反逆の刃を空にかざす
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しばらくした後ー
エレンが巨人化した事は、駐屯兵団の上層部に知られてしまい、エレン、は事情聴取の為連れて行かれてしまった。
そこにミカサ、アルミンは自分達から着いていくようにしていた。
私は言うと、その場に居た者で一番トップだったため、
強制的に連行されていた。
連れて行かれたのは、他の兵士達が待機している場所とは離れた所だった。
着いた瞬間、私たちは駐屯兵達に囲まれた、銃を向けられた。
「…随分物騒だ」
いや、それもそうか。
人類にとって、巨人化する人間とは未知な存在で、
それ故に恐怖を覚えてしまう。
彼らはエレンのことを化け物でも見るような目で
怯えながら見ている。
駐屯兵の対応に嫌悪感を表したミカサは、
私たちより一歩前に出て威嚇行動みたいなものをしている。
私も、エレンを守るように彼の前に立つ。
そしてアルミンは、未だに気絶しているエレンを抱えている。
しばらくその攻防を続けていた時ー
「殺してやる」
物騒な声が聞こえてきた。
その声の主は、今現在アルミンが支えているエレンのだった。
後ろを振り向くと、エレンは不気味な笑みを浮かべていた。
その言葉を聞いたアルミンは、真っ青になりながら口を開けた。
「エ…エレン…?」
アルミンの声にエレンはハッとする。
「エレン!!」
エレンの意識が覚醒したことを知り、ミカサは今だに駐屯兵達に身体を向けながらも、彼の安否を確認するため
後ろを振り向く。
「エレン!ちゃんと体は動くか?意識は正常か?
知ってる事全部話すんだ!きっと分かってもらえる!」
アルミンは涙目でエレンに訴える。
しかし、エレンは意識が覚醒したばかりなので、まだあまりハッキリとしていない。
アルミンの言葉に疑問を抱いているようだ。
一方、駐屯兵の間では大きなどよめきが起こっていた。
「殺してやるって言ったんだ」
「ああ、確かに聞こえた。アイツは俺達を食い殺す気だ」
「アルミン、ミカサ…それに何で…
副長が…」
ぼんやりとした様子で言うエレンに、私は問いかける。
どこかおかしい所はないのか、
巨人化していた時の記憶はあるのか、
巨人化した心当たりはあるか。
その質問に、エレンは頭を混乱させている。
(巨人化していた時の記憶はないのか?)
「イェーガー訓練兵!並びにアッカーマン、アルレルト!グレース副兵士長!
今貴様らがやっている行為は反逆行為だ!貴様らの命の処遇を問わせてもらう!」
「チッ…」
(聞いている最中に話してくるなよ)
エレンに質問をしてきた時に割って入ってきたキッツに、
私は不快感を隠せず、舌打ちをした。
エレンはキッツの言葉に動揺する。
まだ頭が追いついていないようだ。
「下手に誤魔化そうとしたり、そこから動こうとした場合は直ちに榴弾をぶち込む!
躊躇うつもりは無い!」
エレンの言い分も聞こうとしないのか…。
それにこの人、さっき補給兵が話していた時に出てきた名前だ。
さっきは勝手に決めつけたらいけないと思っていたから、あまり考えなかったけど、やっぱりこの人巨人が怖くて逃げたのでは?
「率直に問う!貴様の正体はなんだ?!人か巨人か!」
「っ…質問の意図が分かりません!」
「しらを切る気か?化け物め!もう一度言ってみろ!貴様らを粉々にしてやる!
一瞬だ!正体を現す暇など与えん!」
「正体!?」
「大勢の者が見たんだ!お前が巨人の体内から姿を現す瞬間をな!」
その後彼は、自分たちが知らない間にエレンのような得体の知れない者をウォール・ローゼ内に入れてしまった。
例えエレンが王よりさずけられし訓練兵の一部であっても、リスクの早期排除は妥当な筈と言った。
「私は間違っていない!」
「待て、キッツ!いきなり意識が覚醒した彼にそんな事を言われても混乱する!
彼に説明でもさせてくれ!」
「いつ鎧の巨人が姿を現すか分からない今、こんなことに兵力と時間を割くわけにはいかないのだ!
我々は人類存亡の危機の現場いるのだ!分かったか?!」
「彼は見た感じ、ここまでの記憶は無い様子!
何も彼から情報を引き出さないで、殺すのはあまりにも非道だ!」
「グレース副兵士長、そもそも貴様はなぜそっち側にいる?!
貴様の行動を取り上げ、調査兵団の壁外調査を暫く禁じてやろうか!!」
その言葉を言われ、ぐっと言葉が詰まる。
私一人だけが被害を被るなら我慢できるが、調査兵団全体に被害が及ぶのは避けたい。
「隊長!今なら簡単です!奴が人間に化けている間にぶっぱなしにしちまえば!」
私たちの会話に焦った駐屯兵はキッツに言う。
その言葉に怒りを覚えたミカサが前に出る。
「私達の特技は肉を削ぎ落とすことです…。
必要に迫られればいつでも披露します。
私の特技を体験したい方は…どうぞ、一番先に近付いてきて下さい」
ミカサの迫力に一瞬怖気付く駐屯兵。
近くにいる白髪の女が、隊長に近づき何か言っている。
「おい!ミカサ、アルミン!それに副兵士長!これは一体!?」
「ミカサ!人と戦ってどうする!狭い壁の中でどこに逃げようって言うんだ!」
「どこの誰であろうとエレンが殺されるのは阻止する!これ以外に必要ない!」
「話し合うんだよ!誰にも何も状況が分からないから、恐怖だけが伝染しているんだ」
「3人共、落ち着け!」
私の声に慌てていた3人は私の方を見る。
今この中で一番上に立つべき私が、しっかりしなければ。
「エレン、もう一回聞くがここに来るまでの記憶はあるか?
見ての通り君は今、命の危機にある。
何か小さな事でも良い、教えてくれないか?」
エレンの近くに行き、翡翠色の瞳をじっと見つめる。
エレンはこの状況にまだ理解が追いついていないが、
少し落ち着いたのか私たちに教えてくれた。
ここに至るまでの記憶がない。
体が怠くて立てない。
自分が巨人だということが分からない。
「分かった、しかしエレン。
さっきアルミンから聞いたが、君は巨人に食べられる前、腕と足を失ったそうだな」
エレンはハッとして自分の腕と足を見る。
そこには、巨人に食べられた後はまるで無い、綺麗な手と足があった。
服は不自然に切れたままだが。
「君は巨人じゃないと言っている。
だが、これが意味することは何だと思う?」
巨人も同じだ。
項を切らない限り、あいつらはどんな怪我でもいつか治してくる。
今のエレンと、まったく同じだ。
エレンは私の言葉にショックを受けている様子だ。
だけど、それでも現実を突きつけなければならない。
そうしないと、彼はこのまま真実から逃げ出してしまうから。
「普通の人間は、そんな簡単に怪我を治すことなんて出来ない。
ましてや、失った部位を再び再生させることなんて」
私みたいな特殊な体じゃ無い限り、できない。
「もう一度問う!貴様の正体はなんだ!」
私たちの会話に痺れを切らしたキッツがさっきと同じ様なことを問いかけてくる。
エレンはクッと歯を食いしばった。
どう答えればよいのか、迷っているんだ。
選択を間違えれば、きっと死ぬのはエレンだけではない。
エレンの味方になっている、私、アルミン、ミカサまでが殺される可能性が高い。
エレンは、答えを決めた。
「…ッ人間です!」
エレンの力強い声が周りに響き渡る。
一瞬の間、静寂が広がった。
「そうか…悪く思うな…」
キッツの手が静かに上へ動かす。
(まさか…ッ)
「仕方の無いことだ。誰も自分が悪魔じゃない事を証明出来ないのだから」
キッツの手がバッと上げられた。
その行動を意味するのはー
(砲弾が打たれるッッ!)
意味を理解した私とミカサは動く。
「エレン!アルミン!上に逃げる!」
「止せ!」
「私の後ろに隠れろ!」
私の大きくない身長じゃ、彼らを隠すことはできない。
むしろ、彼らが怪我をする可能性の方がよっぽど高い。
それでも
すぐに怪我が治る私なら、この砲弾を受けても無事だ。
まぁ、もしかしたら死ぬかもしれないが。
この方法が現実的でないと分かっていても、
やるしかない。
自分を犠牲にしてでも。
ミカサがエレンを持ち上げようとするのを辞めさせ、
私は砲弾が来る方から彼らより前に出る。
そして、腕を横に広げ守るような体制をとる。
ミカサに持ち上げられそうになった瞬間、エレンの服の中から鍵が飛び出してきた。
私は気づく事なく、砲弾が迫ってくるのを睨み続ける。
彼が、人類を救う一歩になると言うのなら
私は、死んでも構わない!
3人よりも前に出ていた時、急に腕を掴まれ後ろに下げられた。
慌ててみると、腕を掴んだのはエレンだった。
エレンは私とミカサとアルミンを傍に置くと手を噛んだ。
意志の灯った目で
眩しい光が出る。
その光に思わず目を瞑ってしまう。
その瞬間、激しい音が鳴り響き、後から黒い煙が充満していった。
しばらくして煙が晴れていくと…
「これは…」
私たちは骨と肉で構築された中にいた。
外側から見た光景はどうなっているのか分からない。
だが、周りを囲んでいた駐屯兵達は皆、
恐怖に満ちた顔をしている。
(まさか…巨人化した?)
恐らく私たちは巨人の中に守られている。
砲弾を撃たれた方向だけ筋肉が着いており、他は骨だけの構築になっている。
ミカサは剣を握り直し、アルミンは口を開けたまま放心していたが、上から物音がし、そっちに目線を向けた。
「生きてるぞ…」
「ベルマン隊長!」
名前を呼ばれたキッツは、巨人の顔を見ると“ヒッ”と後ろに下がった。
「様子を見ろ…!近付くのは危険過ぎる!各自警戒態勢のまま待機!待機だ!
砲弾に一弾装丁させろ!」
(エレンはどこに行った?!)
慌てて周りを見ていたが、何かを引き裂く音が聞こえ、上を見上げた。
エレンは、慌てて身動きをすると項から顔を出し、一体化しそうになっていた左腕を思いっきり引き抜いていた。
近くにいたアルミンは、恐怖で息を荒くしている。
「ほ、砲声が聞こえた所までは覚えてる…
その後は凄まじい音と衝撃と熱…
今、僕達は巨大な骨格の内側…」
「エレンが私達を守った。今はそれだけ理解出来ればいい」
「……うん」
アルミンとミカサは先ほどの出来事について話していた。
どうやら二人とも、怪我はないようだ。
他に何か無いか見ていると、あるものを見つけていた。
そこにあるのは、あまりにも合わないもの
しかし可憐な姿に、息を詰める。
「二人とも、これを見て」
私が指をさしたのは内側に咲いていた一輪の花。
「内側にだけ…花?」
アルミンがその花を触ろうとすると、“おい!”と声がかかった。
「大丈夫か?!お前ら!副兵士長も!」
「エレン…これは?!」
「分からん!ただこいつはもう蒸発する!
巨人の死体と同じだ!少し離れるぞ!」
私たちはエレンが起こした巨人化したものから、
少し離れた。
一旦落ち着き、現状について話していく。
「まだ様子を伺ってんのか、放心してんのか…今のところは駐屯兵団に動きは見られねぇな」
「だが、最終的には攻撃を続行するだろう。
早くどうにかしなければ」
駐屯兵たちは今にも、次に打つ砲弾の準備をしている。
エレンが巨人化することのできる人間だと分かったことで、駐屯兵は更に警戒を強めた。
大勢の前で巨人化をしてしまった。
安全にここから抜け出す方法が分からない…。
そしてエレンは、巨人化する前に思い出したことがあると言い出した。
エレンの家の地下室、そこに行けば全てが分かると父に言われた子供時代があったそうだ。
自分が巨人化することのできる人間になったのも自分の父が原因。
地下室に行けば、恐らく巨人の正体も分かるはずだと。
突然の情報量に、思わず目眩を起こしそうになる、
今日は、驚いたばかりだ。
(もう、頭がパンクしそうだ…)
エレンは今まで自分の父が隠し事をしていた事に対してなのか、怒りで思いっきり自分が作り出した巨人の骨を殴った。
「だとしたらなんで隠した!?その情報は何千人もの調査兵団が命を落としても求め続けた“人類の希望”ってやつじゃないのか!?
それを俺ん家の地下室に大事に仕舞っていたって言うのか?!
何考えんだ、一体!」
だが、混乱している場合ではない。
「そもそも親父は5年もほっといて何処へ…?」
『エレン』
私とミカサは同時にエレンの名を呼ぶ。
ミカサの手がエレンの肩にかかる。
「エレンの気持ちも分かるが、今は他にすべき事がある」
砲弾によって生まれた煙が、徐々に晴れてくる。
“煙が晴れてきたぞ!見えたら攻撃だ!”と言う声が聞こえてくる。
「まだ動くな!」
私たちは輪になって話し合う。
今後、どうするのか。
もう話し合い出来るという雰囲気ではない。
私たちも、あっちもお互いにピリついている。
「俺はここを離れる!」
(…そう言うと思った)
エレンの言葉に他二人は驚いているが、私はやっぱりなと思った。
「どこに…どうやって?」
一瞬呆けていたアルミンは、ハッとして
エレンの方へ顔を向け問いかけた。
「とりあえずどこでもいい…そこから壁を越えて地下室を目指す。
もう一度巨人になってからな」
エレンは自分の手を見つめた。
そこには、先ほど巨人化する前に噛んだのか、
手形が痛々しく残っていた。
自傷行為をすることで、巨人化することができるのか?
「そんなことが出来るの!?」
「自分でもどうやってやってるのか分からん。でも出来るって思うんだ!
どうやって自分の腕を動かしているのか説明出来ないようにな…」
私もアルミンもミカサも、真剣にエレンの話を聞いている。
エレンはそのことに気づかないまま話を続ける。
エレンさっきは無意識に砲弾を防ぐことだけ考えた。
だからそれ以上の機能も持続力もなく朽ちたんだ」
エレンの息は興奮しているのかどんどん荒くなる。
「今度はもっと強力な奴を!さっき巨人共を蹴散らした様な15m級になってやる!」
そう言ったエレンの鼻から血が流れる。
「エレン!鼻血が!」
私はすぐさま服の袖でエレンの鼻血を拭いてやる。
一瞬ビックリとした顔をしていたエレンだが、
私が引かないことが分かったのか、されるがままになった。
「顔色も酷いし、呼吸も荒い!明らかに体に異常をきたしている」
「今は体調不良なんてどうでもいい!俺に考えが二つある」
「それは、君が単独で動くということ?」
鼻血を拭きながら言った私の言葉が当たったのか、さっきまでアルミンとミカサを見ていた顔がこちらに向けられる。
「さっきもアルミンが言っていたが、既に君は身体に限界を感じているんだろう。
君自身が分かっていないだけかもしれないが」
何回も、何十回も身体に限界が来ていることが分からずに、戦い続けてきた。
最終的には意識が途切れて、帰る頃にはリヴァイに抱えられて荷馬車まで運ばれることが多かった。
そんな迷惑ばかり掛けてきた私だからこそ分かる、
エレンの不調。
「止めた方が良い、ここからシガンシナ区までどれだけの距離があると思っている」
恐らく、巨人化することは相当の体力を使うのだろう。
それはそうだ、自分よりも何十倍も大きい身体を操るのだから。
もし、過去エレンが一度も巨人化したことがないというのなら、まだ身体は慣れていない。
その状態でシガンシナまで行くのはあまりにも危険すぎる。
それに、さっき巨人化したエレンに対して、他の巨人は共喰い行動をしていた。
ここから導き出されることは一つ。
無垢の巨人は、巨人化したエレンのことを、
人間と同じようなものだと思っている。
いわば、敵。
シガンシナまで行くのに、一体どれだけの巨人に遭遇することだろう。
会うたびにまだ慣れていない体で処理して、
また目的地に向かって走る。
それを、ずっとただ一人で。
「ですが、俺を庇ったりなんかしなければ副兵士長たちは命までは奪われません!もう既に迷惑かけてしまったんですけど…」
「命が奪われるかどうかは置いておいて。
少なからず、私は迷惑だなんて思っていない。
君たちもそうだろう?」
静かに聞いていたミカサとアルミンの方に顔を向ける。
ミカサとアルミンは頷いた。
「私はエレンが何をしようとも着いていく!」
そんなミカサの言葉にエレンは“ハァ?”と言い、
アルミンはいつものことかという顔をしていた。
「駄目だ!」
「私が追いつけなければ、私に構う必要は無い!ただし私が従う必要も無い!」
ミカサの言葉にエレンは口調を強くする。
「いい加減にしろって言ってんだろうが!俺はお前の弟でも子供でもねぇぞ!」
「喧嘩している場合ではないだろう。
それに、例え君たちがシガンシナに行こうとしても、私は認めない。
エレン、君は人類の希望となる」
今まで、巨人化する人間は壁内に現れたことがなかった。
最初は、その事実に驚くだろう。
そして、恐怖を抱く者も出てくる。
「だが、誰かが言っていた。もし、巨人が味方になれば、それはきっとどんな大砲より大きな武器になると」
もしかしたら、エレンの力を使って、あらゆることができるようになるかもしれない。
例えばーシガンシナ区奪還。
その夢を叶えるためにも、彼をここで失いたくない。
「調査兵団の一員として、私はここで君を失うわけにはいかない。
私の意見を踏まえた上で、君の二つ目の案を聞かせてくれ」
「…はい」
エレンは一息つき、覚悟を決めた様子で言う。
彼の視線の先には、アルミンが。
「アルミン、後はお前の判断に任せる」
「…え?」
突然話しかけられたアルミンは、少し呆然としていた。
恐らく、彼が考えている二つ目の方法とはー。
「俺だって今の話が現実性を欠いている事は分かってる。
まず、一つ目の考えは副兵士長に反対されると薄々思っていました…。
この巨人の力は兵団の元で計画的に機能させる方が一番有効的なハズなんだ!」
それはそうだ。
もし、エレンの力でトロスト区に空いた壁を閉じることが出来たのならー。
だが、今の状況では到底出来ない。
だからこそ、説得すべき人物が必要だ。
「無茶を言うが…アルミンがもしここで俺は脅威じゃないって駐屯兵団を説得出来ると言うなら、
俺はお前の指示に従う!これが二つ目の考えだ」
さっき、小型巨人たちを倒すために、斬新なアイディアを出し、見事成功させたアルミン。
彼の発想は、どこかエルヴィンの面影を見てしまう。
彼の優秀な脳なら、彼らを説得させることも出来るかもしれない。
「お前が出来ないと言えば、さっきの最終手段に出る!15秒以内に決めてくれ。出来るか出来ないか俺はどっちでもお前の意見を尊重する!」
「エレン…どうして僕にそんな決断を託すの?」
「本当、責任重大だ」
エレンの考えに苦笑いしてしまう。
アルミンは、自分がそんなことを出来る未来が見えないのか、不安そうにエレンを見ている。
「お前ってやばい時の程どの行動が正解か当てる事が出来ただろう?それに頼りたいって思ったからだ」
「いつそんなことが…?」
「いろいろあっただろ。5年前なんかお前がハンネスさんを呼んでくれなかったら、俺もミカサも巨人に食われて死んでた」
彼の話を聞いている限り、3人は子供時代からの友人なのだろう。
お互いに信頼し合っている彼らなら、この局面も乗り越えられるだろう。
エレンに信頼していることを言われたアルミンは、顔を俯かせ、少し考えていた。
彼の拳を見ていると、爪の跡がつくぐらいに強く握り込んでおり、葛藤しているようだ。
「アルミン、時間が無い!」
エレンの焦る声が聞こえる。
遠くでは、砲弾の装丁完了の合図が送られる。
アルミンは意を決して立ち上がる。
アルミンの瞳にはもう迷いがなかった。
「必ず説得してみせる!3人は極力抵抗の意思がない事を示してくれ!」
アルミンの言葉に私とエレンとミカサは頷く。
「アルミン」
駐屯兵達の元へ行こうとするアルミンの背中に声をかける。
アルミンは私の方を振り向く。
既に時間はない、話す余裕はない。
それでも、伝えたい言葉があった。
「私も君を信じている」
アルミンは驚いた顔をして、そして前を向いて歩き出した。
アルミンは抵抗する気が無いことを示すため、立体機動装置を外す。
その音に驚く駐屯兵達に構わず、煙から走り出る。
「ヒッ…止まれ!」
煙から出てきたアルミンに対して銃が向けられる。
アルミンは足を止めると両手を上げた。
「ついに正体を現したな!化け物め!送るぞ!私は合図を送る!」
「彼は人類の敵ではありません!私達にはその知り得た情報を開示する意思があります!」
「命乞いに貸す耳は無い!目の前で正体を現せておいて今更何を言う!
奴が敵でないのなら証拠を出せ!それが出来なければ危険を排除するまでだ」
本当、あの人って話聞かないな。
呆れながらも、アルミンが次に取る行動を静かに見つめる。
私が知らぬ間に、自分自身で拳をきつく握っていた。
「証拠は必要ありません!」
そう、証拠は必要ない。
何故ならー
「そもそも我々が彼をどう認識するのかは問題ではないのです!」
「何だと!?」
「大勢の者が彼を見たと聞きました!ならば彼が巨人と戦う姿も見たはずです!」
キッツは先ほど、大勢の者が見たと言った。
つまり、彼が巨人化していたことも、そして、周囲の巨人が彼に群がって行く姿も。
つまり、巨人はエレンを我々人類と同じ捕食対象として認識した。
「我々がいくら知恵を絞ろうとも、この事実だけは動きません!」
アルミンの凛とした声が響き渡る。
動揺と不安の中、“確かにそうだ”と周りは、警戒態勢を解いていく。
隊長は周りの変わりようを見て、地面を見つめた。
「迎撃体制を取れ!奴らの巧妙な罠に惑わされるな!」
「なっ?!」
「奴らの行動は常に我々の理解を超える!人間に化け、人間の言葉を労し、我々を欺く事も可能だと言うわけだ!
これ以上奴らの好きにさせてはならない!」
その言葉に警戒を解いていた駐屯兵達は、再び厳戒態勢に入った。
剣が、私たちに向けられる。
(…考える事を完全に放棄してる…考える事が怖いんだ。怯えた子鹿め)
アルミンはキッツの言葉を聞いて、説得できるような状態ではないと感じ、どうしようという目でこちらを見てきた。
だけど、私はさっき言ったようにアルミンを信じると言った。
そして、それはエレンとミカサも同じだ。
エレンとミカサと私は、“信じている”という意味で、力強く頷いた。
(もし何かあった時は、私が体を張って守る。
だから、どうか説得してくれ)
アルミンは私たちの反応を見て、行動に出た。
アルミンは敬礼をする。
「私は永遠に、人類復興の為なら心臓を捧げると誓った兵士!その信念に従ったすえ、命が果てるなら本望!
彼の持つ巨人の力と残像する兵力が組み合わされば、この街の奪還も不可能ではありません!」
アルミンの言葉に驚きが隠せない駐屯兵達。
アルミンの力強い言葉を聞き、私は確信した。
彼なら、説得できる筈だとー
「人類の栄光を願い、これから死にゆく全てもの間に、彼の戦術価値を解きます!」
「デルマン隊長…彼らの言葉は考察に値…
「黙れ!」
近くにいた駐屯兵の言葉を遮り、自分の世界に入り込み、何かを考えている様子だ。
彼の様子がおかしく見え、私はアルミンの元へと行く。
「アルミン…!」
アルミンはキッツの様子を見て放心状態のままだった。
どうか、間に合えッ!
「よさんか」
その時、この殺伐とした雰囲気には似合わない声が聞こえてきた。
その声に心当たりのあった私は、声の発生源へと顔を向けた。
「相変わらず、図体の割には小鹿のように繊細な男じゃ…」
隊長である筈の彼に軽々しく言う人物に、私はやっと来たのかと少し思ってしまった。
「ピクシス司令…」
駐屯兵団最高責任者、ドット・ピクシスが、この非常事態にようやっと姿を現したのだった。
エレンが巨人化した事は、駐屯兵団の上層部に知られてしまい、エレン、は事情聴取の為連れて行かれてしまった。
そこにミカサ、アルミンは自分達から着いていくようにしていた。
私は言うと、その場に居た者で一番トップだったため、
強制的に連行されていた。
連れて行かれたのは、他の兵士達が待機している場所とは離れた所だった。
着いた瞬間、私たちは駐屯兵達に囲まれた、銃を向けられた。
「…随分物騒だ」
いや、それもそうか。
人類にとって、巨人化する人間とは未知な存在で、
それ故に恐怖を覚えてしまう。
彼らはエレンのことを化け物でも見るような目で
怯えながら見ている。
駐屯兵の対応に嫌悪感を表したミカサは、
私たちより一歩前に出て威嚇行動みたいなものをしている。
私も、エレンを守るように彼の前に立つ。
そしてアルミンは、未だに気絶しているエレンを抱えている。
しばらくその攻防を続けていた時ー
「殺してやる」
物騒な声が聞こえてきた。
その声の主は、今現在アルミンが支えているエレンのだった。
後ろを振り向くと、エレンは不気味な笑みを浮かべていた。
その言葉を聞いたアルミンは、真っ青になりながら口を開けた。
「エ…エレン…?」
アルミンの声にエレンはハッとする。
「エレン!!」
エレンの意識が覚醒したことを知り、ミカサは今だに駐屯兵達に身体を向けながらも、彼の安否を確認するため
後ろを振り向く。
「エレン!ちゃんと体は動くか?意識は正常か?
知ってる事全部話すんだ!きっと分かってもらえる!」
アルミンは涙目でエレンに訴える。
しかし、エレンは意識が覚醒したばかりなので、まだあまりハッキリとしていない。
アルミンの言葉に疑問を抱いているようだ。
一方、駐屯兵の間では大きなどよめきが起こっていた。
「殺してやるって言ったんだ」
「ああ、確かに聞こえた。アイツは俺達を食い殺す気だ」
「アルミン、ミカサ…それに何で…
副長が…」
ぼんやりとした様子で言うエレンに、私は問いかける。
どこかおかしい所はないのか、
巨人化していた時の記憶はあるのか、
巨人化した心当たりはあるか。
その質問に、エレンは頭を混乱させている。
(巨人化していた時の記憶はないのか?)
「イェーガー訓練兵!並びにアッカーマン、アルレルト!グレース副兵士長!
今貴様らがやっている行為は反逆行為だ!貴様らの命の処遇を問わせてもらう!」
「チッ…」
(聞いている最中に話してくるなよ)
エレンに質問をしてきた時に割って入ってきたキッツに、
私は不快感を隠せず、舌打ちをした。
エレンはキッツの言葉に動揺する。
まだ頭が追いついていないようだ。
「下手に誤魔化そうとしたり、そこから動こうとした場合は直ちに榴弾をぶち込む!
躊躇うつもりは無い!」
エレンの言い分も聞こうとしないのか…。
それにこの人、さっき補給兵が話していた時に出てきた名前だ。
さっきは勝手に決めつけたらいけないと思っていたから、あまり考えなかったけど、やっぱりこの人巨人が怖くて逃げたのでは?
「率直に問う!貴様の正体はなんだ?!人か巨人か!」
「っ…質問の意図が分かりません!」
「しらを切る気か?化け物め!もう一度言ってみろ!貴様らを粉々にしてやる!
一瞬だ!正体を現す暇など与えん!」
「正体!?」
「大勢の者が見たんだ!お前が巨人の体内から姿を現す瞬間をな!」
その後彼は、自分たちが知らない間にエレンのような得体の知れない者をウォール・ローゼ内に入れてしまった。
例えエレンが王よりさずけられし訓練兵の一部であっても、リスクの早期排除は妥当な筈と言った。
「私は間違っていない!」
「待て、キッツ!いきなり意識が覚醒した彼にそんな事を言われても混乱する!
彼に説明でもさせてくれ!」
「いつ鎧の巨人が姿を現すか分からない今、こんなことに兵力と時間を割くわけにはいかないのだ!
我々は人類存亡の危機の現場いるのだ!分かったか?!」
「彼は見た感じ、ここまでの記憶は無い様子!
何も彼から情報を引き出さないで、殺すのはあまりにも非道だ!」
「グレース副兵士長、そもそも貴様はなぜそっち側にいる?!
貴様の行動を取り上げ、調査兵団の壁外調査を暫く禁じてやろうか!!」
その言葉を言われ、ぐっと言葉が詰まる。
私一人だけが被害を被るなら我慢できるが、調査兵団全体に被害が及ぶのは避けたい。
「隊長!今なら簡単です!奴が人間に化けている間にぶっぱなしにしちまえば!」
私たちの会話に焦った駐屯兵はキッツに言う。
その言葉に怒りを覚えたミカサが前に出る。
「私達の特技は肉を削ぎ落とすことです…。
必要に迫られればいつでも披露します。
私の特技を体験したい方は…どうぞ、一番先に近付いてきて下さい」
ミカサの迫力に一瞬怖気付く駐屯兵。
近くにいる白髪の女が、隊長に近づき何か言っている。
「おい!ミカサ、アルミン!それに副兵士長!これは一体!?」
「ミカサ!人と戦ってどうする!狭い壁の中でどこに逃げようって言うんだ!」
「どこの誰であろうとエレンが殺されるのは阻止する!これ以外に必要ない!」
「話し合うんだよ!誰にも何も状況が分からないから、恐怖だけが伝染しているんだ」
「3人共、落ち着け!」
私の声に慌てていた3人は私の方を見る。
今この中で一番上に立つべき私が、しっかりしなければ。
「エレン、もう一回聞くがここに来るまでの記憶はあるか?
見ての通り君は今、命の危機にある。
何か小さな事でも良い、教えてくれないか?」
エレンの近くに行き、翡翠色の瞳をじっと見つめる。
エレンはこの状況にまだ理解が追いついていないが、
少し落ち着いたのか私たちに教えてくれた。
ここに至るまでの記憶がない。
体が怠くて立てない。
自分が巨人だということが分からない。
「分かった、しかしエレン。
さっきアルミンから聞いたが、君は巨人に食べられる前、腕と足を失ったそうだな」
エレンはハッとして自分の腕と足を見る。
そこには、巨人に食べられた後はまるで無い、綺麗な手と足があった。
服は不自然に切れたままだが。
「君は巨人じゃないと言っている。
だが、これが意味することは何だと思う?」
巨人も同じだ。
項を切らない限り、あいつらはどんな怪我でもいつか治してくる。
今のエレンと、まったく同じだ。
エレンは私の言葉にショックを受けている様子だ。
だけど、それでも現実を突きつけなければならない。
そうしないと、彼はこのまま真実から逃げ出してしまうから。
「普通の人間は、そんな簡単に怪我を治すことなんて出来ない。
ましてや、失った部位を再び再生させることなんて」
私みたいな特殊な体じゃ無い限り、できない。
「もう一度問う!貴様の正体はなんだ!」
私たちの会話に痺れを切らしたキッツがさっきと同じ様なことを問いかけてくる。
エレンはクッと歯を食いしばった。
どう答えればよいのか、迷っているんだ。
選択を間違えれば、きっと死ぬのはエレンだけではない。
エレンの味方になっている、私、アルミン、ミカサまでが殺される可能性が高い。
エレンは、答えを決めた。
「…ッ人間です!」
エレンの力強い声が周りに響き渡る。
一瞬の間、静寂が広がった。
「そうか…悪く思うな…」
キッツの手が静かに上へ動かす。
(まさか…ッ)
「仕方の無いことだ。誰も自分が悪魔じゃない事を証明出来ないのだから」
キッツの手がバッと上げられた。
その行動を意味するのはー
(砲弾が打たれるッッ!)
意味を理解した私とミカサは動く。
「エレン!アルミン!上に逃げる!」
「止せ!」
「私の後ろに隠れろ!」
私の大きくない身長じゃ、彼らを隠すことはできない。
むしろ、彼らが怪我をする可能性の方がよっぽど高い。
それでも
すぐに怪我が治る私なら、この砲弾を受けても無事だ。
まぁ、もしかしたら死ぬかもしれないが。
この方法が現実的でないと分かっていても、
やるしかない。
自分を犠牲にしてでも。
ミカサがエレンを持ち上げようとするのを辞めさせ、
私は砲弾が来る方から彼らより前に出る。
そして、腕を横に広げ守るような体制をとる。
ミカサに持ち上げられそうになった瞬間、エレンの服の中から鍵が飛び出してきた。
私は気づく事なく、砲弾が迫ってくるのを睨み続ける。
彼が、人類を救う一歩になると言うのなら
私は、死んでも構わない!
3人よりも前に出ていた時、急に腕を掴まれ後ろに下げられた。
慌ててみると、腕を掴んだのはエレンだった。
エレンは私とミカサとアルミンを傍に置くと手を噛んだ。
意志の灯った目で
眩しい光が出る。
その光に思わず目を瞑ってしまう。
その瞬間、激しい音が鳴り響き、後から黒い煙が充満していった。
しばらくして煙が晴れていくと…
「これは…」
私たちは骨と肉で構築された中にいた。
外側から見た光景はどうなっているのか分からない。
だが、周りを囲んでいた駐屯兵達は皆、
恐怖に満ちた顔をしている。
(まさか…巨人化した?)
恐らく私たちは巨人の中に守られている。
砲弾を撃たれた方向だけ筋肉が着いており、他は骨だけの構築になっている。
ミカサは剣を握り直し、アルミンは口を開けたまま放心していたが、上から物音がし、そっちに目線を向けた。
「生きてるぞ…」
「ベルマン隊長!」
名前を呼ばれたキッツは、巨人の顔を見ると“ヒッ”と後ろに下がった。
「様子を見ろ…!近付くのは危険過ぎる!各自警戒態勢のまま待機!待機だ!
砲弾に一弾装丁させろ!」
(エレンはどこに行った?!)
慌てて周りを見ていたが、何かを引き裂く音が聞こえ、上を見上げた。
エレンは、慌てて身動きをすると項から顔を出し、一体化しそうになっていた左腕を思いっきり引き抜いていた。
近くにいたアルミンは、恐怖で息を荒くしている。
「ほ、砲声が聞こえた所までは覚えてる…
その後は凄まじい音と衝撃と熱…
今、僕達は巨大な骨格の内側…」
「エレンが私達を守った。今はそれだけ理解出来ればいい」
「……うん」
アルミンとミカサは先ほどの出来事について話していた。
どうやら二人とも、怪我はないようだ。
他に何か無いか見ていると、あるものを見つけていた。
そこにあるのは、あまりにも合わないもの
しかし可憐な姿に、息を詰める。
「二人とも、これを見て」
私が指をさしたのは内側に咲いていた一輪の花。
「内側にだけ…花?」
アルミンがその花を触ろうとすると、“おい!”と声がかかった。
「大丈夫か?!お前ら!副兵士長も!」
「エレン…これは?!」
「分からん!ただこいつはもう蒸発する!
巨人の死体と同じだ!少し離れるぞ!」
私たちはエレンが起こした巨人化したものから、
少し離れた。
一旦落ち着き、現状について話していく。
「まだ様子を伺ってんのか、放心してんのか…今のところは駐屯兵団に動きは見られねぇな」
「だが、最終的には攻撃を続行するだろう。
早くどうにかしなければ」
駐屯兵たちは今にも、次に打つ砲弾の準備をしている。
エレンが巨人化することのできる人間だと分かったことで、駐屯兵は更に警戒を強めた。
大勢の前で巨人化をしてしまった。
安全にここから抜け出す方法が分からない…。
そしてエレンは、巨人化する前に思い出したことがあると言い出した。
エレンの家の地下室、そこに行けば全てが分かると父に言われた子供時代があったそうだ。
自分が巨人化することのできる人間になったのも自分の父が原因。
地下室に行けば、恐らく巨人の正体も分かるはずだと。
突然の情報量に、思わず目眩を起こしそうになる、
今日は、驚いたばかりだ。
(もう、頭がパンクしそうだ…)
エレンは今まで自分の父が隠し事をしていた事に対してなのか、怒りで思いっきり自分が作り出した巨人の骨を殴った。
「だとしたらなんで隠した!?その情報は何千人もの調査兵団が命を落としても求め続けた“人類の希望”ってやつじゃないのか!?
それを俺ん家の地下室に大事に仕舞っていたって言うのか?!
何考えんだ、一体!」
だが、混乱している場合ではない。
「そもそも親父は5年もほっといて何処へ…?」
『エレン』
私とミカサは同時にエレンの名を呼ぶ。
ミカサの手がエレンの肩にかかる。
「エレンの気持ちも分かるが、今は他にすべき事がある」
砲弾によって生まれた煙が、徐々に晴れてくる。
“煙が晴れてきたぞ!見えたら攻撃だ!”と言う声が聞こえてくる。
「まだ動くな!」
私たちは輪になって話し合う。
今後、どうするのか。
もう話し合い出来るという雰囲気ではない。
私たちも、あっちもお互いにピリついている。
「俺はここを離れる!」
(…そう言うと思った)
エレンの言葉に他二人は驚いているが、私はやっぱりなと思った。
「どこに…どうやって?」
一瞬呆けていたアルミンは、ハッとして
エレンの方へ顔を向け問いかけた。
「とりあえずどこでもいい…そこから壁を越えて地下室を目指す。
もう一度巨人になってからな」
エレンは自分の手を見つめた。
そこには、先ほど巨人化する前に噛んだのか、
手形が痛々しく残っていた。
自傷行為をすることで、巨人化することができるのか?
「そんなことが出来るの!?」
「自分でもどうやってやってるのか分からん。でも出来るって思うんだ!
どうやって自分の腕を動かしているのか説明出来ないようにな…」
私もアルミンもミカサも、真剣にエレンの話を聞いている。
エレンはそのことに気づかないまま話を続ける。
エレンさっきは無意識に砲弾を防ぐことだけ考えた。
だからそれ以上の機能も持続力もなく朽ちたんだ」
エレンの息は興奮しているのかどんどん荒くなる。
「今度はもっと強力な奴を!さっき巨人共を蹴散らした様な15m級になってやる!」
そう言ったエレンの鼻から血が流れる。
「エレン!鼻血が!」
私はすぐさま服の袖でエレンの鼻血を拭いてやる。
一瞬ビックリとした顔をしていたエレンだが、
私が引かないことが分かったのか、されるがままになった。
「顔色も酷いし、呼吸も荒い!明らかに体に異常をきたしている」
「今は体調不良なんてどうでもいい!俺に考えが二つある」
「それは、君が単独で動くということ?」
鼻血を拭きながら言った私の言葉が当たったのか、さっきまでアルミンとミカサを見ていた顔がこちらに向けられる。
「さっきもアルミンが言っていたが、既に君は身体に限界を感じているんだろう。
君自身が分かっていないだけかもしれないが」
何回も、何十回も身体に限界が来ていることが分からずに、戦い続けてきた。
最終的には意識が途切れて、帰る頃にはリヴァイに抱えられて荷馬車まで運ばれることが多かった。
そんな迷惑ばかり掛けてきた私だからこそ分かる、
エレンの不調。
「止めた方が良い、ここからシガンシナ区までどれだけの距離があると思っている」
恐らく、巨人化することは相当の体力を使うのだろう。
それはそうだ、自分よりも何十倍も大きい身体を操るのだから。
もし、過去エレンが一度も巨人化したことがないというのなら、まだ身体は慣れていない。
その状態でシガンシナまで行くのはあまりにも危険すぎる。
それに、さっき巨人化したエレンに対して、他の巨人は共喰い行動をしていた。
ここから導き出されることは一つ。
無垢の巨人は、巨人化したエレンのことを、
人間と同じようなものだと思っている。
いわば、敵。
シガンシナまで行くのに、一体どれだけの巨人に遭遇することだろう。
会うたびにまだ慣れていない体で処理して、
また目的地に向かって走る。
それを、ずっとただ一人で。
「ですが、俺を庇ったりなんかしなければ副兵士長たちは命までは奪われません!もう既に迷惑かけてしまったんですけど…」
「命が奪われるかどうかは置いておいて。
少なからず、私は迷惑だなんて思っていない。
君たちもそうだろう?」
静かに聞いていたミカサとアルミンの方に顔を向ける。
ミカサとアルミンは頷いた。
「私はエレンが何をしようとも着いていく!」
そんなミカサの言葉にエレンは“ハァ?”と言い、
アルミンはいつものことかという顔をしていた。
「駄目だ!」
「私が追いつけなければ、私に構う必要は無い!ただし私が従う必要も無い!」
ミカサの言葉にエレンは口調を強くする。
「いい加減にしろって言ってんだろうが!俺はお前の弟でも子供でもねぇぞ!」
「喧嘩している場合ではないだろう。
それに、例え君たちがシガンシナに行こうとしても、私は認めない。
エレン、君は人類の希望となる」
今まで、巨人化する人間は壁内に現れたことがなかった。
最初は、その事実に驚くだろう。
そして、恐怖を抱く者も出てくる。
「だが、誰かが言っていた。もし、巨人が味方になれば、それはきっとどんな大砲より大きな武器になると」
もしかしたら、エレンの力を使って、あらゆることができるようになるかもしれない。
例えばーシガンシナ区奪還。
その夢を叶えるためにも、彼をここで失いたくない。
「調査兵団の一員として、私はここで君を失うわけにはいかない。
私の意見を踏まえた上で、君の二つ目の案を聞かせてくれ」
「…はい」
エレンは一息つき、覚悟を決めた様子で言う。
彼の視線の先には、アルミンが。
「アルミン、後はお前の判断に任せる」
「…え?」
突然話しかけられたアルミンは、少し呆然としていた。
恐らく、彼が考えている二つ目の方法とはー。
「俺だって今の話が現実性を欠いている事は分かってる。
まず、一つ目の考えは副兵士長に反対されると薄々思っていました…。
この巨人の力は兵団の元で計画的に機能させる方が一番有効的なハズなんだ!」
それはそうだ。
もし、エレンの力でトロスト区に空いた壁を閉じることが出来たのならー。
だが、今の状況では到底出来ない。
だからこそ、説得すべき人物が必要だ。
「無茶を言うが…アルミンがもしここで俺は脅威じゃないって駐屯兵団を説得出来ると言うなら、
俺はお前の指示に従う!これが二つ目の考えだ」
さっき、小型巨人たちを倒すために、斬新なアイディアを出し、見事成功させたアルミン。
彼の発想は、どこかエルヴィンの面影を見てしまう。
彼の優秀な脳なら、彼らを説得させることも出来るかもしれない。
「お前が出来ないと言えば、さっきの最終手段に出る!15秒以内に決めてくれ。出来るか出来ないか俺はどっちでもお前の意見を尊重する!」
「エレン…どうして僕にそんな決断を託すの?」
「本当、責任重大だ」
エレンの考えに苦笑いしてしまう。
アルミンは、自分がそんなことを出来る未来が見えないのか、不安そうにエレンを見ている。
「お前ってやばい時の程どの行動が正解か当てる事が出来ただろう?それに頼りたいって思ったからだ」
「いつそんなことが…?」
「いろいろあっただろ。5年前なんかお前がハンネスさんを呼んでくれなかったら、俺もミカサも巨人に食われて死んでた」
彼の話を聞いている限り、3人は子供時代からの友人なのだろう。
お互いに信頼し合っている彼らなら、この局面も乗り越えられるだろう。
エレンに信頼していることを言われたアルミンは、顔を俯かせ、少し考えていた。
彼の拳を見ていると、爪の跡がつくぐらいに強く握り込んでおり、葛藤しているようだ。
「アルミン、時間が無い!」
エレンの焦る声が聞こえる。
遠くでは、砲弾の装丁完了の合図が送られる。
アルミンは意を決して立ち上がる。
アルミンの瞳にはもう迷いがなかった。
「必ず説得してみせる!3人は極力抵抗の意思がない事を示してくれ!」
アルミンの言葉に私とエレンとミカサは頷く。
「アルミン」
駐屯兵達の元へ行こうとするアルミンの背中に声をかける。
アルミンは私の方を振り向く。
既に時間はない、話す余裕はない。
それでも、伝えたい言葉があった。
「私も君を信じている」
アルミンは驚いた顔をして、そして前を向いて歩き出した。
アルミンは抵抗する気が無いことを示すため、立体機動装置を外す。
その音に驚く駐屯兵達に構わず、煙から走り出る。
「ヒッ…止まれ!」
煙から出てきたアルミンに対して銃が向けられる。
アルミンは足を止めると両手を上げた。
「ついに正体を現したな!化け物め!送るぞ!私は合図を送る!」
「彼は人類の敵ではありません!私達にはその知り得た情報を開示する意思があります!」
「命乞いに貸す耳は無い!目の前で正体を現せておいて今更何を言う!
奴が敵でないのなら証拠を出せ!それが出来なければ危険を排除するまでだ」
本当、あの人って話聞かないな。
呆れながらも、アルミンが次に取る行動を静かに見つめる。
私が知らぬ間に、自分自身で拳をきつく握っていた。
「証拠は必要ありません!」
そう、証拠は必要ない。
何故ならー
「そもそも我々が彼をどう認識するのかは問題ではないのです!」
「何だと!?」
「大勢の者が彼を見たと聞きました!ならば彼が巨人と戦う姿も見たはずです!」
キッツは先ほど、大勢の者が見たと言った。
つまり、彼が巨人化していたことも、そして、周囲の巨人が彼に群がって行く姿も。
つまり、巨人はエレンを我々人類と同じ捕食対象として認識した。
「我々がいくら知恵を絞ろうとも、この事実だけは動きません!」
アルミンの凛とした声が響き渡る。
動揺と不安の中、“確かにそうだ”と周りは、警戒態勢を解いていく。
隊長は周りの変わりようを見て、地面を見つめた。
「迎撃体制を取れ!奴らの巧妙な罠に惑わされるな!」
「なっ?!」
「奴らの行動は常に我々の理解を超える!人間に化け、人間の言葉を労し、我々を欺く事も可能だと言うわけだ!
これ以上奴らの好きにさせてはならない!」
その言葉に警戒を解いていた駐屯兵達は、再び厳戒態勢に入った。
剣が、私たちに向けられる。
(…考える事を完全に放棄してる…考える事が怖いんだ。怯えた子鹿め)
アルミンはキッツの言葉を聞いて、説得できるような状態ではないと感じ、どうしようという目でこちらを見てきた。
だけど、私はさっき言ったようにアルミンを信じると言った。
そして、それはエレンとミカサも同じだ。
エレンとミカサと私は、“信じている”という意味で、力強く頷いた。
(もし何かあった時は、私が体を張って守る。
だから、どうか説得してくれ)
アルミンは私たちの反応を見て、行動に出た。
アルミンは敬礼をする。
「私は永遠に、人類復興の為なら心臓を捧げると誓った兵士!その信念に従ったすえ、命が果てるなら本望!
彼の持つ巨人の力と残像する兵力が組み合わされば、この街の奪還も不可能ではありません!」
アルミンの言葉に驚きが隠せない駐屯兵達。
アルミンの力強い言葉を聞き、私は確信した。
彼なら、説得できる筈だとー
「人類の栄光を願い、これから死にゆく全てもの間に、彼の戦術価値を解きます!」
「デルマン隊長…彼らの言葉は考察に値…
「黙れ!」
近くにいた駐屯兵の言葉を遮り、自分の世界に入り込み、何かを考えている様子だ。
彼の様子がおかしく見え、私はアルミンの元へと行く。
「アルミン…!」
アルミンはキッツの様子を見て放心状態のままだった。
どうか、間に合えッ!
「よさんか」
その時、この殺伐とした雰囲気には似合わない声が聞こえてきた。
その声に心当たりのあった私は、声の発生源へと顔を向けた。
「相変わらず、図体の割には小鹿のように繊細な男じゃ…」
隊長である筈の彼に軽々しく言う人物に、私はやっと来たのかと少し思ってしまった。
「ピクシス司令…」
駐屯兵団最高責任者、ドット・ピクシスが、この非常事態にようやっと姿を現したのだった。
