きんいろの奇跡
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「お、ちゃんと冷えてる」
「.................」
「ラッピングは2種類ぐらいでいけそうかな」
「.................」
「よし、いい感じだ!」
サリバン邸厨房にて、早朝にも関わらず影が2つ。一つは鼻歌を歌いながら冷蔵庫から取り出したものを見て笑いもう1人はその様子をただただ見つめていた。
「名無しさん様」
「おわっ!」
「すみません驚かせてしまいましたか」
「もーオペラさん!」
「おやこれは失礼致しました。毎回わざとではないのですが」
「その顔絶対わざとだ...。本当、悪戯好きだよなぁ...(笑)おはよう、オペラさん」
「はい、おはようございます名無しさん様」
最早何度目かは分からないオペラの脅かしにドキドキとなる胸を抑えながらも、呆れたように笑った名無しさんを見てオペラは満足気に笑う。
「朝早くから関心ですね。お菓子、ですか?」
「うん!今日から悪魔学校でお世話になるし、迷惑かけた皆さんにもお渡ししたくてさ」
「そうですか。カルエゴくんは甘いものが余り好きじゃありませんので、もし受け取り拒否をされた場合は遠慮なく教えて下さいね」
「うーんそれはちょっと。カルエゴ先生とちゃんと会うのは初めてなのに叱られたくない、かな〜」
「大丈夫ですよ名無しさん様、私がついておりますので」
「いやいやいや何一つ安心出来ないから!」
そうなのだ、家庭訪問の次の日誰よりも早く屋敷を後にしていた為結局挨拶出来ず仕舞いだったのだ。
それを理解した上で嬉しそうに手をワキワキさせて嬉しそうなオペラを呆れたように名無しさんは一蹴する。
魔界にきてから2ヶ月、ウォルターパークの件で夏休み中大変だった入間達とは別に名無しさんもまた面接や試験などをこなしており忙しくしていた為、せっかくの初日を失敗したくはないのだろう。
「名無しさん様」
「はい、オペラさん」
「本日より貴方は、バビルスに関わる人材として時には危機に晒される事もあるかと思います」
「はい」
「それでも貴方が努力をし続けた結果が今日までに繋がっているのです。無茶をせず安全に自分の仕事に励んで下さいね」
「ありがとうございますオペラさん、楽しんでくるよ!」
「その意気です」
入間達の夏休みも終わり同じ登校日に初出勤出来るのは嬉しいなと思いながらも、あちこちへの挨拶もあるため早めに家を出る名無しさん。
お菓子をもっていると言う事もありこの日だけは馬車で送って貰う事となった。
「おーい、名無しさんちゃーん」
「あ!おはようございますバラム先生」
昇降口に到着するやいなや、出迎えてくれたのはこちらに来てからずっと親しくしてくれているバラム先生。
夏休み中や、面接でのあれそれの練習も付き合ってくれていたりしたのだ。
「就職おめでとう、今日から君も僕達の仲間だね」
「...へへ、バラム先生のお陰ですね」
「君に敬語を使われるのは、何だか怖いなぁ」
「ちょっと、今のは感動する所」
「はははっごめんごめん。さ、行こうか」
「おし!気合いいれるぞ」
校門で仲良くやりとりをしている相手が珍しいのか、偶然早く来ていた生徒達がザワザワとし始めてしまった為、足早に2人は立ち去るもあのバラム先生と親しげにしていたというだけで瞬く間に噂は広がってゆく。
そんな事もつゆ知らず2人は笑顔で会話をしながら職員室までたどり着いたのだった。
ーコンコン
「失礼します」
「バラム先生と...名無しさんちゃん?え、どうしたんですか?」
「おはようございますダリ先生」
「うんおはようございます!っじゃなくて、こんな朝早くから何かあったのかい?」
まだ少しばらつきのある職員室だったが、名無しさんはぐるっと周りを見て例の該当者の人達が集まっていることを確認してからゆっくりと頭を下げた。
「本日より、食堂にて働かせて頂く事となりました名無しさんです。どうぞよろしくお願い致します」
「「「えぇえーー?!」」」
近くに居たムルムルやマルバス、オリアスやダリ、スージーに至ってもその事実を知らなかったのか全員が驚いたように名無しさんの方を振り返る。
「えっえ、どう言う事なの?今日からって...バラム先生は知ってたんですか?」
「えぇ、まぁ。試験の練習相手になったりしましたし、名無しさんちゃん自身が言う程の事でもないから言わなくていいよと言ってまして...」
「いやいやいや、入間くんの従兄弟だし何かあれば絶対理事長に怒られるやつだからね??」
「ダリ先生大丈夫です。気合いと根性だけは自信があるので安心して下さい」
「「(安心出来ねーーー)」」
心の中で盛大に突っ込みつつも、名無しさんには言えず冷や汗を垂らしながら頷くしかない教師の面々。
「後これ、大変遅くなってしまったのですがあの日ご迷惑をおかけしてしまったのでよろしければ皆さんで召し上がって下さい」
「「おおおー!え、何ですかこれ」」
「こちらの茶色い方はシュワシュワしたチーズケーキで、甘いものが好きな方用。もう一つの黒い方は甘いもの苦手な方でも食べられる用のケーキになってます」
「「凄い!いいんですか、こんなに...!」」
「ささやかですが気持ちは込めたので、休憩の時にでもどうぞ。今日も一日お仕事頑張って下さいね!」
名無しさんの周りにワラワラと集まっていたムルムル達は毒気のない笑顔で真っ直ぐに応援されて今日一日乗り切れそうだと心に誓う。
「さて、と。早朝からお騒がせしてしまって大変失礼しました。改めて本日からよろしくお願い致します」
では、失礼致します、と最後まで礼儀正しく出ていった名無しさんを見て、あんな礼儀正しい子が悪い悪魔な訳がないと口々にいい各々の席へと戻っていく。
何よりも、教職員として雇われたとしても教師ではない以上挨拶の義務は無い為わざわざ足を運ぶ必要も無いからだ。
「(ほんっと、どこまでも想像を裏切ってくるよな〜名無しさんちゃんは)」
綺麗にラッピングされたケーキを手にしたまま笑うオリアスを見て、近くにいた教師陣は不思議に思うも新たな名無しさんの悪魔人生が幕を上げたのは確かだった。
その後の名無しさんの一日はまず仕事の前に、全ての教職員にあたる方達への挨拶から始まりそれはもう大忙しのスタート。
「新入り!次は8番テーブルにこの料理頼むぜ」
「はいっ」
「それが終わったらこっちでデロデロランチの追加作ってくれ」
「はいっ」
「おっとちょい待ち!デロデロランチにピケポンフィッシュも追加だ」
「はいっ」
お昼のラッシュに一瞬目が眩むも、いつものオペラさんのスピードに比べればまだまだいけるなと次々とこなしていく名無しさんを見て同職の悪魔達も歓喜の声を上げていた。
そこから星の流れのようにラッシュを終え、時刻は15時を過ぎた所。初日だからと早めに上がらせて貰えた名無しさんは朝教えて貰ったとある場所へと向かう。