きんいろの奇跡
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ーガチャ
「オリアス先生〜!どうですか?」
「ダリ先生お疲れ様です。まだ目は覚めませんねぇ」
「まさか、半永久がここまで効きにくいとは...体質なのかなぁ〜」
「ですね〜。ブルシェンコ先生もちょっと落ち込んでましたよ」
あれから6時間、未だに彼女は目を覚まさずに横たわる。
流した血液の量や精神的ダメージもあるのだろうとは言われたが朝見た姿とは桁違いに顔色が悪い。
「あ、そう言えばバラム先生から連絡があってもうすぐここに来られるみたいですよ〜」
「えっ、もうそんな時間ですか」
「オリアス先生が付きっきりで見てくれてましたからね!」
「俺はたまたま午前の授業は無かったですし、寝不足だったんでちょうど良かったんですよ」
ーコンコン
するとそこに話をしていた人物がひょこっと現れて魔通信で聞いていた情報よりも容体が悪そうだったからか焦ったように近づいてきた。
「お帰りなさいっバラム先生!」
「ただいま戻りました。...で、彼女が例の?」
「はい。何故か半永久が効きにくいようで6時間ずっと眠りっぱなしらしく」
「...そうですか。では、準備室から新しく開発した薬を持ってくるのでもう少しお願い出来ますか?」
「全然大丈夫ですよ〜!オリアス先生が付きっきりで見てくれています」
「ありがとうございます、オリアス先生」
そう告げるや否やすぐさま部屋を出ていくバラムを見送ると一瞬訪れる静寂。
「それにしても、よく寝てますね〜」
グッタリと力無く横たわる姿は敵意のかけらすらなく、治りきっていない傷が痛々しい。
ぐるぐると様子を伺うダリを横目に、あの時見た強い瞳が未だ閉ざされている事に少しの焦りを覚えたオリアスは無意識に自らの胸の当たりをさすっていた。
「うん、やっぱり綺麗な悪魔だなぁ」
「っ、ダリ先生?!」
「え?オリアス先生も思いません?マルバス先生も最初サキュバスかって聞いてきたくらいだし」
「俺はまぁその、そういう目で見てなかったですけど...言われてみたら整った顔立ちはしてますね」
「あれ、オリアス先生は好みじゃなかった?」
「敵かもしれないって悪魔を好みかどうかなんて分かりませんよ」
「真面目だなぁ〜。まぁでも見かけによらず紳士ですもんね〜オリアス先生は」
「からかわないで下さいっ」
そんなやり取りをしていればまたノックする音が聞こえてきて顔を出したのはまさかのあの生徒。
「えっ入間くん?!どうしたの、どこか怪我でもしたかい?」
「こ、こんにちはダリ先生...とオリアス先生まで?」
「こんにちは、入間くん。で、どうしたの?ダリ先生が言うみたいに怪我でもしちゃった?」
「いえ、その...バラム先生に呼ばれて来たんですけど...」
「あぁ先についてたんだね、お待たせ入間くん」
「「バラム先生!」」
入間の登場で一気に騒がしくなった病室に音が賑わう。
しかし暫く話し込んだ後はバラムの申し出により、この部屋には今彼女を含めた3人しか居ない。
「...さて、と。盗聴防止」
「!え、何これ...声が」
「うん、ここは準備室じゃないし念の為にね」
そう言って入間にベッドの横に腰掛けるように促した後自分も同じように近くへと腰掛けたバラムは落ち着いた声色で話し出す。
「お願いしたやつは持ってきてくれたかな?」
「あっ、はい!一応バラム先生に言われてから持ち歩くようにしてますので」
「いい子だね。ちょっと借りてもいいかな」
「どうぞ!まだまだいっぱいあるので」
「ありがとう」
入間から小瓶を受け取った後、バチバチっと何やら魔術を施したのか眠る彼女に手を翳してから全身にくまなく香水を振っていくバラム。
「うん、やっぱりか」
「あ、あの。この女性って...」
「どういう経緯かは分からないけど、教師寮に迷い込んじゃってたみたいだね」
「そうなんですね。でも良かった酷い怪我をしてるようだから...」
「....。君と同じ、人間だよ」
「...えっ?!この人も?!」
「恐らく、だけどね」
香水で人間独特の臭いが消えた事、耳や爪の形や諸々悪魔との違いについて説明を受けた入間はほえ〜と口を開けながら説明を聞いていた。
「侵入者の報告を受けた時はびっくりしたんだけど...特徴からしてもしかして、と思ってね」
「僕以外にも人間が居るなんてびっくりです」
「状況からして何かに巻き込まれたのかもしれないな」
「そう...なんですか。でも、ここなら安全ですね」
「いや、そうとも限らないよ。現状彼女は寮に忍び込んだ捕虜としてここに居るしどうやら言語も通じないみたいなんだ」
「...あ!だから僕が呼ばれたんですか??」
「うん、それもあるけど、目が覚めた時同じ種族が居た方が心強いでしょ?」
柔らかく笑ったバラムに入間も笑顔を返し2人で話していると、その声に反応するかのように眠り込んでいた彼女の瞳がゆっくりと開いた。
「気がつきましたか?」
「.................!君は...」
「あ、僕入間って言うんですけど...言葉とかって通じてますか?」
なるべく怖がらせないように笑顔で話しかける入間に対して少しの間惚けていた彼女も、ゆっくりと頷いた。
「良かったぁ〜!もしかしたら言葉が通じないかもって心配してたので安心しました」
「.................」
「あ!そうだ、傷は大丈夫ですか?特に痛い所はあります?」
ニコニコと話しかけてきたかと思えば、次は心から心配している表情をしながら話す入間を見て、彼女は目を見開いたまま唇を震わせたかと思うと静かに涙を流し始めた。
「えっ?!あの、僕何かしちゃいまし
「こわっ....こわかっ.....た」
「え.................」
「いる、...いる、まくん....よかっ.....っ」
体が上手く動かせないのか、血が滲む傷だらけの手でベッドをぎゅっと握りしめながらも涙を流し続ける姿は余りにも儚くて気がつけば入間はそっと、彼女の掌の上に手を優しく重ねていた。
「もう大丈夫ですよ、貴方を傷つけるものはここには居ません」
「ぅっ.................、ぁ、ありがとう...........」
「っ....はいっ!だから今はこれを飲んでゆっくり休んでくださいね」
1人では起き上がれない彼女の背中を恐る恐るながらも起こしてあげたバラム。
その様子にゆっくりと頭を下げた彼女は、入間に助けて貰いながら薬を飲んだ後すぐにまた気を失うように眠ってしまった。
「...ありがとう入間くん、君が居てくれて良かった」
「いえ...僕は何も.....。それよりも、この後お姉さんはどうなっちゃうんですか?」
「そうだね...僕だけの意見じゃ何とも言えないけど、やり取りを見ていた限り彼女はどうやら保護対象のようだ」
「じゃあっ...!」
「ただ、僕の意見だけじゃ決められないからね。最終的には理事長の判断に委ねることになるかな」
「そう...ですか」
「ごめんね。でも、彼女が少し元気になってからもし怯えていたりしたら、その時はまた力を貸してくれるかな?」
「勿論ですっ、僕で良ければいくらでも!」
悲しみで溢れた顔から一転して、今は眠りにつく女性を心配する入間に笑みが溢れながらも、つい先程見た純粋な涙を思い出しバラムは静かに心を痛めていた。