《10.目の前の現実》


空腹をおさめつつお肉を堪能した後、自分の置かれている状況がはっきりしてきて不安よりも興奮の方が勝り口元が緩む。


しばらくぼーっと眺めていれば終始観察されるように見られていた女性と再び目が合ってそろそろ頃合いかなと感じ、痛む感覚を抑えつつ正座になった。



「さて、腹ごしらえもしたし、話して貰うよお嬢さん」

「...はい。まず始めに、こんな見ず知らずの人間の手当てや
美味しいご飯まで本間にありがとうございました」

「別にアタシは何もしちゃいねェよ。こいつらが勝手にやっただけだ」

「それでも、私は助かったので本当にありがとうございます」



今の自分に許される限りで頭を下げもう一度正面から女性を見据える。



「改めて、私の名前は名無しさんと申します。年は23歳で仕事は治療業をしていました。」

「・・・・・23？？」

「え、はい。23歳になったばかりですが、よく歳上に見られるので、もしかしたら28前後ぐらいに見えてしまっていたかもしれません」



笑いながらそう言うと、それこそ目を点にして疑いの目を向けられて、まさかもっと上に見られていたのだろうかと不思議に思う。



「いや、ちょっと待ってくれ。あんたの言いたい事はわかったが、どう見ても14-5ぐらいの歳じゃないのかい？」



流石にそれは若く見積り過ぎだろうと笑い飛ばせば、女性以外の周囲の目も同じ感情を物語っていて、いよいよ自分の状態を一度確認すべきだなと、変な汗が流れてきた。



「あのー、不躾にすみません。鏡みたいな姿を確認出来るものって何かあったりしますか？」

「それなら窓の横にかけてあるよ」

「ちょっとすみません、一旦見て来てもいいですかね？」

「.....ああ、まあ好きにしな」



話はまだ終わっちゃいないよと

背中で聞きつつも、包帯で巻かれた痛む両足裏を少し足速に動かした。


どうか違ってくれと思う気持ちは打ち砕かれるのか叶うのか、ミシミシと響く床音が 今は一層耳に残った。