不屈の片翼


『(……ああ、あたしはみんなを信じるからな!)ノーガード!』
ダメージ:5 ダメージチェック:ラグエル
ダメージゾーン:ザラキエル、ザラキエル、ピンキー、ベリフルメッズ、ラグエル
山札:29枚

「ターンエンド!」
手札:11枚 ソウル:3枚
ダメージ:2
バインドゾーン:クリア、ローザ
山札:25枚 ドロップ:4枚

あたしの手札は5枚、天音さんの手札は11枚。ダメージや盤面ではあたしの方がひでぇか……だがしかし、此位であたしはビビったりしねぇ!


こんな状況、前世では親の顔の次に見たんだからなッ!!






コウ視点

詠導と天音さんのファイトの途中でトイレ行ってきた俺。戻る序でに飲み物でも差し入れすっかな。母ちゃんから貰ったお小遣いと畳めるタイプの手提げ袋あるし。ユタは緑茶、各務原はブラックコーヒー、名倉はメロンソーダ、月下はオレンジジュースが好きだって言っていたな。詠導は……確か昨日名倉がチョコミントのドリンク買っていたって言っていたな……妥協案でミルクティーにすっか。

「よし、戻るか」

「あれ……綴木?」

「…………紫峰しほう?」

飲み物買って帰ろうとした俺の前に現れたのは、中学2年までは一緒にいた昔馴染・紫峰チハヤ。ポジションは確かFWフォワードの中で点を取るのに特化したポジションのCFセンターフォワード
確か引っ越した先でもサッカーは続けていて、二つ名が「紫影の得点王ウィステリア・タイラント」……何でいるんだよ。


「マジで久しぶりだな綴木!お前こそ何でここにいるんだ?あっ、もしかしてメルティクルーシブルに出ている神谷の応援か?」

「……俺も出ているんだよ。咲神高校ヴァンガード部の一員として」

「……えっ?」

「……もういいか?控え室に戻―」

「い、いや、いやいやいやいや!なんだよそのつまんねー冗談!綴木がいるのはサッカー部だろ!?ヴァンガード部にいるなんて―」

「サッカー部なんてとっくに辞めたよ。人のこと盗っ人扱いしといて、謝りも反省もしねぇで掌返す奴等のいる場所にいるとか拷問だろ」

「盗っ人?掌返す?な、何言ってんだよ綴木……」

「……サッカー部の部費が盗まれて、盗んだのお前だろって濡れ衣着せられて、ロッカーやユニフォーム荒らされて、不必要な身体接触されて、それでも黙ってニコニコして、挙げ句にソイツらのやらかしを許してやれとか言われてもお前は許せんのかよ」

「はぁっ??」


犯人扱いされたのは各務原だけど、さっき言ったのは俺が実際にされたことだ。

各務原はやってない。そう言っただけで、庇っただけで受けた仕打ち。

悪口や言われのないことで叱責され、ロッカーを荒らされたり俺のユニフォームだけ汚された。練習の時、不必要な身体的接触を何度もされた。

各務原には言えなかった。言ったらきっと、もっと自分を責めるのが目に見えていた。
各務原は悪くない。なのにやってもいない罪を着せて好き勝手する仲間「だった」奴等が、段々得体の知れない化物のように見えてきた。


身も心も限界寸前の時だった。ユタからヴァンガード部に誘われたのは。


≪コウ。今直ぐサッカー部辞めて、各務原と一緒に咲神高校ヴァンガード部に入れ。俺はお前を信じるし、お前が信頼している各務原も信じる。だから……もう無理すんな。これ以上お前が無理しているのを黙って見ているつもりはない。もしもサッカー部の彼奴等が拒否ったり邪魔すんなら、まとめてぶっ飛ばして畑の肥料にしてやる≫

≪ユタ…………けど、俺、やっぱ―≫

≪つらいならつらいって言えよ!お前が、お前や各務原だけが・・・我慢し続ける価値が、あの場所にあんのかよッ!!?≫

≪ッ……!!≫

≪コウ……お前はどうしたいんだよ≫

≪俺は……サッカー部を辞めたい……あの場所に、いたくないッ。これ以上いたら、大好きだったものが嫌いになる……俺は、これ以上…サッカーを嫌いになりたくない!!≫

≪なら今直ぐあの場所から離れろ……逃げたっていいんだ。逃げずにいてぶっ壊れちまうんなら、そんなモンに価値なんかねぇッ。俺はお前が……俺にヴァンガードを教えてくれたお前が、不幸になるのは見たくねぇ≫

≪ユタ…ッ……うわああああぁぁぁっ!!!≫


あの声に、あの手に、俺は救われた。


「……用は済んだろ。俺そろそろ戻らな―」

「なんでだよ」

「はっ?」

紫峰に手首を掴まれる。振り解こうとするがビクともしない。コイツ…こんな力強かったか?

「なあ……あの時の約束忘れたのかよ。何時かプロになって、2人で世界一のサッカー選手になるって約束しただろ」

「……そんなの覚えてねぇよ」

「綴木が俺にパス回して、俺はそれ拾って点稼いで、チームを世界一に引っ張っていくって話だったろうが!なのに、何でサッカーを捨てたんだよ!!」

「い゙ッ……紫峰、おい、痛えってッ!」

「巫山戯んな…巫山戯んな!ヴァンガードなんて何時でも出来る、けどサッカーは違うだろ!どれだけ実力や才能があっても、早く限りが訪れる!だったらいっそ―」


「うーっす、クソお邪魔しまーす」

「「!!?」」

俺と紫峰の間に飛び込んできたのは……柴犬サイズのタヌキ!?毛の色は羊羹色、瞳の色は孔雀緑。おい、もう完全にアイツだろ。よく警備員や猟◯会にバレなかったなッ!!


「よう、待たせたな」

「喋ったッ!!?」

「て、テメー、なんだよいきなり!」

「どうも綴木様、あの時助けてもらったメスのタヌキです♡」

「しれーっとかわいこぶって嘘吐くのやめてもらっていいですかねー?」

「空気読めねぇのかコノヤロー。たい◯いけ◯のオムライス寄越せ」

「強欲」

「綴木に何してんだテメー!」

「大丈夫か、綴木!!」

「春秋!馬酔木も!」

タイミング良く春秋と馬酔木も来た。というかこのタヌキ……絶対にヨスガだな。声がまんまじゃねぇか。たい◯いけ◯は自分で行け!!


「な、なんだよ!関係ねぇ奴はすっ込んでろよ!」

「テメーこそすっ込んでろDV野郎!」

「喧嘩売るのやめろー……とりま綴木のこと離してくんね?あんたメルティクルーシブル出場チームでもねぇのに無作法だろ」

「はっ、メルティクルーシブルなら俺も出てんだよ!!」

紫峰もメルティクルーシブルに?さっきヴァンガードなんて何時でも出来るとか言っていたくせに…なんなんだよ。

「だからなんだよ!テメーみてぇなイキリ暴君のいるチームなんて―」

「俺が所属してんのは栂芽の一族の傘下!そして俺とアイツはな、永蓮翠華の蒼森と緑山と肩並べる位の実力者なんだよ!!」

栂芽の一族の傘下?つーことは、さっきの永蓮翠華ってチームと同等の実力者?

碧紫の歌劇団ウィステリア・レビュー!このチーム名を聞いたこともねぇのかよトーシロー!」

「誰がトーシローだ誰がッ!」

「あんまキレんなよ。コルチゾールブチ上げだぜ?」

「お前さっき栗花落さんにその癖説教されたばっかだろ」

「うっ……そ、それとこれは別だろうが!」

「(タヌキが喋っていることに関してはだぁれもツッコまねぇのな〜)」

「コウ、便所と飲み物買うのに何手古摺って……あ?紫峰?それに馬酔木や春秋まで、なんでここにいるんだよ」

「ユタ!!」

「神谷、綴木連れて逃げろ!」

「はっ?いやいや、一体何―」

「いいから連れてけ!ここは俺達が何とかする!!」

「おれも連れてけー。チュロス食いてぇ」

「「お前はここにいろ!!」」


馬酔木、ナイス!面倒事はごめんだっての!!

「いっちゃダメ」

「「ッ!!?」」

「マシロ!いいタイミングだ!」

「んー……なんでチハヤの言うこと聞かないの?」

俺とユタの前に立ちはだかったのは名倉位の身長のあるスノーホワイトのショートヘアに梔子色の瞳の男。デケェ……。

「おい。俺達は自分の控え室に帰るんだよ、邪魔だ退け」

「やだ。チハヤがその子のこと欲しいって言っていたもん。だから退きたくな〜い」

「ああそうかよ。だったら力付くでも―」


≪≪≪三馬鹿トリオ協力奥義・牛乳と報連相!≫≫≫

「邪魔」

≪ぎゃあああああ!!!≫

≪ぶべらばぁ!!!≫

≪どふとえすふきー!!!≫

三馬鹿トリオが俺達を助ける為にマシロと呼ばれた男に突進したが、肩についたゴミを払うようにモップで軽々と叩かれた。何時もよりギャグ要素多くないか???


「何かよく分かんねぇ奴が増えた!!」

「というか、アレ生き物なのか?」

「おれと同類か……」


…………なんでこうなる。
3/8ページ
スキ!