《9.夢ではない現実》


ーばちん

（っ・・・・・・？？）


夢の中で突然おでこを叩かれた気がして違和感を覚える。


（・・・・・ん、あれ・・・いい匂い、がする）


ゆっくりと覚醒していく意識と 五感が戻ってくる感覚。

そういえば、夢を見ていたんだったなと、覚醒しきらない頭で目を開けると見覚えのある少年の横顔が目に入った。



「あ、れ？........夢？」

「.....やっと起きたのか、お前」

「ん......えーと、ちょい待ち。ここ、どこや」

「は？覚えてないのか？」



起き上がろうと身体を起こそうとした瞬間全身に痛みが走ってびっくりしながらも何とか体を起こすと、目の前に広がる騒がしい光景にやっと理解が追いついた、が。



「夢じゃ、なかったのか....?」



覚める気配のない感覚と妙にリアルな全身の痛み。

これを夢だと思うには、もう色々と説明がつかなくて、ドクドクと心臓が変な音を立て始める。



「おい、」

「・・・・・・」

「、、おい！」

「あ、、？ごめんぼーっとしとったや。どうした？」

「・・・・・・」



寝起きというのもあってか、いつもより認識出来る事が少なくてつい意識を飛ばしてしまっていたと気がつく。



「ん」

「え？これ....」



そっぽを向きながら横に置かれたお皿には、漫画でしか見たことも無いぐらいのお肉の塊が山ほど乗っていた。



「少しなら分けてやる」

「.....。わ...凄いこんなお肉初めてみた！ありがとう！一つ貰うな」

「ふん・・・・」



夢にまで見た骨つきのお肉に、さっきまで広がっていた不安は吹き飛んで素直に鳴ったお腹の音とワクワクで我ながら単純だなと笑ってしまった。

めいっぱい頬張れば、思った以上にジューシーで想像以上やと嬉しくなる。もぐもぐしつつも視界に入るのは、起きた時から変わらずお肉の取り合いをしている激しい光景で、面白い人達だなーと癒されてしまう。

初めて食べたワニ肉と知らない土地での温かい出会いに胸がほくほくといっぱいになるやっぱりうちは、本当相当運が良かったらしい。