きんいろの奇跡
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「お姉さん!」
「あ、入間くん!」
「わぁっ良かったですね、退院ですか?」
「うん、お陰様でやっと動けるようになったよ」
オリアスと打ち解けた日の放課後、勢いよく扉を開けて入ってきたのは入間とバラム。余りにも無邪気かつ無垢に笑う姿を見て名無しさんもまた嬉しそうに出迎えた。
「酷い怪我だったし、おじいちゃん達に聞いても絶対安静だから会っちゃ駄目だって言われてたから心配してたんです」
「...そっか、ありがとう入間くん。君が居てくれて良かった」
「っ、え?」
「記憶は曖昧なんだけどさ...あの時、怖くて痛くて。どうしようもなかったはずなのに、入間くんの姿を見られただけでその恐怖や痛みが吹き飛んだ気がしてさ...」
そこまで言って入間に目線を合わせて両手を握る名無しさん。
「だから、ありがとう入間くん。あの日私の元に来てくれて...凄い救われたんだ」
ありがとう、と再度柔らかな笑みで言われた入間は顔を真っ赤にしながらおろおろとし俯いた。
「サリバンさんやオペラさん、バラム先生の采配のお陰で今日から一緒に住む事になるだろうから、改めてよろしく」
「っ、はい!よろしくお願いします!お姉さん!」
「はははっ、そのお姉さんっての何だかむず痒いな」
「え?でも、お姉さんはお姉さんだし...」
「自己紹介が遅れてごめん、私は名無しさん。訳あってこっちに来ちゃったけど、会えて嬉しい」
「名無しさん、さん...!あ、あの入間です!よろしくお願いします!」
「うん、よろしく!」
嬉しそうに、そして少し恥ずかしそうに握手をした入間ににっこりと笑いかける名無しさん。2人のそれはとても穏やかでどう見ても悪魔には見えない。
「さてお二人さん話も済んだみたいだし、昇降口まで送るよ」
「えっいいんですか?バラム先生」
「うん。オペラ先輩から連絡があって今日は迎えに来てるみたいだから」
「...バラム先生も本当ありがとうございました。先生のおかげで学校生活も楽しかったです」
「名無しさんちゃんの場合、主に僕で楽しんでた気もするけどお礼は受け取っておくよ」
「はははっ分かってるな〜バラム先生!」
「〜っもう、本当自由なんだから君は」
「な、仲良しだ!!え、何で?!凄いっ羨ましい!」
名無しさんとバラムの顔を見比べて羨ましいとはしゃぐ入間に、2人は顔を見合わせて笑いその日は無事にお別れとなった。
「...無事、帰られましたか」
「えぇ、元気よく帰られましたよ...ダリ先生」
「あちゃ〜バレてましたか」
「保健室からずっと気配も消さずに居た人が何を言うんです」
「いや〜〜〜、結局僕も謝罪に行った一度きりしかお話出来なかったもので気になってまして」
「そうでしたか。そして、感想は?」
「...いい子、ですねぇ〜。女性だと言うのに気丈でその実恐ろしく優しい」
「根本的な優しさは、入間くんととてもよく似ていますからね」
「ねー。また遊びに来てくれませんかね〜悪魔学校に」
飄々とした笑顔で言ってのけたダリを横目にバラムも2人が乗る馬車を見送った。
その後、サリバン邸で行われた事と言えば名無しさんの退院祝い含めて歓迎の会が繰り広げられ入間も名無しさんも笑顔で沢山食べ飲んで沢山の会話を交わして過ごした。
...それより少し時間は過ぎ、入間が寝入った後に集まったのはサリバン、オペラ、そして名無しさんの3人。
「それで名無しさんちゃん、話って」
「はい、改めてお二人には話をしておきたくて」
入間が入浴している間に約束を取り付けた名無しさんはサリバンとオペラに声をかけ、話し合いの場をお願いしていたのだ。
「改めてこの度は、行く宛の無い私を拾って下さり我儘も通して下さりありがとうございました」
「んもぅ〜硬い硬いっ今日から家族なんだから、もっと気楽でいいよ〜!」
「ふふっ、はい!ありがとうございます!」
「バラムくんから話に聞きましたが、不思議な事もあるものですねぇ」
「本当に。私も未だに実感は無いんですが、こうしてお会いしたかった人達と会話が出来るのは...こう、凄く幸せなんだなと思ってます」
「「.................」」
「だからこそ、皆さんと一緒に生きていく上でもこの魔界でもっと意義を見つけて恩返し出来るように精一杯努めますので、どうかお力を貸して頂けると嬉しいです」
そこまで言い切り頭を下げた名無しさんを見て黙っていた2人だったが耐えきれなかったかのように、サリバンは涙ながらに名無しさんを抱きしめた。
「んもーっいい子っ!!入間くんと言い、こーんな素敵な子供達に恵まれるだなんて、何て僕は幸せ者なんだ!」
「さ、サリバンさ
「おじいちゃん!そう呼んでって言ったでしょ?」
「サリバ...................、お、おじいちゃん」
「かわいーーーっ!!」
「うわぁっく、苦しいっ」
「サリバン様、それ以上は名無しさん様が死んでしまいます」
ぎゅうぎゅうと抱きしめてくれる温もりに自然と笑みが溢れつつも全力で受け入れてくれる姿に名無しさんもほっとしたように笑う。
「あ、それとオペラさん。私は様付けじゃなくても大丈
「なりません。サリバン様に引き取られ、入間様とも血縁のあるお方を様付けしないのはSDとして一流ではありませんので」
「それはあくまで設定での話では...」
「なりません。どこからボロが出るとも限りませんし、お世話させて頂く以上呼び方は統一させて頂きます。よろしいですね?」
「...はい、分かりました」
オペラに気押されつつも、笑顔で承諾した名無しさんを満足気に見つめ頷いた姿をサリバンもうんうんと微笑ましそうに眺める。
「後、もう一つお願いがあるのですが」
「なーに名無しさんちゃん、危険な事じゃなければ相談に乗るよ」
「...働かせて欲しいんです!」
「.................え?」
「魔力も無いですし、入間くんみたいに防御力も皆無なのは承知しているのですが、何もせず居るよりはしっかりと給料を貰って少しでも自立したくて」
「...........でもここは魔界、君の居た世界とは天と地程も危険度が違うんだよ?」
「重々承知してます。...でも、書物で描かれていた世界を...バラム先生に教わったこの魔界を悪魔を、もっと、もっと関わって知りたいんです!」
お願いしますと再度頭を下げた名無しさんを見て、今日何度目になるか分からない姿に2人は顔を見合わせ笑い声をあげる。
「あははっ君達人間は本当面白いよね〜!危険だって分かってるのに好奇心旺盛で真っ直ぐで、そして優しすぎるぐらいに...貪欲だ」
キリッとした顔をしたサリバンは指をパチンと鳴らしオペラにとある箱を用意させる。
「開けてごらん」
「?はい、失礼します」
にっこりとした笑顔で差し出されたのは耳に付ける為のイヤリング。シンプルかつ金色に輝くその装いに名無しさんは感嘆の声をあげた。
「それは、僕達の家族になってくれたお祝いだよ」
「家族...」
「そう!とは言っても、渡すのは君が外に出たいと言い出してからと決めてたからもう少し先だと思ったんだけど...まさか初日に渡せるとはねぇ」
「あり、がとうございます」
「フフフ。それは入間くんの指輪と同じ魔力を貯められる魔具だよ。だから君も最低限の身の安全はオペラに魔術を習って習得出来たのなら、ここ魔界で仕事をするのを認めようじゃないか」
「...ありがとうございます!!おじいちゃん、オペラさん!頑張ります私!」
満開の笑顔で嬉しいと顔に描いてある名無しさんを見て満足そうに2人は眺め、これからのことについて花を咲かせたのだった。