メルティクルーシブル
えっ……マジで、本物?一体何が……?
≪フフッ、驚いたかい?僕達は君を歓迎するよ。だって君は、僕達の祈りを確り聞いてくれる。そうだろう?ナイトローゼのヴァンガード≫
≪アタイを勝手に人数に含めるんじゃないよ!ったく……いいか、あんたはアタイ達に選ばれたんだ。ツベコベ言わねぇで、気に入らねぇ奴をブチのめしていけ!!≫
「…………………」
≪いいかいイズモ。海賊はね、有象無象の小悪党とは違うよ。身内や仲間を傷付け、土足で庭を侵す者を絶対に許さない。君を識ろうとせず、徒に傷付けることで安堵する程度の低い連中の悪意に怯える毎日……あんな思いを二度としたくない。そして仲間にもそんな思いをさせたくない。そうだろう?≫
「……………………」
≪イズモ……一緒に強くなろう?あの子を、君にとって一番大事な彼女を護れる位に強くなろう。大切な人を喪いたくないだろう?≫
≪ケッ、気障ったらしいのも相変わらずだな。それとファヌエルのヴァンガード…詠導ミクだったか?アイツもアンタと同じ力を持っているんだよ。とどのつまり…アイツを護れるのは同じ力を持つアンタだけ。日和る必要が何処にある?ムカつく奴は、悪意や敵意を向ける奴は、全員叩き潰せばいい!簡単な話だッ!!≫
「………………(詠導)」
NO SIDE
―あたしは何時だって、名倉の味方だから
思い浮かんだのは自身が恋焦がれる少女の顔。邪な感情や打算が一切無い真っ直ぐな笑顔。
自分を縛る枷が無くなり、本当の意味で「自由」になれた時……自分が懸想する少女は、自分の恋心を受け取ってくれるだろうか。
その答えは誰にも分からない。だがもし受け入れてくれたのなら……この上ない程の幸福に浸れる。他には何も要らない。名誉も、地位も、あれ程欲していた周りからの承認や賛美すらも塵同然になると断言できる。短期間とはいえ、名倉イズモにとって、詠導ミクという少女は「かけがえのない存在」になっていた。
「(…………詠導と、ずっと一緒にいれる。いつか……家族に、なれたなら―)」
世界で一番、しあわせになれる
答えを見つけた瞬間、奥に秘めていた「泥濘」が蜂蜜色の瞳から溢れ出てくる。
愛しい存在を護れるのは自分だけ。
これ以上にない特別な響きに、今まで空っぽだった自尊心が満たされていく心地良さ。誰にも渡さない、誰にも邪魔はさせない、誰にも……自分と彼女の繋がりを絶たせるものか。
「…………誰にも、渡さない」
イズモは恍惚とした表情からいつも通りの表情に戻る。萌芽した「チカラ」を誰にも悟らせないように。
「…………言われたこと、やったよ」
≪御苦労だったな、イブ。我の言いつけをちゃんと遂行出来たのだな。帰還してこい。狐面の奴等に勘付かれたら面倒だ≫
その頃、イズモにデッキを渡した(基押し付けた)子供・イブは連絡用の携帯端末で自分に命令した上司に任務完了の報告をしていた。彼(又は彼女)の周りには、一般人には視認出来ない機械仕掛けの兵隊達が円状に佇んでいる。
「…………1つ、聞いてもいいですか?」
≪何だ?≫
「…………何で、名倉イズモにデッキを渡したの、ですか?」
≪はて……誰の話だ?≫
「……貴方が僕にデッキを渡すように指示した人間の名前、ですけど?」
≪あっ、あーー、アイツか。ハハッ、すまないね、1個体の識別名を憶えるのは未だに苦手なんだ≫
またかコイツ……と、イブは内心呆れていた。ケラケラと笑っている上司は何処吹く風と彼(彼女)に「次の指令」を下した。
「………えっ?マジですか」
≪マジもマジ、大真面目だ。何処ぞのクソ馬鹿共がよからぬこと考えているようだから、それを奴等に解決してもらう。そうすることで奴等は……詠導ミク達は強くなる。今の実力では、ネフナンチャラはおろかヘルヘイムのイカレ野郎共にすら届かん。都合の良い踏み台の女が居るのは確かだが、所詮は踏み台。現状確認のための舞台装置だ。イブ、私はなぁ……愛を識ったんだ。希望よりも曖昧で、絶望よりも深く、未知の熱量を孕み、そして数多の存在を呪い縛る……何処ぞの人間の持論でもあっただろ。「愛」ほど歪―≫
「それ以上言ったらテメーのスペア全部ぶち壊すぞクソ野郎。ボクの中で傑作漫画10選の内の1つを穢すな」
≪ハハハハハッ!!反抗期かぁ!??≫
1人で爆笑している上司に呆れつつ、イブは通信を切る。そしてイブはため息一つ吐き帰還した。
機械仕掛けの生命体達は暗躍する。
全ては「いつか訪れる災厄へ抗う」力を、彼等に授ける為に。
ミク視点
続く第2回戦。先鋒戦が終盤に差し掛かった頃に名倉が戻って来た。……何か妙に静かだな。
『おい、名倉?大丈夫か?』
「……………………」
『…………名倉?』
「……………………」
「名倉……おい!名倉!返事しろ馬鹿野郎!」
「ッ……な、なん、だよ」
『お前あたしを無視るとかイイ度胸してんなオイ!!』
「こらこら、ケンカしないの!」
掴み合いのケンカをしそうなあたしを綴木先輩が宥める。そうこうしている内に先鋒戦が終わった。よっし、先ずは1勝!次もあたしが出て景気付けじゃ!!
「お疲れ、各務原!いいファイトだったぞ!」
「ありがとう綴木君!」
「よし、次は誰が出る?」
『はい!次もあたしが出ます!頗る調子が良いんでこのまま―』
「俺が出ます」
『えっ?』
「……名倉、大丈夫なのか?エキシビションマッチが終わってから、体調悪いみたいだし…無理しなくていいんだぞ」
「そうですよ名倉君、無理が祟ったら―」
「平気です。俺が出ますから」
「ちょっ、ちょっと!名倉君!」
小早川先生の制止を無視してファイトテーブルに向かう名倉。強引だな……そんなにファイトしたかったのか?
「アンタが次の相手?まあ、私が勝つからどうでもいいけど!」
「…………………」
「ちょっと、少しは反応しなさいよ!つまんないヤツ!あは、もしかして自分が弱いからって、ビビってんの〜?」
「…………弱いのはお前だろ」
「はっ?」
「…………ファイトしねぇのか?」
「む、ムカつく!いいわよ、完膚なきまでに叩き折ってやる!!」
対戦相手は生意気なヤツのようだ……意味はよくは分からんが、メスガキ気質か?名倉もなんか大人しいというか、無口になったし……大丈夫なのか?
「ターンエンド!凌がれたけど、あんたのダメージは5で手札はたった2枚!対する私はダメージ2で手札は9枚!絶対なる勝ち確でごめんねぇ?つーか、グランブルーなんて雑魚いクラン使うとか遅れてる〜!ざぁこざぁこ!」
「…………雑魚はお前だろ」
「はっ?雑魚が何言ってんの?雑魚に雑魚って言って何が悪いわけ!?」
「雑魚の癖に何回も言うなよ。雑魚に失礼だ」
「はあ!?今、私のこと雑魚って言ったかクソ野郎!!」
「深海の闇も知らない癖に……そんなに知りたいなら教えてやるよ」
獰猛な深海の不死者の闇を。
そう言った後に名倉がライドしたのはナイトローゼ。だけどあたしがイメージ上で見た時とは違って何処か冷たい雰囲気だ。
「ナイトローゼ!?」
「コロンバールをコール。スキルでお化けのリーダー べあとりすをコール。べあとりすのスキル、ドロップから細波のバンシーをコール。細波のスキル、SB1して1枚ドロー」
≪名倉選手、ドロップからゾロゾロと不死なる仲間を呼び出し、盤面を埋め尽くしたッ!これぞグランブルーの真骨頂だぁぁぁ!!≫
≪これは凄まじい勢いです。名倉選手はこの展開を待っていたようですね〜≫
…………待っていた?
「あ、あ、あああ……!!」
「…………潰せ、お前等」
≪仰せのままに、我等の先導者≫
『ッ!!?』
「ミクちゃん?」
断末魔が聞こえた。それはやがて、海底の闇に呑まれて消えていく。海面へ上がっていた泡は次第に小さくなり、凪へと変わる。
敵か沈んだ場所を冷たく見下ろすのは、夜薔薇の名を持つ吸血鬼の少女 。彼女を慕い付き従う海賊達は、彼女へ膝を折り頭を垂れている。
『(……………………?)』
心配そうに見ているイメージ上のあたしに気付いたのか、ナイトローゼはコッチを見た。そしてどこか悲しそうな顔をして、こう呟いた。
イズモを、たすけてくれと。
『(一体全体、ホントに何が起きてやがる!!)』
「……………星は、動き出したのね」
続く
≪フフッ、驚いたかい?僕達は君を歓迎するよ。だって君は、僕達の祈りを確り聞いてくれる。そうだろう?ナイトローゼのヴァンガード≫
≪アタイを勝手に人数に含めるんじゃないよ!ったく……いいか、あんたはアタイ達に選ばれたんだ。ツベコベ言わねぇで、気に入らねぇ奴をブチのめしていけ!!≫
「…………………」
≪いいかいイズモ。海賊はね、有象無象の小悪党とは違うよ。身内や仲間を傷付け、土足で庭を侵す者を絶対に許さない。君を識ろうとせず、徒に傷付けることで安堵する程度の低い連中の悪意に怯える毎日……あんな思いを二度としたくない。そして仲間にもそんな思いをさせたくない。そうだろう?≫
「……………………」
≪イズモ……一緒に強くなろう?あの子を、君にとって一番大事な彼女を護れる位に強くなろう。大切な人を喪いたくないだろう?≫
≪ケッ、気障ったらしいのも相変わらずだな。それとファヌエルのヴァンガード…詠導ミクだったか?アイツもアンタと同じ力を持っているんだよ。とどのつまり…アイツを護れるのは同じ力を持つアンタだけ。日和る必要が何処にある?ムカつく奴は、悪意や敵意を向ける奴は、全員叩き潰せばいい!簡単な話だッ!!≫
「………………(詠導)」
NO SIDE
―あたしは何時だって、名倉の味方だから
思い浮かんだのは自身が恋焦がれる少女の顔。邪な感情や打算が一切無い真っ直ぐな笑顔。
自分を縛る枷が無くなり、本当の意味で「自由」になれた時……自分が懸想する少女は、自分の恋心を受け取ってくれるだろうか。
その答えは誰にも分からない。だがもし受け入れてくれたのなら……この上ない程の幸福に浸れる。他には何も要らない。名誉も、地位も、あれ程欲していた周りからの承認や賛美すらも塵同然になると断言できる。短期間とはいえ、名倉イズモにとって、詠導ミクという少女は「かけがえのない存在」になっていた。
「(…………詠導と、ずっと一緒にいれる。いつか……家族に、なれたなら―)」
世界で一番、しあわせになれる
答えを見つけた瞬間、奥に秘めていた「泥濘」が蜂蜜色の瞳から溢れ出てくる。
愛しい存在を護れるのは自分だけ。
これ以上にない特別な響きに、今まで空っぽだった自尊心が満たされていく心地良さ。誰にも渡さない、誰にも邪魔はさせない、誰にも……自分と彼女の繋がりを絶たせるものか。
「…………誰にも、渡さない」
イズモは恍惚とした表情からいつも通りの表情に戻る。萌芽した「チカラ」を誰にも悟らせないように。
「…………言われたこと、やったよ」
≪御苦労だったな、イブ。我の言いつけをちゃんと遂行出来たのだな。帰還してこい。狐面の奴等に勘付かれたら面倒だ≫
その頃、イズモにデッキを渡した(基押し付けた)子供・イブは連絡用の携帯端末で自分に命令した上司に任務完了の報告をしていた。彼(又は彼女)の周りには、一般人には視認出来ない機械仕掛けの兵隊達が円状に佇んでいる。
「…………1つ、聞いてもいいですか?」
≪何だ?≫
「…………何で、名倉イズモにデッキを渡したの、ですか?」
≪はて……誰の話だ?≫
「……貴方が僕にデッキを渡すように指示した人間の名前、ですけど?」
≪あっ、あーー、アイツか。ハハッ、すまないね、1個体の識別名を憶えるのは未だに苦手なんだ≫
またかコイツ……と、イブは内心呆れていた。ケラケラと笑っている上司は何処吹く風と彼(彼女)に「次の指令」を下した。
「………えっ?マジですか」
≪マジもマジ、大真面目だ。何処ぞのクソ馬鹿共がよからぬこと考えているようだから、それを奴等に解決してもらう。そうすることで奴等は……詠導ミク達は強くなる。今の実力では、ネフナンチャラはおろかヘルヘイムのイカレ野郎共にすら届かん。都合の良い踏み台の女が居るのは確かだが、所詮は踏み台。現状確認のための舞台装置だ。イブ、私はなぁ……愛を識ったんだ。希望よりも曖昧で、絶望よりも深く、未知の熱量を孕み、そして数多の存在を呪い縛る……何処ぞの人間の持論でもあっただろ。「愛」ほど歪―≫
「それ以上言ったらテメーのスペア全部ぶち壊すぞクソ野郎。ボクの中で傑作漫画10選の内の1つを穢すな」
≪ハハハハハッ!!反抗期かぁ!??≫
1人で爆笑している上司に呆れつつ、イブは通信を切る。そしてイブはため息一つ吐き帰還した。
機械仕掛けの生命体達は暗躍する。
全ては「いつか訪れる災厄へ抗う」力を、彼等に授ける為に。
ミク視点
続く第2回戦。先鋒戦が終盤に差し掛かった頃に名倉が戻って来た。……何か妙に静かだな。
『おい、名倉?大丈夫か?』
「……………………」
『…………名倉?』
「……………………」
「名倉……おい!名倉!返事しろ馬鹿野郎!」
「ッ……な、なん、だよ」
『お前あたしを無視るとかイイ度胸してんなオイ!!』
「こらこら、ケンカしないの!」
掴み合いのケンカをしそうなあたしを綴木先輩が宥める。そうこうしている内に先鋒戦が終わった。よっし、先ずは1勝!次もあたしが出て景気付けじゃ!!
「お疲れ、各務原!いいファイトだったぞ!」
「ありがとう綴木君!」
「よし、次は誰が出る?」
『はい!次もあたしが出ます!頗る調子が良いんでこのまま―』
「俺が出ます」
『えっ?』
「……名倉、大丈夫なのか?エキシビションマッチが終わってから、体調悪いみたいだし…無理しなくていいんだぞ」
「そうですよ名倉君、無理が祟ったら―」
「平気です。俺が出ますから」
「ちょっ、ちょっと!名倉君!」
小早川先生の制止を無視してファイトテーブルに向かう名倉。強引だな……そんなにファイトしたかったのか?
「アンタが次の相手?まあ、私が勝つからどうでもいいけど!」
「…………………」
「ちょっと、少しは反応しなさいよ!つまんないヤツ!あは、もしかして自分が弱いからって、ビビってんの〜?」
「…………弱いのはお前だろ」
「はっ?」
「…………ファイトしねぇのか?」
「む、ムカつく!いいわよ、完膚なきまでに叩き折ってやる!!」
対戦相手は生意気なヤツのようだ……意味はよくは分からんが、メスガキ気質か?名倉もなんか大人しいというか、無口になったし……大丈夫なのか?
「ターンエンド!凌がれたけど、あんたのダメージは5で手札はたった2枚!対する私はダメージ2で手札は9枚!絶対なる勝ち確でごめんねぇ?つーか、グランブルーなんて雑魚いクラン使うとか遅れてる〜!ざぁこざぁこ!」
「…………雑魚はお前だろ」
「はっ?雑魚が何言ってんの?雑魚に雑魚って言って何が悪いわけ!?」
「雑魚の癖に何回も言うなよ。雑魚に失礼だ」
「はあ!?今、私のこと雑魚って言ったかクソ野郎!!」
「深海の闇も知らない癖に……そんなに知りたいなら教えてやるよ」
獰猛な深海の不死者の闇を。
そう言った後に名倉がライドしたのはナイトローゼ。だけどあたしがイメージ上で見た時とは違って何処か冷たい雰囲気だ。
「ナイトローゼ!?」
「コロンバールをコール。スキルでお化けのリーダー べあとりすをコール。べあとりすのスキル、ドロップから細波のバンシーをコール。細波のスキル、SB1して1枚ドロー」
≪名倉選手、ドロップからゾロゾロと不死なる仲間を呼び出し、盤面を埋め尽くしたッ!これぞグランブルーの真骨頂だぁぁぁ!!≫
≪これは凄まじい勢いです。名倉選手はこの展開を待っていたようですね〜≫
…………待っていた?
「あ、あ、あああ……!!」
「…………潰せ、お前等」
≪仰せのままに、我等の先導者≫
『ッ!!?』
「ミクちゃん?」
断末魔が聞こえた。それはやがて、海底の闇に呑まれて消えていく。海面へ上がっていた泡は次第に小さくなり、凪へと変わる。
敵か沈んだ場所を冷たく見下ろすのは、夜薔薇の名を持つ
『(……………………?)』
心配そうに見ているイメージ上のあたしに気付いたのか、ナイトローゼはコッチを見た。そしてどこか悲しそうな顔をして、こう呟いた。
イズモを、たすけてくれと。
『(一体全体、ホントに何が起きてやがる!!)』
「……………星は、動き出したのね」
続く