少女、覚醒める


2人に聞いても返事はなくただただアワアワしている……ちょっと可愛い。そんなことを考えているあたしの前に狐面を被った如何にもヤバそうな集団が現れる。うげっ、予感当たっちまった……。


「ここにいたのか、詠導。」

「随分と手間を取らせてくれたな。」

「君のこと探すのに、どんだけ労力使ったと思っているの?」

「本当ですよぉ。僕達の何が不満なんですかぁ?」

「あのときのこと、まだおこっているのか?」

「アンタはまた……アタシ達に消えない傷を負えって言いたいのかしら?」


わーお、ナ ニ コ レ。この世界でのあたし、マジで何があった?あたし、ヤンデレはよく分からんのだが……。
因みに、あたしが人より少しだけサブカルチャーに詳しいのはあたしの子供達や孫がオタク気質だったからだ。言うてあたし自身はそんなにオタク趣味はない。理解はしているつもり。


「え、詠導ちゃんに近付くな!この変態共!!」

「そうです!ミクちゃんは事故の後遺症で今までの記憶がすっ飛んでいるんです!貴方達のことなんて、1ミクロンも覚えていないんですーー!!」

「正直に言わないでいいよチヨちゃん!」


チヨちゃんは慌てて両手で口を塞ぎ「しまった…!」と焦った顔になる。そうだな、余計な情報を敵に流したっぽい。


「記憶を、喪った……?」

『そのことに関してはあたしもよく分からん。気が付いたら病室のベッドで寝てた。』

「嘘だろ……。」

「ねえ……俺達のこと、覚えている?」

『しーらね。つーかマジで誰?』

「ぼ、僕達と過ごしたあの日々は……。」

『寝言は寝て御意イエ◯ ご主◯様マイ◯ード。』

「おれたちのこと…ほんとうに……わすれたのか!?」

『知らぬ存ぜぬアルセーヌ。』

「(何でちょいちょいボケているの…?)アタシ達と一緒に戻るつもりはないってこと?」

『そろそろ帰ってもいいか?おふくろがあたしの好物やご馳走を用意してくれているから帰りたいんだ。』

「そ、そうだよね詠導ちゃん!こんな変な人達に構っている暇なんてないもんね!!」

「ミクちゃん大好きです!ここから引っ越してもサークルライムで盛り上がりましょうね!!」


「…………引っ越す?」


チーヨーちゃーん??まぁた要らんこと言ったねお前。ほら、何か変態達がドス黒いオーラ全開でこっちを見ているんだけど。何あれ、くろいまなざし?ジム戦?
ここってヴァンガードの世界だよな?不思議な不思議な生き物がそこら辺にいる世界じゃないよなワニゾー、テメー今直ぐ降りて来い!説明しろ!

「引っ越す……詠導、お前は自らの意志で…ここから離れるというのか?」

『い、いや、その…親父の仕事の都合で、引っ越すしかなくて……。』


「嗚呼、そうか……なら俺達と暮せばいい。その子達と離れるのは悲しいだろう?」

『うっ……。』

「詠導ちゃん騙されないで!こいつら絶対詠導ちゃんに変なことするって!」

「そうですよ!私達を餌にして、ミクちゃんにエロ同人みたいなことするんですよ!!」

『いやいや、騙そうとしているのは分かるけど、そういうセクシャルな同人みたいなことはしないだろ。普通に青少年ナンチャラ法に引っ掛かるようなことをするわけが……。』

そういってあたしが狐面の集団に目を向けると、何でかあたしから目を逸らしやがった。……えっ?おい、待て……えっ???ま、まさかコイツラ……嘘だろ、えっ、マジであたしを―


「悲しいときー!」

「かなしいときー!」

「きー!」

「ゴリラのドラミングは、グーじゃなくてパーだと知ってしまった時ー。」

「グハァッ!!」


懐かしいお笑いネタと共に白いエビフライ―ゴマフアザラシの赤ちゃんのデケェ縫いぐるみが黒い狐面の男に突進してきた。人間って飛ぶんだな。
デケェ縫いぐるみの頂には、覆面レスラーみたいなメインクーンがモチーフのマスクを被った壮年の男性、黒い外ハネヘアーとピンク色の瞳が特徴の幼女、幼女の隣には赤と青のオッドアイに白メッシュ入のセミショートヘアーの幼女。

そして極めつけは…器用に仁王立ちしている牡丹色のメッシュ入りの黒髪外ハネウルフカットに、メッシュと同色の瞳を持ったあたしより年上の女性がいる。

この世界はもしや、ギャグ寄りの世界か?

「ボスゥゥゥ!!!」

「また出やがったな…天音ルインとその他愉快な仲間たち。」

「フハハハハ!!子猫の可愛さは、宇宙一ィィィィ!!!」

「寄りにもよってモフ吉末代のソロモンの指輪の受肉者までいやがりますよ!?レーゲ!この前調合したやっべぇ毒でさっさと処してやれ下さい!!」

「あっ、ヴォルフお兄ちゃんおひさー!」

「さー!」

「おお、ロキとメーディア!久しぶりなんだぞ!!」

「ヴォルフ、呑気に挨拶している暇無いわよ……。」

ここ、金髪アフロにグラサン掛けているピーマンが嫌いな27歳の某ハジケリストが護った世界とか言わないよな?あたしの前世とかなり違う世界だ……慣れるかな?

「ちょっと!なんなのこの状況!ここは私が華麗に現れてモブを倒して逆ハーレムフラグが立つはずでしょ!!モブスが調子ぶっこくんじゃないわよ!!」

『お前初対面で色々ズケズケ言うな。自ら天罰にルパンダイブする人間か?』

「はぁ!?私が主人公なんだよ!ふざっけんなよこの色白ドブス!!」


あっ……狐面の変態達の殺気が増した。今度は突如現れたイタい女に向けてだ。殺気を当てられている筈の当の本人は全く気付いていない。鈍感主人公でも目指しているのか?あたしああいうタイプは苦手なんだよな……。

「頭にきた!とりあえずそこのタレ目モブス、主人公であるこの私・枸幹くみきアカネとファイトしなさい!ボコボコにしてあげる!あんた弱そうだし楽勝ね!」

「……初対面で随分言ってくれんね。いいよ、ブッ倒してやる。」

殺る気スイッチ入った年上の女性―基天音ルインさん。突如として自分を主人公宣言して罵詈雑言撒き散らすヤベェ女とのファイトが始まる……!

うーん……どうなるんだ?色んなフラグが立った気がするんだが……とりあえず、観戦しようかな。この世界でのヴァンガードがどんなものなのか見たいし。ルールは転生前にワニゾーとリリアちゃんから教わった。BGMに「チ◯ノのパーフェクトさんすう教室」を添えて。


「「スタンドアップ・ヴァンガード!!」」


続く
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