悪女が掘った墓穴

ユタ視点

『お、お前は……ぜんまい仕掛け!!』

ぜんまい仕掛けってからくりかよ。平賀源内はとっくに死んでいるぞ。エレキテルだけじゃなくて、アルコール温度計やアスベストの発明でも有名だ。エレキテルの原理とか分かんないのに直せたし、発明家だけじゃなくて医者や俳人、蘭学者や蘭画家や浄瑠璃作者等の一面もあるからマジモンの天才だったんだろう。

「ゼクトですよ、ミクさん……天然な所は変わらずですね」

「ぜの文字以外合ってねぇのはどうなんだよ。後うちの後輩の手を仰々しく握るな、頭を垂れるな。手の甲に口付けした瞬間に蹴り入れてやろうか」

「何で神谷先輩がキレてるんですか?」

「何かムカつくから」

「いぃや理由がしょぼ過ぎるだろ!ブファハハハハハッ!!」

「綴木君笑い過ぎ……」

「変態だ!変態がいるぅぅぅ!!!」

うるせぇアホサユ。元はと言えば、お前がクリームパンなんかに釣られてこんな所に誘拐されたのが悪いんだろうが。

鳥兜の狐面……昨日現れたレルヒェって奴と同じ組織にいるのか?彼奴は月下美人の狐面……花言葉は「繊細」や「儚い美」は有名だが、「危険な快楽」なんてモノまである。鳥兜は全部が毒草である一面から「人嫌い」や「厭世的」って花言葉があるが、一方では「騎士道」や「栄光」なんてモノもある。
外国だと鳥兜の花が中世ヨーロッパの騎士の兜や修道士の頭巾に似ているからだそう。世界は広い。


「ちょっと!何で色白ドブスに傅いているのよ!私に傅くべきでしょ!?」

「僕が何故貴方のようなラトゥン・アップルに傅かなければならないんですか?貴方の目はプランクトンか何かですか?貴方のような矮小な脳味噌だと、何も深く考えずに生きられて楽しいでしょうね。羨ましい限りです。憐憫の情すらも沸かない程に」

「ら、ランニング・スニーカー?」

「ラトゥン・アップルだ。英語で集団に悪影響を与えるような厄介者って意味だよ。よく腐ったミカンとか言うだろ、アレと同意義だって」

「後は同じ意味で、バッド・アップルとも言うよね」

「え、えっと……?」

『名倉、後で英語の課題(先輩達と)一緒にやろうな』

「(え、詠導と二人きり……!?)な、何言ってやがる!!」

『……神谷先輩と桃井先輩、英語得意だから教えてもらおうかと思ったんだけど』

あー、そういうことか。桃井は父親が樹木医、母親は植物園で働いているとか聞いたな。英語が得意なのはそれかもな。知らねえけど。

つーか名倉は何で顔赤いんだ?勉強会って言葉聞いて何考えたんだか……コウ、笑うな。鳥兜の花飾りを着けた狐面の男は名倉を睨んでいる。威圧する魔眼か?
枸幹の取り巻きうるせぇ。キャンキャン吠えるな、弱く見えるぞ。

「ミクさんミクさんミクさん……こうして貴方にまた会えたのは運命なんですよ。だから一緒に帰りましょう。あの時のように……僕達がずうっと守ってみせます」

「(なんだ、この違和感は……)」

「ちょっと聞いてんのそこの狐面!そんな色白ドブスなんて無視して私を―」

「愛しています詠導ミクさん。僕の…僕にとっての唯一無二絶対君主。貴方を傷付けるモノは壊し、阻む者は切り捨て、貴方を利用せんとする愚者は、この手でみなごろしにして差し上げますから!!」

鏖だって?穏やかじゃねぇぞ!!

「何コイツ、頭イカれていやがんのか?」

余計なこと言うな、このバカ!

「綴木君!ホントのこと言ったら失礼だよ!」

お前が一番失礼なこと言っているぞ各務原。


「な、何言っているか分かんねぇ……!」

『あたしは魔王になる気はないぞ』

普通はそうなるから間違ってないぞ名倉。多分そういう意味じゃないからな詠導。サユは何かうるせぇから無視だ。

「キィィィィ!!無視するんじゃないわよ!!」

「ミクさん……どうか、僕の手を取ってください。貴方を喪ったあの時の痛みを忘れたことなんて一度も無い。四肢を引き裂かれ、眼を抉られ、爪や皮膚を剥ぎ取られ、腸を引き摺り出されるようなあの痛みを……貴方をまた喪う位なら―」



「そこまで……だよ?」

『「!?」』

ゼクトと詠導の間に割って入ったのは、黒セーラー服を纏った漆黒のロングヘアーに紅赤色の瞳を持った少女。少女の肌は病的に白く、死人のような不気味さと幽霊のような儚さを漂わせる。

「その手……取っちゃ、ダメ。取ったら……みんなに、会えなくなるん…だよ?」

『あっ…………』

「……信じる人は、ちゃんと考えて?貴方の大切な人も、ちゃんと……ね?」

『………………』

「嗚呼、邪魔邪魔邪魔、邪魔なんですよ貴方。何時だってそうだった。何にも知らない、知ろうともしない無知蒙昧で下等な存在が、何時も僕と唯一無二の間に入り込むッ。邪魔なんですよ、煩わしいんですよ、身の程知らずがいけしゃあしゃあと入り込んで良い存在じゃないんですよ」

「……この子は、君達だけのモノ?じゃないよ?モノじゃなくて、ヒトだもん。ヒトはモノじゃ、ないんだよ?どうして、縛ろうとするの?何で?」

「戯れ言をッ!貴方みたいなポッと出の存在に僕と彼女の何が分かる!知ったかぶるのは止めて下さいよ!」

「うーん……知ったかぶりも何も、私は君に何にも聞いてないから……分かんないのは当然、じゃないのかな?」

何処か噛み合いそうで噛み合わない会話に呆れる俺。隣にいたサユは「意味分かんないよアイツ!!」とほざきやがったので渾身の拳骨を落としてやった。誰のせいでこうなったと思ってやがる。
そういや、取り巻き達どうなったんだ?……ヨスガとモフモフ仮面(大神田先生)にタコ殴りにされて猿轡されて縛り上げられていた。自業自得だから無視だ。モフモフ仮面は「モフモフが俺を呼んでいる!」と光速移動。あの人絶対人間じゃないだろ。

「あーもー、何でこうなるのよ!私が主人公なんだから、私の思い通りに進みなさいよ!私の私による私のための逆ハーレムも許されないって言いたいの!?」

『今のこの国じゃ法的に許されねぇだろ、お前やっぱり馬鹿なのか?』

メタ発言止めろ詠導。火に油を注ぐな。

「さっきからうるっせぇんだよ、この色白ドブス!こうなったらまたファイトでボコボコにしてやる!さっさとデッキ出しなさ―」


「そのファイト、俺が買ってやるよ」

「えっ?」

「ユタ!?」

前々からコイツにはムカッ腹立っていたのもある。それよりも……俺には紅園さんや環鳥さんから託された「咲神高校ヴァンガード部の部長」の肩書きがある。

その名に恥じない行動を示さなきゃ、俺達を受け入れてくれた先輩達に申し訳が立たない。今年は何より、詠導や名倉っていうデキる後輩もいるんだ。サユは……賑やかし枠だからノーカンだろ。現にただうるせぇだけだし。

「へぇ〜神谷先輩が私の相手ですかぁ?そこの色白ドブスやツリ目馬鹿よりは実力者っぽいですけど、どーせ勝つのは私だから!」

『お前そう言って毎回あたしに負けているクセに懲りねぇよな』

「アイツ名倉より馬鹿だろ」

「綴木先輩!俺枸幹なんかより馬鹿じゃねぇッス!訂正しろ下さい!!」


安心しろ、この世で一番馬鹿なのは枸幹しかいない。それよりお前は赤点回避に重点置け。

「(好き勝手言いやがってホントにムカつく!あっ、そうだ!)じゃあこうしましょう!私が神谷先輩に勝ったら、そこの色白ドブスを退部させて、代わりに私を入部させて下さい!神谷先輩に勝ったら、私の方が優秀だって証明になりますよね!」

「はぁっ!?」

「ちょっと枸幹さん!あなた幾らなんでも―」

「いいぜ。その賭け乗った。但し俺が勝ったら、今後一切咲神高校ヴァンガード部や部員達にお前とその取り巻き達が関わるのを禁止にする。関わった場合、それ相応の対応をさせてもらう。それでもいいか?」

「いいですよ!最後に勝つのは主人公であるこの私だもん!さっき取り巻きの1人に渡されたこのデッキで分からせてあげますから!!」
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