《3.リアルな夢》


頬を撫でる感覚が気持ちよくてゆっくりと意識が浮上する感覚になる。



「あ..........、ん？」
　


眠る前の記憶が確かであれば、号泣した後パジャマを着てベッドで寝たはず...。
未だ寝ぼける頭を押さえながらゆったりと身体を起こせばぐっと掌に広がった感覚に、急速に意識が覚醒した。



「は？、、、え？外？？」



急いで飛び起きれば、そこには記憶のない海と山が目前に広がる。言いようのない不安と変な胸のドキドキが支配して足を見ると裸足であった事にも気がついた。

いつもの、夢だろうか

幼い頃から夢見が余り良くなくリアルなものほど現実になる所謂予知夢を見る事が多かった。

それ故なのか、普段見る夢も音も匂いも体温すらもリアルで、たまに夢と現実の違いが分からないぐらいには沢山の夢を見てきた自信はある。


とりあえず、ここに居ても分かる事はない為裸足なのは心許ないが、ゆっくりと道がありそうな山道に歩を進めた。


（何やねんこれ...めちゃくちゃ、リアルやねんけど）


軽くパニックになりながらも、虫に遭遇しないといいなとどこか冷静な頭で思いながら静かな森を歩き続けた。

幾分かすれば気持ちも落ちついて久々に触れる緑は心地良くて、そっと深呼吸をしてみる。うん、気持ちが良い。


吹き抜ける風や木々の擦れる音。キラキラと差し込む光すらも美しくてさっきまで、バクバクと鳴っていた心臓はいつの間にか落ち着きを取り戻していた。


（...うん。いっそ、夢やねんから楽しんでみるかー）


いつもの楽観的な感覚に笑いながらもせっかくの明晰夢やし楽しもうという気持ちが勝っていく。


寝る前はあんなに悲しかったのに、初めてここまで意識のある夢の感覚にワクワクした気持ちが抑えきれず、そんな感覚に救われながらもいつの間にか鼻歌を歌っていた。



だから、反応が少し遅れた。



ガサガサっという大きな音に振り返れば目の前には、大柄な男達が4人。明らかに好意的ではない視線と笑みに静かに下ろした目線の先には大きな武器が握られている。

それを認識するや否や、あれは一体何なのかとはっきり意識する前に身体が走り出していた。



「はぁっ......はっ、、」



あいにくと、昔から変な人につけられたりする事は多かったので心臓は痛いぐらい鳴っているが走り慣れた身体で走り抜ける。どこか撒ける場所はないかと頭で色々考えを巡らせながらも必死に目線で探してみるが


（本間、どこやねんここっ...!夢なら早く覚めてくれ）


生憎といつもの夢とはまた違ったリアルさで、その妙な感覚が逆に怖かった。
たまに後ろを確認しつつ相手との距離に多少は安心するがこのままじゃ捕まるのは時間な問題だった。