きんいろの奇跡
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ーコンコン
「入っていいかな」
「はーい、大丈夫ですよー」
「失礼するよ〜っと、お疲れ様〜」
「あら、オリアス先生じゃないですか。お疲れ様です」
「彼女の目が覚めたって聞いて来たんですけど、今はまた眠っちゃってるみたいですねぇ」
幾分かマシになった顔色に無意識のうちに安心したオリアスは彼女の寝顔が見える椅子に腰掛ける。
「バラム先生の薬がよく効いているみたいで、つい2時間程前までは元気に笑っていらっしゃいましたよ」
「え...笑ってたの?彼女が?」
「えと、はい...。バラム先生とお話が合うようでして、随分と打ち解けられたご様子でしたよ」
「そう...なんだ。そっか、笑えたのか」
「え...?」
「あぁいや、こっちの話〜。君も疲れたでしょ、ここは俺が見ておくから少し休んできなよ」
「よろしいのですか?」
「気にする事ないから、ゆっくりしておいでよ、ね?」
「はっはい!ありがとうございます!!失礼しますっ」
「はいはぁーい」
顔を赤くして立ち去った保険医をオリアスは笑顔で見送ると、2人だけの空間になった途端振っていた手を止めてゆっくりと下げる。
「そっか、笑えたのか...君」
そんな当たり前の事を呟きながら、先程サリバンから報告のあった内容のあれそれを思い出してオリアスは帽子を下げる。
「悪い事しちゃったねぇ...ごめんね」
未だ全身包帯だらけのまま眠りにつく彼女はどう見ても被害者で。
説明のあった悪魔を惑わす香りで冷静さに欠けていたにしろ、酷い事をしてしまった事実は変えられないなとオリアスは拳を握る。
トラブルに巻き込まれた上、必死に助けを求めていたにも関わらず自分は見守る事しか出来なかった歯痒さが、じわじわと胸を寝食していたのだ。
「っい...やだ」
「!起きたのかい?」
「や....めて、くれ...」
「魘されてるのか...」
「こわ......めて.....っ、やだ...」
「................っ、大丈夫だ、もう何もしないよ」
「っ....たい......めて...」
「痛かったな、でももう...大丈夫だから」
苦しげに眉を寄せ魘される名無しさんを見て、同じく辛そうに声をかけるオリアスは宥めるかのように彼女の手を優しく握る。
するとその温もりが刺激になったのか、ゆるゆると睫毛を揺らした後に名無しさんはゆっくりと瞳をあけた。
「お......り...す、せん..せ.................?」
「!うん、どうかしたの?辛い?」
「...よか......た」
「.................え........」
額に汗を滲ませながら瞳をあけたかと思うと、しっかりとオリアスだと認識した上で名無しさんは嬉しそうに目元を柔らげてから再度眠りについたのだった。
突然の事に、オリアスは動揺したまま顔に熱が集まっているのを感じる。
彼女は確かに今、自分だと認識した上で怯えるでも憎しみを抱くでもなく笑ったのだ。
「予想外過ぎるっ............」
片手で熱い顔を抑えながらフラフラと椅子に座ったオリアスは再び眠りについた名無しさんは、先程とは違い穏やかな顔をしている。
「(一体この子のどこが敵に見えたんだ...)」
不思議なぐらい脈を打つ心臓に頭をかしげながらも、次この子が起きた時にこそしっかりと謝罪がしたいなと思うオリアスだったが、その後保険医が戻ってくるまでの間も彼女は眠りについたままだった。
その日から2週間、名無しさんがようやく1人で動けるようになるまで中々タイミングが合わず仕舞いだったオリアスだったが、偶然前を通った時に響いた聞き慣れない笑い声に気がつけば足が止まっていた。
「はははっそうそう、ペンギンはそんなに強くないんだよ」
「そうなの?!そうしたらどうやってサメ?とかがいる獰猛な世界で生き抜くんだい?」
「それはね〜ズバリ、彼らの生態系に秘密が隠されてたりする」
「生態系?!知りたいっ教えてよ!」
「どうしよっかなー」
「名無しさんちゃん!約束の絵本は渡したでしょう?」
「ごめんごめんからかっただけだよ」
耳に届くちゃんと聞いた事の無かった彼女の声。その上あんなにも楽しそうにやり取りをしているバラム先生の声まで響いて、無意識のうちにオリアスは拳を握る。
しかしそれを落ち着けるかのようにゆっくりと深呼吸をしたかと思うと、口元に笑みを浮かべて目の前にある部屋をノックした。
「あ、オリアス先生でしたか。お疲れ様です」
「お疲れ様ですバラム先生〜!随分と楽しそうでしたね」
「名無しさんちゃ...彼女が意地悪してくるので、叱ってた所だったんですよ」
「はははっそれは怒っちゃいますねぇ!」
「そうでしょう?すぐに僕のこと揶揄うんだから」
「そんな事ないですよー」
オリアスが来たことにより、より一層盛り上がる会話。しかしそれも名無しさんとオリアスの目が合った瞬間、名無しさんが頭を下げた事によって終止符が打たれる。
「...オリアス先生、あの時は突然な事でご迷惑をおかけしてしまって本当に申し訳ありませんでした!」
「えっ、なになに急に」
「状況を聞きました。寝ている時に知らない人間が隣で寝てるだけじゃなく言葉も通じないとかよっぽど怖かっただろうなと思い...本当にすみませんでした」
「いやいやいや、頭をあげてよっそれを言うなら俺の方だから」
ビシィっと効果音がつきそうなレベルで頭を下げた名無しさんに少なからず動揺したオリアスは数歩下がって両手をぶんぶんと横に降る。
そしてずっと頭を下げ続ける名無しさんに観念し静かに帽子を外した。
「俺の方こそ、ずっと謝りたかったんだ。サリバン理事長から事情は聞いたよ。トラブルに巻き込まれた上逃げようのない状況だったのに、酷い事をしてしまって本当に申し訳ありませんでした」
「いやいやいや、あの状況は仕方がないかと!」
「いやいやいや、それでももっと冷静に判断するべきだった」
「いやいやいや」
「いやいやいや」
ーパンっ
「はい、そこまで」
お互い謝り倒しで下げっぱなしだった二つの頭がバラムの拍手でぴょこんと起き上がる。
「あの状況はお互い防ぎ用が無かった事だし、謝罪もし合えた。だったらもう仲直りするだけだよね」
「バラム先生....」
「....うん、そうだね。ありがとうバラム先生」
流石大人だなぁと名無しさんは思いつつも、差し出された掌を見て嬉しくなりそっとその手を握り返した。
「オリアス先生、改めまして名無しさんと言います。どうぞよろしくお願いします!」
「ご丁寧にありがとう。もう知ってるかもだけど俺はオリアス・オズワール、よろしくね〜名無しさんちゃん」
「うんうんやっと2人共笑顔になったね」
「あ、そうだ。ハンカチも本当にありがとうございました。また改めてお詫びさせて下さい」
「よく俺のだって分かったね〜!バラム先生に聞いたの?」
「へへっ正解です」
「そっか。でも、俺がしたかっただけだから気にしなくていいよ〜」
予想以上に打ち解けるのが早いのは彼女の魅力なのかオリアスのコミュ力なのか。
確かにそこには、温かい空間が広がっていた。
「入っていいかな」
「はーい、大丈夫ですよー」
「失礼するよ〜っと、お疲れ様〜」
「あら、オリアス先生じゃないですか。お疲れ様です」
「彼女の目が覚めたって聞いて来たんですけど、今はまた眠っちゃってるみたいですねぇ」
幾分かマシになった顔色に無意識のうちに安心したオリアスは彼女の寝顔が見える椅子に腰掛ける。
「バラム先生の薬がよく効いているみたいで、つい2時間程前までは元気に笑っていらっしゃいましたよ」
「え...笑ってたの?彼女が?」
「えと、はい...。バラム先生とお話が合うようでして、随分と打ち解けられたご様子でしたよ」
「そう...なんだ。そっか、笑えたのか」
「え...?」
「あぁいや、こっちの話〜。君も疲れたでしょ、ここは俺が見ておくから少し休んできなよ」
「よろしいのですか?」
「気にする事ないから、ゆっくりしておいでよ、ね?」
「はっはい!ありがとうございます!!失礼しますっ」
「はいはぁーい」
顔を赤くして立ち去った保険医をオリアスは笑顔で見送ると、2人だけの空間になった途端振っていた手を止めてゆっくりと下げる。
「そっか、笑えたのか...君」
そんな当たり前の事を呟きながら、先程サリバンから報告のあった内容のあれそれを思い出してオリアスは帽子を下げる。
「悪い事しちゃったねぇ...ごめんね」
未だ全身包帯だらけのまま眠りにつく彼女はどう見ても被害者で。
説明のあった悪魔を惑わす香りで冷静さに欠けていたにしろ、酷い事をしてしまった事実は変えられないなとオリアスは拳を握る。
トラブルに巻き込まれた上、必死に助けを求めていたにも関わらず自分は見守る事しか出来なかった歯痒さが、じわじわと胸を寝食していたのだ。
「っい...やだ」
「!起きたのかい?」
「や....めて、くれ...」
「魘されてるのか...」
「こわ......めて.....っ、やだ...」
「................っ、大丈夫だ、もう何もしないよ」
「っ....たい......めて...」
「痛かったな、でももう...大丈夫だから」
苦しげに眉を寄せ魘される名無しさんを見て、同じく辛そうに声をかけるオリアスは宥めるかのように彼女の手を優しく握る。
するとその温もりが刺激になったのか、ゆるゆると睫毛を揺らした後に名無しさんはゆっくりと瞳をあけた。
「お......り...す、せん..せ.................?」
「!うん、どうかしたの?辛い?」
「...よか......た」
「.................え........」
額に汗を滲ませながら瞳をあけたかと思うと、しっかりとオリアスだと認識した上で名無しさんは嬉しそうに目元を柔らげてから再度眠りについたのだった。
突然の事に、オリアスは動揺したまま顔に熱が集まっているのを感じる。
彼女は確かに今、自分だと認識した上で怯えるでも憎しみを抱くでもなく笑ったのだ。
「予想外過ぎるっ............」
片手で熱い顔を抑えながらフラフラと椅子に座ったオリアスは再び眠りについた名無しさんは、先程とは違い穏やかな顔をしている。
「(一体この子のどこが敵に見えたんだ...)」
不思議なぐらい脈を打つ心臓に頭をかしげながらも、次この子が起きた時にこそしっかりと謝罪がしたいなと思うオリアスだったが、その後保険医が戻ってくるまでの間も彼女は眠りについたままだった。
その日から2週間、名無しさんがようやく1人で動けるようになるまで中々タイミングが合わず仕舞いだったオリアスだったが、偶然前を通った時に響いた聞き慣れない笑い声に気がつけば足が止まっていた。
「はははっそうそう、ペンギンはそんなに強くないんだよ」
「そうなの?!そうしたらどうやってサメ?とかがいる獰猛な世界で生き抜くんだい?」
「それはね〜ズバリ、彼らの生態系に秘密が隠されてたりする」
「生態系?!知りたいっ教えてよ!」
「どうしよっかなー」
「名無しさんちゃん!約束の絵本は渡したでしょう?」
「ごめんごめんからかっただけだよ」
耳に届くちゃんと聞いた事の無かった彼女の声。その上あんなにも楽しそうにやり取りをしているバラム先生の声まで響いて、無意識のうちにオリアスは拳を握る。
しかしそれを落ち着けるかのようにゆっくりと深呼吸をしたかと思うと、口元に笑みを浮かべて目の前にある部屋をノックした。
「あ、オリアス先生でしたか。お疲れ様です」
「お疲れ様ですバラム先生〜!随分と楽しそうでしたね」
「名無しさんちゃ...彼女が意地悪してくるので、叱ってた所だったんですよ」
「はははっそれは怒っちゃいますねぇ!」
「そうでしょう?すぐに僕のこと揶揄うんだから」
「そんな事ないですよー」
オリアスが来たことにより、より一層盛り上がる会話。しかしそれも名無しさんとオリアスの目が合った瞬間、名無しさんが頭を下げた事によって終止符が打たれる。
「...オリアス先生、あの時は突然な事でご迷惑をおかけしてしまって本当に申し訳ありませんでした!」
「えっ、なになに急に」
「状況を聞きました。寝ている時に知らない人間が隣で寝てるだけじゃなく言葉も通じないとかよっぽど怖かっただろうなと思い...本当にすみませんでした」
「いやいやいや、頭をあげてよっそれを言うなら俺の方だから」
ビシィっと効果音がつきそうなレベルで頭を下げた名無しさんに少なからず動揺したオリアスは数歩下がって両手をぶんぶんと横に降る。
そしてずっと頭を下げ続ける名無しさんに観念し静かに帽子を外した。
「俺の方こそ、ずっと謝りたかったんだ。サリバン理事長から事情は聞いたよ。トラブルに巻き込まれた上逃げようのない状況だったのに、酷い事をしてしまって本当に申し訳ありませんでした」
「いやいやいや、あの状況は仕方がないかと!」
「いやいやいや、それでももっと冷静に判断するべきだった」
「いやいやいや」
「いやいやいや」
ーパンっ
「はい、そこまで」
お互い謝り倒しで下げっぱなしだった二つの頭がバラムの拍手でぴょこんと起き上がる。
「あの状況はお互い防ぎ用が無かった事だし、謝罪もし合えた。だったらもう仲直りするだけだよね」
「バラム先生....」
「....うん、そうだね。ありがとうバラム先生」
流石大人だなぁと名無しさんは思いつつも、差し出された掌を見て嬉しくなりそっとその手を握り返した。
「オリアス先生、改めまして名無しさんと言います。どうぞよろしくお願いします!」
「ご丁寧にありがとう。もう知ってるかもだけど俺はオリアス・オズワール、よろしくね〜名無しさんちゃん」
「うんうんやっと2人共笑顔になったね」
「あ、そうだ。ハンカチも本当にありがとうございました。また改めてお詫びさせて下さい」
「よく俺のだって分かったね〜!バラム先生に聞いたの?」
「へへっ正解です」
「そっか。でも、俺がしたかっただけだから気にしなくていいよ〜」
予想以上に打ち解けるのが早いのは彼女の魅力なのかオリアスのコミュ力なのか。
確かにそこには、温かい空間が広がっていた。