ようこそ、スマッシュシティへ
「この世界」が作られたのは、一柱の神の気まぐれによるものだった。
その「神」はありとあらゆるものを無から創り出す力を持つ「創造神」だった。
その神が生まれた経緯も、理由も定かではない。
だが、その神には願望があった。
「強者との力比べを楽しみたい」
「身分も立場も、時代も世界も、善悪すらも関係なく、ただ強者同士の戦いを見てみたい」
神は様々な世界を見た。
平和な星で様々な巨悪に立ち向かった星の戦士。
攫われた姫君を救い出し、幾度もの冒険で名を残した王国の英雄。
静かな森で仲間たちを纏めあげ、雷を自在に操る不思議な
時を超え、その勇気を以て魔王を打ち倒した緑衣の勇者。
なるほど面白い。
彼らならば、きっと私を楽しませてくれるだろう。
神はその後も数々の世界を見ては思いを馳せた。
だが、彼らの世界は彼らのもの。
突然生まれ出でた神が支配して良いものでは無い。
……ならば。
『世界を複製し、私がその主となればいい』
王国ごと、大陸ごと、果ては惑星ごと。
神は目に付いた様々な世界を切り取り、複製した。
大陸と大陸を繋ぎ合わせて。様々な世界を継ぎ接ぎに組み合わせて。
こうして、「この世界」は出来上がった。
住む人々も、自然も、建造物も、オリジナルと変わらない、けれど複製され繋ぎ合わされた歪な世界。
人々は無意識に「この世界は創造神によって作られたもの」という認識を植え付けられた。
この世界が複製されたものだなんて知るはずもない。
真実を知られること。それは、神の力を失うことになる。
この世界の消滅を意味する。
絶対に、知られてはいけない真実。
神はその真実を隠し通すために、世界そのものに強力な結界や魔術を施した。
こうして力を使い果たした神は、核となる部分を残して姿を保つことすら出来なくなった。
神は信仰心を必要としない。
力を取り戻し、保つためには人々の「感情」が要となる。
喜怒哀楽のみならず、人を慕う心、愛する心、そして怨念も復讐心も、全てが神の力となる。
これだけ広大な世界を作り出したのも、そうして力を得るため。
自分の世界の創世を見届けた神は、満足してそのまま少しの眠りについた。
──さぁ、私の望む世界は出来た。
私による、私のための世界。
戦い、戦い、戦い尽くせ。
その力を私に示せ。
見事私を、打ち倒してみせよ──