チーム戦


そして次の日……


「ロイ君、落ち着いて……」

「は はい……
(そんなこと言われたって……)」

剣を握るロイの手は明らかに緊張して震えている。

タイム制5分で場所は夢の泉、相手はサムスとミュウツー。

いかにも強そうな二人だ。


『Ready GO!』


「行くよ!」

「はい!」

試合が始まり、一斉に飛び出す4人。

だが、ロイは足がもつれていきなり転んでしまった。

「うぁっ……」

「ロイ君!」

「愚かな……『シャドーボール』!」

「『ヘルファイア』!」

「……させるものか!」

間一髪、マルスがロイの前に立ちはだかりカウンターで攻撃をかわす。

「大丈夫!?」

「す すみません……」

「ゆっくり深呼吸して、気持ちを落ち着けて……」

「は はい……」

「……来るよ!」

「『ミサイル』!」

「くっ……危ねぇ……」

ロイはサムスのミサイルをかわし、ブレイザーで当たりにいくが、軽く避けられてしまった。


「『シールドブレイカー』!」

「むっ……」

「今だ!『ドラゴンキラー』!」

ミュウツーのシールドを破壊し動けなくなったところを、強力なスマッシュ攻撃で一気に斬りつける。

「くぅ……やるな……」


見事な戦いぶりを見せるマルスとは逆に、ロイはサムスに攻められてばかり。

「『スクリューアタック』!」

「くぁっ……」

攻撃を避けるのだけで精一杯で、もはや手も足も出ない。

「(かなり戦い慣れしてる……
この人……強い……!)」

「……剣は立派だが……腕前はまだまだだな」

「!」

サムスの言葉にロイはハッとした。


この人達は確かに強い。

けれど手も足も出ないのは、この人達が強いから……という理由だけではない。


「(俺が……俺が未熟なんだ……)」

「とどめだ!『チャージショット』!」

「わあぁぁぁっ!」

結局ほとんど攻撃できないまま、ロイはあっさり吹っ飛ばされてしまった。

「ロイ君!
……うわぁっ!」

ロイが撃墜された瞬間、マルスもすぐにミュウツーによって撃墜されてしまった。



結局、ロイ達はミュウツーとサムスの二人に負けてしまった。
吹っ飛ばし数にダブルスコアを付けられての、手も足も出ない惨敗である。


「負けちゃったね……」

「ご……ごめんなさいマルスさん……
俺のせいで……」

開始早々転んだり、集中攻撃されてすぐに吹っ飛ばされたり、ロイはマルスの足を大きく引っ張ってしまった。


それを気にしてヘコむロイに、マルスは優しく言葉をかける。

「ロイ君のせいじゃないよ……僕が未熟だったんだ。
それに……彼らは強かった」

「…………」

「まだまだ修行が必要だね」


『負けたのは君のせいじゃない』……
マルスはそう言って、落ち込むロイを慰めた。




そしてロイはマルスのその優しさと強さを見込んで、あることを決意した。


「……マルスさん!」

「?」

「俺を……弟子にしてください!」

「弟子?」

「俺……もっともっと強くなりたいんです!
未熟な俺に……戦い方を教えてください!」

「……う~ん……でも僕、弟子なんて持ったことないし……
僕もまだまだ未熟だし……」


だが、ロイの目は本気だった。

どうしてもこの人に習いたい……そう訴えかけているように見えた。

この目を見てしまったら、もう断るに断れない。


「……わかった。僕でよければ……君の師匠になるよ」

「……ありがとうございます!」


師匠としての自信はなかったが、ロイが自分に憧れてくれたことが、マルスは嬉しかった。





……彼らの師弟関係は惨敗したチーム戦から始まった。


「素早さが足りない……
まずは防御からすぐ攻撃に移る素早さを身に付けるべきだね」

「はいっ!師匠!」

「し 師匠は恥ずかしいな……」

「じゃあ先生?マスター?」

「う~ん……」

「あ! じゃあ……先輩!
先輩だったらいいですか!?」

「……先輩……か……やっぱりちょっと恥ずかしいけど……
……うん、じゃあ、それで」

「はい!マルス先輩!」



その後、紆余曲折を経て二人はかけがえのない友となった。

今はアイクもロイの師匠となり、二人の先輩に囲まれて武を磨く日々を送っている。


「『ドルフィンスラッシュ』!」

「わあぁぁぁ!」

「また僕の勝ち、だね」

「うう……ちくしょ~……」


長い月日が経った今でも、ロイがマルスに勝てたことはただの一度もない。



「(いつか……いつか追い越してやる……)」


ロイはその気持ちを胸に秘めて、今日も燃える剣を振るうのだった。
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