エンドライフ④
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《38.待ち侘びた電話》
名無しさんは今ハートの海賊団を見送ってから小一時間電伝虫を見ては席を立ちあっちこっちを歩いていた。
(電話するって約束した手前、声も戻ったしかけななんやけどな)
...純粋に怖いのだ。喋れるようになった今、マルコ達の声を聞いてしまえば、そっちに帰りたいと縋りつくような言葉が出てしまいそうで自分の決意が揺らいでしまいそうで怖かった。
それでもきっと優しいマルコの事だ、電伝虫の前で待ってくれているだろう事は予想がついたし今回の件ももしかしたら咎められる事も無くいつものように優しい言葉をかけてくれるだろう事も分かっていた。...それでも、
「たった数%ある、もう2度と白ひげ海賊団に関わるなって言われるかもしれん拒絶が...怖いんやろなぁうちは」
勿論そんな事を言う人では無いのは分かってはいたが、親父とエースに関わる事が事だ。今後皆に会うつもりは無くたって、せめてまだ自分を好いてくれてた事実を抱いていたかったのだ。
会うつもりが無いからこそ、これから一人生きていく糧として幸せな思い出のままで残していたかった。
自分の事ばかり考えてしまう弱い自分に笑って拳を握る。
(...それでも、やっぱし.....事実は受け止めなあかん、よな)
最後に見た何も語る事の無くなってしまった親父の姿を思い出しては心臓が締め付けられる。
あんなに大切にしてくれた皆の事を自分は裏切ってしまった上にエースに生の喜びを感じて欲しくて利用したも同然なのだ。軽蔑されても...仕方がないのだとどんな時でも味方をしてくれていたマルコの笑顔を思い出しては唇を噛む。
「はーー......弱い、なあ(笑)」
こんなにも自分は人から嫌われる事に対して臆病だっただろうかと、自分自身へと問い掛ける。以前の自分はもっと楽観的でなるようになるさ精神で居たからこそ、特に考えた事もなかった事柄。
それでも躊躇無く黒ひげを手にかけた自分の恐ろしさやエゴという醜い感情をまざまざと見せつけられて、お前が怖いとやっぱり異質な存在だと否定されるのが怖くて仕方がないのだ。
「.................もう、逃げんのはやめや。どうとでも、なれ」
震えてしまう手をぎゅっと握って深呼吸を繰り返す。
いつもと同じように、何一つ変わらないように、笑顔で、話を聞けばいいのだと何度も何度も言い聞かせてから電伝虫のダイヤルを回した。
「プルプルプルプルプルプル」
「(はー......緊張、するな)」
「プルプルプル、プルプルプルプル」
「(.....寝とうのかな、いやでもまだ18時にすらなってへんしな)」
「プルプルプルプルプルプル」
「(...........。)」
「プルプルプルプル、プルプルプル」
こんなにもコールの時間が長いと思った事は今までに無かった。もしかしたらあれはローくんの前だったから掛け直せと言われただけで、本当は掛けても欲しくなかったのかもしれないといつもは必ずすぐに出てくれたマルコの事を思い出しては、嫌な思考ばかりが頭を占めていく。
「プルプルプルプルプルプル」
「(.......あと、ワンコールあかんかったら...、終わりにしよう)」
浅くなる呼吸を何とか宥めてドキドキと早くなる心臓を落ち着かせる。...もう、これで繋がらなかったら本間の意味でさよならをしなければとキリキリと痛みを覚え始めた心臓を押さえて、じっとコール越しの声を待つ。
「プルプルプルプルプルプル」
「っ....ふー.........、そっかあ...」
ーガチャン...
震えそうになっていた吐息はもう隠さずに、音のなっていた電伝虫の受話器をそっと戻した。
もしかしたら戦闘中だったのかもしれない
もしかしたら眠ってしまっていたのかもしれない
もしかしたら皆と騒いでいて気がつかなかったのかもしれない
「もしかっ、したらっ........っ、!!」
考えたく無かった現実を見せつけられた気がして、熱い何かが頬を伝った。自分がこの世界に来て、唯一の居場所をくれた海賊団。
それを自分の手で壊してしまったのだと、ぽたぽたと落ちる何かがテーブルに染みを作っていったがそんな事はもうどうでも良かった。
皆の優しかった笑顔が浮かんでは消え、消えては浮かんでを繰り返して頭をぐしゃぐしゃとかき混ぜながら膝を抱えて座り込む。
「はー......楽しかった。幸せやった....最高の人生や...へへ」
結局自分はこの世界で生きるちっぽけな歯車にすらなれなかったのだと思いながらも、エースが親父がサッチが生きる世界を守れて良かったと心から思った。
「.......お前も今日までいっぱい、いっぱい縁を繋いでくれてありがとうな」
じっとこちらを心配そうに見てくる電伝虫を撫でれば照れたように笑って、その表情を見ているだけで心が少し和む。
「ほな、お別れや。ここの森は怖い生き物もおらんし食べ物も豊富にある」
自由に生きてくんやで、と甲羅に仕掛けてあったパーツを全て取り除けば、久しぶりに軽くなったからか嬉しそうに動き回る電伝虫を見て頬を伝っていた何かを拭い庭の草むらに離してあげた。
「ほなな、元気にやるんやで」
しゃがみ込んだまま手をふればまた嬉しそうににっこりとしながら森へと去っていく電伝虫を見て、少しだけ寂しさは募ったがクヨクヨばかりもしていられないなとグッと伸びをする。
「はーーーー.......おし、切り替え!」
コルボ山にも似たこの丘からの景色。
本当に、懐かしいなと思いながらも沢山幸せな思い出は貰ったと笑顔を作った。
(いつか、こんな事もあったよなって笑える時がくるさ)
「さってとーー....やるかーー!」
両手を空へと伸ばし決意を固める。
まずは街で新しく電伝虫を迎え入れたらレイリーさん達へと電話をして、ダダンさん達に会いに行こうと心に決めた。
「ありがとうなーーーー!エースーー!親父ーー!マルコーー、ビスターー、イゾウーー、サッチーー、みんな...皆だいっすきやでーーーーー」
誰にも聞かれる事の無い思いを海へと向かって叫んでみれば、自然と笑顔は浮かんできてやっぱり皆は特効薬だなといつかに話した会話を思い出した。
帰る居場所は無くなってしまったけれど、会う事はもう叶わないけれど、やっと全てを終える事が出来たのだと、一方的に思う事だけ許されたいとだけ願いながら明日の朝ごはんの調達に街へと向かう。
(美味しいデザートがあったら買い込んでもいいかもなー)
戻ってきそうになる悲しみに蓋をして、これからの事へと思いを馳せる。成し遂げたかった事をし終えれば、やっとこれからが自分の本当の人生なのだ。
生きる喜びをくれてありがとうと笑いながらも、名無しさんはゆっくりと街への道を進んで行った。
名無しさんは今ハートの海賊団を見送ってから小一時間電伝虫を見ては席を立ちあっちこっちを歩いていた。
(電話するって約束した手前、声も戻ったしかけななんやけどな)
...純粋に怖いのだ。喋れるようになった今、マルコ達の声を聞いてしまえば、そっちに帰りたいと縋りつくような言葉が出てしまいそうで自分の決意が揺らいでしまいそうで怖かった。
それでもきっと優しいマルコの事だ、電伝虫の前で待ってくれているだろう事は予想がついたし今回の件ももしかしたら咎められる事も無くいつものように優しい言葉をかけてくれるだろう事も分かっていた。...それでも、
「たった数%ある、もう2度と白ひげ海賊団に関わるなって言われるかもしれん拒絶が...怖いんやろなぁうちは」
勿論そんな事を言う人では無いのは分かってはいたが、親父とエースに関わる事が事だ。今後皆に会うつもりは無くたって、せめてまだ自分を好いてくれてた事実を抱いていたかったのだ。
会うつもりが無いからこそ、これから一人生きていく糧として幸せな思い出のままで残していたかった。
自分の事ばかり考えてしまう弱い自分に笑って拳を握る。
(...それでも、やっぱし.....事実は受け止めなあかん、よな)
最後に見た何も語る事の無くなってしまった親父の姿を思い出しては心臓が締め付けられる。
あんなに大切にしてくれた皆の事を自分は裏切ってしまった上にエースに生の喜びを感じて欲しくて利用したも同然なのだ。軽蔑されても...仕方がないのだとどんな時でも味方をしてくれていたマルコの笑顔を思い出しては唇を噛む。
「はーー......弱い、なあ(笑)」
こんなにも自分は人から嫌われる事に対して臆病だっただろうかと、自分自身へと問い掛ける。以前の自分はもっと楽観的でなるようになるさ精神で居たからこそ、特に考えた事もなかった事柄。
それでも躊躇無く黒ひげを手にかけた自分の恐ろしさやエゴという醜い感情をまざまざと見せつけられて、お前が怖いとやっぱり異質な存在だと否定されるのが怖くて仕方がないのだ。
「.................もう、逃げんのはやめや。どうとでも、なれ」
震えてしまう手をぎゅっと握って深呼吸を繰り返す。
いつもと同じように、何一つ変わらないように、笑顔で、話を聞けばいいのだと何度も何度も言い聞かせてから電伝虫のダイヤルを回した。
「プルプルプルプルプルプル」
「(はー......緊張、するな)」
「プルプルプル、プルプルプルプル」
「(.....寝とうのかな、いやでもまだ18時にすらなってへんしな)」
「プルプルプルプルプルプル」
「(...........。)」
「プルプルプルプル、プルプルプル」
こんなにもコールの時間が長いと思った事は今までに無かった。もしかしたらあれはローくんの前だったから掛け直せと言われただけで、本当は掛けても欲しくなかったのかもしれないといつもは必ずすぐに出てくれたマルコの事を思い出しては、嫌な思考ばかりが頭を占めていく。
「プルプルプルプルプルプル」
「(.......あと、ワンコールあかんかったら...、終わりにしよう)」
浅くなる呼吸を何とか宥めてドキドキと早くなる心臓を落ち着かせる。...もう、これで繋がらなかったら本間の意味でさよならをしなければとキリキリと痛みを覚え始めた心臓を押さえて、じっとコール越しの声を待つ。
「プルプルプルプルプルプル」
「っ....ふー.........、そっかあ...」
ーガチャン...
震えそうになっていた吐息はもう隠さずに、音のなっていた電伝虫の受話器をそっと戻した。
もしかしたら戦闘中だったのかもしれない
もしかしたら眠ってしまっていたのかもしれない
もしかしたら皆と騒いでいて気がつかなかったのかもしれない
「もしかっ、したらっ........っ、!!」
考えたく無かった現実を見せつけられた気がして、熱い何かが頬を伝った。自分がこの世界に来て、唯一の居場所をくれた海賊団。
それを自分の手で壊してしまったのだと、ぽたぽたと落ちる何かがテーブルに染みを作っていったがそんな事はもうどうでも良かった。
皆の優しかった笑顔が浮かんでは消え、消えては浮かんでを繰り返して頭をぐしゃぐしゃとかき混ぜながら膝を抱えて座り込む。
「はー......楽しかった。幸せやった....最高の人生や...へへ」
結局自分はこの世界で生きるちっぽけな歯車にすらなれなかったのだと思いながらも、エースが親父がサッチが生きる世界を守れて良かったと心から思った。
「.......お前も今日までいっぱい、いっぱい縁を繋いでくれてありがとうな」
じっとこちらを心配そうに見てくる電伝虫を撫でれば照れたように笑って、その表情を見ているだけで心が少し和む。
「ほな、お別れや。ここの森は怖い生き物もおらんし食べ物も豊富にある」
自由に生きてくんやで、と甲羅に仕掛けてあったパーツを全て取り除けば、久しぶりに軽くなったからか嬉しそうに動き回る電伝虫を見て頬を伝っていた何かを拭い庭の草むらに離してあげた。
「ほなな、元気にやるんやで」
しゃがみ込んだまま手をふればまた嬉しそうににっこりとしながら森へと去っていく電伝虫を見て、少しだけ寂しさは募ったがクヨクヨばかりもしていられないなとグッと伸びをする。
「はーーーー.......おし、切り替え!」
コルボ山にも似たこの丘からの景色。
本当に、懐かしいなと思いながらも沢山幸せな思い出は貰ったと笑顔を作った。
(いつか、こんな事もあったよなって笑える時がくるさ)
「さってとーー....やるかーー!」
両手を空へと伸ばし決意を固める。
まずは街で新しく電伝虫を迎え入れたらレイリーさん達へと電話をして、ダダンさん達に会いに行こうと心に決めた。
「ありがとうなーーーー!エースーー!親父ーー!マルコーー、ビスターー、イゾウーー、サッチーー、みんな...皆だいっすきやでーーーーー」
誰にも聞かれる事の無い思いを海へと向かって叫んでみれば、自然と笑顔は浮かんできてやっぱり皆は特効薬だなといつかに話した会話を思い出した。
帰る居場所は無くなってしまったけれど、会う事はもう叶わないけれど、やっと全てを終える事が出来たのだと、一方的に思う事だけ許されたいとだけ願いながら明日の朝ごはんの調達に街へと向かう。
(美味しいデザートがあったら買い込んでもいいかもなー)
戻ってきそうになる悲しみに蓋をして、これからの事へと思いを馳せる。成し遂げたかった事をし終えれば、やっとこれからが自分の本当の人生なのだ。
生きる喜びをくれてありがとうと笑いながらも、名無しさんはゆっくりと街への道を進んで行った。