《49.寝起きと誤解》


良い香りが漂ってきて、何処に居るんだろうと不思議に思っていると暖かかったものがどこかへいって一気に意識が浮上してくる。



「名無しさん、そろそろ起きな」

「......ん、...だだん、さん？」

「そうだよアタシだ。さっさと起きな。昼メシが無くなっちまうよ」



そう言うや否や、部屋から出て行く様を見てぼーっとしながら頭を整理していると、段々と自分が寝過ごしたという事実に気がついて冷や汗たらたらにかけ出した。



「す、すみません皆さん！めちゃくちゃ寝坊してしまいました！」



ガバっと頭を下げてお肉を頬張る皆に謝ると、何故だか誰一人責める人はいなくてますます申し訳なさが募ってくる。



「どうせルフィが帰ってくるまで起きてたんだろ」

「なんで、それを...」

「朝の様子を見りゃすぐに分かるさ。起きてから部屋を覗きゃ座ったまま寝ちまってんだからよっぽどだろうってお頭が」

「あれ....でも、起きた時お布団の上におったような」



そういえばそうだった。寝る前自分は座って寝たはずだと顔に出ていたのだろう



「エースが運んでやったんだろうさ。ったく、アタシらにゃあちっとも懐かない癖して名無しさんには優しくしてやろうってんだから怒るに怒れねえよ」

「とりあえず顔洗ってこいよー」

「メシが覚めちまうぜ」



ニコニコと笑う皆に改めて謝罪とお礼を伝えて顔を洗いにいく。学生以来久しぶりにやってしまったなあと落ち込んで、今日の修行はお休みをして家の事をしようと反省をした。


（やってもたもんはしゃーない。こっから挽回するぞ）


おしおしと、気合いを入れ直せばいつもは残っていないはずのお肉がドンと残されていて、甘やかされてるなあと胸が温かくなる。


そこからはいつもは手の届きにくい靴磨きや棚の掃除と武器庫の整頓。いつも以上に精を出していれば夕方なんてあっという間で。



「マグラさーん。ちょっとお野菜摂ってきますねー」

「はいよー行ってきなー」



何を作ろうかと籠を抱えていれば



「あ、エースーお帰り」

「おう帰ったぜ。今から畑か？」

「せやねん寝坊してもてさ...っとそうやった。朝はお布団ありがとうな」

「...なんだ、起きてたのか」

「ちゃうちゃう、後からドグラさんに聞いたんよ。お陰様でめちゃくちゃゆっくり休めました（笑）」

「あいつ...。まあいいや。今日は鹿肉持ってきたから頼むぜ」



笑顔で通り過ぎていくエースを見送りつつもそれはそれは大きい鹿をみて、捌いてもらわなければと急いで野菜をゲットしてからダダンさん達に声をかけた。

いくら生きていく為とはいえゼロから捌いてお肉をとるのはいつまで経っても全然慣れない。

しばらくすると、こっちに走ってくるルフィの姿が見えて今日も傷だらけになっているなと苦笑いした。



「ルフィ、お帰りー」

「おう！ただいま...って違う！誰がお前ら何かと口を聞くか！」

「.....へ？」



良い笑顔でただいまと言ってくれた割には、すぐにむんっと口をへの字にしたものだから何かしてしまったっけと考える。でもそもそも会話ほぼしてなかったはずと思い至って時間が解決するかーとポチに餌をあげながら思った。