《63.愛あるゲンコツ》


結局皆がそれぞれ掴まえたのを2匹ずつだけ虫籠に閉じ込めて帰路へと向かう。はしゃいだせいでお腹が空いたのかヘロヘロとしながらルフィが歩くので、そっと手を差し出せば嬉しそうに握ってきた。



「なあなあ名無しさん、マキノのメシ肉いっぱいあるかなあ」

「あるんちゃうかなー。マキノさん料理上手そうやし」

「おうっ！マキノも料理すっげえうめえぞ！オムライスの時旗立ててくれるしよ」

「凄いなーそれ。楽しみやねぇ」



腕をめいっぱい揺らしながら、時々ぐるんと回してくるルフィ。こんな可愛い弟だったらいつでも歓迎だなと思いつつ破顔する。チラッと後ろを覗き見れば、微笑ましそうに笑うエースとサボと目があったので、お兄ちゃんやねえと呟けば、焦ったように声が上がった。

最終的には駆けっことなりあっという間に家へとつけば、それはもう良い香りが外にも香ってきていて、我先にと玄関に走る姿はとても可愛い。



「マキノーっ！今帰ったぞー！」

「あら、お帰りなさいルフィ。皆もお帰りなさい、ちょうどご飯も出来た所よ」



数時間ぶりに見た笑顔のマキノさんはやっぱり美人で、本当非の打ち所がないなと見入ってしまう。色とりどりに並べられた食事さえも綺麗で、やっぱりこれはモテモテだよ村長さんと心に思った。

そんな、いつもより皆の心が浮き足立った食事を迎えていると何やら気配を感じたので玄関の方へそっと視線を移せば、覚えのある余りに大きい人影に小さく声が漏れてしまう。



「お嬢ちゃん、久しぶりじゃのう。元気にしとるか？こやつらに迷惑かけられとらんか」

「ガープさん...！お久しぶりですね、元気そうで何よりです」



３人にゲンコツを落としながらも笑顔で話しかけてくれるガープさん。色んな意味でやっぱり凄くて皆には悪いがまた会えた事を嬉しく思った。



「ずりぃー！何で名無しさんにはゲンコツ無しなんだよ！贔屓だぞじいちゃん！」

「この子は海賊なんぞになるなんて言っとらんじゃろうが」

「なるよ！おれがするって決めたんだ！な、名無しさん！」

「え、ぇえええそうなの？？初耳なんやけど」



さも前から決めてましたと言わんばかりに堂々と言い放つルフィ。勿論そんな話はした事がなかったので、思わず声が上擦ってしまえば、焦ったようにエースが声をあげる。



「おいルフィ！それは言わねえ約束だろ！」

「あっ、しまった！おれは名無しさんを海賊にするつもりだけど、エースとサボには駄目だって言われてんだった」

「〜〜〜〜あーもーまた全部言っちまいやがったよこいつ....」

「諦めろエース、ルフィには何を言っても秘密とか無理だ」



何やらどこかで話が進んでいたのだろうそれに、当事者であるが蚊帳の外。少しの間ほうけていれば、皆の姿は何処にもなかった。



「あ、あれ？エース達は？」

「ガープさんが連れてったよ。愛の拳じゃーとか言いながら追っかけ回してた」

「そうなのか、はははっ！面白いなあ」



声に出して笑えば、笑い事じゃないよ全くもうとダダンさんが言うのでそうなのかなあと一人で笑った。想像以上に豪快な方のようで流石ルフィのおじいちゃんだ。