きんいろの奇跡
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「っはーーーー、たーのしかった...」
「ね。楽しかった...」
「こんなにゲームしたの初めてだ」
「見事に全敗だったけどね」
「伸び代が凄いって言ってよ」
「相変わらずポジティブ過ぎるな」
「ありがとう」
「褒めてないんだよなぁ」
ゴロンと仰向けに大の字で転がり休憩する2人。没頭し過ぎたからか、名無しさんに至っては少し息が切れていた。
気がつけば時刻は既に16時過ぎ、普通のデートであればお洒落なカフェに行ったり人気なテーマパークに行った先で、夜の食事はどうするかを話している所だろう。
「名無しさんちゃん、お腹って空いてる?」
「んー............少し?オリアス先生は?」
「俺も少し」
本来であれば、こんな可愛い格好をしてきてくれているのだからせめて夜の食事だけでもお洒落な場所に行き見栄を張りたい所だが、完全オフで行くと行った手前オリアスは悩む。
穏やかで静かな時が流れていくと、ふいに名無しさんが思いついたように声をあげた。
「そうだ、ここってさご飯とかはやってないの?」
「え...........ある、けど外じゃなくていいの?」
「全然どこでもいいよ。ここのご飯って美味しい?」
「まぁ、それなりに」
「んじゃせっかくだしここで食べてかない?今日はもう人混みの中で気を遣いたくないや」
無邪気にそう言って笑う名無しさんにオリアスは目を見開く。思えば彼女は今日一日ずっと文句を言う事もなく全て受け入れて肯定し、尚且つこの状況を楽しんでくれていたのだと思い出し、無意識のうちに格好つけようとしていた自分にオリアスは小さく笑う。
「.................君はほんと、不思議だよねぇ」
「...ん?褒めてる?」
「褒めてる褒めてる」
「気持ちがこもってないな」
「そーお?」
流石にこんなデートはした事はないが、過去出会ってきた悪魔達は皆自分のオフを見ては幻滅し、常にオンモードであちこち出向いていたものだよなぁと感慨深くなり、オリアスは目を閉じた。
「.................何かさ」
「.................ん、何」
「.................眠たくなってきた」
「.................分かる、俺も今、同じ事思ってた」
「.................そっか」
「.................ん」
お互いに小さくなっていく声を感じなから、ふかふかのソファーに包まれていつの間にか2人は意識を飛ばした。
「.................きて、.................だよ」
「.................あ..?」
「ふふっ寝ぼけてるなこれは.................」
「.................」
「オリアス先生、そろそろ起きな。時間だよ」
「.................は...........、あ?あれっ?ここは?」
カッと目を見開きガバッと焦ったように起き上がるオリアス。それを見て、名無しさんは一瞬驚き固まるものの少し笑って声をかける。
「おはよう、よく眠れたみたいだね」
寝癖ついてるよ〜と、揶揄うような笑顔で笑う名無しさんに、寝起きでオリアスの頭はついていかずにただただその笑顔を見つめる。
「もう18時なってたから焦ったけど、とりあえず適当に色々注文しといたよ。食べれそ?」
「.................あぁ、うん、食べる」
「はははっ寝惚けてるなぁ〜」
「あれ?俺..........寝ちゃってたんだ」
「うん、それはもう幸せそうに」
「っごめん!まさか寝落ちるとは...まじか」
「私もついさっき起きて放心してた(笑)まぁそれよりも今はお腹空いたしさ、食べない?」
ぼーっとしているオリアスに、手拭きとスプーン、フォークを左側に準備し取りやすい位置に置いていく名無しさん。右側には強魔炭酸が入れてあり、何もかもが完璧だった。
「いや............凄いな、何これ」
「ね、思ったより豪勢じゃない?この魔風パスタとかかなり美味しいよ!」
「そうじゃなくて.........いや、まぁいいか」
「頭寝てるなぁ(笑)とりあえず食べていっぱい栄養つけな〜」
オリアスが何を思っているのかはつゆ知らず名無しさんはパクパクと幸せそうに食事をしていく。今日一日ずっと楽しそうだなと改めて心が温かくなりつつオリアスもフォークを手にとって食事を開始した。
2人で過ごすこの空間が余りにも自然で、居心地が良すぎたから故に起きた爆睡という失態。
それなのに呆られる事もなく、叱責される事もない状態で変わらず時を過ごせているのは彼女の魅力に他ならないなとオリアスは思う。
「そう言えば、オリアス先生って今日一日完全オフだったの?」
「あぁ、うん。寮に居る時みたいな感じだった」
「へぇ〜そっか、ふーん」
「え、何。何か言いたい事でもあるの」
「んー?いやさ、得したなーって思って」
「は?得..............?」
「うん。いつもはキラキラと生徒の為に尽くしている人が、今は気を緩めて自分の好きを大切にしてたなら、良かったなって気持ちと見られて得したな〜っていうさ」
「.................」
「ありがとう、大事な時間を一緒に過ごしてくれてさ。初めてだらけで楽しかった!」
屈託なく、計算すらなく、自分と過ごせた事を純粋に喜んでくれた名無しさんに、オリアスの胸は締め付けられるように苦しくて言葉にしきれない思いが体中を駆け巡り処理が出来ずに固まる。
今までの誰とも違う感情を幾度となく与えてくれる名無しさんの存在は、いつの間にか自身の救いとなり温もりとなりもっと近づきたい存在になっていた事に、今初めて気がついたオリアスは隠しきれないほど顔を赤くして俯いた。