悪女が掘った墓穴

しかもゼクトって奴は、枸幹が勝ったら詠導を貰うとか勝手に条件増やしやがった。巫山戯んな。俺達はメルティクルーシブルに出場して、優秀な成績を残さなきゃならない。

その為には、ヴァンガード部に詠導がいるのが必須条件。枸幹を入部させる位なら、俺は腹切りも辞さない覚悟だ。だがそれは最悪の場合の話……負ける気なんて更々ねぇ。


この場所は……大切な場所咲神高校ヴァンガード部は、絶対に守ってみせるッ!!

「「スタンドアップ・ヴァンガード!!」」

俺と枸幹のカードが捲られる。俺は「アルボロス・ドラゴン “新芽”ラトゥーン」、枸幹は……「春待ちの乙女 オズ」―ネオネクタールだと?

ミラーマッチ……尚更、負けられねぇ。

そして狐面の野郎は呑気にお茶会を開いている、詠導だけに。オイコラ、知らぬ内に人質にされてんじゃねえぞ。

それに関して名倉とサユがブーブー文句を垂れていたが、我関せずばかりに詠導にアフタヌーンティーを振る舞っている……サユはただアフタヌーンティー食いたいだけだろ。涎垂れているぞ。

つーか、アフタヌーンティーなんて何時の間に用意してやがった……詠導、間違っても口にするな。怪しい奴から渡されるモノは口にしてはいけません。

『ネオネクタール同士か……』

「えぇ〜神谷先輩のイメージとぜぇん然違ぁ〜う!チョー絶似合わなぁ〜い!!」

「……先攻はテメーにやるよ」

「(チッ、少しは反応しなさいよ…!)私のターン!開墾の戦乙女 パドミニにライド!オズのスキルで1枚ドロー。パドミニのスキル、手札から登場時山札の上から5枚見て、グレード3を1枚公開し手札に加える……最悪、グレード3は無いから山札をシャッフルしてターンエンド!」
手札:6枚 ソウル:1枚
山札:42枚

「(他人からデッキ借りといてそれかよ。ホントに態度悪いなコイツ……俺は俺のファイトをすればいい。それだけだ。)俺のターン。アルボロス・ドラゴン “若枝”ブランチにライド。“新芽”のスキルで1枚ドロー、クイックシールドを得る」
手札:7枚 ソウル:1枚
山札:42枚

「アルボロス……プラント・トークンを強化し、仲間と戦うカテゴリー」

『プラント・トークン?』

「プラント・トークンはネオネクタールのユニット達だけが呼べる特殊な存在です。RかGサークルにしか存在出来ず、それ以外の領域に移動した時消滅します。軽いコストでRを増やせるので本当に鬱陶し…失礼、能率的な戦略を立てられます」

「おい、おれだけじゃなくてヒビキにも茶を寄越せよ。おれの友達を除け者にすんじゃねぇぞ」

「紅茶もいいけど、ハーブティーとかはなーい?後苺の乗ったケーキがいいなー」

「泥水でも啜ってて下さいよモブ共が。抑僕がミクさんだけに振る舞うお茶やお菓子を、何故君達が片っ端から平らげているんですか?」

「モブじゃねぇし、異形だしー。詠導が腹減ってないからやるって言われて貰っているだけだしー。クロテッドクリームつけたスコーン美味ぇ」

「私はモブって名前じゃないもーん、ヒビキだもーん。サンドイッチうまみうまみ」

「今直ぐ地面と接吻させてあげましょうか?」

『(何で言い回しがちょっと古めなんだろ……)』

「はっ、もしや今日は和菓子の気分でしたか?気遣いが至らず申し訳ありません!只今使いの者に手配をしますので、暫しお待ちを!」

「おれは羊羹と渋ーいお茶な」

「私は焙じ茶とクリームあんみつがいい!」

「本 気 で 沈 め ん ぞ」

『……あたし腹減ってないから全然要らないんだが』


茶番を尻目にファイトを進める。因みに俺がコールするプラント・トークンは猫と薔薇が融合した姿の妖精。モフモフ仮面が音速で帰ってこないことを祈る。ただでさえうるせぇのが更に煩くなる。

「あははは、ちょっとは可愛いけど、雑魚は並べたところで雑魚でしか無いもん!ご愁傷様〜!」

「言ってろ。“若枝”でアタック」
パワー:8000

「ノーガード!」

「ドライブチェック…ノートリガー」
手札:8枚 ドライブチェック:フルーツアソート・ドラゴン
山札:41枚

「ダメージチェック……ノートリガーッ」
ダメージチェック:パドミニ
山札:41枚

「“若枝”のスキル、自身のアタックかブーストしたアタックがヒットした時、山札の上から4枚見て、「アルボロス」を含むカードを1枚まで公開し、手札に加える……アルボロスの陣風 オリヴェルを手札に加え、残りは山札の下に望む順に置きターンエンド」
手札:9枚 山札:40枚

「随分慎重なんですね〜。最強の主人公である私に負けるのが怖いんだぁ〜!」

『そうやってあたしに負けたの忘れたのか?舐めプはやめとけ、恥かくだけだぞ』

「うるせぇんだよ、色白ドブス!!」

「うるせぇのはテメーだよこの阿婆擦れ」

「へ?」

『えっ……今、なんて??』

「し、失礼しましたッ。貴方に対する物言いが余りにも無礼極まりないものだったので、つい」

「お前さっき枸幹のこと阿婆擦れって言っただろ。絶対ソレが本性だろ、口悪ィ」

「……神谷ユタさんでしたか。貴方嫌いです」

「そりゃどうも。嫌われるのは慣れっこなんでね」

「ユタ……」

「ねえねえ!あばずれって、なーに!?」

「えっと……月下さんは知らなくていいコトだよ!」

「そうそう、知らんでも幸せになれるからなー。ほれ、飴やっから」

「わーい!!」

生憎ガキの時から嫌われるのなんざ慣れっこなんだよ。だから自分に対する大抵の悪口なんて聞き流せるんでね……コウはサユを甘やかすな。名倉は狐面を睨むな、面倒だぞ。

俺はこれでターンエンド。同クランを相手するのはあまり無いから、慎重にいくか。


「私のターン!開花の乙女 ケラにライド!ケラのスキルでCB1、プラント・トークンを2枚コール!メイデン・オブ・フォールヴァイン、メイデン・オブ・ネペンテスをコール!フォールヴァインのスキル、プラント・トークンのいるRに手札から登場時1枚ドロー、自身のパワー+5000!ネペンテスのスキル、プラント・トークンを1枚退却させ1枚ドローし、このユニットはブーストを得て、パワー+5000!」
手札:6枚 裏にしたカード:パドミニ
フォールヴァインとネペンテスのパワー:15000
山札:38枚

「折角呼んだプラント・トークンがいなくなっちゃった……」

「ユニットのスキルとはいえ、コレはちょっとなぁ……」

「何だよアレ、仲間を踏み台にしてんじゃねーか!」

「こんの罰当たりめー!!」

「フン、勝つ為には犠牲が必要なの!現に私の役に立ってくれているんだから、外野からあーだこーだ言われたくなーい!」

『……カードを軽視するな』

「はぁ?」

『確かにファイトに限らず、成功や良い結果を出す為にはコストは要るのも事実。だからってカードを軽視していい理由にはならない。相手のカードは勿論、自分のカードもだ。カードを大切にしないファイターに、ユニット達は応えちゃくれねぇぞ!』

……当たり前のこと、詠導のお陰で改めて思い出せたな。ネオネクタール。植物だけが唯一の居場所だった俺にとって、このクランがあったから俺は―


「はいはーい!色白ドブスの負け惜しみなんて聞こえないもーん!」

「ケッ、態度悪りぃなァ。オメーは何であんな女に詠導を賭けたんだよ。オメー自身でファイトした方がいいだろ」

「はっ、おいそれと自分の手の内を明かすなんて愚策ですよ。それに、あんな脳内お花畑の愚女であろうと、僕の唯一無二を掌中の珠にする為の駒になるのなら……使える内に使うだけ」

「なっ……!」

「テメー!その為だけに、詠導を手に入れる為だけに枸幹に乗ったのかよ!?」

「巫山戯んな!ミクちゃんはアンタのモノじゃないっての!馬鹿じゃないの!?」

「……ハァ、これだから思考回路がお粗末な輩は困ります。君達が何を言おうと無駄ですよ。唯一無二である貴方に、僕の全てを捧げる―その誓いは何者であろうと断ち切れないんですから」

『ッ……(なんだ、この感じ……初対面の筈なのに、何処か懐かしいって思えてしまう…………あたしは目の前のコイツを、強く拒めない・・・・・・。あたしは……あたし、は―)』

「え、詠導さん?」

「み、ミクちゃん?」


「さあ、どうか……僕の手を―」

「ん……ダメ。そっち、行かないで」

『おっと……わ、悪い!ボーっとしてた!』

「ん、いい子。なでなで、するー」

『わっ!ちょっ、ワシャワシャすんな!』

「…………チッ」

「わぁ、コイツ今舌打ちしたぞ。本性ドッス黒」

ギャラリーが混沌としてて不安になってきた……いけね、ファイトに集中しねぇと。
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