きんいろの奇跡
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「よし、行ってきまーす」
「お待ち下さい名無しさん様、本日の三箇条は?」
「無理せず、元気に、逃げるが勝ち!」
「はい、よろしいですね。いってらっしゃいませ」
あの日から1ヶ月、毎日のように唱えさせているこれはオペラが決めた合言葉だ。
【一人で無理せず、学校生活を元気に楽しみ、トラブルあれば触らず全力で逃げるが勝ち】
と言う何とも簡潔で名無しさんに合った言葉だった。
無事に怪我も完治し、誰に挨拶しても返ってくる喜びを噛み締める名無しさんの表情は今日も明るい。
「あーっ名無しさんさんだ!おはようございまっす!」
「おはようございますロビン先生」
「ねぇねぇまたあの魔珈琲分けて下さいよ〜!すっごく人気だったんですよ?」
「そうなんですか?また時間見つけて作っておき
「えぇ〜今は持ってないんですか?ねぇねぇねぇってb...いったーい!」
「ごめんねぇ〜名無しさんちゃんうちの新任が」
いつの間に懐かれたのか不思議に思うも、以前渡した魔珈琲のお陰でカルエゴの八つ当たりがかなり減ったのを名無しさんは知らない。
そしてそんな彼女に距離近く絡んでいると決まってオリアスが間に割って入りロビンの暴走を止めるのだ。
「オリアス先生もおはようございます」
「おはよう名無しさんちゃん。今日もお昼、よろしくねぇ〜」
「たまには料理長の日替わりとかどうですか?」
「俺は名無しさんちゃんが作ったのがいーの。んじゃあまたね〜!ほら行くよロビン先生」
「ばいばーいっ名無しさんさん!」
「.................ほんと仲良しだなぁ、あの2人」
ここ最近毎朝のように会っている気がする...と名無しさんは思いつつも昇降口を潜り抜けまだ人が少ない校舎へと足を踏み入れる。
途中出会った生徒達に声をかけられるものの彼女の日課は変わらない。
誰よりも早く出勤し、本日のメニューと食品不備のチェックが終わればキッチンと食堂全体の清掃だ。
「ふ〜...今日も綺麗だな、うん!」
誰に言われるまでもなく仕事の前にこれら全てをこなしているのを同職では料理長しか知らない事だが、その努力もあってか名無しさん個人での日替わりランチも少し前から出させて貰っている。
そして全ての支度が終わった後は、手作りのお菓子を持って植物塔のベンチでまったりとする。というのが食堂で務める名無しさんの日課であった。
「あ、今日は間に合ったかなぁ〜〜」
「朝礼はもう済んだんですか?」
「この通り〜!名無しさんちゃんも朝の準備お疲れ様」
そうなのだ、日課にしていた植物塔での時間だが、たまにこうしてオリアスが訪ねてきては一緒に朝のお茶をするというのが当たり前になってきていて。
「今日はチップスなんだ?俺これ好き〜」
「素朴な味が塩と馴染んで美味しいですよね」
「敬〜語」
「あ。ごめんごめんまだ切り替えが慣れなくてさ」
「その気持ちは分かるけどさぁ。バラム先生相手だとあーんなに自然なのにな〜」
「ごめんって。はい、どうぞ今日の魔茶」
「今、誤魔化したでしょ」
あの一件以降、以前にも増して偶然会う事が多い2人は校内や放課後、帰宅してからの通話に至ってまで自然とやり取りする事が増え徐々に仲を深めていた。
「仕事はどう?大分慣れてきたんじゃない」
「うん、皆さん凄い良くしてくれてるよ。デザート系のメニューも増やせるかもって今調理長と話してるんだ」
目をキラキラとさせながら嬉しそうに語る名無しさんを見てオリアスも嬉しそうに口角をあげる。
「そういえば、こないだダリ先生に聞いたんだけどオリアス先生のオフって、そんなにギャップ凄いんだ?」
「うわ...........いつの間にそんな話を」
「こないだ差し入れに行った時、大事な話!ってヒソヒソと話しかけてきたよ」
「全くもうあの人は................」
片手で顔を多いながらも心なしか耳を赤くしたオリアスは呆れたようにため息をついた後、そのままの状態でチラリと名無しさんを見る。
「...名無しさんちゃんは、さ」
「ん?」
「その...俺が能力を完全に切った状態で、会ってみたいと思う?」
「出来るの?」
「流石に学校の時は無理だけど、オフの時なら出来るよ〜」
「へぇ〜そう言うものなのか。あれ?でもマジカルストリートで会った時切ってるって言ってなかったっけ」
「能力だけはね。一応アレでもオンにしてた部分はあったから、完全オフではないかなぁ」
どこか気まずそうに話すオリアスを不思議に思いながらも名無しさんはゆるりと笑いかける。
「オリアス先生に負担がないなら、見てみたいかもなー。ダリ先生も絶対会うべきだって言ってたし」
「あんの人っ............何考えてんだよもう...」
楽しい気配がする事にはどこまでも敏感かつ貪欲な教師統括ダンタリオン・ダリ。
あの笑顔がありありと浮かぶようで、せっかくのんびりと過ごしていた名無しさんとの時間が邪魔された気持ちになるオリアスはため息をつき決心したように前を見据える。
「オリアス先生?」
「...............じゃあさ、明後日の休み予定ある?」
「明後日はえーと...お昼からなら空いてるよ」
「なら、そのまま空けておいてよ。また今夜にでも連絡するからさ〜」
「え、うん」
「ーっともうこんな時間か。じゃあね〜名無しさんちゃん!今日も仕事頑張って〜」
「!...オリアス先生も、頑張って!」
足早に、笑顔で立ち去ったオリアスを見て立ち尽くす名無しさん。
突然の事で飲み込めていないまま名無しさんの朝の時間は過ぎていくのだった。