エンドライフ③
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《35.旅立つ、前に》
ーコンコン
「親父ー、入るで」
あれからちゃんと丸々5日大人しくしていたうちはやっと自由の身になれたので、まず先にと親父の所へ顔を出しにきていた。この2週間近くわざわざ親父を出向かせるのはとうちが面会を断っていたのだ。
数秒置いてから、いつものように快い返事をくれた親父に従って部屋の扉を開ける。するとそこには珍しくお酒を呑んでいない親父がベッドに腰掛けていて静かに側まで近づいた。
「...もう身体は何ともねェのか」
「うん、顔出しにくるのが遅くなってごめんな親父。皆のお陰でめちゃくちゃ元気なったわ!(笑)」
「そうかァ、そいつァ何よりだ」
静かにこちらを見つめてくる眼差しはどこまでも優しさが滲み出ていてこの顔を見ているだけで焦りや不安が消えていくようだ。
そのままじっと親父の姿を見上げているとゆったりとした口調で親父が口を開いた。
「...名無しさん、ちょっとこっちに来やがれ」
ベッドの縁に腰掛けていた身体を起こして言われるがまま親父へと近づいた。
するといつも自分を安心させてくれている温かい手のひらがそっと背中を支えてきて、気がつけば親父に抱きしめられているのだと全身に感じた温もりで理解した。
「お....やじ...?」
「すまなかったなァ名無しさん......、またお前ェに大事な息子を守ってもらっちまった。痛かっただろう、その傷は...」
優しく、優しく、問いかけてくれているのに見上げた親父の顔がどこか苦しそうで胸が詰まる。
(.........またうちは、親父をっ.....)
不甲斐ないと、思った。
あの時と同じで、心まで完璧になんて守れなかった。
つよく...強くなれたはずやのにどうしてこうも自分は...そこまで考えて、ぎゅっと唇を噛み締める。もっと自分が頭が良ければ、もっと自分が狡賢ければ...初めから、皆に協力を求めていれば...色んな思いが頭を駆け巡っていく。
それでもやっぱり、うちの我儘で家族だと思っている彼らの手を汚させたくなかったのだ。
「...ごめんな、親父...また、うちはこんな...」
「.........この、アホンダラがァ」
親父の服を静かに握れば、優しく受け止めてくれていた手のひらに少しばかり強さが宿る。そこから少しお互い無言になって静かな時が流れていった。
暫くすれば親父の指がそっと頭を撫でてきて、その心地良さに凝り固まった気持ちが溶けていくようで。...あぁ、親父は本間に凄い。気持ちいいなと思い見上げれば、先程の苦しそうな顔はもう無くて、ただただ優しい親父の笑顔がそこにあった。
「名無しさん、お前ェは確かに強い。おれの息子共にも引けを取らねェ力と強さがお前にはある」
「.......親父?」
「漠然とした力は勿論だが、折れる事のねェお前の信念はちゃんとおれ達の心には届いてるぜ。...だからよ名無しさん、」
「.......」
「もっと自分を大事にしてやんなァ。お前がおれ達を心底大事にしてくれてんのァ伝わっちゃァいるが、それと同じぐれェに名無しさん、お前も大事なおれ達の家族だ」
「....っ」
「お前ェが全てを背負い込む必要なんざねェだろうが。女のお前が傷付く度に、男のおれ達は毎度心臓が握り潰されるみてェな感覚になるんだぜ?分かってんのかァお前はよ」
初めて告げられた親父の思いに、出会った時と同じぐらい胸がいっぱいになり溢れそうになってしまう。全てを見透かすその瞳を見ていられなくなってそっと頭を下げれば、
「...無茶ばっかしやがる馬鹿娘だが、それでもお前はおれの愛する娘なんだよ、名無しさん。それだけは忘れんじゃァねェ」
分かったか、と最後に言われ声が出せなくてコクリと小さく何度も頷いた。
(あぁ.....っ、もう、本間に悔い何てない)
そう思いながら、親父の身体に抱きついてずっと、ずっとこの時の為にとっておいた言葉を心の中で静かにそれでもハッキリと告げる。
(......リバース、《転 》)
その瞬間ドクンと心臓が脈打って一瞬だけ息は詰まるがその後はもう問題は無い。ぎゅうっと、そのまま親父の身体に抱きついて忘れないようにとしっかり温もりを焼き付けた。
「......親父、うちを娘と呼んでくれて本間に...本間にありがとうなっ。親父に会えて皆に会えて、本間にうちは幸せ者や」
「グララララっ!そりゃァおれの台詞だろうがよォ。老ぼれ泣かすんじゃァねェよ」
「親父のどこが老ぼれやねん(笑)まだまだ100年ぐらいは生きて貰わななー!」
「グラララっふざけんじゃァねェ、ただの化けもんにゃなりたくねェーぜおれは」
「へへへ、親父なら大歓迎やわ」
軽口を叩き合って声を上げて笑い合う。
そしてそれが落ち着いた頃合いを見てそろそろ行くなと親父に告げれば、うちが切り出すのをわかっていたかのように驚く様子は一切見せずに変わらずこちらを見つめてきた。
「.....止めたって、聞きゃァしねェんだろ?お前もよォ」
「ははっ、よく分かっとうな!親父」
「ったく、どいつもこいつも......」
そう言いながら少しだけ寂しそうな目をしていたものだから、最後にもう一度親父の身体に抱きついて行って来ますとありがとうとだけ伝えてそのまま部屋を後にした。
ーコンコン
「親父ー、入るで」
あれからちゃんと丸々5日大人しくしていたうちはやっと自由の身になれたので、まず先にと親父の所へ顔を出しにきていた。この2週間近くわざわざ親父を出向かせるのはとうちが面会を断っていたのだ。
数秒置いてから、いつものように快い返事をくれた親父に従って部屋の扉を開ける。するとそこには珍しくお酒を呑んでいない親父がベッドに腰掛けていて静かに側まで近づいた。
「...もう身体は何ともねェのか」
「うん、顔出しにくるのが遅くなってごめんな親父。皆のお陰でめちゃくちゃ元気なったわ!(笑)」
「そうかァ、そいつァ何よりだ」
静かにこちらを見つめてくる眼差しはどこまでも優しさが滲み出ていてこの顔を見ているだけで焦りや不安が消えていくようだ。
そのままじっと親父の姿を見上げているとゆったりとした口調で親父が口を開いた。
「...名無しさん、ちょっとこっちに来やがれ」
ベッドの縁に腰掛けていた身体を起こして言われるがまま親父へと近づいた。
するといつも自分を安心させてくれている温かい手のひらがそっと背中を支えてきて、気がつけば親父に抱きしめられているのだと全身に感じた温もりで理解した。
「お....やじ...?」
「すまなかったなァ名無しさん......、またお前ェに大事な息子を守ってもらっちまった。痛かっただろう、その傷は...」
優しく、優しく、問いかけてくれているのに見上げた親父の顔がどこか苦しそうで胸が詰まる。
(.........またうちは、親父をっ.....)
不甲斐ないと、思った。
あの時と同じで、心まで完璧になんて守れなかった。
つよく...強くなれたはずやのにどうしてこうも自分は...そこまで考えて、ぎゅっと唇を噛み締める。もっと自分が頭が良ければ、もっと自分が狡賢ければ...初めから、皆に協力を求めていれば...色んな思いが頭を駆け巡っていく。
それでもやっぱり、うちの我儘で家族だと思っている彼らの手を汚させたくなかったのだ。
「...ごめんな、親父...また、うちはこんな...」
「.........この、アホンダラがァ」
親父の服を静かに握れば、優しく受け止めてくれていた手のひらに少しばかり強さが宿る。そこから少しお互い無言になって静かな時が流れていった。
暫くすれば親父の指がそっと頭を撫でてきて、その心地良さに凝り固まった気持ちが溶けていくようで。...あぁ、親父は本間に凄い。気持ちいいなと思い見上げれば、先程の苦しそうな顔はもう無くて、ただただ優しい親父の笑顔がそこにあった。
「名無しさん、お前ェは確かに強い。おれの息子共にも引けを取らねェ力と強さがお前にはある」
「.......親父?」
「漠然とした力は勿論だが、折れる事のねェお前の信念はちゃんとおれ達の心には届いてるぜ。...だからよ名無しさん、」
「.......」
「もっと自分を大事にしてやんなァ。お前がおれ達を心底大事にしてくれてんのァ伝わっちゃァいるが、それと同じぐれェに名無しさん、お前も大事なおれ達の家族だ」
「....っ」
「お前ェが全てを背負い込む必要なんざねェだろうが。女のお前が傷付く度に、男のおれ達は毎度心臓が握り潰されるみてェな感覚になるんだぜ?分かってんのかァお前はよ」
初めて告げられた親父の思いに、出会った時と同じぐらい胸がいっぱいになり溢れそうになってしまう。全てを見透かすその瞳を見ていられなくなってそっと頭を下げれば、
「...無茶ばっかしやがる馬鹿娘だが、それでもお前はおれの愛する娘なんだよ、名無しさん。それだけは忘れんじゃァねェ」
分かったか、と最後に言われ声が出せなくてコクリと小さく何度も頷いた。
(あぁ.....っ、もう、本間に悔い何てない)
そう思いながら、親父の身体に抱きついてずっと、ずっとこの時の為にとっておいた言葉を心の中で静かにそれでもハッキリと告げる。
(......リバース、《
その瞬間ドクンと心臓が脈打って一瞬だけ息は詰まるがその後はもう問題は無い。ぎゅうっと、そのまま親父の身体に抱きついて忘れないようにとしっかり温もりを焼き付けた。
「......親父、うちを娘と呼んでくれて本間に...本間にありがとうなっ。親父に会えて皆に会えて、本間にうちは幸せ者や」
「グララララっ!そりゃァおれの台詞だろうがよォ。老ぼれ泣かすんじゃァねェよ」
「親父のどこが老ぼれやねん(笑)まだまだ100年ぐらいは生きて貰わななー!」
「グラララっふざけんじゃァねェ、ただの化けもんにゃなりたくねェーぜおれは」
「へへへ、親父なら大歓迎やわ」
軽口を叩き合って声を上げて笑い合う。
そしてそれが落ち着いた頃合いを見てそろそろ行くなと親父に告げれば、うちが切り出すのをわかっていたかのように驚く様子は一切見せずに変わらずこちらを見つめてきた。
「.....止めたって、聞きゃァしねェんだろ?お前もよォ」
「ははっ、よく分かっとうな!親父」
「ったく、どいつもこいつも......」
そう言いながら少しだけ寂しそうな目をしていたものだから、最後にもう一度親父の身体に抱きついて行って来ますとありがとうとだけ伝えてそのまま部屋を後にした。