それは、唐突な出会いだった。
色んな意味で心臓に悪いと言ってもいい出会いだ。
　


「ん.....んん...............まぶし...」



夢から引っ張り上げられるようにカーテンの隙間から差し込む柔らかな光。
もう朝か、何て少し夜更かししてしまった頭で考えながらも身体がまだ起きるのを拒んでいる。

つけっぱなしで寝てしまったクーラーが心地よく寝具を冷ましてくれているお陰か、いつも以上に布団の温かさが気持ち良くてまだ離れがたい。

どこからか香る魅力的な匂い誘われるように寝返りを打てばじわじわと感じる自分以外の体温。先程まで夢現だった頭は冷水を浴びたかのように覚醒した。



「.........................は」

「（え............俺、まさか...やっちゃった？！）」



慌てて自分の体に目をやりきちんと服を着ている事を確認。ドキドキと心臓が高鳴る中、原因と思わしき場所の布団を恐る恐るめくってみる。



「（.................良かった〜！とりあえず間違えは無さそう...だな。にしても、何だこの匂い...）」



惹きつけられる甘さに食欲を掻き立てられるような何とも言い難い魅惑的な香り。

先程感じたのはこれだったのかとクラクラしながらも身体を起こし、ベッド周りを見渡せば思考の端にあったそれらしき痕跡も見られず改めてほっとした。



「（そもそも、普通レベルの悪魔が教師寮のセキュリティを突破してくるとは思えない...その上今の今まで誰にも気が付かれずに、だ）」



安心したのも束の間、冷静さを取り戻した頭は瞬時にベッドから飛び降りて、警戒体制を整えた。



「（はぁ〜...何で朝からこんな目に）」



これは、俺が生きてきた悪魔生の中で最も色濃く記憶に残り幸せだった日々を描いた物語である。