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夢小説設定
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「………」
「どうしました」
完全に私の頭のキャパオーバーだ。もうどんな情報も処理できない。
一体何が起きているのか。これはまた夢なのか??
竜崎はきょとん、と私を見ている。
恋人、とは。
あの日キスされて、翌日確かに大切な人と呼ばれはしたものの、それ以降まるで態度も変わらなかった竜崎。
手も繋がず抱き合いもせず。
そして更に車で言われたあのL宣言は。
「…あの竜崎…」
「はい」
「私と竜崎って…付き合ってるんですか」
私が尋ねると、竜崎はまたきょとんとして答えた。
「違うんですか?」
質問に質問で返されることほどムカつくことはない。でもこれはこの男の得意技だ。
「え、だって…私振られたんじゃないんですか」
「…いつ私があなたを振りましたか」
目をまん丸にして私を見ている。
え、待って。全然噛み合ってない。
「え、車で言ってたじゃないですか…!自分はLだって…」
「言いましたよ」
「そ、それって、だから私みたいな一般人とは付き合えないって意味じゃあ…」
「何がどうなってそんな解釈になるんですか。あなたが電話番号を教えて欲しいと言ったので、Lである私はそれが出来ないと断っただけではないですか」
頭の中で、どかんとミサイルが爆発したような気がした。
昇天しそうな気分だ。
では、なんだ。
……私の思い違いだったってこと!??
竜崎は眉を潜めて私を見た。
「あなたまさかあの言葉で勝手に振られたと思い込んでいたのですか」
「…はい」
「だからこんなに部屋も散らかって酒など飲んでたのですね」
「…はい」
「…呆れて言葉も出ません」
私は頭をうな垂れた。ああ私の1ヶ月。荒れてた1ヶ月、返してほしい。
すぐにばっと頭を上げる。
「でも!勘違いしてもしかたないタイミングといい方でしたよ!」
「私の正体を話しただけでそんな解釈になるあなたの思い込みが激しいんです」
「だって!どこに住んでるかも電話番号も分からないんじゃ終わりだと思うじゃないですか!」
「なので私がここへ来たのですが…」
「そうならそうと言ってくださいよ!落ち着いたら会いに来ますって!一生の別れかと思ったじゃないですか!」
話して、私はつい涙をこぼした。
感情が昂ってしまった。悲しいんだから嬉しいんだかわからない涙。
慌ててそれを拭き取る。
泣いてる私をみて、竜崎は少しバツが悪そうに視線を逸らした。
「…確かに私も言葉足らずでしたね」
「うう〜…足りなすぎですよ〜」
「しかし、私は言ったはずです。一世一代の気持ちで話したと。それをそう簡単に覆すわけがないでしょう」
「…そう、ですけど…」
「それに…私の正体を告げた段階で私の本気が分かりませんか。命を懸けてるんですよ」
ボヤける視界で竜崎を見た。彼はどこか困ったように頭をかいていた。
それは、そうだ。
確かにそうなんだけど。
「…だって竜崎…あの日以降も全然今までと変わらなかったから…なんか自信なくて…」
「…変わらないように見えましたか」
「はい全然」
「私はうるさかったですよ」
「わ、悪かったですね!」
「あなたの事ではありません」
竜崎はじっと、私の目を見た。
「自分の心臓の音がです」
彼を見た。
恥ずかしげもなく、そんな台詞を言っても竜崎の表情はなんら変わらない。
いつもの様子で私を見つめるだけ。
…そんなあなたが、
私と一緒だったの?
同じようにドキドキする心臓の音に困っていたの?
「…ほんとですか…?」
「嘘言ってどうするんですか。なんなら今だってそうですよ」
「え…」
「好きな女性の部屋に来て、高ぶらない男はいないでしょう」
好きな、女性。
そんな単語を聞いた瞬間、私の顔は真っ赤に染め上がった。
竜崎は私を見てふっと笑う。
「顔が真っ赤です」
「そ、そんなことないです!」
「あなたは本当に顔に出やすいですね」
「ほ、ほっといてください!」
竜崎は面白そうに口角を上げたまま私を見ると、ずいっと顔を近づけた。
「愛さんのそういう正直なとこ。はっきり言って可愛いです」
そう優しく微笑んだ竜崎は、私の頬に流れた涙をそっと拭いた。
私の頭はとうとう爆発した。いや、もちろん比喩だけれど。
か、可愛い??
そんなことを言う人だったっけ竜崎って。
いつも飄々として失礼なことばっかりいうくせに。
なんでこんな時…そんなこと言っちゃうの。
竜崎はポケットをゴソゴソとあさると、一枚の黒いカードを取り出した。
「ここから車で10分ほど行ったところにあるホテルが今の滞在地です。あなたならいつ入ってきても構いません。どうぞ」
すっとルームキーを差し出した。私は恐る恐るそれを手に取る。
「私に朝も夜もないのは知ってるはずです。いつでも大丈夫です」
「い、いいんですか…私にこんなの預けて」
「あなたが世間に、Lがここにいるぞと情報を漏らせば私は終わりです。そのリスクを分かった上でお渡しします」
竜崎を見た。彼はじっと私を見ている。
「また滞在地を変えるときは予め言います。…こんな形ですがよろしいですか」
「…………」
「愛さん?」
手が震えているのが分かる。ああ、私は嬉しいんだ。夢見たいなこの展開が、嬉しすぎてたまらない。
私は頷いた。
「う、嬉しい、です…」
「………」
「私…もう終わったかと思ってたから…。また会えて、嬉しいです…」
「…愛さん」
竜崎は真っ直ぐな目で私を見つめた。
「わかっていますか」
「え?」
「私はLです。そこいらにいる人達とはだいぶ違います。普通の恋愛を体験することは無理だと思います。それでも、あなたはよいのですか」
吸い込まれそうな大きな瞳。
その目を見ていると、私は思ってしまう。
もっと、もっとあなたに近付きたい。
私はあなたに、もっともっと好きになって欲しい。
口から笑みが溢れる。
「竜崎、何でそこに普通を求めるんですか。
私が好きになったのは竜崎です。
他の人なんか、一般的な普通なんか知りませんよ!」
そう言って笑った。
大体部屋に篭りきりで寝もしないで甘いものばかり食べてる人を好きになった時点で「普通」は捨てている。
私はそんなもの、求めてないんだよ。
私が求めてるのはたった一つ。
あなただけなんだよ。
「…やはりあなたは面白い人です」
竜崎はそう言うと、可愛く微笑んだ。
「竜崎にだけは言われたくないです」
「減らず口ですね」
「こっちのセリフですよ」
「それより髪、切ったんですね」
突然言われて自分で触る。
「失恋したからですか」
「そ、…そうですけど」
どうせ古典的な考えだとか言うに違いない。
私はむくれて竜崎を見ると、彼は真剣な目で何も言わずに見ていた。
「…すみませんでした」
「えっ」
「あなたの綺麗な髪を、切らせてしまった」
予想外の言葉だった。
そんな素直に言った竜崎に慌てる。
いや勘違いしてたのは私だし、勝手に切っただけなのに…!
「い、いえ、勝手にやったことだし、この長さも気に入ってるし…!」
「伸ばしてください」
竜崎はキッパリ言った。
「髪。長い方が好きです。」
それだけ言うと、竜崎は座り直して紅茶をすすった。
…なんて気遣いもない男。せめて一言、それも似合ってるけど、ぐらい言えないのか。
そう思いながら私は微笑んだ。
自分でも周りにも似合ってると言われてたのに。
あなたのそんな一言で伸ばそう、なんて思う私はやっぱりあなたがよほど好き。
伸ばすよ、竜崎。
だから、また伸びた姿を見てね。
この恋を長く続けたいから。
…なんて
マイペースで掴めない変わった人。まだあなたの事何にも知らないけど、
これからもっともっと、知っていけるのかな。
今からあなたとどんな日々が待っているのだろう。
勝手に溢れる笑顔が止まらない。
あなたが紅茶をすする様子を見てこの上なくしあわせ。
「気が向いたら伸ばしてあげます」
「素直じゃないですね」
そう、彼は笑った。
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