エンドライフ④
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《7. この世界はいつだって、貴方の為に③》
初めてみた名無しさんの嬉しそうで泣きそうな強い笑顔。
その表情を見た瞬間ふと、それはとても覚えのある表情のように思えて、何故だかは分からないがエースの脳裏には自分がまだ小さな子供だった頃の記憶が蘇っていた。
「.....ほな、ちょっと待っとってなエース」
返事のない様子に名無しさんは軽く首を傾げながらも長居は出来ない為か少し足早に目を閉じたままで居るジンベエの前でそっと膝を折った。
「ジンベエ....さん。起きとうんやろ?」
「...はははっ、何じゃ気づいておったのか」
「そらもう貴方程の人物の気配は分かりますよ」
探るような目線で笑いかけられるが、初対面かつこんな場所にいきなり現れれば当然かと思いながら名無しさんは笑顔を返した。
その表情に一瞬ジンベエの顔も固まるが気にも止めないかのようにすぐに警戒心を取り戻していく。
「初対面やのにいきなりごめんなさい、うちは名無しさんと言います。訳あって親父の船に乗ってました」
「!ほお...オヤジさんの船に君も乗っていたのか」
「へへっ数年だけですけどね!ほな、突然で驚くと思うし信用出来ひんとは思うけど今貴方に出来る治療を最低限でもさせて下さいね」
頭を下げてからジンベエが返事をする前にエースにしたように言葉を紡ぎ手をかざした名無しさん。すると先程と同じように淡い光がジンベエの身体を包んでいき簡単な傷や怪我はみるみるうちに消えていってしまう。
「この力は.....まさかお主」
「ジンベエさん。それはどうか(ご内密に...)」
エースには見えないようそっと人差し指を立てて目で訴える。すると気持ちを汲んでくれたのか軽くだけど目で頷いてくれたジンベエさん。
「......分かった」
「へへへありがとう。親父から話には聞いた事あったけど、エースと同じ牢屋におるのが貴方で良かった」
ありがとうと再度頭を下げた名無しさんに少なからずも驚いたジンベエは言葉を無くす。するともう一度だけ目を閉じてて下さいと名無しさんに促されジンベエは拒否をする気にもなれず言葉のままに従った。
事の次第を見守っていたエースは色々と聞きたそうな顔をしていたが敢えてそれには気がつかないふりをした名無しさんはエースの前にしゃがみ込みその顔を見つめる。
「.....なぁ、エース」
「どうした」
「エース、」
「っ、だからどうしたってんだよ
「...生きててくれて、ありがとうなっ....」
「!!!」
...出会った時から変わらない、謂わばおまじないのようなそれ。
自分何かの為を思って泣きながら伝えられてきた言葉を、泣きそうな顔で声を震わせそれでも笑った名無しさんにどうしようも無く胸が締め付けられた。
自然と唇を食いしばり目線を落とせばほのかにだが自らの頬に温度が宿った気がして誘われるように目線を戻すと過去に何度も...何度も見た事のある柔らかい笑顔で笑う彼女がいた。
「......................、あ ?」
震える手のひらで頬を撫でいつかの自分がした時のようにここにある存在を確かめるかのように触れてくる名無しさん。その姿にエースは言葉には出来ない気持ちが掻き立てられてしまい何故だかまた昔の会話が頭を過ぎる。
「...は?強えのに守るのか?」
「そう。守りたいんよ全部さ」
「全部って?」
「うーん、そうやなー。例えば...身体は勿論やけど、心とか思いとかその人の抱えるもんぜーんぶ。へへへ、重たいやろ(笑)」
はにかみながらも、どこか泣きそうで嬉しそうで慈愛に満ち溢れていたあの日見た名無しさんの眼差し。
それが今、自分自身へと向けられているのは一体何故なのかとか、思えばそもそもあのおまじないのような言葉を繰り返し使う前はどうして泣いていたのかとか、当時は気にならなかった沢山の疑問が、浮かんでは消えていく。
「痛かったよな、ごめんなあ」
自分以上に痛そうな顔をしながらも笑顔を作る目の前の名無しさん。
そこでやっと、彼女が昔から言う守りたい人が誰なのか。誰の為にガキの頃から傷を作りながらも頑張っていたのかにようやく合点がいって...
「お前....まさか、」
「エースが生きとってくれて、本間に、うれしいっ...。あの時うちを守ってくれて、止めてくれてありがとう...!」
まるで泣きそうな顔を見られたくはないかのように音も無くぎゅっと抱きついてきた名無しさん。そのあまりにも優しく温かいぬくもりにドクンと脈打つ心臓の早さを痛い程にエースは感じていた。
数秒だったのか数分だったのかは分からないが、たった一度名無しさんが与えてくれた初めてのぬくもり。
胸を支配していた氷のような悲しみは全て消え去ってしまったとすら思えた瞬間、やっと今まで自分が彼女に対して抱えていたものが何だったのかを理解した。
「.....っと、へへいきなしごめんな!つい感極まってもて」
「.......別に、好きにしろよ」
「なっ....いやいやいやジンベエさんもおる手前そんな急にデレられても」
「嫌なのか?」
「〜〜〜〜....あー、もうっ」
口をへの字にしながらジッと見つめてくるエースに、その顔に名無しさんが弱いのだと知ってやっているのかは分からないが頬を赤く染めたままエースの頭をぐしゃぐしゃにしていく名無しさん。
「お前はすーぐそうやって誤魔化す」
「誤魔化してへん」
「いーや、誤魔化してるさ。おれは知ってんだ」
「そう言うエースこそよくやっとった癖に」
「おれはいいんだよ」
「何でやねん」
「おい、お前さんら」
「「!!」」
ついうっかり、いつものペースでやり取りをしていると呆れたようにジンベエが声をあげ2人揃ってビクリとなった。
「そろそろその子が仕掛けてくれてた麻酔が切れてきたのか他の囚人達が起きてきておる」
「!あちゃー...やっべ。えーと、ほな、そんなこんなで一旦うちは退散するとします」
「....名無しさんっ!」
「へ?どうしたエース、何か親父達に伝言?」
「いやっ違ェ。そうじゃなくて、本当に大丈夫なんだろうな?」
エースの言わんとする事が帰り道の事なのだと気がついてゆっくりと微笑みながら身体に能力を施していく。すると一瞬で姿が見えなくなった名無しさんにエースが焦ったような声をあげると、頭にふと温もりが宿った。
「エース、一緒に連れ出せんくて、ごめんな。力不足で、ごめんな。でも絶対に、諦めたらあかんよ」
それだけ告げる柔らかい声にもう一度だけでも顔が見たいと思ったエースだったが名無しさんはもう姿を表す事はなく。声だけだったが、ジンベエにもエースをお願いする旨を伝えていた名無しさん。
最初とは違った笑い方をしているジンベエを見てまたもや変な締め付けがエースの胸を襲った。
「また、外で必ず会おな。.....生きるで、エース」
それだけ告げて今度こそ居なくなってしまったのか何度名前を呼んでも返ってこない返事に、今の全部が夢だったのではと思ってしまう。
「エースくん」
「ジンベエ....」
「いい彼女さんを見つけたなあ」
「かっ!...のじょではねェーよ、その...まだ」
「ははははは!若いのぅ」
「ううううるせェーぞジンベエっ!」
月の光すらも届かない鉄壁の要塞インペルダウン。
冷たくも悲しみが溢れるはずのその場所は今この瞬間だけはあたたかい笑顔に包まれていて。
....名無しさんが監獄を後にするのと同時、ルフィがこの要塞に足を踏み入れていた事をエース達はまだ知る由もない。
さあ、物語の終幕へ。
初めてみた名無しさんの嬉しそうで泣きそうな強い笑顔。
その表情を見た瞬間ふと、それはとても覚えのある表情のように思えて、何故だかは分からないがエースの脳裏には自分がまだ小さな子供だった頃の記憶が蘇っていた。
「.....ほな、ちょっと待っとってなエース」
返事のない様子に名無しさんは軽く首を傾げながらも長居は出来ない為か少し足早に目を閉じたままで居るジンベエの前でそっと膝を折った。
「ジンベエ....さん。起きとうんやろ?」
「...はははっ、何じゃ気づいておったのか」
「そらもう貴方程の人物の気配は分かりますよ」
探るような目線で笑いかけられるが、初対面かつこんな場所にいきなり現れれば当然かと思いながら名無しさんは笑顔を返した。
その表情に一瞬ジンベエの顔も固まるが気にも止めないかのようにすぐに警戒心を取り戻していく。
「初対面やのにいきなりごめんなさい、うちは名無しさんと言います。訳あって親父の船に乗ってました」
「!ほお...オヤジさんの船に君も乗っていたのか」
「へへっ数年だけですけどね!ほな、突然で驚くと思うし信用出来ひんとは思うけど今貴方に出来る治療を最低限でもさせて下さいね」
頭を下げてからジンベエが返事をする前にエースにしたように言葉を紡ぎ手をかざした名無しさん。すると先程と同じように淡い光がジンベエの身体を包んでいき簡単な傷や怪我はみるみるうちに消えていってしまう。
「この力は.....まさかお主」
「ジンベエさん。それはどうか(ご内密に...)」
エースには見えないようそっと人差し指を立てて目で訴える。すると気持ちを汲んでくれたのか軽くだけど目で頷いてくれたジンベエさん。
「......分かった」
「へへへありがとう。親父から話には聞いた事あったけど、エースと同じ牢屋におるのが貴方で良かった」
ありがとうと再度頭を下げた名無しさんに少なからずも驚いたジンベエは言葉を無くす。するともう一度だけ目を閉じてて下さいと名無しさんに促されジンベエは拒否をする気にもなれず言葉のままに従った。
事の次第を見守っていたエースは色々と聞きたそうな顔をしていたが敢えてそれには気がつかないふりをした名無しさんはエースの前にしゃがみ込みその顔を見つめる。
「.....なぁ、エース」
「どうした」
「エース、」
「っ、だからどうしたってんだよ
「...生きててくれて、ありがとうなっ....」
「!!!」
...出会った時から変わらない、謂わばおまじないのようなそれ。
自分何かの為を思って泣きながら伝えられてきた言葉を、泣きそうな顔で声を震わせそれでも笑った名無しさんにどうしようも無く胸が締め付けられた。
自然と唇を食いしばり目線を落とせばほのかにだが自らの頬に温度が宿った気がして誘われるように目線を戻すと過去に何度も...何度も見た事のある柔らかい笑顔で笑う彼女がいた。
「......................、あ ?」
震える手のひらで頬を撫でいつかの自分がした時のようにここにある存在を確かめるかのように触れてくる名無しさん。その姿にエースは言葉には出来ない気持ちが掻き立てられてしまい何故だかまた昔の会話が頭を過ぎる。
「...は?強えのに守るのか?」
「そう。守りたいんよ全部さ」
「全部って?」
「うーん、そうやなー。例えば...身体は勿論やけど、心とか思いとかその人の抱えるもんぜーんぶ。へへへ、重たいやろ(笑)」
はにかみながらも、どこか泣きそうで嬉しそうで慈愛に満ち溢れていたあの日見た名無しさんの眼差し。
それが今、自分自身へと向けられているのは一体何故なのかとか、思えばそもそもあのおまじないのような言葉を繰り返し使う前はどうして泣いていたのかとか、当時は気にならなかった沢山の疑問が、浮かんでは消えていく。
「痛かったよな、ごめんなあ」
自分以上に痛そうな顔をしながらも笑顔を作る目の前の名無しさん。
そこでやっと、彼女が昔から言う守りたい人が誰なのか。誰の為にガキの頃から傷を作りながらも頑張っていたのかにようやく合点がいって...
「お前....まさか、」
「エースが生きとってくれて、本間に、うれしいっ...。あの時うちを守ってくれて、止めてくれてありがとう...!」
まるで泣きそうな顔を見られたくはないかのように音も無くぎゅっと抱きついてきた名無しさん。そのあまりにも優しく温かいぬくもりにドクンと脈打つ心臓の早さを痛い程にエースは感じていた。
数秒だったのか数分だったのかは分からないが、たった一度名無しさんが与えてくれた初めてのぬくもり。
胸を支配していた氷のような悲しみは全て消え去ってしまったとすら思えた瞬間、やっと今まで自分が彼女に対して抱えていたものが何だったのかを理解した。
「.....っと、へへいきなしごめんな!つい感極まってもて」
「.......別に、好きにしろよ」
「なっ....いやいやいやジンベエさんもおる手前そんな急にデレられても」
「嫌なのか?」
「〜〜〜〜....あー、もうっ」
口をへの字にしながらジッと見つめてくるエースに、その顔に名無しさんが弱いのだと知ってやっているのかは分からないが頬を赤く染めたままエースの頭をぐしゃぐしゃにしていく名無しさん。
「お前はすーぐそうやって誤魔化す」
「誤魔化してへん」
「いーや、誤魔化してるさ。おれは知ってんだ」
「そう言うエースこそよくやっとった癖に」
「おれはいいんだよ」
「何でやねん」
「おい、お前さんら」
「「!!」」
ついうっかり、いつものペースでやり取りをしていると呆れたようにジンベエが声をあげ2人揃ってビクリとなった。
「そろそろその子が仕掛けてくれてた麻酔が切れてきたのか他の囚人達が起きてきておる」
「!あちゃー...やっべ。えーと、ほな、そんなこんなで一旦うちは退散するとします」
「....名無しさんっ!」
「へ?どうしたエース、何か親父達に伝言?」
「いやっ違ェ。そうじゃなくて、本当に大丈夫なんだろうな?」
エースの言わんとする事が帰り道の事なのだと気がついてゆっくりと微笑みながら身体に能力を施していく。すると一瞬で姿が見えなくなった名無しさんにエースが焦ったような声をあげると、頭にふと温もりが宿った。
「エース、一緒に連れ出せんくて、ごめんな。力不足で、ごめんな。でも絶対に、諦めたらあかんよ」
それだけ告げる柔らかい声にもう一度だけでも顔が見たいと思ったエースだったが名無しさんはもう姿を表す事はなく。声だけだったが、ジンベエにもエースをお願いする旨を伝えていた名無しさん。
最初とは違った笑い方をしているジンベエを見てまたもや変な締め付けがエースの胸を襲った。
「また、外で必ず会おな。.....生きるで、エース」
それだけ告げて今度こそ居なくなってしまったのか何度名前を呼んでも返ってこない返事に、今の全部が夢だったのではと思ってしまう。
「エースくん」
「ジンベエ....」
「いい彼女さんを見つけたなあ」
「かっ!...のじょではねェーよ、その...まだ」
「ははははは!若いのぅ」
「ううううるせェーぞジンベエっ!」
月の光すらも届かない鉄壁の要塞インペルダウン。
冷たくも悲しみが溢れるはずのその場所は今この瞬間だけはあたたかい笑顔に包まれていて。
....名無しさんが監獄を後にするのと同時、ルフィがこの要塞に足を踏み入れていた事をエース達はまだ知る由もない。
さあ、物語の終幕へ。