きんいろの奇跡
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『バラム先生ごめん!今日は時間が無くて無理っぽい...誘ってくれてありがとね』
「ふー.................どうするかなぁ〜」
こんな状態でバラムに会えないのは名無しさん自身も分かっていたので今は1人植物塔にあるベンチに腰掛けながら桜を眺めている。
誰にも見えないならと靴を脱いでちょこんと座り、ゆらゆらと揺れながらこれからの事を考えていた。
「入間くんにおじいちゃんとオペラさんだけか、私の事見えてるの。...嬉しい事実ではあるけど、仕事する上ではかなり迷惑かけちゃってるよなぁ〜うーん」
まさかあんなに笑ってくれていた職場の人たちに嫌われてるとは思わなかったな〜と、思いながらも勤めて2週間も経たずに辞職は流石にもっと無いよな〜と悩む名無しさん。
「辞めたくないなぁ」
せっかくバラムやオペラ、サリバンや入間にまで応援されて務める事が出来たこの職場を離れたくなくて顔を埋めた。
食べたクッキーの効果はいつまでか分からないからこそ、答えは出ない上自分が居る事が迷惑になるのであれば考えものだからだ。
「悪魔社会で馴染めて信頼されてる入間くんは、本当凄いな...」
そんな事を思っていると見知った足跡が聞こえてきて顔を上げれば、視界の先には紫色のスーツに身を包んだ後ろ姿。
「...オリアス先生と話すの、結構好きだったんだな...そっか」
話せなくなって、認知されなくなって改めて知る気持ちに笑いながらもその後ろ姿に名無しさんの声が届くことはない。
儚く散りゆく花びらと風に揺れる金髪が余りにも幻想的で、何て綺麗な悪魔なんだろうと名無しさんは思う。
子供みたいに、眉毛を下げて笑う姿が好きだったなとか色々思い出してしまうので名無しさんはベンチから去る。
「あ〜バラム先生の優しい笑顔が恋しい....でもな、もし視認されなかったらと思うと怖くて無理なんだよなぁ...」
結局答えの出なかった問いかけをよそに、荷物を取りに行く為廊下を歩いていれば前からイポス先生が歩いてくるので名無しさんは立ち止まる。
「いっそのこと、変なポーズでもしてみるとか...?」
絡む事のない視線に寂しくなりながらも、いっその事やけだ!との思い付きで通り過ぎる人たち全員の前で変なポーズをとっていく。
生徒含めて全員空振りかと思いながもめげずにアタックし続ける名無しさんの心は、そろそろ限界だったのだ。
次で最後だと心に決めて角を曲がれば前から来たのはカルエゴで、すれ違う瞬間意を決して変なポーズをとればピクリと眉毛を揺らした後に、思いもしなかった声が響く。
「一体何をしているので?」
「.................へ、」
「何故貴方が驚いてるんです。誰かの入れ知恵ですか?」
立ち止まり目線を合わせて話しかけてくれている。そんな当たり前の事だったが、今の名無しさんには震え上がるぐらいに嬉しくて、変なポーズをとったまま無意識のうちに涙は溢れていた。
「、どうしました?体調が優れませんか」
「っ...............、みえてるっ」
「は?何と?」
「〜〜〜、わたし...のこと、みえてますか」
「.....私は今、貴方と会話しているつもりですが」
カルエゴがそこまで言い切った後、堰を切ったように声無く泣き始めた名無しさんを見て訳が分からず流石のカルエゴも少し同様を見せる。
するとそこへ聞き慣れた温かい声がこだました。
「カルエゴくん、立ち止まってどうしたの」
身長的に名無しさんの姿が見えていなかったのか廊下で立ち尽くす同級生に声をかけたバラムだったが、近づき名無しさんが泣いている姿を捉えて焦ったように声をあげた。
「え、カルエゴくんが泣かしたの?」
「違うわ!何をしているのか問いかけただけだが、意味不明な事を言って泣き始めたのだ」
「意味不明って.......。ねぇ、名無しさんちゃんどうしたの?」
ポンポンといつものように頭を撫でたバラムだったが、その衝撃で顔をあげた名無しさんはバラムの姿を捉えた後何かに耐えるような顔をしてから耐えきれずまた涙を流していた。
「みえてるっ.................」
「えっ、何?もう一度言ってくれる?」
「良かった............っ!」
震えた声で少し笑い、名無しさんはようやく自分が本当は悲しかったのだと気がついた。
「...........カルエゴくん、彼女を保健室に連れて行ってくるね」
「...あぁ、分かった」
連れていく途中も、「どう?歩けそう?」などと優しくバラムが声をかけるたびに名無しさんの涙は溢れていき無言で頷く。
小さく震えるその背中をカルエゴは静かに見送った。
場所は変わり、真っ白で懐かしい部屋の雰囲気に名無しさんも少しずつ落ち着きを取り戻していく。
「.................っ、すみませんでした、バラム先生。取り乱しました」
魔茶を入れてくれたバラムへと静かに頭を下げた名無しさんを見て、とりあえず座りなよと優しく声をかける声色はいつもと何一つ変わらず優しいもの。
「それで、どうしたの一体。何があったの」
「.................、」
拳を握り俯きがちに視線を下ろす名無しさんを見て、バラムはゆっくりと魔茶を飲む。決して急かすことはなく、名無しさんが口を開けるまでゆるりと待っているのだ。
するとぽつりぽつりと、名無しさんが話し始めた。
「クッキーを、貰って....凄く美味しかったんだ」
「...うん」
「...内緒にしてって...言われたから、内緒にしてたんだけど....」
「...うん」
「食べた後から、家に居る人達以外...見えなくなってて......私のこと」
「...うん」
「.................真実の、粉だって言ってた」
「.....」
「好きだと見えて、嫌いだと........見えなくなる、粉だって、」
「......」
「.................誰も、私の事見えてなくて、触れるのに、見えてなくて、それでっ...」
「...うん、もう大丈夫だ。安心していい、僕らには君がちゃんと見えてるよ」
「っうん.................」
震えた声で言葉が続けられないのか、名無しさんの握った拳は指が白くなるぐらいの力が込められている。
それをちらりと見たバラムはそっと名無しさんの背中をさすりながら言葉を吐き出した。
「辛かったね、目の前に居るのに存在を消されるのは...辛い事だ」
どこか切ない目をしながらもバラムは続ける。
「だけど一つだけ、今の君に伝えられるとしたら、君が言っていた真実の粉何てものはこの魔界には存在しない。誰かが意図的に悪意を持ってついた嘘だ」
静かに、それでも力強く吐き出された言葉に下を向いていた名無しさんはゆっくりと顔をあげた。
「ふー.................どうするかなぁ〜」
こんな状態でバラムに会えないのは名無しさん自身も分かっていたので今は1人植物塔にあるベンチに腰掛けながら桜を眺めている。
誰にも見えないならと靴を脱いでちょこんと座り、ゆらゆらと揺れながらこれからの事を考えていた。
「入間くんにおじいちゃんとオペラさんだけか、私の事見えてるの。...嬉しい事実ではあるけど、仕事する上ではかなり迷惑かけちゃってるよなぁ〜うーん」
まさかあんなに笑ってくれていた職場の人たちに嫌われてるとは思わなかったな〜と、思いながらも勤めて2週間も経たずに辞職は流石にもっと無いよな〜と悩む名無しさん。
「辞めたくないなぁ」
せっかくバラムやオペラ、サリバンや入間にまで応援されて務める事が出来たこの職場を離れたくなくて顔を埋めた。
食べたクッキーの効果はいつまでか分からないからこそ、答えは出ない上自分が居る事が迷惑になるのであれば考えものだからだ。
「悪魔社会で馴染めて信頼されてる入間くんは、本当凄いな...」
そんな事を思っていると見知った足跡が聞こえてきて顔を上げれば、視界の先には紫色のスーツに身を包んだ後ろ姿。
「...オリアス先生と話すの、結構好きだったんだな...そっか」
話せなくなって、認知されなくなって改めて知る気持ちに笑いながらもその後ろ姿に名無しさんの声が届くことはない。
儚く散りゆく花びらと風に揺れる金髪が余りにも幻想的で、何て綺麗な悪魔なんだろうと名無しさんは思う。
子供みたいに、眉毛を下げて笑う姿が好きだったなとか色々思い出してしまうので名無しさんはベンチから去る。
「あ〜バラム先生の優しい笑顔が恋しい....でもな、もし視認されなかったらと思うと怖くて無理なんだよなぁ...」
結局答えの出なかった問いかけをよそに、荷物を取りに行く為廊下を歩いていれば前からイポス先生が歩いてくるので名無しさんは立ち止まる。
「いっそのこと、変なポーズでもしてみるとか...?」
絡む事のない視線に寂しくなりながらも、いっその事やけだ!との思い付きで通り過ぎる人たち全員の前で変なポーズをとっていく。
生徒含めて全員空振りかと思いながもめげずにアタックし続ける名無しさんの心は、そろそろ限界だったのだ。
次で最後だと心に決めて角を曲がれば前から来たのはカルエゴで、すれ違う瞬間意を決して変なポーズをとればピクリと眉毛を揺らした後に、思いもしなかった声が響く。
「一体何をしているので?」
「.................へ、」
「何故貴方が驚いてるんです。誰かの入れ知恵ですか?」
立ち止まり目線を合わせて話しかけてくれている。そんな当たり前の事だったが、今の名無しさんには震え上がるぐらいに嬉しくて、変なポーズをとったまま無意識のうちに涙は溢れていた。
「、どうしました?体調が優れませんか」
「っ...............、みえてるっ」
「は?何と?」
「〜〜〜、わたし...のこと、みえてますか」
「.....私は今、貴方と会話しているつもりですが」
カルエゴがそこまで言い切った後、堰を切ったように声無く泣き始めた名無しさんを見て訳が分からず流石のカルエゴも少し同様を見せる。
するとそこへ聞き慣れた温かい声がこだました。
「カルエゴくん、立ち止まってどうしたの」
身長的に名無しさんの姿が見えていなかったのか廊下で立ち尽くす同級生に声をかけたバラムだったが、近づき名無しさんが泣いている姿を捉えて焦ったように声をあげた。
「え、カルエゴくんが泣かしたの?」
「違うわ!何をしているのか問いかけただけだが、意味不明な事を言って泣き始めたのだ」
「意味不明って.......。ねぇ、名無しさんちゃんどうしたの?」
ポンポンといつものように頭を撫でたバラムだったが、その衝撃で顔をあげた名無しさんはバラムの姿を捉えた後何かに耐えるような顔をしてから耐えきれずまた涙を流していた。
「みえてるっ.................」
「えっ、何?もう一度言ってくれる?」
「良かった............っ!」
震えた声で少し笑い、名無しさんはようやく自分が本当は悲しかったのだと気がついた。
「...........カルエゴくん、彼女を保健室に連れて行ってくるね」
「...あぁ、分かった」
連れていく途中も、「どう?歩けそう?」などと優しくバラムが声をかけるたびに名無しさんの涙は溢れていき無言で頷く。
小さく震えるその背中をカルエゴは静かに見送った。
場所は変わり、真っ白で懐かしい部屋の雰囲気に名無しさんも少しずつ落ち着きを取り戻していく。
「.................っ、すみませんでした、バラム先生。取り乱しました」
魔茶を入れてくれたバラムへと静かに頭を下げた名無しさんを見て、とりあえず座りなよと優しく声をかける声色はいつもと何一つ変わらず優しいもの。
「それで、どうしたの一体。何があったの」
「.................、」
拳を握り俯きがちに視線を下ろす名無しさんを見て、バラムはゆっくりと魔茶を飲む。決して急かすことはなく、名無しさんが口を開けるまでゆるりと待っているのだ。
するとぽつりぽつりと、名無しさんが話し始めた。
「クッキーを、貰って....凄く美味しかったんだ」
「...うん」
「...内緒にしてって...言われたから、内緒にしてたんだけど....」
「...うん」
「食べた後から、家に居る人達以外...見えなくなってて......私のこと」
「...うん」
「.................真実の、粉だって言ってた」
「.....」
「好きだと見えて、嫌いだと........見えなくなる、粉だって、」
「......」
「.................誰も、私の事見えてなくて、触れるのに、見えてなくて、それでっ...」
「...うん、もう大丈夫だ。安心していい、僕らには君がちゃんと見えてるよ」
「っうん.................」
震えた声で言葉が続けられないのか、名無しさんの握った拳は指が白くなるぐらいの力が込められている。
それをちらりと見たバラムはそっと名無しさんの背中をさすりながら言葉を吐き出した。
「辛かったね、目の前に居るのに存在を消されるのは...辛い事だ」
どこか切ない目をしながらもバラムは続ける。
「だけど一つだけ、今の君に伝えられるとしたら、君が言っていた真実の粉何てものはこの魔界には存在しない。誰かが意図的に悪意を持ってついた嘘だ」
静かに、それでも力強く吐き出された言葉に下を向いていた名無しさんはゆっくりと顔をあげた。