蝶のはばたき

虹色のホログラムが名倉の瞳に浮かぶ。それを見た法月は「ひっ…!」と小さく悲鳴を上げて一歩後退った。

「もう一度…ピノ・ノワールにライド。イマジナリーギフト・プロテクトⅠ。ドロップのじぇしーのスキル、べあとりすとネグロボーンを退却させ、自身をコール。ドロップのネグロボーンのスキル、手札を1枚捨て、自身を山札の下に戻す。ドロップからグレード1を1枚コールするが、ドロップが10枚以上なら、グレードに関係なく1枚コール。べあとりすをコールし、スキルでのーまんをコール。のーまんのスキル、べあとりすのパワー+10000」
手札:4枚 ソウル:1枚
捨てたカード:モータル・ミミック
べあとりすのパワー:22000
山札:20枚 ドロップ:22枚(トリガー9枚)


「ど、ドロップにトリガーが……あ、ああああ!」

「ピノ・ノワールのスキル、俺のドロップのトリガーは9枚。前列全てにパワー+15000。ネグロボーンとしりるをコール。じぇしーでVにアタック」
手札:2枚 パワー:24000

「(彼のトリガーは確実に減っている。次のピノ・ノワールのアタックで引いたとしても、僕には完全ガードがある……ならココは、)ノーガード。ダメージチェック…ゲット!ヒールトリガー!ダメージ1枚回復、パワーはVに!」
ダメージ:5→4 ダメージチェック:マザーオーブ・ドラゴン(治)
回復したカード:バーサーク
ロウキーパーのパワー:23000
山札:26枚 ドロップ:6枚(トリガー2枚)

「べあとりすでVにアタック」
パワー:37000

「アングリーホーンでガード!」
手札:8枚 シールド:38000

「……ピノ・ノワールでVにアタック。ドロップのピノ・ブランのスキル、CB1とR1枚を退却させて1枚ドロー、ドロップから自身をコール。同じスキルをもう一度」
手札:4枚 裏にしたカード:アルウィオ、海中散歩
ピノ・ブランのパワー:39000(自身のスキル込み)
山札:18枚 ドロップ:24枚(トリガー9枚)

「えっ?」

「ピノ・ノワールのスキルでSB1、山札から2枚ドロップ……ドロップしたのはべあとりすとランペイジ。クリティカルトリガー。効果は全て左のピノ・ブランに」
ソウル:0枚 SBしたカード:ピノ・ノワール
ピノ・ノワールのパワー:12000
左のピノ・ブランのパワー:49000 ☆2
山札:16枚 ドロップ:23枚(トリガー10枚)

「う、うわぁぁぁぁ!!!バリィで、完全ガード!!」
手札:6枚 捨てたカード:ファージャ
ドロップ:7枚(トリガー2枚)

「ツインドライブ……1枚目……2枚目………ノートリガー。ネグロボーンのブースト、右のピノ・ブランでアタック」
手札:6枚 ツインドライブ:コロンバール、アルウィオ
パワー:47000 
山札:14枚

「来ないでくれぇぇぇ!!魔竜道師 ラクシャ、サーベル、バーサークでガード!」
手札:3枚 シールド:53000
ドロップ:8枚(トリガー3枚)

「……これで終わりだ。しりるのブースト、左のピノ・ブランで、ドラゴニック・ロウキーパーにアタック。しりるはドロップが15枚以上なら、自身のパワーとシールド+10000」
左のピノ・ブランのパワー:67000 ☆2

「や、やめろ……やめてくれぇぇぇぇ!!!」


麗人が放った銃弾は炎竜を穿ち、劈くような悲鳴が上がる。ダメージゾーンに置かれたのはロウキーパーとエルモ。希望の火は、今ここに潰えた。


≪勝者、名倉イズモ!ドロップゾーンからの奇襲を駆使し、見事な勝利を勝ち取ったぞぉぉ!!≫

≪きゃー!こっちむいてーー!!≫





「スゲェな名倉!何時の間にあんな強くなったんだ?」

「お疲れ様名倉君!」

「名倉、いいファイトだったぞ。次は……名倉?」

「…………詠導は何処ですか?」

「えっ……?」

「なあ……詠導は何処に行った、月下」

「え、えっと…お、お手洗いに行くって、さっき出て行ったけど……」

「……名倉君?」

「……迎えに行って来ます」

「おい、名倉ッ…待てって!」

「中堅戦、出ないんですか?」

「っ……さっさと詠導連れて来い。中堅戦は俺が出る」

「神谷君……」




ミク視点

「ふう……落ち着いた」

トイレを言い訳に控え室を出て来たあたし。まあ半分生理現象もあったけど。気分も切り替えられたし、何か飲み物でも買って帰るか。

『何飲もうかなー。あっ、新作でチョコミント味のドリンクあんじゃん!次のファイトで頭使うし、エネルギー補給は無罪だもんなー』

「……詠導」

『ん?名倉?お前も飲み物買いに来たのか?』

「…………………」

『な、名倉……?』

「なあ、詠導……俺、強くなったんだ」

『えっ?』

「なあ、褒めてくれよ。お前のこと貶したアイツ……名前、何だっけ。忘れちまったけど、もう二度とお前のこと貶したり扱き下ろしたりしないように叩き折ってやったんだ。最後の情けねぇ声、お前も聞いてたか?」

『……んなもん聞いてねぇよ。あたし、その時控え室から出てきたから』

「そうか、残念だなぁ……詠導、俺―」


「何してんのさ」

『天音さん?』

何でか天音さんがいた……怒っているのか?顔からそんなオーラが見える。

「お久しぶりです天音さん。俺のファイト見てくれました?俺、貴方の背中に追い付けますよね?だって―」

「ざけんな。あんなファイトで私の背中に追い付ける?私のこと、馬鹿にしてんの?あんなリスペクトの欠片もねぇ、単に相手を貶めるファイトを私は認めない。だって君のファイト―」




イズモ君を馬鹿にしていた奴等とおんなじじゃん。

「………………はっ?」

『天音、さん?』

「カードの声が聞こえるからって、絶対に勝てる保証はない。自分の実力以上の相手だった場合、そのイメージは脆く崩れる。力だけに頼ったファイトは、何れ自らを締め付けていく。未来も、仲間も、すべてを喪うかもしれないんだよ?イズモ君……カードの声だけを聞かないで。もっと周りの声に耳を傾けるべきだ」

「…………何で、何で、そんなこと言うんですか?俺は恩を返したいだけです!あの家から、地獄からヒサメさんと一緒に出してくれた貴方に!デッキをくれた貴方に憧れて、背中に追いつく為に必死に努力してきた!それがこの力なのに……どうして俺を否定するんですかッ!!?」

「ッ……いった…!」

『名倉落ち着け!天音さん痛がってるぞ!』

肩を強い力で掴まれたのか、天音さんは苦しそうな顔をする。我に返った名倉が手を離した後、掴まれた両肩には赤い手形が薄く残っている。それを隠すように天音さんは小脇に抱えていたカーディガンを羽織る。

「…………忠告はしたつもりだよ。それと、さっき君のお兄さんに会った」

「っ!!」

『(名倉の兄貴?)』

「…………成る可く独りで行動しないほうが良い。彼奴結構粘着質だから」

「…………はい」

『あの、天音さん?一体何の―』


尋ねようとした瞬間、廊下にあるモニターから歓声が上がる。そこに映っていたのは神谷先輩の勝ちを称えている映像。天音さんは何時の間にかいなくなっていた。忍者か?


≪勝者!神谷ユタ!ネオネクタールの展開力で有無を言わせない勝利の花を咲かせ、準々決勝進出だぁぁぁ!!≫

≪わあ、綺麗なお花!そしてつよーい!!≫

『もう終わったのかよ!』

「……まあ、俺に負ける位だし大したことないだろ。見てくれだけの雑魚の癖に、ヘラヘラ粋がるからいけないんだ」

『…………おい、今何つった?』

「…?」

『ッ……いいか!自分が強いからって、負けた相手を扱き下ろすんじゃねぇ!』

「……なんでだよ。弱いのがいけないんだろ」

『ッ……名倉。この力は、相手を扱き下ろす為のモンじゃない。この力は……ユニットとあたし達を繋ぐ為のモノだ』

「???」

『いいか、これだけは守れ。負けた相手を、絶対に扱き下ろすんじゃねぇぞ!!』
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