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は暗いままなので、鏡を見つめてもあまりよく見えない。
沢山の洋服に本、DVDや化粧品など、日用品に溢れている部屋。
私が竜崎に保護されて1ヶ月以上、こんな形で終わりが来るとは思っても見なかった。
今日の彼の言葉を思い出す。
もし24時間以内にJを暴かなくても、彼は私を差し出すようなことはしないだろうと思う。
そこは素直に嬉しくて、泣きたいくらいだ。
でもやはり、4人もの命が私に掛かってると知ってこのままではいられなかった。
私のせいで今、恐怖に震えてる人達がいる。
この夜にここを出ていかなければ、この24時間以内に私にチャンスはないだろう。
竜崎のこと信じてないわけではない。きっと彼はJに辿り着けるだろう。
ただこの24時間という制限。ここは難儀だと思う。
だから私はとにかく4人を救って、Jの奴らにさらわれたとしてもそこで待ってればいい。
きっとそのうち…助けは来るはずだから。
大事にされてたらしいし、すぐ殺されるなんてことは…ないはず。
「ごめん…竜崎」
約束守らなくて。
だって私一人ここで守られてるだなんて耐えられないよ。
メリーだって私のせいで怪我をおった。
ここを出てどこに行けばいいのかは分からない。でもメリーすら見つけられたJなら、そこいら歩いてれば私を見つけるんじゃないだろうか。
ゆっくりと目を閉じた。
ある日突然始まったあなたとの奇妙な生活。
楽しかったよ、竜崎。
どこでどうなったのか分からないけれど私は確かにあなたを好きになった。
時々覗かせるあなたの優しい微笑みが好きだった。
ありがとう。
私は意を決して目を開けると、ゆっくり自分の部屋の扉を開けた。
きっと竜崎は起きてる。私はそっとリビングに近づき、耳をすましてみた。
微かに、竜崎の声が聞こえた。
こんな夜中だというのに、誰かと通信してるらしかった。
私にとっては最高のタイミングだ。
忍足で廊下を進んだ。
すぐに出入り口まで辿り着き、私はその扉を開けた。
オートロック式の扉だから出て行っても鍵を掛ける必要はない。
重い扉を開けてなるべくゆっくりゆっくりと閉めた。
鍵の閉まる音がしてびくっとする。聞こえただろうか。
…いや、リビングとは少し離れてるし、彼は多分イヤホンをつけて通信中だ。今なら、大丈夫。
私は急いで暗い道を少し歩いてエレベーターを呼んだ。最上階であるここへ辿り着くのに時間がかかる。
ドキドキしながら待った。悪い事をしてるような…いや実際悪いことなのだ。竜崎との約束を破るんだから。
誰も来ないでほしい、と思った。でもその反面、今すぐに止めてほしい、とも思った。
理由は分かってた。私は単純に、怖いのだ。
自分で思い切って出てきた癖に、本当は得体の知れないJの元へ行くのが怖くて堪らない。
…でも、じっともしてられない。
エレベーターがついて開いた。私はそれに飛び乗り扉をしめた。
下降して行くのを感じて、ああ出てきてしまったんだ、と実感が湧いた。
でもあの感の鋭い竜崎はすぐに気付くだろうと思った。ホテルを出てからも急ぎ足で進まなければ。
「…どこに行くっていうんだろう」
呟いて苦笑した。
エレベーターは1階に着いた。暗いフロントを無視して、以前使用した裏口へ向かう。
裏口もどうやらオートロック式らしかった。私はほっとしてそのドアを開く。
開けた瞬間外の匂いがした。車が通る音が聞こえる。
すぐに駆け足でそこから立ち去った。振り返ればもう竜崎がこっちをみてるような気がして。
ごめんなさい、竜崎、ワタリさん。
この1ヶ月守ってくれたのに結局自分から敵の手の元へ飛び込む馬鹿で。
でも、大丈夫。きっといつかは前みたいに竜崎がアジトを突き止めて助かるはずだから。
…きっと。
見知らぬ道をとりあえず走った。それなりの繁華街だが真夜中なので人はまばらだった。
空を見上げれば月が綺麗に出ている。満月だった。
それをみて、私は自分の目から雫が溢れているのに気がついた。
なんの涙かなぁ、これ。
怖いのかな。竜崎と離れるのが。
結局どういう関係なのかイマイチハッキリしないまま終わるのが不安なのかな。
「…綺麗だ」
月が、綺麗だ。
私はふっと苦笑してまた足を進めた。涙を拭く。
夜の街とはなんて寂しさを誘うのだろう。心細くて、孤独。
立ち止まって辺りをキョロキョロ見渡した。…怪しい人はどこにもいない。
まあ、そんなすぐJも私を見つけられないよね。
私はいくあてもなく、ただひたすら足を進めた。
どれくらい歩いただろうか。
普段の運動不足がたたって疲労困憊。
辺りはまだ暗かった。でもそろそろ日が昇る時間だろうと思う。
恐らくだけれど私がいないことに竜崎はもう気付いてる気がする。あの人はなんだか無駄に感がいいし。
探してるだろうか。
「…月島さん?」
突然名前を呼ばれびくっとした。
驚いて振り返ると、見覚えのある顔があった。
まさか、こんなところで知り合いと会うとは。
「あれやっぱり。こんな時間にどうしたんですか?」
「あ…ああえーと、散歩、です…コンビニついでに…」
この人の名前、なんだっけ。私は頭の中で必死に考える。
すらりと高い身長。竜崎なんかとは違い背筋が伸びていた。
爽やかな短髪、笑顔は人懐こく犬っぽい。
「ええ、女性一人で?危ないですよ」
「は、はは…ですよね。眠れなくて」
「送りますよ、お家まで」
整った顔立ちだ。私たちはその男前な顔が俳優に似てるからそのままその俳優の名前で呼んでいた。
本名は忘れてしまった。何人もの人と毎日会う仕事上、人の名前を覚えていない事は多い。
佐藤くん…本当の名前なんていったかな。
「あ、すみません、警戒してます?前しつこく連絡先渡しちゃったから」
「あ、いえそういうんじゃないですよ!」
「よかったー。安心してください、僕ストーカー気質ないですから!」
「あはは、見ればわかりますよー」
人懐こい彼に、以前仕事中連絡先を聞かれた事があった。
周りの同僚は、羨ましい!だなんて言っていたけど、私はどうも気が乗らなくて彼を受け流した。
というのも単純に、患者とどうこうなるというのが嫌なタイプだったからだ。
確かに彼は顔立ちは整ってるし、優良物件だったかもしれない。
「えっとそういうの疑ってるんじゃないんだけど、本当に大丈夫です。」
「ええ。こんな暗くに心配ですけど…」
彼は本当に心配そうに眉を潜めた。
ありがたいのだが、なんといってもどこでJが見てるか分からない。
もしかしたら彼をも巻き込んでしまうかも。
「あの、というのも…家!あれなんです!」
私は適当に目の前にあるマンションを指さした。現実では絶対私には住めないだろう高級マンションだけど、とりあえずそう言うしかない。
「目の前なんですよー、だから大丈夫です!ありがとうございます!」
「そっか、なら安心ですね。分かりました」
ニコニコと笑いながら納得してしてくれたようだ。私はほっと胸を撫で下ろして、とりあえず彼に別れを告げた。
「では、ありがとうございました!」
「うん。気をつけて!」
軽く手を振り、佐藤くんの前をすっと通った。
香り。
風に吹かれ、彼からは甘い香りがした。
つい私は足を止める。
…この香りは。
デジャヴと呼ぶのだろうか、過去を思い出させる懐かしい気持ちに包まれた。
待て、この香りって…!
はっとして振り返ろうとした瞬間、背後から口を押さえられた。
耳元で、声が聞こえた。
「やっとみーつけた」
沢山の洋服に本、DVDや化粧品など、日用品に溢れている部屋。
私が竜崎に保護されて1ヶ月以上、こんな形で終わりが来るとは思っても見なかった。
今日の彼の言葉を思い出す。
もし24時間以内にJを暴かなくても、彼は私を差し出すようなことはしないだろうと思う。
そこは素直に嬉しくて、泣きたいくらいだ。
でもやはり、4人もの命が私に掛かってると知ってこのままではいられなかった。
私のせいで今、恐怖に震えてる人達がいる。
この夜にここを出ていかなければ、この24時間以内に私にチャンスはないだろう。
竜崎のこと信じてないわけではない。きっと彼はJに辿り着けるだろう。
ただこの24時間という制限。ここは難儀だと思う。
だから私はとにかく4人を救って、Jの奴らにさらわれたとしてもそこで待ってればいい。
きっとそのうち…助けは来るはずだから。
大事にされてたらしいし、すぐ殺されるなんてことは…ないはず。
「ごめん…竜崎」
約束守らなくて。
だって私一人ここで守られてるだなんて耐えられないよ。
メリーだって私のせいで怪我をおった。
ここを出てどこに行けばいいのかは分からない。でもメリーすら見つけられたJなら、そこいら歩いてれば私を見つけるんじゃないだろうか。
ゆっくりと目を閉じた。
ある日突然始まったあなたとの奇妙な生活。
楽しかったよ、竜崎。
どこでどうなったのか分からないけれど私は確かにあなたを好きになった。
時々覗かせるあなたの優しい微笑みが好きだった。
ありがとう。
私は意を決して目を開けると、ゆっくり自分の部屋の扉を開けた。
きっと竜崎は起きてる。私はそっとリビングに近づき、耳をすましてみた。
微かに、竜崎の声が聞こえた。
こんな夜中だというのに、誰かと通信してるらしかった。
私にとっては最高のタイミングだ。
忍足で廊下を進んだ。
すぐに出入り口まで辿り着き、私はその扉を開けた。
オートロック式の扉だから出て行っても鍵を掛ける必要はない。
重い扉を開けてなるべくゆっくりゆっくりと閉めた。
鍵の閉まる音がしてびくっとする。聞こえただろうか。
…いや、リビングとは少し離れてるし、彼は多分イヤホンをつけて通信中だ。今なら、大丈夫。
私は急いで暗い道を少し歩いてエレベーターを呼んだ。最上階であるここへ辿り着くのに時間がかかる。
ドキドキしながら待った。悪い事をしてるような…いや実際悪いことなのだ。竜崎との約束を破るんだから。
誰も来ないでほしい、と思った。でもその反面、今すぐに止めてほしい、とも思った。
理由は分かってた。私は単純に、怖いのだ。
自分で思い切って出てきた癖に、本当は得体の知れないJの元へ行くのが怖くて堪らない。
…でも、じっともしてられない。
エレベーターがついて開いた。私はそれに飛び乗り扉をしめた。
下降して行くのを感じて、ああ出てきてしまったんだ、と実感が湧いた。
でもあの感の鋭い竜崎はすぐに気付くだろうと思った。ホテルを出てからも急ぎ足で進まなければ。
「…どこに行くっていうんだろう」
呟いて苦笑した。
エレベーターは1階に着いた。暗いフロントを無視して、以前使用した裏口へ向かう。
裏口もどうやらオートロック式らしかった。私はほっとしてそのドアを開く。
開けた瞬間外の匂いがした。車が通る音が聞こえる。
すぐに駆け足でそこから立ち去った。振り返ればもう竜崎がこっちをみてるような気がして。
ごめんなさい、竜崎、ワタリさん。
この1ヶ月守ってくれたのに結局自分から敵の手の元へ飛び込む馬鹿で。
でも、大丈夫。きっといつかは前みたいに竜崎がアジトを突き止めて助かるはずだから。
…きっと。
見知らぬ道をとりあえず走った。それなりの繁華街だが真夜中なので人はまばらだった。
空を見上げれば月が綺麗に出ている。満月だった。
それをみて、私は自分の目から雫が溢れているのに気がついた。
なんの涙かなぁ、これ。
怖いのかな。竜崎と離れるのが。
結局どういう関係なのかイマイチハッキリしないまま終わるのが不安なのかな。
「…綺麗だ」
月が、綺麗だ。
私はふっと苦笑してまた足を進めた。涙を拭く。
夜の街とはなんて寂しさを誘うのだろう。心細くて、孤独。
立ち止まって辺りをキョロキョロ見渡した。…怪しい人はどこにもいない。
まあ、そんなすぐJも私を見つけられないよね。
私はいくあてもなく、ただひたすら足を進めた。
どれくらい歩いただろうか。
普段の運動不足がたたって疲労困憊。
辺りはまだ暗かった。でもそろそろ日が昇る時間だろうと思う。
恐らくだけれど私がいないことに竜崎はもう気付いてる気がする。あの人はなんだか無駄に感がいいし。
探してるだろうか。
「…月島さん?」
突然名前を呼ばれびくっとした。
驚いて振り返ると、見覚えのある顔があった。
まさか、こんなところで知り合いと会うとは。
「あれやっぱり。こんな時間にどうしたんですか?」
「あ…ああえーと、散歩、です…コンビニついでに…」
この人の名前、なんだっけ。私は頭の中で必死に考える。
すらりと高い身長。竜崎なんかとは違い背筋が伸びていた。
爽やかな短髪、笑顔は人懐こく犬っぽい。
「ええ、女性一人で?危ないですよ」
「は、はは…ですよね。眠れなくて」
「送りますよ、お家まで」
整った顔立ちだ。私たちはその男前な顔が俳優に似てるからそのままその俳優の名前で呼んでいた。
本名は忘れてしまった。何人もの人と毎日会う仕事上、人の名前を覚えていない事は多い。
佐藤くん…本当の名前なんていったかな。
「あ、すみません、警戒してます?前しつこく連絡先渡しちゃったから」
「あ、いえそういうんじゃないですよ!」
「よかったー。安心してください、僕ストーカー気質ないですから!」
「あはは、見ればわかりますよー」
人懐こい彼に、以前仕事中連絡先を聞かれた事があった。
周りの同僚は、羨ましい!だなんて言っていたけど、私はどうも気が乗らなくて彼を受け流した。
というのも単純に、患者とどうこうなるというのが嫌なタイプだったからだ。
確かに彼は顔立ちは整ってるし、優良物件だったかもしれない。
「えっとそういうの疑ってるんじゃないんだけど、本当に大丈夫です。」
「ええ。こんな暗くに心配ですけど…」
彼は本当に心配そうに眉を潜めた。
ありがたいのだが、なんといってもどこでJが見てるか分からない。
もしかしたら彼をも巻き込んでしまうかも。
「あの、というのも…家!あれなんです!」
私は適当に目の前にあるマンションを指さした。現実では絶対私には住めないだろう高級マンションだけど、とりあえずそう言うしかない。
「目の前なんですよー、だから大丈夫です!ありがとうございます!」
「そっか、なら安心ですね。分かりました」
ニコニコと笑いながら納得してしてくれたようだ。私はほっと胸を撫で下ろして、とりあえず彼に別れを告げた。
「では、ありがとうございました!」
「うん。気をつけて!」
軽く手を振り、佐藤くんの前をすっと通った。
香り。
風に吹かれ、彼からは甘い香りがした。
つい私は足を止める。
…この香りは。
デジャヴと呼ぶのだろうか、過去を思い出させる懐かしい気持ちに包まれた。
待て、この香りって…!
はっとして振り返ろうとした瞬間、背後から口を押さえられた。
耳元で、声が聞こえた。
「やっとみーつけた」
