ヴァンガード部へ入部せよ!
???視点
……やっと見つけた。
端末から特定の呼び出し音。こっちから報告しようと思っていたから好都合。
馬の骨にあの子を馬鹿にされた事はムカついたけど、それくらい大した事ないと思える程の「情報」を知れたから。
報告だけして通信を切る。詳しい話は後でいいよね?フルーツタルトとクレーム・ブリュレを買いに行かなきゃいけないし。久しぶりの家族水入らずだもの、奮発したってバチは当たらない。
「あら、エンジ君じゃない!今日は何かの記念日かしら?」
「あっ…………小南の、おばさん。こん、にちは……」
「その箱、ブランローゼの箱でしょ!?あそこのケーキって美味しいわよね〜!リョーコの誕生日のケーキは何時もそこにしているの!あっ、もしかしてお兄さん帰って来るの?だったら一度うちに寄ってくれない?お父さんが出張先で貰ったお土産が沢山あって―――」
……嫌だなこの人。小南とは違って根掘り葉掘り聞くタイプだもん。早く家に帰りたい。ゲームしたい。というか少し寝たい。兄さんの顔が見たい……。
「お母さん、そろそろ妹が帰って来るのに立ち話してていいの?」
「リョーコ!?…あらやだ!私ったらつい自分のことばっかり!ごめんね、エンジ君!またね!」
「ど、どうも……」
「ごめんなさいエンジさん。お母さんに引き留められても、テキトーに理由付けて離れていいですから。ホント、暇ならパートにでも行けばいいのに……また明日」
「うん……また、明日」
辺りを見回し、誰もいないことを確認する。気にし過ぎとか言う奴いるかも知れないけど、これくらいが丁度いい。父さんは昨日から出張だし。
母親なんて、あの日以来会っていない。手切れ金使い果たして泣きつくかと思ったけど、案外プライドとかあったんだ。ウケる。
「ただいま」
本当は誰も居ないけど、防犯対策でこの言葉を言いながら入る。素早く鍵を掛け、リビングのソファーに飛び込む。兄さんが帰って来るの夜頃だし、今日は疲れたから少し寝よう。夕飯は出前でも取ればいい。
「(…………詠導ミク)」
今日、咲神高校・昼休み
≪詠導さんのこと、ですか?≫
≪うん。昨日綴木が話してくれたんだけど、小南のクラスに転校してきたんでしょ?その子って……どんな子?≫
≪……知り合って3日位しか経っていませんが…不思議と目で追っていたり、気付いたら彼女のファイトに見惚れていた…とか≫
≪ファイト?≫
≪はい。枸幹さんが取り巻きと一緒に綴木先輩と各務原先輩に突っかかっているところを助けたとか。聞いてもいないのに綴木先輩が事細かく話してきました。エンジェルフェザーの強みを引き出し、相手の野次にも臆さず、勝負を決めるタイミングを逃さない。ファイトの実力は、記憶喪失という状態のモノとは思えない程だと≫
≪へぇ……そうなんだ≫
≪ファイトに関しては、実際に見たわけじゃないんですが……既に周りと打ち解けていて、殆どの人達からは親愛感や信用を得ています。ファイトの腕も申し分なくて、姉御肌な性格で容姿も綺麗寄りで……けどそれを鼻に掛けたり相手を見下したりしないのも、彼女が慕われている要素の1つだと、個人的に思っています≫
≪如何にも人誑しって感じするね≫
≪そう、ですか?≫
≪呼び止めてごめんね。ありがとう≫
≪いいえ、こちらこそ……じゃあ、私はこれで≫
二度と繰り返さない。二度と喪うわけにはいかない。誰よりも優しい君を、他人の悪意に潰させない。
今度こそ、護ってあげる。
「…………ジ」
「………………」
「…………ジ、エンジ。起きろ」
「んんっ……あっ……兄、さん?」
「また寝落ちしたのか?部屋に籠もってないで少しは外で体を動かせ。身体が資本だろうが」
「うう……お説教とか聞きたくないんだけど」
「聞きたくないなら、僕の言うこと位聞け」
「俺は兄さんみたいに化物じみた体力ないもん」
「言い訳するな。まったく……ほら、晩飯にするぞ。眠気覚ましに顔と手でも洗ってこい」
「ん……」
≪―――――!!!≫
≪―――――!!!≫
≪あ、あああ、何で、なんで!!!≫
あの光景が、こびり付いて離れてくれない。
力無く添えられた手。次第に冷たくなっていく手。閉じられた瞼。微動だにしない、あの子の顔。
≪どうして…………≫
掌から、溢れた。
≪何でアイツだけ幸せそうに生きているの……こんなことになったの、全部アイツのせいなのに!何にも罰を受けないなんておかしい、なの!!≫
≪■■■……≫
≪許せない、許せない!アイツだけのうのうと生きているなんて許せない!!あんな人でなしのクソ女なんて、みんなに嫌われて惨めに死んじゃえばいい!なの!!!≫
ねえ、どうして裏切ったの?
≪■■■……どういうつもり≫
≪許される気なんてない。私を恨むなら、恨めばいい。そうなったとしても、私はこの子を……詠導ミクを、自由に羽撃かせるよ。何者にも縛られず、何処までも飛び続ける……あの子は、そうした方が良いと思う、なの!≫
≪えっ……まさか……記憶が、戻、ったの?≫
≪ん?何のことなの?私は私、なの!何時だって、私は私だけ、なの!≫
≪ッ…!!待ってよ!俺は、俺はただ!≫
≪バイバーイ、なの!!≫
「…………………」
「エンジ、手ぇ洗ったか?夕飯冷めるぞ。」
「うん、分かった……今行く」
迷う要素なんてない。目的なんて最初から決まっている。
あの子を……詠導ミクを、俺達が造った鳥籠に閉じ込める。
「(ボスはどうするか分かんないけど、スペースがあったらアイツも入れてあげようかな。テュールやゼクトとは違ってそんなに恨んでいないし……記憶が戻って混乱しているだけだもんね。そうに決まっている。早く目を覚まさせないと……待っててね、■■■)」
君のことも護ってあげる。
NO SIDE
一方その頃、破滅の申し子・ルインはというと……南の島でバカンスを目一杯楽しんでいた。理由はジュウロウタから「働き過ぎ、休みなさい。」とお達しが来たからだ。
久々の纏った休暇を貰い、折角なのでおひとり様を満喫中。
えっ、ルインが不在でスパーコナ回るの?と疑問に思われるが、彼女の代打として「2人の人材」が派遣されているので無問題 なのである。
「ジュウロウタさんには感謝しなきゃねぇ〜。ひっさびさの自由!青い海、白い砂浜、眩しい太陽!紫外線対策はバッチシだぜ!!今は思い切り喰って遊んでリフレッシュして、明日の私に投資だかんねー!」
「…………………」
「ん?」
「…………………」
ふと誰かの視線を感じ振り向くと、そこにいたのは前髪目隠れ黒髪ロングヘアーの色白肌の女性。白いワンピースを着ているソレは、端から見れば不審者か幽霊である。
女性は徐にルインに近付き、紅赤色と浅葱色の宝石が嵌め込まれた銀色の鍵を渡す。いきなり手渡されたことに疑問を浮かべるルインに対し、女性は「あの子達を助けて欲しい。」と意味深な言葉を告げた。
「あの子達?」
「…………お願いします。もう私には、どうしようもできないのです」
「…………少し、話を聞いてもいいかしら?もしかしてあなた―」
―――――――?
「ッ!!矢張り、貴方があの時の……分かりました、お話しましょう。私が貴方に、貴方達に「ヒカリ」を託す理由を」
自分に本当の意味で休暇を与えてくれるのはもう暫く先だな……とルインは1人ごちながら女性を話しやすい場所へ移動した。
「にゃひひひ!とーーっても面白いことになってきた!フッフーー!」
続く
……やっと見つけた。
端末から特定の呼び出し音。こっちから報告しようと思っていたから好都合。
馬の骨にあの子を馬鹿にされた事はムカついたけど、それくらい大した事ないと思える程の「情報」を知れたから。
報告だけして通信を切る。詳しい話は後でいいよね?フルーツタルトとクレーム・ブリュレを買いに行かなきゃいけないし。久しぶりの家族水入らずだもの、奮発したってバチは当たらない。
「あら、エンジ君じゃない!今日は何かの記念日かしら?」
「あっ…………小南の、おばさん。こん、にちは……」
「その箱、ブランローゼの箱でしょ!?あそこのケーキって美味しいわよね〜!リョーコの誕生日のケーキは何時もそこにしているの!あっ、もしかしてお兄さん帰って来るの?だったら一度うちに寄ってくれない?お父さんが出張先で貰ったお土産が沢山あって―――」
……嫌だなこの人。小南とは違って根掘り葉掘り聞くタイプだもん。早く家に帰りたい。ゲームしたい。というか少し寝たい。兄さんの顔が見たい……。
「お母さん、そろそろ妹が帰って来るのに立ち話してていいの?」
「リョーコ!?…あらやだ!私ったらつい自分のことばっかり!ごめんね、エンジ君!またね!」
「ど、どうも……」
「ごめんなさいエンジさん。お母さんに引き留められても、テキトーに理由付けて離れていいですから。ホント、暇ならパートにでも行けばいいのに……また明日」
「うん……また、明日」
辺りを見回し、誰もいないことを確認する。気にし過ぎとか言う奴いるかも知れないけど、これくらいが丁度いい。父さんは昨日から出張だし。
母親なんて、あの日以来会っていない。手切れ金使い果たして泣きつくかと思ったけど、案外プライドとかあったんだ。ウケる。
「ただいま」
本当は誰も居ないけど、防犯対策でこの言葉を言いながら入る。素早く鍵を掛け、リビングのソファーに飛び込む。兄さんが帰って来るの夜頃だし、今日は疲れたから少し寝よう。夕飯は出前でも取ればいい。
「(…………詠導ミク)」
今日、咲神高校・昼休み
≪詠導さんのこと、ですか?≫
≪うん。昨日綴木が話してくれたんだけど、小南のクラスに転校してきたんでしょ?その子って……どんな子?≫
≪……知り合って3日位しか経っていませんが…不思議と目で追っていたり、気付いたら彼女のファイトに見惚れていた…とか≫
≪ファイト?≫
≪はい。枸幹さんが取り巻きと一緒に綴木先輩と各務原先輩に突っかかっているところを助けたとか。聞いてもいないのに綴木先輩が事細かく話してきました。エンジェルフェザーの強みを引き出し、相手の野次にも臆さず、勝負を決めるタイミングを逃さない。ファイトの実力は、記憶喪失という状態のモノとは思えない程だと≫
≪へぇ……そうなんだ≫
≪ファイトに関しては、実際に見たわけじゃないんですが……既に周りと打ち解けていて、殆どの人達からは親愛感や信用を得ています。ファイトの腕も申し分なくて、姉御肌な性格で容姿も綺麗寄りで……けどそれを鼻に掛けたり相手を見下したりしないのも、彼女が慕われている要素の1つだと、個人的に思っています≫
≪如何にも人誑しって感じするね≫
≪そう、ですか?≫
≪呼び止めてごめんね。ありがとう≫
≪いいえ、こちらこそ……じゃあ、私はこれで≫
二度と繰り返さない。二度と喪うわけにはいかない。誰よりも優しい君を、他人の悪意に潰させない。
今度こそ、護ってあげる。
「…………ジ」
「………………」
「…………ジ、エンジ。起きろ」
「んんっ……あっ……兄、さん?」
「また寝落ちしたのか?部屋に籠もってないで少しは外で体を動かせ。身体が資本だろうが」
「うう……お説教とか聞きたくないんだけど」
「聞きたくないなら、僕の言うこと位聞け」
「俺は兄さんみたいに化物じみた体力ないもん」
「言い訳するな。まったく……ほら、晩飯にするぞ。眠気覚ましに顔と手でも洗ってこい」
「ん……」
≪―――――!!!≫
≪―――――!!!≫
≪あ、あああ、何で、なんで!!!≫
あの光景が、こびり付いて離れてくれない。
力無く添えられた手。次第に冷たくなっていく手。閉じられた瞼。微動だにしない、あの子の顔。
≪どうして…………≫
掌から、溢れた。
≪何でアイツだけ幸せそうに生きているの……こんなことになったの、全部アイツのせいなのに!何にも罰を受けないなんておかしい、なの!!≫
≪■■■……≫
≪許せない、許せない!アイツだけのうのうと生きているなんて許せない!!あんな人でなしのクソ女なんて、みんなに嫌われて惨めに死んじゃえばいい!なの!!!≫
ねえ、どうして裏切ったの?
≪■■■……どういうつもり≫
≪許される気なんてない。私を恨むなら、恨めばいい。そうなったとしても、私はこの子を……詠導ミクを、自由に羽撃かせるよ。何者にも縛られず、何処までも飛び続ける……あの子は、そうした方が良いと思う、なの!≫
≪えっ……まさか……記憶が、戻、ったの?≫
≪ん?何のことなの?私は私、なの!何時だって、私は私だけ、なの!≫
≪ッ…!!待ってよ!俺は、俺はただ!≫
≪バイバーイ、なの!!≫
「…………………」
「エンジ、手ぇ洗ったか?夕飯冷めるぞ。」
「うん、分かった……今行く」
迷う要素なんてない。目的なんて最初から決まっている。
あの子を……詠導ミクを、俺達が造った鳥籠に閉じ込める。
「(ボスはどうするか分かんないけど、スペースがあったらアイツも入れてあげようかな。テュールやゼクトとは違ってそんなに恨んでいないし……記憶が戻って混乱しているだけだもんね。そうに決まっている。早く目を覚まさせないと……待っててね、■■■)」
君のことも護ってあげる。
NO SIDE
一方その頃、破滅の申し子・ルインはというと……南の島でバカンスを目一杯楽しんでいた。理由はジュウロウタから「働き過ぎ、休みなさい。」とお達しが来たからだ。
久々の纏った休暇を貰い、折角なのでおひとり様を満喫中。
えっ、ルインが不在でスパーコナ回るの?と疑問に思われるが、彼女の代打として「2人の人材」が派遣されているので
「ジュウロウタさんには感謝しなきゃねぇ〜。ひっさびさの自由!青い海、白い砂浜、眩しい太陽!紫外線対策はバッチシだぜ!!今は思い切り喰って遊んでリフレッシュして、明日の私に投資だかんねー!」
「…………………」
「ん?」
「…………………」
ふと誰かの視線を感じ振り向くと、そこにいたのは前髪目隠れ黒髪ロングヘアーの色白肌の女性。白いワンピースを着ているソレは、端から見れば不審者か幽霊である。
女性は徐にルインに近付き、紅赤色と浅葱色の宝石が嵌め込まれた銀色の鍵を渡す。いきなり手渡されたことに疑問を浮かべるルインに対し、女性は「あの子達を助けて欲しい。」と意味深な言葉を告げた。
「あの子達?」
「…………お願いします。もう私には、どうしようもできないのです」
「…………少し、話を聞いてもいいかしら?もしかしてあなた―」
―――――――?
「ッ!!矢張り、貴方があの時の……分かりました、お話しましょう。私が貴方に、貴方達に「ヒカリ」を託す理由を」
自分に本当の意味で休暇を与えてくれるのはもう暫く先だな……とルインは1人ごちながら女性を話しやすい場所へ移動した。
「にゃひひひ!とーーっても面白いことになってきた!フッフーー!」
続く