メルティクルーシブル

NO SIDE

グシャリ。紙が潰れた音が部屋に響き渡る。握り潰されたのはアイスカフェラテの入った少し丈夫な紙コップ。その持ち主―ゼクトは憎々しげにゴーストへ視線を向ける。
迸る殺気を哀れにも隣で受けているのは、パズルゲームをしている呆れ顔のシュネーだ。レルヒェはヴォルフの買い出しに付き合っており、その隣には我関せずにデッキ調整をしているテュールがいる。

「あの身の程知らずがミクさんを侮辱するなんて万死に値する。路傍の石の分際でミクさんに勝つ?巫山戯るな、今直ぐ毒まみれにして拷問して殺しても良いですよねぇ?あんな虫けら以下の存在は今直ぐ屠ってやりましょう!シュネー、アイツの足元凍らせて下さいね!逃げられると面倒ですから!」

「コンプラ違反になりそうなこと呟くの止めてくれない?面倒なのはどっちかと言えば君でしょ?」

「簡単に事を荒げるな。ボスが動き辛くなる」

「シュネー、腹が立たないんですか君は?僕達が唯一無二と愛するミクさんが、身の程知らずのあんな男に好き勝手言われているのを黙って見ていろと?君のミクさんへの愛はその程度なんですね。失望しましたよ」

「ふーん……あんな男に・・・・・ミクが負ける。ゼクトはそう思っているんだ。あれだけ俺達の前で絶対君主唯一無二とか言っているのに、大して信用あいしてないんだね?」

「あ゙っ゙?」

唯一無二と崇め懸想する自分を小馬鹿にするような態度を取るシュネーに対し、今にも血管と堪忍袋の尾がはち切れんばかりの声を出すゼクト。内輪揉め寸前であるにも関わらず、それでも我関せずの姿勢を貫き通すテュール。そんな3人の遣り取りを、レルヒェは呆れた様子で傍観している。ヴォルフは狐面ではあるが、何のことか分からない顔で首を傾げている。

「うっわキッモ。コレは要らねぇだろ」

「わー、きしょーい…ってヤツだねー。このカードをフル投入したらいいかもー」

「オレのデッキ調整を邪魔するな!ブッ殺してやろうかクソ異形共!!」

「シンプルに断る」

「やぁだやぁだ♡」

「今直ぐテメー等の首を刎ねてやる!!」


何時の間にか不法侵入してきたヨスガとヒビキ。デッキ調整を邪魔されたことにキレたテュールが何処ぞの捻れた御伽の国の寮長オマージュの処刑宣告からの鬼ごっこが始まる。

どうせ何時もの如くテュールが撒かれて終わりだとスルーを決めたレルヒェはヴォルフに「折角買ってきたホットスナックが冷めるわよ」と自分の席に座り、運良く買えた出来立てのフライドチキンを口にする。それを見たヴォルフは「レルヒェずりーぞ!おれも!」と我先にフライドチキンへ手を伸ばした。因みに彼等の狐面の口元は、どこかの梨の妖精と同じシステムである。

「フライドチキンおいちいね!」

「ねー」

「鶏肉は最高だよな!分かるぞ、その気持ち!!」

「何でアンタ達もいるのよ!?」

服の毛玉並みにどうでもいい内輪揉めをする馬鹿2人ゼクトとシュネー。2体の異形の掌で踊らされるテュール。敵であるロキメデコンビと和気藹々と接するヴォルフ。
自由なスパーコナに対するレルヒェのツッコミが、ヘルヘイムのアジト(ドラエンエリア)に空しく響いた。



≪第一試合・チームスリードラゴン対咲神高校ヴァンガード部の中堅戦。ゴースト選手は2ターン目にしてグレード3にライドしダメージ1、詠導選手はグレード1の状態の中ダメージ4!盤面やダメージでもゴースト選手が有利な状況の中、詠導選手のターンであります!≫

「ハッ!記憶喪失の癖に、大会に出る時点で無謀だったんだよ!さっさと負けを認めろ、そうすりゃこれ以上余計な恥を―」

『さっきからごちゃごちゃうっせぇんだよ。無職の癖にハイスペ旦那と専業主婦を志望する婚活女かお前は。頭悪いの自分からゲロるとかある意味才能だよ。馬鹿って才能だけど』

「…………えっ?」

『聞こえなかったか?記憶喪失だの余計な恥だの、さっきからごちゃごちゃうっせぇって言ったんだけど。黙ってろ、邪魔すんな、レスバしてぇならスレでも行け』

「えっ、あ、えっ?」

余りの態度に激おこになったミクは、所謂怒りの笑顔で上記の台詞をゴーストへ言い放った。イメージは某世界一優しい鬼退治漫画のし◯ぶさんである。

さっきまで元気溌剌な女子高生が、怒りの笑顔で倍返ししてきたことに心臓がキュッとなったゴースト。これ以上言ったらどうなるか……火を見るより明らかな彼女の態度を見て黙ることにしたゴースト。それを見たミクはそのままカードを引いた。

『聖火の守護天使 サリエルにライド。サリエルのスキル、登場時CB1とSB1、山札からノーマルユニットを1枚までダメージゾーンに置き、置いたらダメージを1枚回復。ライドされたイオフィエルのスキル、手札の神託の守護天使プロフェシー・セレスティアル レミエルとダメージゾーンのイオフィエルを入れ替え、イオフィエルをコール。スキルでCB1と自身をバインド、山札の上から1枚をダメージゾーンに表で置く』
手札:7枚 ソウル:1枚
ダメージ:5 裏にしたカード:サリエル、ベリフルメッズ
回復したカード:ベリフルメッズ
SBしたカード:ペヌエル
山札から置いたカード:スケーリング・エンジェル、機動病棟 フェザーパレス
ダメージゾーン:サリエル(裏)、レミエル、ザラキエル、フェザーパレス、スケーリング
山札:34枚 ドロップ:3枚

「(ダメージゾーンを入れ替えただけじゃなくて、ダメージを増やした?コイツ、何考えてやがる……否、コッチはグレード3だ。相手はまだ―)」

『ダメージゾーンのザラキエルのスキル、相手のVがグレード3以上でこのカードが表なら、山札の上から1枚をダメージゾーンに裏で置くことで、このカードをスタンドでライドする』

「はっ?」

『団結の守護天使 ザラキエルにライド!イマジナリーギフト・プロテクトⅠ!ザラキエルのスキル、自分のターン中、新たなカードがダメージゾーンに置かれているなら、前列のユニット全てのパワー+3000!ラグエルをコール!手札から登場時、このターン中ダメージゾーンに新たなカードが置かれているならCB1、ドロップからベリフルメッズをコール!』
手札:7枚 ソウル:2枚
山札から置いたカード:ピンキー・デンチュリスト(裏) 裏にしたカード:レミエル
山札:33枚 ドロップ:2枚

「あ、あああああ…!」

『ベリフルメッズのスキル、自身をソウルに置き、手札のスケーリング・エンジェルとさっきコストで裏にしたダメージゾーンのレミエルを入れ替え、そのレミエルをコール!』
手札:6枚 ソウル:3枚
ダメージゾーン:サリエル(裏)、ピンキー(裏)、スケーリング、スケーリング、フェザーパレス

あっという間に前列が埋まる。パワー15000のザラキエルとレミエル、パワー12000のラグエルが影の騎士団へ荒療治を施さんと武器を構える。

「な、なっ、何なんだよコレ…!」

『エンジェルフェザーだけど?』

「んなこと分かってんだよ!記憶喪失の癖に、何で腕が落ちてねぇんだよ!スレで散々叩かれていただろ!!」

『知らね。後、スレッドに限らずネットは好き勝手書ける場所だって再認識しろ。鵜呑みにしてると痛い目に遭うぞ』

「ッ……!」

『(……なーんか嫌な予感するんだよな。PSYクオリアの思し召しってやつ?1枚位コールしておくか。)ベリフルメッズをコール、ラグエルでブランウェンにアタック!』
手札:5枚 パワー:12000

「っ、ダンプフッド・ドラゴンでガード!」
手札:5枚 シールド:13000


『(そりゃ守るよな。ブランウェンはドロップにグレード1が3枚以上あるなら、自身のパワー+5000。パワー13000のブースト役になれるユニット……)ベリフルメッズのブースト、ザラキエルでVにアタック!』
パワー:23000

「(俺の手札は5枚。ダメージは1、1つくらいくれてやるよ!)ノーガードだ!!」
ドロップ:3枚

『ツインドライブ!1枚目、ゲット!ヒールトリガー!パワーはレミエルに、ダメージ1枚回復!2枚目、ゲット!クリティカルトリガー!パワーはレミエル、クリティカルはザラキエルに!』
手札:7枚 ツインドライブ:サニースマイル・エンジェル(治)、クリティカルヒット・エンジェル(☆)
ダメージ:5→4 回復したカード:サリエル
レミエルのパワー:35000
ザラキエルの☆:2
山札:31枚 ドロップ:3枚

「何ィィィ!!?」
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