不屈の片翼

NO SIDE

メルティクルーシブル会場外。タブレットの電源を切り溜め息を吐くテュール。その隣には嘗ての仲間であるマーレ基宮津みやづヒバリが呆れた表情で見ている。

「何だその目は……」

「テュール君のことやから、どうせろくでもあらへんこと考えてるんやんなって思てただけや」

「ろくでもない?」

「テュール君……ルインちゃんのこと、自分達の元に引き戻そう思たんちゃうん?」

「………………」

「ふざけたこと言わんといて。何処まであの子を振り回したら気ぃ済むん?自分勝手ばっかりほざくのもええ加減にしーな」

「自分勝手はテメー等だろうが。オレ達を裏切ったのはテメーとムジークだ。ルインを諭しやがって……あのままボスの命令を素直に聞くように刷り込んだ苦労が全部パァだ。祈り聞く者を失ったルインが、アイツの生きる盾で生きていた方が幸せだったっていうのによォ」

「見上げたもんや。何時から都合のええ言葉しか聞けん耳になったんかいや?ルインちゃんを手酷うほかしたのは君達のくせに……図々しいわい」

呆れた表情から一変し、テュールへの憎悪を露わにするヒバリ。それを感知したテュールは狐面越しに怒りを露わに睨み返していた。


≪ヒバリィィィ!メル、コイツ嫌い!ブッコロしていいよねェー!?≫

「あかんえメル。なんぼ相手がゴミでも、命まで奪うたらあかん。ルインちゃんが悲しんでまう」

≪あぁん?ブッコロされんのはテメーだろうがクソデカウスノロ鯨!!≫

「やめろ。派手に暴れるな、ボスの理想を阻む材料になるんじゃねぇよ」

切り札のユニット達も睨み合い一触即発の状況。それを制したのは彼等の先導者使い手。互いを睨み合いながらも、ここで争うのは得策ではないと結論づけた。別れの挨拶も無くその場を離れるヒバリとテュール。

しかし彼等の目的は変わらない。


1人は自らが絶対と慕う存在の理想を、1人は彼等から解放された仲間の未来を掴む為に。今更立ち止まるつもりも改心する気もない。


すべては「己の望む未来」を、掴む為にココにいる。





ミク視点

いやーー…………真面目にどういうことですかね〜?
控え室に戻ったら三馬鹿トリオが鎖鎌装備の小早川先生から逃げ惑っているし、神谷先輩と綴木先輩は殺る気満々でデッキの最終調整していて、各務原先輩はヨスガ(タヌキのすがた)を撫でていて、月下と名倉はお互いに抱きつきチワワみたいに震えている。

『…………何があったんだ???』

「おお、詠導か……文句ならこの三馬鹿トリオに言いな。コイツ等のせいで、俺が碧紫の歌劇団に引き抜かれる可能性だけじゃなくて、お前と馬酔木が栂芽の当主様に献上されることになってんだからな」

「お前が望むなら肥料にしてやるよ」

『はっ???』

≪≪≪ごめんってぇぇぇぇ!!!≫≫≫

「ごめんで済むんなら警察も法律も探偵も万◯屋も死◯代行もプ◯キュアもいらないんじゃぁぁぁ!!」

小早川先生色んな漫画知っているんだ……じゃなくて、何であたしが栂芽の一族の当主に?

『おい三馬鹿トリオ、何しやがった』

≪お、俺達騙されたんだーー!!≫

≪売り言葉に買い言葉で騙されたんだよ!≫

≪俺達は被害者だーー!!≫

『真面目にどゆこと???』

あたしが疑問に思っているとヨスガが説明してくれた。というかお前、タヌキになれるのかい。

『するってぇと何かい。三馬鹿トリオはそのマシロとかいう人物に足蹴にされたのに激おこで、ギャーギャー言っているどさくさ紛れに「綴木先輩を自分のチームに引き抜く」だけでなく、あたしや馬酔木さんを栂芽の一族の当主様に会わせる義務を賭けたファイトになったってか?』

「掻い摘んで言うとそゆこと。トドの釣り、お前と馬酔木は紫峰とかいうガキンチョが栂芽の一族の当主様に気に入られる為の貢物にされるってワケダ」

『釜茹でと極寒どっちがいい貴様等』

≪≪≪お赦し下さい!!!≫≫≫

三馬鹿トリオよ、懺悔の用意は出来ているか。小鹿になっても赦さぬぞこの失態は。


≪ほーむ≫
訳:お邪魔しまーす (๓´˘`๓)♡

『……ホムちゃん?』

何故かホムちゃんが現れた。そしてイリュージョンから取り出したのは書類の束。一番上には「栂芽の一族のゴミカス所業報告書」と書かれている。よし、後で読むからしまいなさい。

「ほむ、ほむほーむ」
訳:すまねぇ、うちの部下が…… コノトオリデス…_|\○_ スミマセン

『いや別にホムちゃんのせいじゃないし、そこまで怒ってないから安心しなって!ただし三馬鹿トリオ、テメー等はダメだ』

「処刑執行ォォォォォ!!!」

≪≪≪コバちゃんせんせー!ごべんな゙ざい゙ぃぃぃ!!!≫≫≫

「…まあ、お前はゆっくり休んでいろ詠導。栂芽だか豆板醤だか知らねぇけど、彼奴等の好きになんかさせるか」

「俺とユタで彼奴等に勝ってやるから安心しろって!!」

『……はい!頼みましたよ、先輩達!』

「…………なんで俺じゃないんだよ、詠導

「イズモ君???」


正直何がなんだかよくわかんねぇけど、狙うはメルティクルーシブル優勝じゃー!


その為にも頑張れー神谷先輩!綴木先輩!!



ヒイロ視点

まーーじでツイてねぇのーーー。あのクソ兄貴とその腰巾着と関わるとかマジでツイてねぇ。つーか俺、真面目に無関係なのに貢物にされるとかマ?信じられんねー。

「大変なことになったわね……」

「たいへんだーー!!」

「だーー!!」

「わ、わわわわわ、私が、お、おじいちゃんの力でなんとかします!!!」

「しないでいいからな!ジュウロウタさんにこれ以上迷惑かけらんねぇっての!」

「巫山戯んなよ栂芽のヤロー共!絶対何かしら仕掛けてくんぞ!!ヒイロの兄貴なんざ、今もアイツとアイツの弟に執着してんだ!テメーで手放したくせに虫が良すぎんだっての!許せねぇ、ぶっ飛ばしてやる!!」

「春秋落ち着け、とりあえず手にしている釘バットは没収だ。ロキメデコンビ、逃げんな!お前等だろ春秋に渡したの!」

「「うげっ!!」」

「よっしゃ、後方店長面しているあたしの出番だな!!」

「お前の出番でもないのエリー!」

あーあー、カオスによるカオスの為のカオスがぐーるぐる。ノック音の後に聞こえたのは天音さんの声。俺達のこと心配して来てくれたんだ……。


「さっき咲神高校ヴァンガード部の控え室の横通ったら、やっばいことなったみたいだね〜」

「許せねぇぞ栂芽のヤロー!」

「ヤロー!」

「ロキメデちゃん、お口が悪いわよ?」

「(今から凸ってもいいんだけど、それじゃあミクちゃん達の成長に繋がらない。第一私は「ミクちゃん達の先輩」ってだけで、大会の出場者でもなければ運営の関係者でもない私が今やることはただひとつ。あの子達が、ミクちゃん達が勝つって信じる!)」

「あの……天音さん」

「安心しなよみんな。ユタ君達の強さはヒイロ君達がよーく知っているでしょ?だったらさ……ユタ君達が勝つって信じて応援しよう!!」

「天音さん……はいっ!ありがとうございます!」

「「わかったー!!」」

「神谷君達なら勝てるって私も信じているわ」

「いけーー神谷!綴木!そんな奴等ぶっ飛ばしてやれーー!!」

「ふぁいとー」

「やったれーー!!」

「れーー!!」

「お前等ホントに単純だな……おーいエリー、お前はコソコソなぁにしてんだぁ?」

「コソコソはしてないです栗花落先輩!正々堂々と正面からぶちのめす準備してました!!」

「没収だアホ!!」

……天音さん達って、本当に頼りになるけど、ちょっと何処か抜けている所があるのが玉に瑕なんだよな。


≪そんなことよりもよ……詠導達とのファイト、楽しみだなヒイロ!≫

≪弱っちくなってたら遠慮なくぶった斬ってやらぁ!!≫

≪兄さん達は相変わらず呑気だね……まあ、私も簡単に負けるつもりはないよ≫

お前等も楽しみだよな!俺も俺も!楽しみでしょうがねぇ!!


「…………………」


≪ありがとう、ヒイロ。君はやっと……自由になれたから≫


徐に左脚をさすりながら、アイツとの思い出を回顧していた。アイツに、もらってばっかりだったな……。



俺はここに、お前と一緒にいるよ。



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