中「花束でいい!花束にしとけ!」
太「君本っっ当に善い友達を持っているね!」
文「うーん…最初の問題の答えは“高いワイン”に、“自分”に、“花束”か…。ブラちゃんどう思う?」
ブラ「ふむ。強いて云うなら総じて貧相であるな。余であれば、妃の生誕祭は城の大広間に国中の民を呼び寄せ、楽隊の演奏と共に盛大な祝福を──」
文「あー。ブラちゃんに聞いたウチが莫迦やったわ。兎に角!此処からはドッキドキの結果発表や!って事で審査員さん!札をどうぞ!!」
燁(──ドストエフスキー)
樋(──ドストエフスキー)
太/中「「な゛っ!?」」
安「これは…」
国「満場一致…だと…⁉」
ドス「おや。ふふふ、友人の助言には従ってみるものですね」
中「ちょっと待て!何でよりによって糞鼠に票入れてんだ手前等‼」
太「そうだよ!納得いいかない!ちゃんと説明してくれ給え!!」
燁「いや。儂酒飲まんし」
中「誰が手前にやるっつったよ!!」
樋「芥川先輩が私に自らをプレゼントとして差し出すなどありえません!!解釈違いです!!」
太「差し出されるの私だし贈られるの菫!!」
燁「と云う訳で、消去法ではあるが魔人の選択は悪くない。何より、この中で一番隊長が贈ってくれそうな品じゃ」
樋「ええ。花束は芥川先輩でも、もしかしたらギリギリ気まぐれで渡してくれそうな気がします。……多分!!」
文「うーん。っちゅー事は、第一問は彼奴の勝ち云いう事になるんか?」
ブラ「その様だ。正直遺憾ではあるが…」
中「おいチビ!次だ次!さっさと次の問題読み上げろ!!」
文「な!誰がチビやねん!それ云うたらアンタかて──」
太「文ちゃん。中也が粗暴な口を利いてごめんね?でもここは私に免じて次の問題を出題してくれるかな?早く」
文「え…?あぁ、うん。そんなに云うんやったら……」
燁「何じゃ彼奴等、急にやる気を出しおって」
樋「魔人に一人勝されたの、そんなに悔しかったんでしょうか?」
安「まぁ、そう云う事です」
国「単純な奴等め」
文「ほな続いて第二問!
“ある日貴方は、冷蔵庫に美味しいそうなプリンを見つけて食べてしましました。しかし!それは大好きなあの子が楽しみに取っておいた、期間限定のプリンだったのです。当然彼女はカンカン。しかも販売期間を過ぎて同じプリンはもう二度と手に入りません。さぁ、貴方はどうやってこの危機を乗り切るでしょーか?”」
国「次の問題は喜怒哀楽の“怒”と云う訳か…」
安「しかも怒らせた原因が“プリン”と云う点が絶妙ですね。やり様によっては誤魔化して有耶無耶にしたり、逆上して相手が折れるよう誘導する事も出来る。先程の問題以上に、個々の性格が出る問題と云えるでしょう」
ブラ「そこ迄!では皆の者、回答を見せよ!」
中(──出来るだけ似たようなもん買って詫びる)
太(──『ごめんよ?私のこの顔に免じて許して♡』と全力の頬染め上目遣いのワンコ系お強請りフェイスで許しを乞う)
ドス(──『ご馳走様でした』と云う言葉と共に食べ終わった容器を返却する)
安「ふむ。矢張り中也君は誠実に“謝罪”と云う方法を選びましたか」
国「常識的に考えれば、それが当然の対応ですからな」
太「でもでも~、それで許してくれなかったらどうする?『あのプリンが食べたかったのに~!中也なんかもうキライ!』ってさ」
ドス「食べ物の恨みは恐ろしいと云いますからね。特に菫さんは甘いものが大好物な上、味覚も敏感ですから、果たして代替品で納得して下さるかどうか……」
文「うわぁ…。何かここぞとばかりにねちっこいイチャモン付けに行っとんな、あの二人…」
ブラ「うむ。双方、捻じ曲がった性根が如実に見て取れる反応であるな」
中「はぁ……。オイ、手前等何勘違いしてんだ?俺は別に、
全「「「?」」」
中「そこの眼鏡も云ってたが、“悪ぃ事しちまったんなら謝る”のは当然の事だ。それでどうなろうが後の事は、そん時決める」
全「「「……」」」
中「詫び入れて許してもらえるんなら御の字。許せねぇって云うんなら、俺に出来んのは精々受け入れて引き下がるくらいだ。大体、許す許さねぇなんざ相手の問題だろうが。少なくともやらかした側が無理強いするもんじゃねぇよ」
全「「「……」」」
中「? 何だ手前等、急に静かになりやがって」
文「……なぁ、マフィアのお兄さん」
中「あ?」
文「何でアンタ、そんな真面なんにマフィアなんかやっとんのん?」
中「はぁっ!?」
ブラ「同意である」
安「以下同文」
国「くっ…!何故こんな真っ当な人材ではなく、あんな社会不適合者が我が社に…っ!!」
太「待って国木田君、それ誰の事云ってるのかな?」
ドス「おや。判らないなら解説して差し上げましょうか?」
太「黙ってろ同類」
中「だぁあぁ!!煩ぇ煩ぇ、兎に角だ!自分の非で彼奴を怒らせちまったんなら俺は詫びる!そんだけだ。文句あっか碌でナシ共!!」
安「いえ。寧ろ貴方になら碌でナシと云われても仕方がない気すらします」
国「あぁ、人として実に理想的な答えだ。それに比べてこの人格破綻者共ときたら…」
ドス「おや、心外ですね。太宰君は兎も角、ぼくは真剣に思考した上で真面目にお答えしていると云うのに」
安「だとしたら、どう云う意図でそんな回答を?僕には手の込んだ自殺にしか見えませんが…」
ドス「お忘れですか?ぼくは菫さんに並々ならぬ憎悪を向けられる身。そんなぼくに楽しみを奪われたとなれば、最早何をしても彼女の怒りが治る事はないでしょう。
ならば寧ろ、普段温厚な彼女がぼくだけに見せる貴重な怒りの表情を、少しでも多くこの目に焼き付けた方が有意義です」
中「……おい太宰。通訳しろ」
太「いや無理。と云うか判りたくもない」
ドス「ふふ。ぼくに楽しみを奪われ、その残骸を突きつけられて怒り狂う菫さん…。嗚呼…想像するだけで胸が高鳴ります…」
安「寧ろ其方が彼女の胸を高鳴らせるべき立場なんですが」
国「人に嫌がらせをして悦に浸るとは…。太宰の同類と云われるのも頷けるな」
太「国木ぃー田君ごめん!流石にこのタイミングでの同類認定はやめてくれる?私だって人並みに傷つくのだよ?」
中「なぁにが傷つくだ。方向性違うだけで、火に油ぶち込んでんのは手前も同じだろうが」
安「まぁ正直プリンの件は許した上で尚、刃傷沙汰になってもやむなしの奇行ではありますよね」
太「待った待った!君達は問題の字面に捉われ過ぎだよ。今回のシチュエーションに於いて、“大好きなあの子”とは則ち菫の事であり、私は彼女が楽しみに取っておいた期間限定のプリンを食べてしまったと云う事だろう?ならば彼女の恋人として断言しよう…
プリンくらいなら上目遣いで謝る程度で菫は普通に許してくれる!と云うか、実際許してくれた‼︎」
中「いや、実体験かよ!」
ドス「呆れますね」
安「まったく、いい歳して何してるんですか…」
太「はっはっは何とでも云い給え!実際に許されている以上、誰がなんと云おうと私の答えはこれが正解なのだよ。……まぁ仮に許して貰えなからったら形振り構わず全力で謝り倒すけど」
国「なら最初から素直に謝れ唐変木」
ブラ「ふむ。ともあれ二問目の答えが出揃った訳だが、どう見る娘?」
文「う〜ん。やっぱマフィアのお兄さんの答えが一番真面やない?……まぁ、他が色々問題あり過ぎんのもあるけど…」
ブラ「確かに己が過ちを認め、謝する事はいつの時代も尊ぶべき行いに相違ない。しかしこの場に於いて、その是非を決するのは彼の者達。故に断ずるがよい!この問いの勝者は、果たして誰なるぞ!」
燁(──太宰)
樋(──ドストエフスキー)
国/安「「はぁ⁉︎」」
太「う〜ん残念…。2得点纏めて取る心算だったのに…」
ドス「太宰君は相変わらず欲張りですね。寧ろあの回答で加点して下さった猟犬の彼女に感謝するべきですよ?」
安「いや貴方達二人共普通は論外ですって!これは一体どういう事ですか審査員⁉」
燁「あの三つの回答をそれぞれ隊長で脳内変換して想像した結果──
頬染め上目遣いのワンコ系お強請りフェイスの隊長と云う新たな扉を開いた!!」
安「特殊性癖にも程があるでしょう!!」
樋「先輩の…先輩の食べ終わったプリンの容器を下賜された上に、『馳走になった』なんてお言葉まで賜れるなんて…。もう私はそれだけでどんな過酷なブラック労働も耐えられます…っ」
国「ええい!此処に真面な感性を持った審査員は居ないのか!?」
中「……おい、餓鬼」
文「っ!…え?な、何?」
中「次だ。次の問題さっさと読み上げろ」
文「う、うん…。判った」
ブラ「あの男…。なんと凄まじい殺気か…」
安「拙い…。この侭では催しが終わる前に会場ごと潰されかねませんよ…」
太「まぁまぁそうムキにならないでよ中也ぁ~?こんなのただのお遊びじゃないか。ねぇドストエフスキー?」
ドス「ええ太宰君。一人だけ一点も獲得できていなかったとしても、何ら恥じる事はありません。所詮は無意味な
国「水を得た魚の様に煽り出すな悪魔共!!」
文「はいはい、次の問題読むでぇ!第三問“ある日大好きなあの子が一人隠れて泣いていました。どうやら仕事で理不尽な目に遭った様子。さぁ、涙に暮れる彼女を前にして貴方は一体どうするでしょーか?”」
安「喜怒哀楽の“哀”についての問題ですね。しかし泣いている女性を前にした時の対応とは…中々の難問を…」
国「ええ。今回は菫相手ですからまだ話が通じるでしょうが…。場合によっては良かれと思って伝えた問題点や今後の改善点に対し、“今はそう云いう話じゃない”と余計に泣かれて収集が着かなくなりますからね…」
燁「あー、此奴モテんじゃろうな」
樋「仮に恋人が出来てもすぐに破局するタイプですね」
文「ホンマ乙女心が判っとらんなぁ国木田」
国「はぁあ!?何だお前達、俺の何が間違っていると云うのだ!!」
安「ちょ、落ち着いて下さい国木田さん!」
燁「お。そろそろ時間じゃな。そら、回答を見せよ下郎共」
中(── 気が済むまで泣かせてやった後、飯に連れてく)
太(──優しく慰めてあげる)
ドス(──問題点や今後の改善点を一つ一つ丁寧に数時間掛けて提示して差し上げる)
国「うぉい待て!!何の嫌がらせだドストエフスキー!?」
ドス「嫌がらせだなんてとんでもない。純粋にぼくと貴方の思考が、偶然にも合致しただけの事です。菫さんは生真面目で理性的な女性ですから、それが自分にとってどれだけ都合の悪い内容でも、“正論”である限り決して反論せず粛々と受け入れます。つまり問題点や改善点を提示している間、ぼくは“悲しみと悔しさに歯を噛み締めながら反論も出来ずに受け入れるしかない”菫さんを、数時間に渡って堪能できると云う訳です」
中「やっぱ此奴今此処で殺しとくか」
安「落ち着いて下さい中也君。無暗に殺害した所で、どうせ蘇ってきますよこの魔人」
太「気をつけ給え国木田君。一歩間違えば君もあれと同類になってしまうよ?」
国「ち…違う…っ。俺はただ良かれと思って…。そんな心算は微塵も…」
中「手前に悪気がねぇのは判るぜ眼鏡。ただな…女ってのは共感性の生きモンだ。今度からは百の正論より、先ずは相手の話聞いた上で一言でいいから『そうだな』って云ってやれ」
ドス「おや。そう仰る割に、中也さんの回答は助言と食い違っている様ですが?」
中「普通の女なら大体それで何とかなる。が、彼奴の場合『大した事ない』っとか云って口割らねぇだろうからな。なら先ずは気が済むまで泣かせてやった方がいい。何があったかは、その後落ち着いて美味い飯でも食いながらゆっくり聞いてやるさ」
文「見てみぃ国木田!あれがモテ男の答えやで!」
国「あぁ…手帳にもしかと書き残しておこう…。あと国木田“さん”な」
安「まぁ想い人への対応と云うよりは、頼れる先輩の対応にも思えますが。孰れにせよ、人間関係に於ける正解には違いないでしょう」
太「はいはいちょっと待ち給え国木ぃー田君。確かに中也の回答は万人受けするかもしれないけれど、傷ついた乙女心に対する配慮が全く足りていない。どうせメモするなら乙女心を熟知したこの私の神対応を書き記すといいよ!」
安「待ちなさい太宰君。一応確認しておきますが、その“優しく慰めてあげる”と云うのは決して疾しい意味など含まれていないでしょうね?」
太「もう、安吾は心配性だなぁ。“優しく慰めてあげる”と云うのは言葉通りの意味さ。具体的に云うと、『どうしたんだい?よかったら話聞くよ?』から切り出す」
ドス「あぁ、ぼくこれ知ってます。ジャパニーズナンパの序文『ドシタンハナシキコカ』ですね」
太「確かに菫は、内容が深刻であればある程口を噤んで溜め込んでしまうきらいがある。が!そこは私の腕の見せ所!さり気ない誘導と絶妙な相槌で優しく彼女の本音を引き出すのさ。勿論、『うんうん、それは相手が悪いよね』や『大丈夫。君の頑張りはちゃんと私が判ってるから』等のフォローも欠かさない」
中「あー。そう云やぁ昔情報収集ん時、そんな感じの台詞吐いて女に擦り寄ってったっけな手前」
太「そうして溜め込んだ悲しみを全て打ち明け、私への信頼度と好感度が上がりきった所でこう決めるのさ──
『そんな奴の云う事なんて、もうどうでもいいじゃないか。君の価値も判らない見る目の無い愚か者と私、──君はどっちの言葉を信じるの?』」
安「以上。太宰君のナンパ講座“傷心の女性に付け入る方法”でした」
国「小賢し過ぎてメモする気も起きんな」
太「君達は私の回答に難癖付けないと死ぬ呪いにでも掛かっているのかい?」
文「ま、まぁ取り合えずこれで回答出そろったな。ほな審査員さん、採点どーぞ!」
燁(──太宰)「隊長の『どしたん話聞こか』でキュンキュンしたい!!」
樋(──太宰)「先輩に“自分だけは判ってるムーブ”されてトキメキ倒したい!!」
国「最早願望になってるぞお前等!!」
安「う~ん。此処にきて太宰君の真っ当に女性受けしそうな回答が真価を発揮してきましたか…」
ドス「流石太宰君。長年女性関係にだらしない生活を送ってきた甲斐がありましたね」
太「おや。もう負け惜しみかいドストエフスキー君?どうせなら、次の最終問題で全ての決着が着いてからにし給えよ」
ドス「もう勝った気ですか?」
太「それ以外に何の結末が?」
中「……」
太「あぁゴメンネ中也~?中也には全然関係ない話しで盛り上がっちゃって~?」
ドス「そう気を落とす事はありませんよ中也君。寧ろ我々を相手にクイズと云う苦手分野の中、健闘した自身を誇るべきです」
中「おい餓鬼。最後の問題頼む」
太「えぇまだやる気かい?もう勝てないの確定してるのに?」
ドス「気を落とすなとは云いましたが、自ら無駄な労力を割く事もないのでは?」
中「確かにこんな巫山戯けた催しで勝とうが負けようが何にもならねぇ。
それでもなぁ──
勝てねぇからって一度始めた勝負放り出すのは違ぇだろ」
──スッ…、安(──中也)国(──中也)文(──中也)
太「ちょっと何勝手に札上げてるのさ君達⁉」
ブラ「案ずるな。これは正規の得点ではない。が、この身が万全であったなら余も一票投じたかった。それ程に見事な覚悟である」
ドス「良かったですね中也さん。死票とは云え一瞬でも我々に並べて」
中「手前は嫌味でしか人と会話出来ねぇのか陰険もやし。ったく…、おらさっさと最終問題出しやがれ。それ答えて終いだ」
文「よっしゃ、ほな第四問や!“大好きなあの子と休日が被った貴方!折角だから
国「四問目は
安「この問題で最終的な勝者が決まる訳ですが…。果たして三者どう答えるか…」
文「そこまでや!ほな三人共、回答見せて!」
中(──ツーリング)
太(──遊園地)
ドス(──演奏会)
国「おぉ…何と云うか…、思いの他定番所が揃ったな…」
安「ええ、確かにどれも定番と云えば定番ですが…。良いんですか太宰君。臼井さんの性格上、人で賑わう場所は鬼門では?」
太「チッチッチ…。甘いよ安吾。乱歩さんが愛飲している苺牛乳より甘い。確かに菫は人混みが苦手だ。だがそれはそれとして、人気スポットに対しては人並みの興味を待ち合わせているのだよ」
国「あぁ…そう云えばお前達、以前も
太「そう!私と一緒なら菫は苦手な人混みを安心して歩けるし、私は“異能無効化の為”と云う大義名分でベタベタしても許される。と云うか寧ろ菫からくっついてきてくれるだろう」
中「マジでそう云うとこ小賢しいよな手前」
太「うふふ、人気アトラクションではしゃぐ菫。園内フードを美味しそうに頬張る菫。マスコットに恐る恐る近づく菫。そして最後は夜空に咲き誇る花火に目を輝かせて、『また来ような!』と私に満面の笑顔を見せてくれる菫…。嗚呼!我ながら最高の
ドス「果たしてそう上手くいくでしょうか。遊園地
国「悪印象が過ぎる‼」
安「ですが…、一概に事実無根と云い切れないのが恐ろしい所ですね…」
太「人の心配ができる立場かいドストエフスキー君。君の場合、抑々
ドス「ええ。なのでぼくは先ず“子供を人質に取る所”から始めます」
国/中/安/文「「「「ちょっと待て/待ちなさい/待たんかい!!!」」」」
ドス「そう驚く事もないでしょう。冷静に考えてみて下さい。──人質もなしにぼくが菫さんと
太「それ…自分で云ってて悲しくならない?」
ドス「全く」
中「無敵か此奴」
ドス「却説。菫さんと
文「いや待ちぃ!人質どないしたん⁉」
ドス「それはまぁ…その時の菫さん次第と云う事で」
太「あ、これ興が乗ったら普通にトラウマ級のバッドエンドに突入する奴だ」
中「マジで此奴自分の欲望しか優先しねぇな」
ドス「耳が痛いですね。所で、そう云う貴方はどれ程彼女を慮った
中「はぁ…。まぁ
太「で、後は温泉に浸かりに行った菫を覗きに──」
中「行く訳ねぇだろ!!」
太「あぁ、じゃあ泥酔した後の寝込みを襲って──」
中「するかボケ‼普通に風呂入って寝て帰るわ手前と一緒にすんな色魔‼」
ドス「太宰君。誰もが貴方の様に日々色欲に溺れている訳ではありません。彼は四年間の絶縁期間と敵対組織と云う吊り橋効果、そしてお酒の力と催春剤の力を借りて漸く手が出る程の腑抜…ゴホン、理性ある紳士なのですよ」
中「煩ぇよ陰湿野郎!オラ全員答えたぞ!さっさと審査しやが──」
燁(──中也)(──中也)
樋(──中也)(──中也)
太/中/国/安/文「「「「「はぁ!?」」」」」
ドス「得点札を…」
ブラ「両手持ち…だと…っ」
国「待て!何だこれは、説明しろ!」
燁子「判らんか痴れ者め…。隊長と旅館にお泊りじゃぞ…。つまり…
隊長の脱ぎたて靴下を採取できるのみならず!隊長が一晩寝入っていたシーツと掛け布団まで手に入るのじゃ!!これ以上の至福がこの世にあるか、否ない!!!」
樋「芥川先輩とお泊り…、それ則ち…
今度こそ湯上りの先輩に、保湿用化粧水とボディークリームとヘアオイルとサプリで完璧なアフターケアを施して差し上げられる!否、寧ろ!露天風呂付の個室を予約して入浴時点からサポートを!!」
燁「──ハッ⁉それならば態々男湯に忍び込む手間も省ける上に、隊長のお背中を流して差し上げる事も出来る!お主天才か!?」
安「ただの狂人です」
太「ちょっと待ち給え!流石にこれは納得いかないよ!」
ドス「本筋の“ツーリング”は審査に一切加味されていませんしね」
中「正直釈然としねぇ…」
文「う~ん。確かに、ちょっとこれは正義の味方的にもモヤモヤすんなぁ…。どうしよブラちゃん?」
ブラ「ふむ…。致し方ない。そこな探偵社員。暫しこの娘の耳を塞いでおけ。娘、其方も目を閉じよ」
国「何だ急に?」
ブラ「訳は云えぬ。…が、必要な事である。双方、余の許しがあるまで決して開けるでないぞ」
文「え?うん?判った…」
ブラ「却説。聞け平民達よ。本来であれば、此度の催しはこれにて幕引きである。しかし、斯様な結末では皆腑に落ちまい。故に特例として、其方達にはもう一度だけ問いに答えてもらう」
安「? しかしクイズは全て回答済みです。これ以上、一体何に答えろと?」
ブラ「これなるは愛故に抱く感情に因んだ問い。則ち──“裏問題”である」
太/中/ドス「「「!」」」
ブラ「ふむ。どうやら察した様であるな…。本来であれば、斯様な祝いの催しで晒すものではないが。遺恨を残した侭終わらせるよりはよかろう。故にこの問いの勝利を以て、『HSH5ANNIVERSARY☆ドリームクイズ大会』の勝者とする──
では往くぞ、裏問題!“貴方は1週間遠方で泊まり掛けの大仕事の後、漸く自宅に帰ってきました。一刻も早く寝たい貴方は寝室に直行。すると何と云う事でしょう!ベッドの上には貴方の理想の装いをした彼女が居てこう云ってきました『お仕事お疲れ様。ご褒美に今日は何でもして、あ・げ・る♡』さぁ、貴方は一体どうするでしょーか!!”」
安「何ですかこの雑な18禁ものの冒頭みたいな問題!?」
国「確かに此奴には見せられんな…」
ブラ「さぁ、今度こそ正真正銘の最終問題である。其方達の回答は如何なるぞ!」
中(──帰りを待ってた事に礼を云ってから普通に寝る)
太(──いただきます)
ドス(──元凶の異能力者を見つけ出して消す)
安「何と云うか…。此処まで潔いといっそ清々しいですね太宰君」
太「いやだって考えるまでもないだろう。“1週間遠方で泊まり掛けの大仕事”って事は1週間菫に会えなかった訳だ。それだけでも我慢の限界なのに、向こうから態々セーラー服着て誘ってくれてるんだよ?寧ろ断る方が失礼まであるよ」
国「セーラー服はお前の願望だろうが」
ドス「そう云う趣味でもあるんですか」
太「まったくこの朴念仁達は…。いいかい?実際の年齢差もあって菫は隙あらば私に年上ぶってくるが、本来の彼女は構われたがりの甘えん坊さんだ。そんな彼女に敢えて学生の装いをさせる事で、年上としての矜持を手放し易くさせると云う訳さ。
何より、少女の様な装いで顔を真っ赤にしながら潤んだ目で『太宰お兄さん』なんて甘えてくる菫とか最高過ぎるだろう。ねぇ中也?」
中「俺に振んな。大体彼奴、真面目なだけでそんなに年上ぶったりはしてねぇだろ」
国「俺も多少の気安さは感じるが、お前や敦達程目に見えた保護者扱いをされた覚えはないな」
安「もしや太宰君が矢鱈と年下扱いを受けるのは、ご自身のだらしなさが原因なのでは?」
ドス「では菫さんに少女の演技をさせずとも、ご自身が人間的に成熟されれば全て解決しますね」
太「私は既に成熟した立派な大人だよ。少なくとも、答えたくないからって問題を曲解して逃げる君よりはね」
ドス「別に逃げた訳ではありませんよ。先程の問題と違い、彼女が自らの意思で状況を作り出している以上、精神操作か現実改編の異能が働いているのは確実です。
そうでなければ、修道服に身を包んだ菫さんがぼくの働きを労い、身を差し出してくるなどあり得ません!!」
中「おい趣味嗜好が漏れ出してんぞ糞鼠」
太「修道服…。成程アリだ。際立つ清楚感と背徳感が実にいい」
国「お前は黙っていろ」
ドス「ぼくの福音たる彼女を意の侭に操るなど、許されざる行いです。速やかに異能力者を見つけ出し、異能諸共に抹消した後、正気に戻った菫さんにはそれまでの経緯を映像付きでご説明します」
安「臼井さんへの嫌がらせに対するその飽くなき執念は何処から湧いてくるんですか?」
ドス「孰れにせよ、ぼくは事実に基づいた思考の結果をお答えしたまでの事。“逃げ”と云いうなら、寧ろ中也さんの方ではないですか」
中「悪ぃがこちとら裏家業の大本だ。“1週間遠方で泊まり掛けの大仕事”とくりゃあ、帰る頃には体中血と硝煙の匂いが染みついちまって女抱くどころじゃねぇわ。まぁ、帰りを待っててくれたってのは有難ぇし、“何でもしてくれる”ってんなら日ぃ跨いでから頼むさ」
太「因に、中也は想像の中で菫にどんなコスプレさせてたんだい?」
中「はぁ⁉云う必要ねぇだろんなもん‼」
ドス「前回の討論会を鑑みるに、ゴスロリですか?」
中「だから違ぇって!」
太「白状しなよ中也ぁ。でないと、“中原中也は理想のコスプレにゴスロリを掲げる森さん予備軍”って、全ポートマフィア構成員に一斉送信するよ?」
中「~~~っ…まぁ、あれだ…。女らしい恰好は似合うだろ彼奴」
ドス「例えば?」
中「スカートだの…、ワンピースだの…そう云う…」
太「もっと具体的に」
中「……色は黒で…フリルとリボンが着いてる…エリス嬢みてぇなやつ」
太「ゴスロリじゃん」
ドス「ゴスロリですね」
中「うるっ……せぇなぁ!!!手前等の変態趣味よか万倍マシだろうがよぉ!!!」
安「却説。孰れにせよこれで裏問題とやらの回答が出そろいましたね」
国「はぁ…これで今度こそ帰れるのか…」
ブラ「然り。さぁ審判の時ぞ!栄えある勝者に札を上げよ審査員!!」
燁/樋「「………」」
太「あれ?」
ドス「おや」
中「おい?どうしたんだよ。さっさと札上げろよ」
燁/樋「「………り」」
安「はい?」
国「何だ?聞こえる様にもう一度…」
燁「じゃから!隊長をベッドに誘うなど無理じゃーーーー!!!」
樋「だから!先輩をベッドに誘うなんてムリですーーーー!!!」
全「「「は?」」」
燁「無理、無理、無理じゃー!隊長に儂がそんな事…っ!!~~~っ、あーーーっ畏れ多過ぎて絶対に無理じゃーーー!!」
樋「せせせ先輩に、そんな…っ破廉恥な…。駄目ですムリです!大体物事には順序と云うものがですね!!」
国「何をもんどり打っておるのだ此奴等」
安「どうやら、思いの他純情な心の持ち主達だったみたいですね」
中「いや純情な心の持ち主は相手の食い終わったプリン容器や脱ぎ捨てた靴下収集したりしねぇだろ」
ドス「しかし困りましたね。これでは今まで以上に真面な審査など期待できそうにありません」
太「やれやれ仕方ない…。国木ぃー田君、文ちゃんから手を放してくれるかい?」
国「む?だが…」
ブラ「構わぬ。嵐は過ぎ去った故な」
国「まぁそう云うなら…。おい文、もう目を開けていいぞ」
文「はぁ~、退屈やった!…って、え?何これ、どう云う状況?」
太「う~ん。過程を省いて結論だけ云うと、審査員の二人が錯乱しちゃって勝負が着かなくなってしまったのだよ。だから文ちゃん。君が勝者を決めてくれないかい?」
文「え?ウチ?」
太「うん!君はこのクイズ大会の司会として、これまでの回答を把握しているし。何よりここに居る女性の中で一番感性が真面だ」
男性陣「「「確かに」」」
太「と云う事で、君の判断なら皆納得するだろう。さぁ文ちゃん、勝者を選んでくれ給え。それでこの気の狂った催しもお開きだ」
文「う~ん…。うん、判った!ほなウチが決めたるね。『HSH5ANNIVERSARY☆ドリームクイズ大会』優勝は──」
全「「「……(ゴクリ)」
文「──ナシ!全員失格や!」
太/中/安/国「「「はぁぁあああ!?」」」」
太「え?ちょっと文ちゃん、何失格って⁉どう云う事⁉」
文「どうもこうもあるかいな!先ず探偵社のお兄さん、アンタもうちょっい“誠実さ”云うんを覚えた方がええで。“女の怒りはポイントカード制”や!相手がニコニコしとるからって調子に乗っとると、その内大目玉食らうで⁉」
太「ぐはっ!!」
文「それからマフィアのお兄さん!アンタは押しが足らんわ!確かに相手の事優先するんはメッチャ大事やけど、時には強引にいかんと他の男に取られてまうで!」
中「がはっ!!」
文「最後にアンタ!」
ドス「はい」
文「アンタは論外!!」
ドス「はぁ」
文「兎に角!アンタ等全員ドキドキもトキメキも程遠いわ!大体乙女心っちゅうんが判っとらへんねん。ええか?女の子って云いうんはな──」
国「拙いな…。これは長くなるぞ…」
安「とは云え、全員失格である意味収まりもいいですし、幕の引き時としては妥当でしょう。いかがです不死公主?」
ブラ「うむ。些か拍子抜けではあるが、これも
魔である余にとって、5年と云いう月日は暁の前の夜露に同じ。だが、人の身に於いては意味ある時間であろう。故に感謝を。そしてこれより先も、彼の者達の生き様を刮目して見届けるがよい。
ではこれにて、『HSH5ANNIVERSARY☆ドリームクイズ大会』を閉幕とする!!」
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