偶然とか奇蹟とか
ーー高宮ゆい。
高校二年生。見た目は普通。性格はおとなしいといえば聞こえはいいが内気で自分の意見をはっきりと言えない泣き虫。生まれつき病弱で入退院を繰り返していた。
それだけならまだ他にも存在し得る少女なのだが厄介なことがひとつ。
人が持つか持たないか、力があったとしても本人は気付かないか小さな違和感を感じる程度の『霊力』と呼ばれる能力。
これが人よりも強い。そのせいで彼女は今までの人生をほとんど損していると言っても過言ではないだろう。
勘違いされることが多いのだが『霊感』と『霊力』は違う。
『霊感』は事実や霊的なものを頭や心で読み取る能力のことを指すのだがゆいの持つ『霊力』は頭や心ではコントールできないし読み取るだけではなく本当に何らかの力が働いているのだ。いつ、どこで発揮されるかわからない不可思議な能力。科学的な証明もされておらず、周りにそんな感覚を持つ者も知らない。
『霊力』に振り回されたというわけではないのかもしれないが学校が放火され、両親が海外転勤となり祖母の住む山奥へと引っ越すことになった高宮ゆいは高校生にしてはなかなか不幸せで、不憫で。
……何処か諦めている節すら感じさせるのだった。
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