エンドライフ③
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《83. 見ようとしていなかった、もの 》
あれからどうやって船に戻ってきたのかは分からないが、うちは今、海のど真ん中に停泊して甲板に座り込んでいる。
「おい名無しさん、腹減った」
「!エースっ.........」
幻聴のように聞こえるそれらにいちいち心臓が跳ねて後ろを振り向いては誰も居ない空間に、すぐさま気のせいだったと思い知らされ息が漏れ出る。
「今日は絶好の昼寝日和だなァ!名無しさんもこっち来いよっ」
「っ!.......、きの、せいか....ははっ......っ...」
泣くつもりなど無いのにまるで息をするのと同じように、自然と流れてしまう水滴。最早拭う元気すらなくてただただエースが居ないのだと言う事実だけが自分の心を蝕んでいく。
....一体、どれだけの時間こうしているのだろうか。
何回か朝日を見送った辺りから数える事すらやめてしまった。
「.....あかん、このままじゃ、あかん....しっかりしろ、」
そう思うのに、脳裏に浮かぶのは赤犬に心臓を突き刺された後笑いながらこの世を去る姿。
エースが生きているという事が余りにも当たり前に存在し過ぎていて一生来なければ良いのにと思っていたあの瞬間だ。
何かを食べる気力も飲む気力も無くなってしまって、ただただ朝日と夕日を見送る毎日に、これでは駄目だと力の入りにくくなった身体を奮い立たせてキッチンへと向かえば。
「おい名無しさん」
「っ....しっかり、しろっ......」
「まーだ怒ってんのかよ名無しさん、なあって」
「えー、すっ....」
「安心しろよ名無しさん、おれは負けねェ」
「!......え.....すっ.........」
ドアを開ければそこにはまだエースの居た気配が残っていて、薄らとでもエースの香りも存在していた事に今初めて気がつきやっと立ち上がれていた膝は力無くまた床へと落ちていく。
「おっ前な〜、そんな程度の食い方じゃいざという時動けねェぜ?」
「は、ははっ......ほん、ま、そのとおりや....っ..」
「いいか名無しさん、食う事っつーのはな、生きる事と同義だ。どんだけ体が痛ェ時も心が辛ェ時もそれだけはやめちゃならねェ」
「それはエースが食いっぱぐれたくないだけとも言わへんか?」
「まー、そうとも言うがなっ」
「言うんかいっ(笑)」
頭の中をリフレインしていくエースとの日々に笑って、ようやく立ち上がってから、やっとの思いで冷蔵庫を開けゆっくりと、少しずつでも水を飲み、果物を齧った。
「ぅっ......っ、、、。」
ーシャリ
「.....っ、.....」
ー...シャリ
溢れ落ちる水滴など気にしないかのように、りんごを半分だけ食べ切り、残りはラップしてから元の位置へと戻す。
いつだって自分の中心にはエースが居た。
この世界に来てたった1人のあの恐怖からエースが救い出してくれた、温かく照らしてくれた。
修行がどんなに辛かろうと、身体中傷だらけになろうと、怖い思いをしようと、自分の中での最優先はいつだってエースただ1人の為だけのものだった。
「おれは、おれの生まれた存在意義を示すために海に出て...おれが生きた証を残すんだ」
「!!」
またマイナスな思考に呑まれそうになったその時、いつかの場所で聞いたまだ幼かったエースの言葉が、今になって思い出されて、まるで走馬灯かのように今までのやり取りが脳裏を過ぎっていく。
「おれも手伝ってやろうか?」
「おれの船に来いよ」
「...名無しさん、右手出してくれよ」
「コレさおれ以外の奴にはやらねェでくれよ」
嬉しそうにうちの手のひらを握っては、ほっぺを赤く染めていたエースがこっちを見てきてはにかむ様子が思い返されて、頬が緩む。
「おれァよっ、あいつの血を引いてるって言うだけで何よりも呪いで生きてちゃいけねェーんだとっ、思ってたからよォっ....」
「名無しさんに会うまでおれは、ずっと一人だと思ってたんだ。おれの命は誰にも望まれねェ誰も幸せに出来ねェもんだと。...でもなオヤジが言うんだよ、誰から生まれようと人間みんな海の子だって。おれァ...嬉しくてよォっ....」
「あ?今更名無しさんに気ィ何か遣うかよ。んだよ、おれと一緒じゃ都合でも悪ィってのか?」
「傷跡、残ってねェか確認してやる。だからおれにも...見せろ」
「...綺麗だな」
「お前が勲章っつった意味が分かった。まァ例えどんな痕が残っててもよォ、綺麗だなって思う自信はあるけどなァー」
「おいっ名無しさん!大丈夫かっ?」
「...遅くなっちまって悪かったな、名無しさん」
「おれも、お前に頼られてェ」
「始末をつけりゃお前も一緒に連れ帰ってやるから安心しろよ」
「馬っ鹿、お...まえ、慣れねェーこと、するんじゃ、ねえっ」
全てが一気に溢れてきて、その時初めてエースがどれだけ自分を大切に思ってくれていたのか大事にしてくれていたのかに気がついて、胸が締め付けられていく。
あれからどうやって船に戻ってきたのかは分からないが、うちは今、海のど真ん中に停泊して甲板に座り込んでいる。
「おい名無しさん、腹減った」
「!エースっ.........」
幻聴のように聞こえるそれらにいちいち心臓が跳ねて後ろを振り向いては誰も居ない空間に、すぐさま気のせいだったと思い知らされ息が漏れ出る。
「今日は絶好の昼寝日和だなァ!名無しさんもこっち来いよっ」
「っ!.......、きの、せいか....ははっ......っ...」
泣くつもりなど無いのにまるで息をするのと同じように、自然と流れてしまう水滴。最早拭う元気すらなくてただただエースが居ないのだと言う事実だけが自分の心を蝕んでいく。
....一体、どれだけの時間こうしているのだろうか。
何回か朝日を見送った辺りから数える事すらやめてしまった。
「.....あかん、このままじゃ、あかん....しっかりしろ、」
そう思うのに、脳裏に浮かぶのは赤犬に心臓を突き刺された後笑いながらこの世を去る姿。
エースが生きているという事が余りにも当たり前に存在し過ぎていて一生来なければ良いのにと思っていたあの瞬間だ。
何かを食べる気力も飲む気力も無くなってしまって、ただただ朝日と夕日を見送る毎日に、これでは駄目だと力の入りにくくなった身体を奮い立たせてキッチンへと向かえば。
「おい名無しさん」
「っ....しっかり、しろっ......」
「まーだ怒ってんのかよ名無しさん、なあって」
「えー、すっ....」
「安心しろよ名無しさん、おれは負けねェ」
「!......え.....すっ.........」
ドアを開ければそこにはまだエースの居た気配が残っていて、薄らとでもエースの香りも存在していた事に今初めて気がつきやっと立ち上がれていた膝は力無くまた床へと落ちていく。
「おっ前な〜、そんな程度の食い方じゃいざという時動けねェぜ?」
「は、ははっ......ほん、ま、そのとおりや....っ..」
「いいか名無しさん、食う事っつーのはな、生きる事と同義だ。どんだけ体が痛ェ時も心が辛ェ時もそれだけはやめちゃならねェ」
「それはエースが食いっぱぐれたくないだけとも言わへんか?」
「まー、そうとも言うがなっ」
「言うんかいっ(笑)」
頭の中をリフレインしていくエースとの日々に笑って、ようやく立ち上がってから、やっとの思いで冷蔵庫を開けゆっくりと、少しずつでも水を飲み、果物を齧った。
「ぅっ......っ、、、。」
ーシャリ
「.....っ、.....」
ー...シャリ
溢れ落ちる水滴など気にしないかのように、りんごを半分だけ食べ切り、残りはラップしてから元の位置へと戻す。
いつだって自分の中心にはエースが居た。
この世界に来てたった1人のあの恐怖からエースが救い出してくれた、温かく照らしてくれた。
修行がどんなに辛かろうと、身体中傷だらけになろうと、怖い思いをしようと、自分の中での最優先はいつだってエースただ1人の為だけのものだった。
「おれは、おれの生まれた存在意義を示すために海に出て...おれが生きた証を残すんだ」
「!!」
またマイナスな思考に呑まれそうになったその時、いつかの場所で聞いたまだ幼かったエースの言葉が、今になって思い出されて、まるで走馬灯かのように今までのやり取りが脳裏を過ぎっていく。
「おれも手伝ってやろうか?」
「おれの船に来いよ」
「...名無しさん、右手出してくれよ」
「コレさおれ以外の奴にはやらねェでくれよ」
嬉しそうにうちの手のひらを握っては、ほっぺを赤く染めていたエースがこっちを見てきてはにかむ様子が思い返されて、頬が緩む。
「おれァよっ、あいつの血を引いてるって言うだけで何よりも呪いで生きてちゃいけねェーんだとっ、思ってたからよォっ....」
「名無しさんに会うまでおれは、ずっと一人だと思ってたんだ。おれの命は誰にも望まれねェ誰も幸せに出来ねェもんだと。...でもなオヤジが言うんだよ、誰から生まれようと人間みんな海の子だって。おれァ...嬉しくてよォっ....」
「あ?今更名無しさんに気ィ何か遣うかよ。んだよ、おれと一緒じゃ都合でも悪ィってのか?」
「傷跡、残ってねェか確認してやる。だからおれにも...見せろ」
「...綺麗だな」
「お前が勲章っつった意味が分かった。まァ例えどんな痕が残っててもよォ、綺麗だなって思う自信はあるけどなァー」
「おいっ名無しさん!大丈夫かっ?」
「...遅くなっちまって悪かったな、名無しさん」
「おれも、お前に頼られてェ」
「始末をつけりゃお前も一緒に連れ帰ってやるから安心しろよ」
「馬っ鹿、お...まえ、慣れねェーこと、するんじゃ、ねえっ」
全てが一気に溢れてきて、その時初めてエースがどれだけ自分を大切に思ってくれていたのか大事にしてくれていたのかに気がついて、胸が締め付けられていく。