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お風呂からでて脱衣場を漁ると、タオル類だけではなく、私が着れそうなサイズの洋服や、はたまた新品の下着までしまってあったので驚いた。
これ、使っていいんだよね?私のために用意してくれてたのかな。
考えてみるが、うん、あの変な人じゃないだろうな。優しいワタリさんとか言う人が用意したに違いない。
そう考えれば比較的抵抗もなく私は着るものを拝借した。さらにスキンケア用品も簡単にあったため使わせてもらう。
長い髪をドライヤーでかけた。かなり時間かかっちゃったけど、まあいっか。
ほてる頬を鏡で見つめた後、私はようやくバスルームを後にした。
ああ、気持ちよかった。あんな広いお風呂なんて入ることないし。
気分が高揚したまま、私は先ほどの部屋にそっと入った。
竜崎がソファに座ってる後ろ姿が見える。えーとワタリさん…は見当たらない。
少しずつ扉を開けてるところで、竜崎の声が響いた。
「終わりましたか」
抑揚のない声。突然話しかけられてびくっとする。
「あ、はい。ありがとうございました。着替えとかも用意してもらって」
「構いません。こちらへどうぞ」
またあの変な人の前に座らねばならないのか。ちょっと気後れしたが、話はまだ終わっていない、仕方がないことだ。
私はまた竜崎の前に腰掛けた。私がお風呂に入る前と全く同じ格好ではないですか…?その座り方疲れないの?
「疲れないんですか、その座り方」
声に出してしまった。
「ああ。私はこの座り方でないと推理力が40%減なので」
「…はあ」
警察と協力して犯人おってるって言ってたけど、結局この人何者?推理力、ねえ…毛利小●郎みたいな感じなのかな。
「さて。月島さん。」
竜崎は手元にあるフィナンシェを口に頬張って言う。
「今後のあなたについてですが」
「え?私?」
風呂上りでぼーっとしてたのか、目の前の人の奇行に目を奪われてたのか、私は驚いて彼の顔を見た。
「先ほども言いましたがなぜかあなたはJに誘拐され特別扱いをされていた。その理由は不明ですが、このままだと再び被害に遭う可能性があります」
「……」
確かにそうかもしれない。私はたまたま警察に保護されただけなのだ。
竜崎はショートケーキの苺にフォークを刺して口に頬張る。
「なので、あなたをここで保護したいと思います」
「………はい?」
素っ頓狂な声だったと思う。だってそれくらい頭の中は?で一杯になってしまったから。
「え、ここで?ですか?」
「はい、あなたの安全のため保護し、出来ればなぜJがそれほど月島さんに拘ったのか明かしたいと思います。彼らを追い詰めるキーになるかもしれない」
「ちょちょ、ちょっと待ってください!」
私は慌てて竜崎を遮る。
「また危険が及ぶかもしれない、までは理解出来ますけど、じゃあ保護は警察にしてもらいますから。あなたは警察関係者といっても、ここは明らかに普通の家でしょう」
このリビングやバスルームをみるかぎり、ただの家。私が監禁されてた部屋だけ妙に質素だったけど。
それにこの人に保護だなんて…なんか、怪しい。怪しすぎる。
もしかしてこの人こそ私を連れ去った犯人なんじゃないのか??なんて疑うほどに。そう、そうだよ、実は今までの話全部嘘で、実はこの人が私をさらったんじゃないの?
竜崎は表情も変えず、はたまたこちらをみることもせず続けた。
「無駄ですよ、警察に行っても」
「え?」
「あなたの保護と調査は私が警察庁長官に許可を取って今こうしてるんです。また追い返されるだけです」
「…は」
「私は2度も取り逃したJをどうしても捕まえたい。こんな屈辱は初めてなので。ですからあなたという非常に強いカードをやすやす手放したくないのです。あのJが特別扱いしていた女性、とは。」
「…いや、でも」
「あなたにとっても悪い話ではありません。また誘拐されたいのですか?」
そうじゃないけど。
でも話がかなり突拍子もないし現実離れしてるし怪しいしこの人クマすごいし猫背だし。
そう、混乱。私は頭が混乱してる。
パクパクと口を開けながら困る私を、竜崎は見た。
強い眼差し。黒い瞳。
それこそ犯人を追い詰めてるような名探偵みたいなキツい視線に、私はなぜか言葉を失くした。
黒髪から覗く漆黒の瞳には、何とも言えない圧迫感があって、私はそれ以上見てられなかった。
胸が、締め付けられそう。
そして、こくん。小さく頷いた。
頷くしかなかった。
この得体の知れない変人に匿われることに、私は同意してしまったのだ。
私が頷いたのを見て、竜崎はまたふっと視線を外した。
「分かって頂けてありがとうございます」
「…いや、それしか選択肢ないので…」
「それもそうですね」
なんて抑揚のない話し方なんだろう。感情がないロボットみたいだった。
頷いてしまったことを、私はすでに後悔している。
私はこれからどうなってしまうのだろうか。
「もし事件解決したあとも、ここでの生活は口外しないで頂きたい。私やワタリのことも。できますね?」
「…分かりました」
「あなたが不自由なく生活出来るよう全力を尽くします。そして、私があなたに求めるのはただひとつ…
Jを捕まえるために、協力してください」
ごくんと唾を飲んだ。
「も、もちろんです…けど本当に、なんの心当たりもないんですが…」
「それはこちらで調べ上げます。まずはあなたに色々聞きたいことがある。」
竜崎はまた私から視線を逸らすと、目の前のお菓子をひたすら頬張りながら私に次々質問をしたのだ。
幼少期のこと、思春期のこと。
今まで付き合った男性、友人。
就職してからの仕事内容。
好きな人、嫌いな人。
私の趣味、特技。
はたまた身長や体重まで。(なんのために聞いてんの?)
淡々と聞かれただ答える。
そして更に、最近いつ、どこで、何時ごろ何をしていたかそれはそれは細かく聞かれた。
まさしくこれは尋問、だった。
不快な思いをしない方が無理。私は徐々に自分の声が小さく、そして低くなることを自覚した。
自分は目の前にある紅茶を飲みながら、私の空になったペットボトルには気づきもしない。
確かに大きな犯罪組織を私だって捕まえたいとは思うけど、
なんだかこの対応はあんまりじゃないのか。
私は目の前にいるパンダ男に、不信感を持たずには居られなかった。
