《29.いつもの朝》


「ぶさいく」

「......、おはよー」



その日は朝から憂鬱だった。

あんなに綺麗なものを見納めてから気持ち良く寝入ったというのにこの仕打ち。


（たしかに、夜更かしはしたけどさぁあ...目が、あかん）


いつもより少ない睡眠といつもより眩しく感じる光。目を閉じたまま半身を起こして固まっていれば、横から聞こえた辛辣な言葉に気持ちは分からんでもない、と思い寝直す。



「っ、おい名無しさん!今日は朝から予定があるって言ってんだろ、起きろ！」

「んーーー」



毎朝エースは元気よなあ、、、と思いながら、重たい身体を何とか起こした。



「ふふ、おはよーエース」

「はいはいおはよ。ほらさっさと支度しろ」

「はいはーい...」

「ばっ！あっちで着替えろ！」

「ん...あぁごめんごめん」



働かない頭でふわふわとしながら今日の予定を思い出す。


（....あ、そうやった確か筋トレ付き合ってくれるんやったか）


徐々に覚めてきた頭は、さっきの事を思い出してきて濡れた顔を拭きながらも、女っぽさのカケラもない自分も一応女の部類なのかと鏡に映った短い髪、豊満とは言えない貧相な身体を見て思う。


（もうすぐとしごろ？年頃っていつや...ま、いっかあ）


例えば自分が絶世の美女とか、ナイスバディならまだしもこれじゃあなあと笑い飛ばす。

何にせよ、今日も今日とてエースは可愛いかったな〜と最早日常になった感想だ。



「エースー、お待たせしました」

「遅え」

「ごめんな、やっと頭が起きたよ」

「ったく名無しさんは今までどうやって起きてたんだよ」



いかにも呆れたため息に目覚まし時計のお陰です、とだけ心の中で呟いておいた。



「おっしゃー、はよ行くでエース」

「お前が言うな」



今日も楽しい一日になりそうである。