《1.すべての始まり》


「エースが死んだらしいよ」



今日も今日とて仕事が忙しく、やっと終わりを迎えた会社内で偶然耳が拾った一言に世界が一瞬にして音を無くした。

さっきまで笑い合っていた同僚と駅で分かれてトボトボと、心なしかいつもよりゆっくりな歩調で仕事終わりの身体に鞭を打ちながら帰る。



「嘘やろ、ぜったい」



思い返すのは、後ろから聞こえてきた後輩達のある言葉


″エースが、死んだらしいよ”


こんなにも心臓が苦しくなるワードが今まで生きてきて経験があっただろうか。


信じきれない気持ちとは裏腹に、自分の目で確認したい気持ちも交差して今日の朝一でゲットした新巻を無意識に触っていた。


怖い
信じたくない
嘘だ


かぶりを振って止まりかけていた歩を進める。


（そうや、まずはご飯。でもってお風呂にすっこんでそこから考えよ）


朝一で新巻を手にした時はあんなにも幸せだったのに、いつもの胸の高鳴りはいつの間にか別の鼓動へと成り代わっていた。