《64.偉大な人への誓い》


「ほぉ。それじゃあルフィとエースがああなるまでには随分時間がかかったんじゃなあ」

「そうなんですよ。どれだけ天気が荒れようが相手にされなかろうが一生懸命エースの後をついてく姿はやっぱ心にくるものがありましたね」



あの後、帰ってくる気配のないエース達をおいて先にお風呂を頂けば久しぶりの仕事がゼロは思った以上に時間がとれて、お風呂上がりはまったり気分。後は寝るだけだなと居間で過ごしていれば、ガープさんだけ帰ってきたので隣にお呼ばれして話をしていた。



「....なんちゅーか、お前さんを見とるとあやつらの母親から話を聞いとるように思えてくるのォ」

「.....ははっ！何ですかそれ（笑）」

「あやつらの調和を望みつつも、必要以上に手は貸さん。かと思えば、それぞれの成長が嬉しくて仲良ォしとるのが何よりも幸せみたいな顔に見えてな。なぁに、年寄りの戯言じゃよ」



何とのうそう感じただけじゃがな、とお酒をあおりつつ笑うガープさん。意識した事はなかったものの、何だかここにいる自分という存在を少し認めて貰えた気がして嬉しくなった。



「今はまだ、私自身も力が無くて守られるばっかりですけど、先に待つ未来で必ず、皆の力になりたいなって思ってます」

「.....という事は、やっぱり嬢ちゃんも海賊を目指すのか？」

「うーん、どうなんでしょうね。海賊とか海兵とか考えた事も無かったな...。ただ、守りたいものの為に生きていくと決めてはいるので、もしかしたら必要に応じてどこかに組みするとかはありそうかなと」



悩みながらもそう伝えれば、言わんとすると事を理解したのか静かに目を細められる。



「....そうか。それがお嬢さんの正義なのかもなあ。話を聞く限りお前さんの言う事は聞きそうじゃし、ますますあやつらに海兵への道を説き伏せてほしいわい」

「それは...どうでしょうね（笑）」

「何にせよ、わしはあんまりここにも来れなんだ。あやつらには手を焼くじゃろうが、よろしく頼むな」

「！...はい、勿論。こちらこそです」



幾度となく聞いてきたそのフレーズが、頭の奥でリフレインされる。.....あぁ、やっぱりこの人はエース達を育てた偉大な方なのだなあとなんだか少し泣きそうになってしまった。



「ガープさん」

「ん？どうしたんじゃ」

「もしいつか...どうにもならない事が起きても、必ず、必ず私も守れる程強くなるので、もしそれが叶わなかった時はどうか私を殴り飛ばして下さい」

「......なんじゃ、含みのある言い方じゃな」

「...........はい。今はまだ。もしかしたらこの先も、驕りがあると言われるやろうけど、ちゃんとそれに見合うよう努力するので、ルフィ達のおじいちゃんであるガープさんに強くなると誓わせて下さい」

「...分かった。嬢ちゃんが何を思うて言うとるのかは知らんが、覚悟は受け取っておこう」



もし就職先に困ったら修行ついでに海兵にでも来いと行ってくれた優しさに、返せる限りの笑顔で返して勝手なお願いをすみませんと謝れば大きな掌で頭を撫でられた。久々に感じる頭の熱に、どこかくすぐったくなって本当に温かい人なのだなと感じた。