きんいろの奇跡
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天気は晴天。
魔界で言う快晴にあたる今日は、いよいよ待ちに待った音楽祭。
昨夜から連絡の無かった入間をオペラが連れ戻し、あれよあれよという間に事を済ませた様子を見て名無しさんも安心したように口を開く。
「入間くんも帰ってきたし、そろそろ私も行こうかな。また後で合流しにいくよ」
「気をつけて行ってくるんだよ〜名無しさんちゃん」
「はーいありがとうおじいちゃん!オペラさんも行ってくるねー」
「はい、行ってらっしゃいませ」
入間の無事を確認しほっとした名無しさんは、心配で徹夜をしたからか少し重い身体を引きずって悪魔学校へと歩を進めた。
本来なら食堂がお休みの今日は名無しさん自身も休みなのだが、ダリにお願いされて早朝から準備に追われている教師陣へと軽食の差し入れを持って行っているのだ。
「あ、名無しさんちゃんだ!おっはよーう」
「!ダリ先生、おはようございます」
「お休みの日にごめんねぇ〜本当助かるよ!」
「私で良ければいつでも手伝いますよ」
「そう言ってくれると助かるなぁ。毎年バタバタなんだけど、今年は結構どこも大変そうでさ〜」
「へぇ〜、じゃあ凄い楽しみですね」
「君も理事長達と観るんでしょ?」
「そのつもりです。問題児クラスにも呼ばれてるのでサッと渡してから行こうかなと」
「ありゃりゃ〜大人気だ」
これはオリアス先生ちょっと拗ねるかもな〜と、ぼそっと呟いたダリの言葉を聞いて名無しさんは一瞬キョトンとし、次の瞬間吹き出した。
「あははっないない、オリアス先生ですよ?確かに暫くまともに会えてないですけど、昨日通話した時は至って普通でしたし」
そんな事はありえないという風に名無しさんは笑ったが、その様子を見ていたダリは目を少し開けて言い放つ。
「悪魔の独占欲は等しく皆同じだよ」
「え?それってどういう...」
「僕と一緒に行けば分かるんじゃないかな?」
「ちょっダリ先生っ?」
肩を軽く叩きながら今日も今日とていい笑顔なダリは気になる言葉を残した後、羽をしまって名無しさんに並び立つ。
そのまま一緒に歩いて向かっていれば、放送師団室から疲れた様子のオリアスと元気な様子のマルバスとロビンが姿を見せた。
「...あれ?名無しさんちゃんじゃん!どうしたの?こんな朝から」
一瞬固まったように見えたオリアスだったが名無しさんの姿を見つけるや否や、嬉しそうな笑顔で駆け寄ってこようとする姿を見て、横に居たダリはニマニマと笑いそっと名無しさんへと耳打ちをした。
「悪魔の独占欲、理解出来ました?」
「っ!」
目を細め妖艶に笑ったダリに名無しさんは少し驚くも、次の瞬間には腕を強く引かれた事に体勢も取れないまま重力へと従えば、見知った香りが鼻をつき思考は一時停止した。
「お、オリアス先生っ?!」
「あ〜ごめんね名無しさんちゃん、痛くなかった?」
引っ張られた腕に腰に添えられた掌...上から覗き込まれるような形で突然の抱擁に近い距離。
思考が追いつかないままオリアスの視線を辿れば、してやったりという顔をしたダリの姿があって。
やっとそこで自分の身体に起きた事態を理解した名無しさんはみるみるうちに顔に熱が集まるのを感じていた。
「お、りあす先生、状況は分かったからちょっとその、近...
「ほらね、言ったでしょう?」
すると赤くなった顔で固まった名無しさんを見てダリは続ける。
「信用も大切ですが、正しく理解する事もまた大切ですよ〜」
「...何の話ですか?」
「あははっ巻き込んじゃってすみませんオリアス先生」
「えっと...」
「詳細は彼女から聞いてみたらいいんじゃないかなぁ?じゃあ僕はこれで!」
笑顔を崩さないまま職員室へと向かっていくダリを2人で見送れば自然と目が合う2人。
掴んでしまったままだった腕をそっと離して見上げてくる名無しさんの目を見れば、久しぶりに見る姿だからなのかいつもの億倍可愛いく見えてしまって、思わずオリアスは数歩後ずさった。
「っ今日確かお休みじゃなかったっけ?」
「!あぁ、えーっと実はダリ先生に軽食のお願いされてて」
「えっそうなの?じゃあその籠ってもしかして」
どこか気まずい空気を変えるかのように問いかけられた話題に流されるがまま、籠の中身を名無しさんが見せれば感嘆の声が上がった。
「うわっ凄ぇ...え、これ俺らが食べちゃっていいの?」
子供のように目をキラキラとさせながら嬉しそうに放たれた言葉に思わず名無しさんも笑顔になれば、いつもの穏やかな空気が流れ始め小さく笑った名無しさんを見てオリアスもまた眉を下げて優しい表情になる。
「何笑ってるの?」
「ふふっ何でもないよ」
「そうは見えないけど」
「久々見たからかな、ちょっと可愛いくて」
「え″っ俺のことじゃないよね?」
「さーどうだろう」
「ちょっと(名前)ちゃんっ?!」
焦ったように問いただすオリアスと名無しさんの攻防が廊下で繰り広げられ、ニマニマとした笑顔のマルバスが止めにくるのはまた別のお話。