きんいろの奇跡
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「オリアス先生、あれって...」
「あ〜、まーた懐かれてるねぇ」
全ての授業を終え、たまたま一緒になったマルバスと職員室へと向かう途中その光景は2人の視界に飛び込んできた。
「ヌシ、また腕を上げたなぁ!」
「えぇ、このサクサク感もちょうど良いかと」
「やったー!やっとだ...!」
一見人目には付きにくいように見える中庭奥で、芝生に座りお茶会のようなものをしているのはサブノック、アスモデウス、名無しさんの3人。
普通ならば木々で隠れてしまう所だが、サブノックの規格外の体格のせいか見えにくいというよりはある意味目立っていた。
「...凄いなー。本当誰とでも仲良くなれちゃうんですね」
「そんなに驚くこと?」
「いやだって、あのカルエゴ卿ですら臆せずに接してるんだよ?あの2人だって一部の生徒からは怖がられてるのに...」
「...彼女の場合、悪魔 を疑うとか怖がるとかって感覚が薄いのかもねぇ」
「あ!恐怖への耐性があるとかですか?」
「いや、そうじゃなくてさ。実際俺にもマルバス先生にも怯える何て事しなかったでしょ?...あんな事されたのに」
オリアスの言葉で思い出すのは、名無しさんの意識が戻り保護対象へと変わった名無しさんへ2人で謝罪に行った時の事。
状況が分からないまま傷つけられ、見捨てられ。恐怖の対象となってもおかしくないはずの2人に、名無しさんは顔を見るなり頭を下げて謝罪したのだ。
その手は微かに震えていたにも関わらず気丈な態度で謝らないで下さいと笑いながら。
「...あれには驚きました」
「次に会った時何て、普通に話しかけてきてくれたしねぇ」
サブノック達と笑いながら何やら拳を突き上げて盛り上がる名無しさんの姿にマルバスとオリアスは笑みを浮かべる。そして2人はそのまま中庭を通り過ぎ職員室へと向かうのだった。
そしてまた別の日、今度はイクスにライム、モモノキとクララに囲まれた名無しさんを見かけるオリアス。2階にいる為会話は聞こえないが、名無しさんが赤面しながら後ずさっているのだけは分かりオリアスはおかしそうに笑う。
「なぁ〜に言われちゃってるのかねぇ〜。顔、真っ赤じゃん」
愛おしそうに、慌てふためく名無しさんの姿を見たオリアスは鼻歌を歌いながら廊下を過ぎ去る。
また別の日はリードとロビン、そのまた別の日はスージーとバラムのセットなど、珍しいぐらいに色んな悪魔との交流をオリアスは見かけていた。
元々色んな悪魔と顔広く交流があった名無しさんなのでオリアスは特に疑問には思わず暫く過ごしていたが、それとは別に少し面白くないなという独占欲はじわじわと刺激されていて。
今日こそは一緒にご飯でも食べに行こうと意思を固めて早々に準備室を片付けたオリアスの背中に、控えめなノックが鳴り響く。
ーコンコン
「はぁーい、空いてるよ〜」
書類を整理しながら振り向けば、入ってきたのは見覚えのある1人の生徒。
「入間くん?どうしたの、授業で分からない所でもあったのかい」
「いえ、その...オリアス先生っこれどうぞ!」
そう言って手渡されたのは、紫色の封筒。
何の用事だと再度訪ねようと口を開いた時には入間の姿は既になく。首を傾げたオリアスは静かに蝋を切って封筒を開いた。
【親愛なるオリアス・オズワール様
本日18時に、指定の場所へと参られたし】
それだけが記された手紙に全く心当たりがないものの、入間が持ってきたのだから変な事ではないのだろうとあたりをつけて笑みを浮かべる。
「本当飽きないねぇ〜、新しいゲームとかかなぁ」
先程(名前)に送った魔インは19:30。1時間半もあれば片付くかなと荷物を持って向かうのは、指定にあった王の教室 。久々腕が鳴るなと足取り軽く指定の場所へと向かった。
早速大きな扉へと到着すれば、教室に入る扉の前にはまたもや紫色の封筒に【3回ノックをしてから入られよ】の文字を見つけて、オリアスは指示通りに3回叩いた。
するとその瞬間部屋の照明が落ち、扉がゆっくりと開かれる。
「「「オリアス先生〜!ハウェーヤー!!」」」
「えっ..........?」
中には問題児クラスの一同と部屋の真ん中には名無しさんの姿。クララと入間に背中を押されるように名無しさんの元へと導かれれば、少し恥ずかしそうにはにかんだ名無しさんが居て。
「オリアス先生、かなり遅くなったけどハウェーヤー!」
名無しさんの声に反応するかのように、あちこちからお祝いの言葉が飛び交う状況に流石のオリアスも驚きを隠せずに固まっている。するとそんな様子を見兼ねたクララがオリアスの後ろから飛びついた。
「キラキラせーんせっ!ほいっお祝い帽子に取り替えっこ!ワクワク眼鏡に〜クマちゃんも貸したげるね!」
「おぉ、クララナイス!」
「おうよっ、名無しさんお姉さんの為なら頑張っちゃいますぜい!」
何が何だか分からないまま腕を引かれて辿り着いたのは沢山のご馳走やケーキにお菓子が並べられた豪勢なテーブル。
流れるように名無しさんに視線を送れば、それはもう嬉しそうに笑顔になった。
「突然ごめん。どうしてもお祝いしたくてさ」
話によれば、ここにある料理やケーキお菓子に至るまでもが全て名無しさんの手作りだと言うのだ。本当はサリバン邸でお祝いする予定が問題児クラスの一同にバレてしまい、それなら協力したいと今日まで頑張ってくれたのだという。
「オリアス先生〜僕たちが入学してすぐの誕生日だったんだねぇ〜!全然気が付かなかったー」
「大人になると祝われる事減るって言うけどさぁ〜俺は毎年でも嬉しいなぁ〜」
「拙者も拙者もー!」
「...まぁとにかく、なんだかんだで皆もお祝いしたいって言うからさ、色々助けて貰ったんだ」
びっくりした?と笑った名無しさんに、オリアスはグッと抱きしめたくなる衝動を抑えて拳を握る。そして今か今かとご馳走を前にワクワクしている一同に向けて言葉を言い放つ。
「こんな嬉しいサプライズは初めてだよ、本当にありがとう!さー、皆で食べるかっ」
「「「わーーーい」」」
待ってましたと言わんばかりの賑わいにオリアスは耐え切れず笑い声をあげる。その横顔は心から楽しめているようでそれを盗み見た名無しさんも満足そうに笑った。
「ほらほら主役の悪魔 はもっと食べなきゃ〜」
「こんなにっ?」
「だって、名無しさん、さんが...オリアス先生の好みを聞いていっぱい作ったって言ってた、から」
「...........」
「うむ!この魔カロンだって、主席と飽きるぐらい試食に付き合わされたぞ」
「こっちのお花はスージー先生の所から、僕とクララでつんできたんです!」
「はいはぁーいっ私もいっぱい手伝ったー!」
わらわらとオリアスの周りに集まる皆は口々に楽しかった、美味しかったなどとこのサプライズに向けての計画が心底面白かったのだと表情で語っている。
それを見て言葉に表しきれない感情がオリアスの全身を巡っていき本日何度目かも分からないお礼を伝えれば、皆嬉しそうに笑うのだった。
「はぁー.....食べすぎた」
「あははっ、後半クララに無理矢理食べさせられてたね」
「見てたなら止めてよね〜」
「いやー、楽しそうだしいっかなって」
「それは、そうだけどさぁ〜」
あんなに騒がしかったのも束の間、今は2人でサリバン邸までの道を歩いている。
「最近あちこちで囲まれてたのってこの日の為だったりする?」
「見てたの?!」
「いや、見るでしょ〜。俺はいつでも君を探してるよ」
「なっ」
サラッと口説く言葉を言ってのけるオリアスは(名前)の顔を見て挑発的に笑う。この顔は、名無しさんが照れると分かっててやってる顔である。
そんなオリアスに名無しさんがポスンと拳を入れれば笑い声が響いた夜道は今日も今日とて穏やかで。
気がつけば2人はサリバン邸の前についていた。
「今日も送ってくれてありがとう、オズくん」
「やぁーっと呼んでくれた」
「いやだって学校だったし、皆の前だからさ」
「分かってるよ。それでもやっぱそう呼ばれるのが俺は好きなんだよね」
学校とは違う、無邪気な笑顔で笑ったオリアスに名無しさんも眉を下げて笑顔を返す。
「あ、それとこれ。私1人じゃ無理だったから協力してもらったやつなんだけど、さ」
「魔茶と...ドーム?」
「オズくんさ、寝不足なる事多いから疲労回復するやつと、星型のガラスドームによく眠れるアロマのやつ」
本番は過ぎてたから手作りのものでごめんだけど、と控えめに渡してきた名無しさんに、オリアスは今日1日でどれだけの幸せを貰ったのだろうと思わずその手ごと握り締める。
「ありがとうっ名無しさんちゃん!ほんとに...すげー、嬉しいっ」
「へへっ、生まれてきてくれてありがとう!オズくん」
気恥ずかしそうに微笑む名無しさんは本当に綺麗で。
思わず名無しさんの元へと踏み出しそうになった身体をオリアスが理性を総動員して律していると、名無しさんに手招きされたので、誘われるがまま目線を合わせれば...そこからはもう一瞬だった。
鼻をついた柔らかな甘い香りと右のほっぺの温もり。
何をされたのか理解する前に、目の前の名無しさんは暗闇でもわかるぐらい真っ赤になっていて、そこでようやくオリアスは全てを飲み込んだ。
「じ、じゃあっ、その!えーと、お、おやすみ!」
「あっ、ちょ」
オロオロと明らかに動揺した様子で後退りながら屋敷へと走り去った名無しさんの姿は、最早もうない。
暫く放心していたオリアスだったが、じわじわと熱が上がってきて顔が熱くなるのが分かるぐらいには赤くなっていた。
「あ″ーーーーっ、だよ、くそぉーー」
バッとその場にしゃがみ込み頭を抱える。
「可愛いすぎるだろっ.....何あれっ...」
言葉にならない声を発しながらも、オリアスは暫くその場にしゃがみ混んでいた。
「あ〜、まーた懐かれてるねぇ」
全ての授業を終え、たまたま一緒になったマルバスと職員室へと向かう途中その光景は2人の視界に飛び込んできた。
「ヌシ、また腕を上げたなぁ!」
「えぇ、このサクサク感もちょうど良いかと」
「やったー!やっとだ...!」
一見人目には付きにくいように見える中庭奥で、芝生に座りお茶会のようなものをしているのはサブノック、アスモデウス、名無しさんの3人。
普通ならば木々で隠れてしまう所だが、サブノックの規格外の体格のせいか見えにくいというよりはある意味目立っていた。
「...凄いなー。本当誰とでも仲良くなれちゃうんですね」
「そんなに驚くこと?」
「いやだって、あのカルエゴ卿ですら臆せずに接してるんだよ?あの2人だって一部の生徒からは怖がられてるのに...」
「...彼女の場合、
「あ!恐怖への耐性があるとかですか?」
「いや、そうじゃなくてさ。実際俺にもマルバス先生にも怯える何て事しなかったでしょ?...あんな事されたのに」
オリアスの言葉で思い出すのは、名無しさんの意識が戻り保護対象へと変わった名無しさんへ2人で謝罪に行った時の事。
状況が分からないまま傷つけられ、見捨てられ。恐怖の対象となってもおかしくないはずの2人に、名無しさんは顔を見るなり頭を下げて謝罪したのだ。
その手は微かに震えていたにも関わらず気丈な態度で謝らないで下さいと笑いながら。
「...あれには驚きました」
「次に会った時何て、普通に話しかけてきてくれたしねぇ」
サブノック達と笑いながら何やら拳を突き上げて盛り上がる名無しさんの姿にマルバスとオリアスは笑みを浮かべる。そして2人はそのまま中庭を通り過ぎ職員室へと向かうのだった。
そしてまた別の日、今度はイクスにライム、モモノキとクララに囲まれた名無しさんを見かけるオリアス。2階にいる為会話は聞こえないが、名無しさんが赤面しながら後ずさっているのだけは分かりオリアスはおかしそうに笑う。
「なぁ〜に言われちゃってるのかねぇ〜。顔、真っ赤じゃん」
愛おしそうに、慌てふためく名無しさんの姿を見たオリアスは鼻歌を歌いながら廊下を過ぎ去る。
また別の日はリードとロビン、そのまた別の日はスージーとバラムのセットなど、珍しいぐらいに色んな悪魔との交流をオリアスは見かけていた。
元々色んな悪魔と顔広く交流があった名無しさんなのでオリアスは特に疑問には思わず暫く過ごしていたが、それとは別に少し面白くないなという独占欲はじわじわと刺激されていて。
今日こそは一緒にご飯でも食べに行こうと意思を固めて早々に準備室を片付けたオリアスの背中に、控えめなノックが鳴り響く。
ーコンコン
「はぁーい、空いてるよ〜」
書類を整理しながら振り向けば、入ってきたのは見覚えのある1人の生徒。
「入間くん?どうしたの、授業で分からない所でもあったのかい」
「いえ、その...オリアス先生っこれどうぞ!」
そう言って手渡されたのは、紫色の封筒。
何の用事だと再度訪ねようと口を開いた時には入間の姿は既になく。首を傾げたオリアスは静かに蝋を切って封筒を開いた。
【親愛なるオリアス・オズワール様
本日18時に、指定の場所へと参られたし】
それだけが記された手紙に全く心当たりがないものの、入間が持ってきたのだから変な事ではないのだろうとあたりをつけて笑みを浮かべる。
「本当飽きないねぇ〜、新しいゲームとかかなぁ」
先程(名前)に送った魔インは19:30。1時間半もあれば片付くかなと荷物を持って向かうのは、指定にあった
早速大きな扉へと到着すれば、教室に入る扉の前にはまたもや紫色の封筒に【3回ノックをしてから入られよ】の文字を見つけて、オリアスは指示通りに3回叩いた。
するとその瞬間部屋の照明が落ち、扉がゆっくりと開かれる。
「「「オリアス先生〜!ハウェーヤー!!」」」
「えっ..........?」
中には問題児クラスの一同と部屋の真ん中には名無しさんの姿。クララと入間に背中を押されるように名無しさんの元へと導かれれば、少し恥ずかしそうにはにかんだ名無しさんが居て。
「オリアス先生、かなり遅くなったけどハウェーヤー!」
名無しさんの声に反応するかのように、あちこちからお祝いの言葉が飛び交う状況に流石のオリアスも驚きを隠せずに固まっている。するとそんな様子を見兼ねたクララがオリアスの後ろから飛びついた。
「キラキラせーんせっ!ほいっお祝い帽子に取り替えっこ!ワクワク眼鏡に〜クマちゃんも貸したげるね!」
「おぉ、クララナイス!」
「おうよっ、名無しさんお姉さんの為なら頑張っちゃいますぜい!」
何が何だか分からないまま腕を引かれて辿り着いたのは沢山のご馳走やケーキにお菓子が並べられた豪勢なテーブル。
流れるように名無しさんに視線を送れば、それはもう嬉しそうに笑顔になった。
「突然ごめん。どうしてもお祝いしたくてさ」
話によれば、ここにある料理やケーキお菓子に至るまでもが全て名無しさんの手作りだと言うのだ。本当はサリバン邸でお祝いする予定が問題児クラスの一同にバレてしまい、それなら協力したいと今日まで頑張ってくれたのだという。
「オリアス先生〜僕たちが入学してすぐの誕生日だったんだねぇ〜!全然気が付かなかったー」
「大人になると祝われる事減るって言うけどさぁ〜俺は毎年でも嬉しいなぁ〜」
「拙者も拙者もー!」
「...まぁとにかく、なんだかんだで皆もお祝いしたいって言うからさ、色々助けて貰ったんだ」
びっくりした?と笑った名無しさんに、オリアスはグッと抱きしめたくなる衝動を抑えて拳を握る。そして今か今かとご馳走を前にワクワクしている一同に向けて言葉を言い放つ。
「こんな嬉しいサプライズは初めてだよ、本当にありがとう!さー、皆で食べるかっ」
「「「わーーーい」」」
待ってましたと言わんばかりの賑わいにオリアスは耐え切れず笑い声をあげる。その横顔は心から楽しめているようでそれを盗み見た名無しさんも満足そうに笑った。
「ほらほら主役の
「こんなにっ?」
「だって、名無しさん、さんが...オリアス先生の好みを聞いていっぱい作ったって言ってた、から」
「...........」
「うむ!この魔カロンだって、主席と飽きるぐらい試食に付き合わされたぞ」
「こっちのお花はスージー先生の所から、僕とクララでつんできたんです!」
「はいはぁーいっ私もいっぱい手伝ったー!」
わらわらとオリアスの周りに集まる皆は口々に楽しかった、美味しかったなどとこのサプライズに向けての計画が心底面白かったのだと表情で語っている。
それを見て言葉に表しきれない感情がオリアスの全身を巡っていき本日何度目かも分からないお礼を伝えれば、皆嬉しそうに笑うのだった。
「はぁー.....食べすぎた」
「あははっ、後半クララに無理矢理食べさせられてたね」
「見てたなら止めてよね〜」
「いやー、楽しそうだしいっかなって」
「それは、そうだけどさぁ〜」
あんなに騒がしかったのも束の間、今は2人でサリバン邸までの道を歩いている。
「最近あちこちで囲まれてたのってこの日の為だったりする?」
「見てたの?!」
「いや、見るでしょ〜。俺はいつでも君を探してるよ」
「なっ」
サラッと口説く言葉を言ってのけるオリアスは(名前)の顔を見て挑発的に笑う。この顔は、名無しさんが照れると分かっててやってる顔である。
そんなオリアスに名無しさんがポスンと拳を入れれば笑い声が響いた夜道は今日も今日とて穏やかで。
気がつけば2人はサリバン邸の前についていた。
「今日も送ってくれてありがとう、オズくん」
「やぁーっと呼んでくれた」
「いやだって学校だったし、皆の前だからさ」
「分かってるよ。それでもやっぱそう呼ばれるのが俺は好きなんだよね」
学校とは違う、無邪気な笑顔で笑ったオリアスに名無しさんも眉を下げて笑顔を返す。
「あ、それとこれ。私1人じゃ無理だったから協力してもらったやつなんだけど、さ」
「魔茶と...ドーム?」
「オズくんさ、寝不足なる事多いから疲労回復するやつと、星型のガラスドームによく眠れるアロマのやつ」
本番は過ぎてたから手作りのものでごめんだけど、と控えめに渡してきた名無しさんに、オリアスは今日1日でどれだけの幸せを貰ったのだろうと思わずその手ごと握り締める。
「ありがとうっ名無しさんちゃん!ほんとに...すげー、嬉しいっ」
「へへっ、生まれてきてくれてありがとう!オズくん」
気恥ずかしそうに微笑む名無しさんは本当に綺麗で。
思わず名無しさんの元へと踏み出しそうになった身体をオリアスが理性を総動員して律していると、名無しさんに手招きされたので、誘われるがまま目線を合わせれば...そこからはもう一瞬だった。
鼻をついた柔らかな甘い香りと右のほっぺの温もり。
何をされたのか理解する前に、目の前の名無しさんは暗闇でもわかるぐらい真っ赤になっていて、そこでようやくオリアスは全てを飲み込んだ。
「じ、じゃあっ、その!えーと、お、おやすみ!」
「あっ、ちょ」
オロオロと明らかに動揺した様子で後退りながら屋敷へと走り去った名無しさんの姿は、最早もうない。
暫く放心していたオリアスだったが、じわじわと熱が上がってきて顔が熱くなるのが分かるぐらいには赤くなっていた。
「あ″ーーーーっ、だよ、くそぉーー」
バッとその場にしゃがみ込み頭を抱える。
「可愛いすぎるだろっ.....何あれっ...」
言葉にならない声を発しながらも、オリアスは暫くその場にしゃがみ混んでいた。