きんいろの奇跡
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「こんにちは〜、あの(名前)さんはいらっしゃいますか?」
「おうっ教師の姉ちゃんじゃねぇか!ちょっと待ってな。おーい名無しさんちゃーん、お呼びだぜー!」
時刻は現在15時過ぎ。
昼食時の嵐のような戦いを乗り切った食堂にはカチャカチャと食器を片付ける音だけが一際音を響かせていた。
「あれ、モモノキ先生じゃないですか。どうされました?」
透き通るような美貌に名無しさんは目を惹かれながらも珍しい客人の元へと足を運ぶ。
「確か、こうやってちゃんと話をするのは初日以来ですよね。お久しぶりです」
「はっはい!あの、今少しお時間よろしいですか?」
「料理長〜!ちょっとだけ抜けてもいいですかー?」
「もう仕事は終わってるヨ。たまには早くあがるといいネ」
「わっ本当に?ありがとうございます!じゃあお言葉に甘えて」
「そんな!そこまで大した要件ではっ」
「いえいえ、せっかくの機会ですし私も早く上がれるならラッキーでした」
少し待ってて下さいねと告げると足早にバックヤードへと向かう名無しさん。6分程もすれば、私服に着替えて身なりを整えた姿でやってきた。
「お待たせしました〜!さ、行きましょっか」
「すみません今日は突然...」
「いいえ〜大丈夫ですよ。それよりどうされました?」
どこか思い詰めたような表情で目をキョロキョロとさせながら言いにくそうにしているモモノキの様子を見てか、名無しさんは少し考えた後笑顔でとある場所へと引き連れていく。
...そう、彼女のお気に入りの場所であるあの桜の木がある屋上だ。
少し戸惑いを見せるモモノキに笑って、ベンチへと座るよう促せば名無しさんは流れるような仕草で新しいカップを取り出して水筒に入れていた魔茶を入れ差し出す。
「はい、とりあえずこれでもどうぞ。落ち着きますよ」
「あ、りがとうございます」
憂いをおびた姿でも美しい悪魔 だなと名無しさんは改めて思いながらも、モモノキ自身が話し出すその時まで隣で魔茶を楽しみながら桜を眺める。
すると暫く時が流れた後、意を決したようにモモノキが口を開いた。
「あの!名無しさんさんは、そのかっカルエゴ先生とはおおお付き合いされているんでしょうか...!!」
「.................へ?」
顔を真っ赤に染めながら叫ばれた言葉は、余りにも名無しさんにとっては理解不能で。数秒固まったのち、意味を理解して覚悟を決めたかのように待つモモノキへと優しい笑顔で笑いかけた。
「安心して下さい、付き合ってませんよ。何か誤解させちゃいましたか?」
ゆっくりと、それでいて優しく伝わるようにと微笑みかけた名無しさん。その表情を見てモモノキは下げた眉を寄せて赤面しながらも静かに俯いた。
「でも、もしかしたらその...すすす好きだったりとか」
「んー尊敬はしてますが、恋愛?的な好意ではないですね〜。うん、ないなぁ(笑)」
「!!.........本当、ですか?」
「はい。他人に厳しく自分にはそれ以上に厳しい素敵な先生だなーとは思いますけど、それ以上の気持ちはないですね」
きっぱりとそう告げると目に見えて喜んだモモノキだったが、その数秒後に何かに気がついたかのようにまたしおしおと耳が下がっていた。
「...それでも、カルエゴ先生はもしかしたら(名前)さんみたいな綺麗な方が好みなのかなって...」
「........私が?!いやいやいや、モモノキ先生鏡見た事ありますか?貴方のがよっぽど綺麗で素敵ですよ!」
「ほら、そんな謙虚な所だってきっとカルエゴ先生からしたら...」
「なっ...ちょっ、ストーーップ。待って下さい一旦その思考回路はストップで」
一体何処をどう見たらこんなにも勘違いが蔓延って思い込ませてしまったのだろうかと名無しさんは頭を抱えるが、てんで心当たりがない。
それもそのはず最近のカルエゴとの関わりと言えば、先日の一見で怒鳴られ叱られ、たまにバラム含めてお茶はするものの、褒められた覚えなど一度もなかったからだ。
「....モモノキ先生、もし私の言動の何かで誤解させてしまっていたのなら本当にごめんなさい。ですがお互いそのつもりは微塵も皆無なのでそこだけは勘違いしないで欲しくてですね」
力強く拳を握りながらモモノキへと告げればキョトンとしながらも頷いてくれて、名無しさんもようやくほっとする。
「すみません私、とんだ勘違いをしてしまっていたようで」
「はははっ大丈夫ですよ〜!モモノキ先生は本当カルエゴ先生の事が大好きなんですね」
「だっ...えぇっ?!私はそんな別にっ」
「へぇ〜え、じゃあ私がカルエゴ先生の事本当は好きだって言ったら?」
「わぁっ!やっぱり本当は」
「いや違う違う違う、今のは物の例えでですね」
終始真っ赤な顔が焦ったり抗議するモモノキは同性の名無しさんからしても凄く可愛い。
どうしてこんな可愛い人が近くに居て靡もしないのかと名無しさんは思ったが、バラムが昔「鈍い」と言っていた言葉を思い出して1人笑った。
その後理由を問いただせば、名無しさん作の甘いケーキの差し入れを珍しく手にとっていた事、彼女ブレンドの魔珈琲を好んで飲み気に入っている事、準備室で怒られずにたまに一緒に過ごしている事など色んな要因を教えてくれた。
「そっか、それで勘違いを」
「...はい、すみません」
「いやこちらこそ。...と言いますか、どの件もカルエゴ先生の気まぐれとただ単に好みだったから、だけだと思いますよ?」
「そうなんでしょうか...」
「うーん本人じゃないので断言は出来ませんが、ケーキはきっと謝罪の形で渡したからでしょうし、魔珈琲については単なる好み、準備室の件も各々好きに過ごしているだけなので」
だから、自信持って下さい。と名無しさんが伝えればやっと納得してくれたようでここにきて初めてモモノキの笑顔が見られた。
「...ありがとうございます、名無しさんさん。噂通りのいい悪魔 ですね」
この言葉で初めて名無しさんは、あのバラムを手懐けている心優しい職員がいるだとか、オリアスとロビンにも懐かれて毎朝取り合いされているのに笑顔で宥めている職員がいるだとかの噂話を知る事となった。
「なっ...何ていう噂が.................」
「勿論っ全てを信じてた訳じゃないですけど、あくまで噂、噂ですよ?」
「いやもう噂の時点で誤解しかないな......」
「でもほらっ仲良しなのは合っているでしょうし、ね!」
今度は逆に宥められる番になった名無しさんは力なくベンチへと座り直し諦めたようにため息をついて笑った。
「まぁ、いっか。広がったものはしょうがないか」
「割とあっさりしてるんですね」
「すぐに興味も変わるでしょうし、足掻いた所で状況は変わりませんからね〜」
「た、確かに」
「それに、噂となってる人達も私に特別好意がある訳でもないでしょうから」
屈託なくそう言い切ると、モモノキは目をキラキラとさせながら興奮気味に名無しさんへと話しかける。
「でもっその、バラム先生とか、オリアス先生とは特別仲良くされている気が」
「あ〜確かに。居心地良いんですよね、あの2人。優しいですし落ち着くと言うか」
「!それはつまり、これから恋に変わるのでは...」
きゃーっと何故か嬉しそうに顔を隠したモモノキに名無しさんはハテナを浮かべるが、興奮したモモノキは先程とは打って変わって名無しさんに質問責めをしていった。
ーコンコン
「空いてるよー」
「今仕事平気?」
「うん、今日の分は終わってるよ」
あの後名無しさんは何故か興奮したモモノキに詰め寄られた後また詳しく話を聞かせてほしいとの約束をして別れ、どっと疲れが沸いたのでフラフラとバラムの元へと来ていたのだった。
「どうしたの、そんなに忙しかった?」
「いや...慣れない話題で気力を使った...みたいな」
「慣れない話題って?」
「しいて言うなら恋愛?みたいな話を
「えっ何々、名無しさんちゃん気になってる子でもいるの??」
「...バラム先生、君もか」
目をキラキラとさせながらワクワクした顔で聞いてくる姿はとても可愛いが、今はその話題はお休みしたいと申し出れば残念そうに眉を下げるバラム。
「それにしても、近くで見るモモノキ先生綺麗だったな〜。何かいい香りもしたし」
「あぁ、モモノキ先生と話してたんだ。カルエゴくんの事?」
「あ。やっぱバラム先生も知ってるんだ」
「気がついてないの本人ぐらいじゃないかなぁ」
「そうなのか〜、前に言ってたみたいに鈍いんだね本当」
「いや君も大概だと思うけど」
「へ、私?何でまた」
「(あれだけほぼ毎日アピールされといて、微塵も自覚してないんだもんなぁ...)」
おおよそ自覚のない彼女を自覚させようとあれそれ詰められたんだろうなと予想をつけたバラムだったが決して口には出さずに魔茶を啜る。
くてんと机に突っ伏しコロコロしている名無しさんを見て微笑ましそうに眺めた後、先日彼女が話していた休みでの出来事について尋ねてみた。
「そう言えばどうだったの、こないだのお休み」
「聞いてくれる?凄かったんだ!」
ガバッと起きて嬉しそうに語るのはオリアスと行ったカフェでの話。ただでさえ完全オフの時は部屋に篭りっぱなしの彼が外に出てその姿を見せただけでなく、恐らく好意を持っているだろう相手に会ってきた事の重大さを名無しさんはまだ知らない。
「よっぽど楽しかったんだねぇ、良かったじゃない」
「うん!オリアス先生もいつもと全然違ったし何か得したなーって思ってさ。凄い楽しかった」
「...そうか、君は本当面白い生き物だね」
「えぇっそんな要素あった?」
「うんうん君はそのままが一番だよ」
「聞いてる?」
「よし、じゃあそんな君に良いことを教えてあげよう」
人差し指を立てながら物事を教えるのはバラムの癖で。
彼が発する言葉を聞き漏らさないように名無しさんもまた真剣に聞くのだった。
「おうっ教師の姉ちゃんじゃねぇか!ちょっと待ってな。おーい名無しさんちゃーん、お呼びだぜー!」
時刻は現在15時過ぎ。
昼食時の嵐のような戦いを乗り切った食堂にはカチャカチャと食器を片付ける音だけが一際音を響かせていた。
「あれ、モモノキ先生じゃないですか。どうされました?」
透き通るような美貌に名無しさんは目を惹かれながらも珍しい客人の元へと足を運ぶ。
「確か、こうやってちゃんと話をするのは初日以来ですよね。お久しぶりです」
「はっはい!あの、今少しお時間よろしいですか?」
「料理長〜!ちょっとだけ抜けてもいいですかー?」
「もう仕事は終わってるヨ。たまには早くあがるといいネ」
「わっ本当に?ありがとうございます!じゃあお言葉に甘えて」
「そんな!そこまで大した要件ではっ」
「いえいえ、せっかくの機会ですし私も早く上がれるならラッキーでした」
少し待ってて下さいねと告げると足早にバックヤードへと向かう名無しさん。6分程もすれば、私服に着替えて身なりを整えた姿でやってきた。
「お待たせしました〜!さ、行きましょっか」
「すみません今日は突然...」
「いいえ〜大丈夫ですよ。それよりどうされました?」
どこか思い詰めたような表情で目をキョロキョロとさせながら言いにくそうにしているモモノキの様子を見てか、名無しさんは少し考えた後笑顔でとある場所へと引き連れていく。
...そう、彼女のお気に入りの場所であるあの桜の木がある屋上だ。
少し戸惑いを見せるモモノキに笑って、ベンチへと座るよう促せば名無しさんは流れるような仕草で新しいカップを取り出して水筒に入れていた魔茶を入れ差し出す。
「はい、とりあえずこれでもどうぞ。落ち着きますよ」
「あ、りがとうございます」
憂いをおびた姿でも美しい
すると暫く時が流れた後、意を決したようにモモノキが口を開いた。
「あの!名無しさんさんは、そのかっカルエゴ先生とはおおお付き合いされているんでしょうか...!!」
「.................へ?」
顔を真っ赤に染めながら叫ばれた言葉は、余りにも名無しさんにとっては理解不能で。数秒固まったのち、意味を理解して覚悟を決めたかのように待つモモノキへと優しい笑顔で笑いかけた。
「安心して下さい、付き合ってませんよ。何か誤解させちゃいましたか?」
ゆっくりと、それでいて優しく伝わるようにと微笑みかけた名無しさん。その表情を見てモモノキは下げた眉を寄せて赤面しながらも静かに俯いた。
「でも、もしかしたらその...すすす好きだったりとか」
「んー尊敬はしてますが、恋愛?的な好意ではないですね〜。うん、ないなぁ(笑)」
「!!.........本当、ですか?」
「はい。他人に厳しく自分にはそれ以上に厳しい素敵な先生だなーとは思いますけど、それ以上の気持ちはないですね」
きっぱりとそう告げると目に見えて喜んだモモノキだったが、その数秒後に何かに気がついたかのようにまたしおしおと耳が下がっていた。
「...それでも、カルエゴ先生はもしかしたら(名前)さんみたいな綺麗な方が好みなのかなって...」
「........私が?!いやいやいや、モモノキ先生鏡見た事ありますか?貴方のがよっぽど綺麗で素敵ですよ!」
「ほら、そんな謙虚な所だってきっとカルエゴ先生からしたら...」
「なっ...ちょっ、ストーーップ。待って下さい一旦その思考回路はストップで」
一体何処をどう見たらこんなにも勘違いが蔓延って思い込ませてしまったのだろうかと名無しさんは頭を抱えるが、てんで心当たりがない。
それもそのはず最近のカルエゴとの関わりと言えば、先日の一見で怒鳴られ叱られ、たまにバラム含めてお茶はするものの、褒められた覚えなど一度もなかったからだ。
「....モモノキ先生、もし私の言動の何かで誤解させてしまっていたのなら本当にごめんなさい。ですがお互いそのつもりは微塵も皆無なのでそこだけは勘違いしないで欲しくてですね」
力強く拳を握りながらモモノキへと告げればキョトンとしながらも頷いてくれて、名無しさんもようやくほっとする。
「すみません私、とんだ勘違いをしてしまっていたようで」
「はははっ大丈夫ですよ〜!モモノキ先生は本当カルエゴ先生の事が大好きなんですね」
「だっ...えぇっ?!私はそんな別にっ」
「へぇ〜え、じゃあ私がカルエゴ先生の事本当は好きだって言ったら?」
「わぁっ!やっぱり本当は」
「いや違う違う違う、今のは物の例えでですね」
終始真っ赤な顔が焦ったり抗議するモモノキは同性の名無しさんからしても凄く可愛い。
どうしてこんな可愛い人が近くに居て靡もしないのかと名無しさんは思ったが、バラムが昔「鈍い」と言っていた言葉を思い出して1人笑った。
その後理由を問いただせば、名無しさん作の甘いケーキの差し入れを珍しく手にとっていた事、彼女ブレンドの魔珈琲を好んで飲み気に入っている事、準備室で怒られずにたまに一緒に過ごしている事など色んな要因を教えてくれた。
「そっか、それで勘違いを」
「...はい、すみません」
「いやこちらこそ。...と言いますか、どの件もカルエゴ先生の気まぐれとただ単に好みだったから、だけだと思いますよ?」
「そうなんでしょうか...」
「うーん本人じゃないので断言は出来ませんが、ケーキはきっと謝罪の形で渡したからでしょうし、魔珈琲については単なる好み、準備室の件も各々好きに過ごしているだけなので」
だから、自信持って下さい。と名無しさんが伝えればやっと納得してくれたようでここにきて初めてモモノキの笑顔が見られた。
「...ありがとうございます、名無しさんさん。噂通りのいい
この言葉で初めて名無しさんは、あのバラムを手懐けている心優しい職員がいるだとか、オリアスとロビンにも懐かれて毎朝取り合いされているのに笑顔で宥めている職員がいるだとかの噂話を知る事となった。
「なっ...何ていう噂が.................」
「勿論っ全てを信じてた訳じゃないですけど、あくまで噂、噂ですよ?」
「いやもう噂の時点で誤解しかないな......」
「でもほらっ仲良しなのは合っているでしょうし、ね!」
今度は逆に宥められる番になった名無しさんは力なくベンチへと座り直し諦めたようにため息をついて笑った。
「まぁ、いっか。広がったものはしょうがないか」
「割とあっさりしてるんですね」
「すぐに興味も変わるでしょうし、足掻いた所で状況は変わりませんからね〜」
「た、確かに」
「それに、噂となってる人達も私に特別好意がある訳でもないでしょうから」
屈託なくそう言い切ると、モモノキは目をキラキラとさせながら興奮気味に名無しさんへと話しかける。
「でもっその、バラム先生とか、オリアス先生とは特別仲良くされている気が」
「あ〜確かに。居心地良いんですよね、あの2人。優しいですし落ち着くと言うか」
「!それはつまり、これから恋に変わるのでは...」
きゃーっと何故か嬉しそうに顔を隠したモモノキに名無しさんはハテナを浮かべるが、興奮したモモノキは先程とは打って変わって名無しさんに質問責めをしていった。
ーコンコン
「空いてるよー」
「今仕事平気?」
「うん、今日の分は終わってるよ」
あの後名無しさんは何故か興奮したモモノキに詰め寄られた後また詳しく話を聞かせてほしいとの約束をして別れ、どっと疲れが沸いたのでフラフラとバラムの元へと来ていたのだった。
「どうしたの、そんなに忙しかった?」
「いや...慣れない話題で気力を使った...みたいな」
「慣れない話題って?」
「しいて言うなら恋愛?みたいな話を
「えっ何々、名無しさんちゃん気になってる子でもいるの??」
「...バラム先生、君もか」
目をキラキラとさせながらワクワクした顔で聞いてくる姿はとても可愛いが、今はその話題はお休みしたいと申し出れば残念そうに眉を下げるバラム。
「それにしても、近くで見るモモノキ先生綺麗だったな〜。何かいい香りもしたし」
「あぁ、モモノキ先生と話してたんだ。カルエゴくんの事?」
「あ。やっぱバラム先生も知ってるんだ」
「気がついてないの本人ぐらいじゃないかなぁ」
「そうなのか〜、前に言ってたみたいに鈍いんだね本当」
「いや君も大概だと思うけど」
「へ、私?何でまた」
「(あれだけほぼ毎日アピールされといて、微塵も自覚してないんだもんなぁ...)」
おおよそ自覚のない彼女を自覚させようとあれそれ詰められたんだろうなと予想をつけたバラムだったが決して口には出さずに魔茶を啜る。
くてんと机に突っ伏しコロコロしている名無しさんを見て微笑ましそうに眺めた後、先日彼女が話していた休みでの出来事について尋ねてみた。
「そう言えばどうだったの、こないだのお休み」
「聞いてくれる?凄かったんだ!」
ガバッと起きて嬉しそうに語るのはオリアスと行ったカフェでの話。ただでさえ完全オフの時は部屋に篭りっぱなしの彼が外に出てその姿を見せただけでなく、恐らく好意を持っているだろう相手に会ってきた事の重大さを名無しさんはまだ知らない。
「よっぽど楽しかったんだねぇ、良かったじゃない」
「うん!オリアス先生もいつもと全然違ったし何か得したなーって思ってさ。凄い楽しかった」
「...そうか、君は本当面白い生き物だね」
「えぇっそんな要素あった?」
「うんうん君はそのままが一番だよ」
「聞いてる?」
「よし、じゃあそんな君に良いことを教えてあげよう」
人差し指を立てながら物事を教えるのはバラムの癖で。
彼が発する言葉を聞き漏らさないように名無しさんもまた真剣に聞くのだった。