きんいろの奇跡
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その後のバラムの行動は実に早かった。
「カルエゴ先生聞こえますか?目標の特徴と状況が分かりました。僕は解毒剤の開発にとりかかりますので、そちらはお願いしてもよろしいですか」
魔通信を使って名無しさんが教えた情報を事細かく伝えるバラム。暫くすると、通信が終わったのか、名無しさんの方を振り返りいつもの優しい笑顔を見せた。
「後は僕達に任せて。君はゆっくりここで休んでいるといい」
そう言って手渡していたクッキーの瓶を取り出して、器用に粉砕させた後その成分を調べていく。
初めは呆然とただただそれを眺めていた名無しさんだったが、何かを思い立ったかのように顔を洗いに行きどこかスッキリとした顔でバラムの横に立つ。
「ん、どうかしたいかい?お腹が空いたなら出前を
「バラム先生、私にもやれる事はありますか」
「.....え?」
「さっきはみっともなく泣くしか出来なかったけど....もう、大丈夫です!」
泣いた影響でまだ赤い目を少し腫れさせてはいるが、にっこりと笑う名無しさんの表情はどこか力強くて...綺麗で、バラムは一瞬言葉を失う。
「バラム先生?」
「...あぁ、ごめんごめんぼーっとしていたよ」
もう憂いを感じさせない強さに真っ直ぐさに、バラムは以前から名無しさんに感じていた魅力は入間へのそれと似ていたのだなと気がつきマスクの下で笑った。
「(君たち人間は...本当に、綺麗だね)」
「今日会った時は、私が変わらず過ごしてたから釘を刺しにきたみたいだった!だからこう...おとりみたいないい感じの作戦立てられないかな」
「....何かあった時は、どうするんだっけ?」
「全力で叫ぶ!」
「よし、次こそ守れるのなら君に一つ試して欲しい事がある」
作業していた手を止めて、人差し指を立てながら作戦を伝えていくバラム。その瞳は彼女と同様強い意志が宿っていた。
「それで、カルエゴ先生は何を普段食べているんですか?」
「別に普通です。面倒な時は出前をとったりしますし、時間があればあるもので済ませる時もある」
「へぇ〜凄いですね、自炊もされるんですか」
場所変わり名無しさんとカルエゴは今、名無しさんが普段足を運んでいる場所をメインに2人で楽しく会話をしながら徘徊している。
...つまり作戦はこうだ。女生徒と出会ったのはいずれも遅い放課後の時間帯である事、名無しさんの行動範囲に現れた事を踏まえて、以前から観察されていた可能性が高いという結論から、それなら思いっきり楽しんでいる姿を見せて嫌がらせして誘き出そう作戦である。
はたから見たら、カルエゴが1人で会話をしているだけに映るだろうが普段から人目を気にしていないカルエゴにとって今回の作戦は痛くも痒くも無い。
「...でも本当に良かったんですか?お忙しいのに手伝って頂いて」
「笑顔、忘れてますよ」
「あ!すみませんありがとうございます」
「.....まぁ、忙しくないと言ったら嘘になりますが、職員が安全に働ける環境を整えるのも私達教師の仕事ですから」
「そう、ですか。ありがとうございます!」
「...いえ。では、後はここだけですね」
最後に辿り着いたのは、名無しさんが毎日のように暇さえあれば来ていた桜が見える植物塔の屋上。
ここは日中以外は滅多に人が居らず狙うとしたら最適な場所だった。
「では後は手筈通り私は立ち去りますが、いずれも無茶はしないように」
「...はい!ありがとうございます」
カルエゴと別れて、名無しさんはベンチに座りながらザァっと吹き抜ける風につられて見上げれば先程と同じ場所に居るはずなに景色が全然違って見える事に幸せを覚える。
「(1人じゃないって、大切なんだな....)」
そんな当たり前の事を思いながら桜を見つめていると、大きな足跡が聞こえてきて思わず名無しさんが振り返れば予想通りの憤怒に表情を染めた女生徒が立っていた。
「こんにちは、さっきぶりかな」
笑顔で名無しさんが話しかけると、その態度が癪に触ったのかつかつかと歩み寄ってきた後に名無しさんの胸倉を掴み上げ睨みをつける。
「お前はっ...お前はお前はお前は!!!!」
「っ、どうしたの」
「オリアス先生だけじゃ飽き足らずカルエゴ先生にまで色目を使うとかっ...恥を知りなさい阿婆擦れ!!!」
「...............」
「お前なんかっお前なんかお前なんか!!」
興奮しているのか、息を切らし目を充血させたまま胸ぐらを掴み上げている姿はまさに悪魔で、震えそうになる拳を握りながらも名無しさんは変わらず問いかける。
「あのクッキーって、本当に誰に送る予定も無かったの?」
「黙れ!!黙れ黙れ!!!....せっかく私が!お前に真実を教えてあげたというのに、まだ分からないの?!」
「っ...でもあれ、本当に、美味しかったから
「黙れっ!!!真実の粉だと言ったでしょう?!それを食べれば...お前は存在すら消されて忘れ去られる予定だったのに...何でよ!!」
胸ぐらを掴んだまま叫んだかと思うと次の瞬間名無しさんの背中に衝撃が走る。
「かはっ...」
「お前なんかお前なんかお前なんか」
「ぅ....ぐ...っ」
完全に冷静さを無くしたのか、壁に叩きつけると同時名無しさんの首を締めにかかる女生徒。
その瞳はどこまでも怒りに染まっていた。
「.................ら、む....んせ」
「は...何、命乞い??叶うわけないでしょ!ここにはお前と私以外誰も
「そこまでだ」「ケルベリオン」
女生徒が首を締め始めて数秒、より力を込めようとしたその瞬間2人の教師によってそれは妨害された。
「ゴホゴホっ..............」
「呼ぶのが遅すぎる」
「っ...はは、ごめん」
名無しさんの身体は体に巻きつけられた蔦に守られ宙に浮き、暴れていた女生徒はカルエゴのケルベロスによって捉えられている。
「貴様か。以前より、オリアス先生から忠告を受けているにも関わらず異常なまでに付き纏い贈り物をしていた女生徒は」
「はなして!!私はなにもしていない!」
「先程の会話は全て録音してある。観念するんだな。......連れていけ!」
「「はっ!」」
いつの間に呼んでいたのだろう、マルバスとイポスに連れられていく女生徒。終始騒いでいた彼女だったが、途中で現れたオリアスの姿を視界に捉えた瞬間言葉を無くしたかのように大人しくなっていた。
女生徒が去った事により、一瞬静寂が訪れる屋上だったが次の瞬間声がこだました。
「君は!何て危ないことをしたんだっ!!後一歩遅ければ取り返しのつかない所だったんだよ?!」
「ご...めんなさい」
「もっと上手く聞ける方法はあったでしょう?!どうしてあんな煽るような言い方をしたんだ」
「......美味し、かったから....クッキーが」
「............」
「誰かの為を思って、作ったんだなって...頑張ったのかなって、思ったら...聞かずには、いられなかったんだ.....ごめんなさい」
心から反省しているように、震える拳を握りながらも正座のまま頭を下げた名無しさんを見て、バラムは大きく息を吐き出した後頭をかいて膝をついた。
「...それでも、君がまず優先すべきは自分の命なんだ。自己犠牲と優しさは、別物だよ」
「.....はいっ...ごめんなさい」
「立てる?まずは怪我の程度の確認と治療が先だ」
「.................それが、腰が抜けてしまいまして」
「.....はぁ〜..............全くもう君は...しょうがないんだから」
最大にため息をつきつつも、どこか慈愛に満ちた表情で名無しさんを抱き抱えたバラムはカルエゴの方を振り返り声をかける。
「カルエゴくんもありがとう協力してくれて」
「フン、気にするな。だが貴方には、私からもいくつかお伝えすべき事がありますので、覚悟しておくように」
「.................はい」
「ふふっカルエゴくんは怒ると怖いからねぇ、最初から相談しなかった事ちゃんと反省するんだよ、いいね?」
「珍しく激怒していたお前には言われたくはないがな」
そんな会話をしながら名無しさんを抱えたまま歩き出すと、今まで事の行く末を見守っていた教師陣が意識を取り戻したかのように声をかけ始める。
「バラム先生!何がどう言う事なんですか?どうして名無しさんちゃんがまた傷だらけに...」
「名無しさんちゃん大丈夫?!」
「...詳しい内容はまたカルエゴくんから話があると思いますので、今は彼女の治療を優先させて下さい」
バラムの言葉を聞いた途端ババッと廊下の端に避けた教師達は歩いていくその背中を見送る。
突如として起きた一連の騒動は今、やっと終結したのである。
「カルエゴ先生聞こえますか?目標の特徴と状況が分かりました。僕は解毒剤の開発にとりかかりますので、そちらはお願いしてもよろしいですか」
魔通信を使って名無しさんが教えた情報を事細かく伝えるバラム。暫くすると、通信が終わったのか、名無しさんの方を振り返りいつもの優しい笑顔を見せた。
「後は僕達に任せて。君はゆっくりここで休んでいるといい」
そう言って手渡していたクッキーの瓶を取り出して、器用に粉砕させた後その成分を調べていく。
初めは呆然とただただそれを眺めていた名無しさんだったが、何かを思い立ったかのように顔を洗いに行きどこかスッキリとした顔でバラムの横に立つ。
「ん、どうかしたいかい?お腹が空いたなら出前を
「バラム先生、私にもやれる事はありますか」
「.....え?」
「さっきはみっともなく泣くしか出来なかったけど....もう、大丈夫です!」
泣いた影響でまだ赤い目を少し腫れさせてはいるが、にっこりと笑う名無しさんの表情はどこか力強くて...綺麗で、バラムは一瞬言葉を失う。
「バラム先生?」
「...あぁ、ごめんごめんぼーっとしていたよ」
もう憂いを感じさせない強さに真っ直ぐさに、バラムは以前から名無しさんに感じていた魅力は入間へのそれと似ていたのだなと気がつきマスクの下で笑った。
「(君たち人間は...本当に、綺麗だね)」
「今日会った時は、私が変わらず過ごしてたから釘を刺しにきたみたいだった!だからこう...おとりみたいないい感じの作戦立てられないかな」
「....何かあった時は、どうするんだっけ?」
「全力で叫ぶ!」
「よし、次こそ守れるのなら君に一つ試して欲しい事がある」
作業していた手を止めて、人差し指を立てながら作戦を伝えていくバラム。その瞳は彼女と同様強い意志が宿っていた。
「それで、カルエゴ先生は何を普段食べているんですか?」
「別に普通です。面倒な時は出前をとったりしますし、時間があればあるもので済ませる時もある」
「へぇ〜凄いですね、自炊もされるんですか」
場所変わり名無しさんとカルエゴは今、名無しさんが普段足を運んでいる場所をメインに2人で楽しく会話をしながら徘徊している。
...つまり作戦はこうだ。女生徒と出会ったのはいずれも遅い放課後の時間帯である事、名無しさんの行動範囲に現れた事を踏まえて、以前から観察されていた可能性が高いという結論から、それなら思いっきり楽しんでいる姿を見せて嫌がらせして誘き出そう作戦である。
はたから見たら、カルエゴが1人で会話をしているだけに映るだろうが普段から人目を気にしていないカルエゴにとって今回の作戦は痛くも痒くも無い。
「...でも本当に良かったんですか?お忙しいのに手伝って頂いて」
「笑顔、忘れてますよ」
「あ!すみませんありがとうございます」
「.....まぁ、忙しくないと言ったら嘘になりますが、職員が安全に働ける環境を整えるのも私達教師の仕事ですから」
「そう、ですか。ありがとうございます!」
「...いえ。では、後はここだけですね」
最後に辿り着いたのは、名無しさんが毎日のように暇さえあれば来ていた桜が見える植物塔の屋上。
ここは日中以外は滅多に人が居らず狙うとしたら最適な場所だった。
「では後は手筈通り私は立ち去りますが、いずれも無茶はしないように」
「...はい!ありがとうございます」
カルエゴと別れて、名無しさんはベンチに座りながらザァっと吹き抜ける風につられて見上げれば先程と同じ場所に居るはずなに景色が全然違って見える事に幸せを覚える。
「(1人じゃないって、大切なんだな....)」
そんな当たり前の事を思いながら桜を見つめていると、大きな足跡が聞こえてきて思わず名無しさんが振り返れば予想通りの憤怒に表情を染めた女生徒が立っていた。
「こんにちは、さっきぶりかな」
笑顔で名無しさんが話しかけると、その態度が癪に触ったのかつかつかと歩み寄ってきた後に名無しさんの胸倉を掴み上げ睨みをつける。
「お前はっ...お前はお前はお前は!!!!」
「っ、どうしたの」
「オリアス先生だけじゃ飽き足らずカルエゴ先生にまで色目を使うとかっ...恥を知りなさい阿婆擦れ!!!」
「...............」
「お前なんかっお前なんかお前なんか!!」
興奮しているのか、息を切らし目を充血させたまま胸ぐらを掴み上げている姿はまさに悪魔で、震えそうになる拳を握りながらも名無しさんは変わらず問いかける。
「あのクッキーって、本当に誰に送る予定も無かったの?」
「黙れ!!黙れ黙れ!!!....せっかく私が!お前に真実を教えてあげたというのに、まだ分からないの?!」
「っ...でもあれ、本当に、美味しかったから
「黙れっ!!!真実の粉だと言ったでしょう?!それを食べれば...お前は存在すら消されて忘れ去られる予定だったのに...何でよ!!」
胸ぐらを掴んだまま叫んだかと思うと次の瞬間名無しさんの背中に衝撃が走る。
「かはっ...」
「お前なんかお前なんかお前なんか」
「ぅ....ぐ...っ」
完全に冷静さを無くしたのか、壁に叩きつけると同時名無しさんの首を締めにかかる女生徒。
その瞳はどこまでも怒りに染まっていた。
「.................ら、む....んせ」
「は...何、命乞い??叶うわけないでしょ!ここにはお前と私以外誰も
「そこまでだ」「ケルベリオン」
女生徒が首を締め始めて数秒、より力を込めようとしたその瞬間2人の教師によってそれは妨害された。
「ゴホゴホっ..............」
「呼ぶのが遅すぎる」
「っ...はは、ごめん」
名無しさんの身体は体に巻きつけられた蔦に守られ宙に浮き、暴れていた女生徒はカルエゴのケルベロスによって捉えられている。
「貴様か。以前より、オリアス先生から忠告を受けているにも関わらず異常なまでに付き纏い贈り物をしていた女生徒は」
「はなして!!私はなにもしていない!」
「先程の会話は全て録音してある。観念するんだな。......連れていけ!」
「「はっ!」」
いつの間に呼んでいたのだろう、マルバスとイポスに連れられていく女生徒。終始騒いでいた彼女だったが、途中で現れたオリアスの姿を視界に捉えた瞬間言葉を無くしたかのように大人しくなっていた。
女生徒が去った事により、一瞬静寂が訪れる屋上だったが次の瞬間声がこだました。
「君は!何て危ないことをしたんだっ!!後一歩遅ければ取り返しのつかない所だったんだよ?!」
「ご...めんなさい」
「もっと上手く聞ける方法はあったでしょう?!どうしてあんな煽るような言い方をしたんだ」
「......美味し、かったから....クッキーが」
「............」
「誰かの為を思って、作ったんだなって...頑張ったのかなって、思ったら...聞かずには、いられなかったんだ.....ごめんなさい」
心から反省しているように、震える拳を握りながらも正座のまま頭を下げた名無しさんを見て、バラムは大きく息を吐き出した後頭をかいて膝をついた。
「...それでも、君がまず優先すべきは自分の命なんだ。自己犠牲と優しさは、別物だよ」
「.....はいっ...ごめんなさい」
「立てる?まずは怪我の程度の確認と治療が先だ」
「.................それが、腰が抜けてしまいまして」
「.....はぁ〜..............全くもう君は...しょうがないんだから」
最大にため息をつきつつも、どこか慈愛に満ちた表情で名無しさんを抱き抱えたバラムはカルエゴの方を振り返り声をかける。
「カルエゴくんもありがとう協力してくれて」
「フン、気にするな。だが貴方には、私からもいくつかお伝えすべき事がありますので、覚悟しておくように」
「.................はい」
「ふふっカルエゴくんは怒ると怖いからねぇ、最初から相談しなかった事ちゃんと反省するんだよ、いいね?」
「珍しく激怒していたお前には言われたくはないがな」
そんな会話をしながら名無しさんを抱えたまま歩き出すと、今まで事の行く末を見守っていた教師陣が意識を取り戻したかのように声をかけ始める。
「バラム先生!何がどう言う事なんですか?どうして名無しさんちゃんがまた傷だらけに...」
「名無しさんちゃん大丈夫?!」
「...詳しい内容はまたカルエゴくんから話があると思いますので、今は彼女の治療を優先させて下さい」
バラムの言葉を聞いた途端ババッと廊下の端に避けた教師達は歩いていくその背中を見送る。
突如として起きた一連の騒動は今、やっと終結したのである。