《28. 再会② 》


「あの、もしかしてサボくんとお知り合いだったんですか？」

「多分な。うちの思ってるサボと同じ人物なら知り合いやと思うけど、ん〜彼の様子を見る限り勘違いの可能性も出てきた」

「ぁっ、違うんです！彼...つい数年前に大きな事故に遭ったらしくて記憶が無いみたいなんです」

「へ.....、そうなん、？」

「........悪い。あんたの事は見た事がある気はするんだが、思い、出せねェんだ」



先程と同じように眉を寄せて視線を下げたその顔に罪悪感が募る。それと同じくして色んな事が点と点で繋がった。エースの処刑の時サボはまだ記憶喪失のままだったのだろうという事、だから新聞を見てそこにあった衝撃で恐らく思い出したのだろうという事。

そう考えれば、新聞を見ていた時の表情や泣き叫んでいた姿の理由がついた。そんな事を考えていればうちがショックを受けたのだと勘違いをさせてしまったサボが改めて謝ってきた。



「あ、ちゃうよ、ごめん。記憶を無くしてもた人に対して失礼な態度やった。うちこそごめんな？ちょっと考え事してもとってん」

「.......その、」

「教えてくれて、ありがとうな」

「ー！....ぁ...、」



静かに頭を下げれば、息を飲む気配を感じて小さく声が漏れ出たように聞こえた。少し経ってから顔を上げれば唇をへの字に震わせたサボと心配するようにサボを見やる彼女が目に入ってこれ以上は今の自分じゃ無粋かなと思い立ち上がれば勢いよく手首を掴まれて驚く。



「ぁ...っと、悪ィ。ちょっと、待ってくれ」

「...やけど、いきなり色々言われても辛いやろ？」

「違うっ、そうじゃない、とにかく...少し待って欲しい」



まるで乞い願うかのようにそう言われてしまえば、拒絶する事も出来なくて大人しく席へと座った。少し考えたいそうなので、それならお腹も空いたしご飯を食べていいかと聞けばきょとんとした後嬉しそうに彼女は笑ってくれて少しほっとする。

せっかくだからデザートのゴージャスなパンケーキをシェアしようとの話にもなったので、サボにも糖分は摂るべきだと伝えれば、申し訳無さそうにでも嬉しそうに小さく笑ってくれた。

しばらく時を重ねれば先程の空気が嘘かのように話は弾み、サボ達も仕事でこの島へと来たのだというから驚いた。


（でも、そうか。ちゃんと居場所があって良かったな）


2人を見ればその仲の良さから居心地の良い場所で暮らしているのだと予測がついて安心をする。あの頃のサボは何処か居場所を探しているように感じていたからだ。本間、良かったなと思っていると、グラスを掴んでいた手にサボの手が重ねられて突然の出来事に色んな意味で心臓が飛び跳ねる。



「俺が言えた立場じゃないのは分かっているが、あんたの名前を教えて欲しい」



先程とは打って変わって突然真剣な顔をしている目の前のサボに、少なからずドキドキと驚く。こんな直球でくる子やったか？と記憶を辿れば、そう言えば昔も綺麗だの可愛いだのワンピース姿が見たいだのと言ってたなと思い出した。

そっか、変わってへんのかと胸が少し温かくなり答えようと口を開いた瞬間サボの頭が激しく揺れて更に驚く。



「〜〜〜っもう！サボくん！！何いきなり女の子の手何て握ってるのよ！ダメだよ？！そう言う事は許可を取ってからじゃなきゃ！」

「いってて...お前はさっきからぺしぺしと殴り過ぎだぞコアラ！」

「サボくんが悪いんでしょう？？ましてや知り合いの...こんな綺麗な女の子に手を出すなんて、信じられないっ！」

「言い方に語弊が有り過ぎだろっ！」

「言い訳しない！」



さっきの雰囲気はなんのその。一気にいつもの2人に戻った空気に耐え切れなくなってついつい大きな笑い声をあげてしまった。