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夢小説設定
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目を開ければ光が普段より明るく差し込んでいて、ああ寝過ぎたな、と感覚的に分かった。
とはいえ寝るの自体が遅かったから、睡眠時間はあまり確保してないだろう。
ぼんやりと天井をただ見上げて、乾いた唇を少し舐めた。
夢、だっけ。
私夢見てたんだっけ。都合のいい。
ちらりと目で時計を見ればやはり、もう10時半を過ぎていた。朝食を飛ばして昼食の時間が近い。
朝まで眠れなくて起きていたせいだ。
ゆっくり上半身を上げた。バサバサの髪を手櫛で整えた。
…夢だっけ、夢だよね。
昨日起きた事を思い返してみるけれどとても現実とは思えない。
だってあの竜崎がー
思いかけてかっと顔が熱くなった。冷やすように両手で顔を覆う。
ちょっと落ち着こう。まだ寝起きで頭もよく回っていない。
とりあえず朝の支度を整えた。ワタリさんが用意してくれるであろう朝食が無駄になってしまったのが申し訳ない。
いや、昼に朝食を食べよう。昼食は夜に回して、夕飯の支度を断っておけばワタリさんの手を煩わせなくて済む。
そうしよう。
私は洋服を着替え、一旦鏡を見た。
どこか目の周りが腫れぼったくなっている。
少しそれを抑えると、とりあえずリビングへと足を運んだ。一人でいるのは不安だし、メリーのことも気になる。
私は扉を開けた。そこにはワタリさんはおらず、やっぱりソファに竜崎が座っているのが見えた。
とんでもなく心臓が跳ね上がる。ただ後ろ姿を見ただけなのに。
挨拶の声すら喉から溢れないでいると、彼はいつものトーンで言った。
「おはようございます」
その声を聞いた瞬間、確信した。
夢だった。やっぱり夢だわ。
そうだよね。あの竜崎が、あんなことするわけないし、あんなこと言うわけない。
もしあれが現実だったら、今日の竜崎がこんな普通なわけないし。
そう思えばやけに冷静になれて、私は声を出した。
「おはようございます、かなり寝坊してすみません」
「いえ、メリーのこともあって眠れなかったんでしょう」
私は答えずにダイニングの机を見た。そこにはすでに朝食はなく、昼食が乗っていた。
ワタリさんがもう準備してくれてたんだ。申し訳ない…
とりあえず水を冷蔵庫から取り出してグラスに注いだ。注ぎながら考える。
…どこまでが夢だ??
私の過去について話したのは夢?あれは現実だろうか?
そのあと自分の都合のいい夢を見たのか?
もしや話すところも全て夢だったら、私はちゃんと現実で竜崎に話さなくてはならないのだが…
ぐるぐると頭の中で混乱しているところへ、竜崎の声が響いた。
「メリーの狙撃の犯人を特定しました」
「ええっ!」
考えていた思考も吹っ飛ぶ。昨日の事なのに、もう!?
竜崎はソファから降りてダイニングの椅子に座った。
私も水を持ったままその正面に慌てて腰掛ける。
「Jだったんですか?」
「残念ながら狙撃した張本人はJではありませんでした」
「…え?」
竜崎は自身の唇を引っ張りながら言う。
「Jとはまた違う犯罪組織です。Jよりはだいぶ格下で、金を積まれて依頼をこなすタイプの奴らです」
「はー、ゴ○ゴみたいなかんじですか」
「あれほどの腕ではありません」
ゴ○ゴも知ってるんだ。竜崎ほんと意外と詳しいな。
「つまりはJが依頼したってことですか?」
「おそらく。残念ながら金さえ積まれればどんな相手でも受けるので、依頼主がJとは知らずに実行したらしいです」
「…まさに映画の世界…」
「その依頼を掛けてきた者を特定しようとはしてますが…恐らく下っ端でしょうね…」
「自分の手を汚さずってやつですね…ズルイ」
こうして狙撃した直後にすぐに捕まってることを考えれば、頭がいいとも言えるけれど。
決して尻尾を出さないんだな、Jのトップって。
一体どんな人なのだろう。
「メリーは変わりありませんか?」
「特にマイクから通信も入ってません。便りがないのは元気な証拠、ではないですか」
「とりあえず安心ですかね…」
ほっと胸を撫で下ろす。
「それと」
竜崎は続ける。
「あなたの親戚も、特にJとは関係なさそうです」
言われてはっとした。
…あれ、叔父の事は話したのは夢じゃなかったか。
そこまでは現実だったらしい。
「と、いうかもう調べたんですか…」
呆気にとられる。半日も経ってないんだけど…
仕事早すぎないだろうか。ちょっと引くくらい。
「簡単に調べられましたからね。素性を調べここ最近の行動なども調べましたが、ただの会社員でJとはまるで関わった事がなさそうです」
「…まあ、そうだろうな、とは思ってました…」
あのことがあったのは結構昔の話だし、今更私に執着などしないだろうとは分かってたけど。
「話して頂いたことは無駄ではありません。疑わしいものは全て洗わなくては」
「は、はい…」
私は持っていた水を飲む。なんだか気まずかった。
「…それで。制裁はどうしますか」
突然言われて、私は顔を上げた。竜崎は座った目でじっと私を見ている。ちょっとたじろいだ。
「せ、制裁、とは?」
「当然ながらあなたに働いた悪事の制裁です。私がやろうと思えば死ぬより辛い一生を味わらせます」
怖いよ!というか、竜崎って今更だけど本当に何者なの!
Lの部下だからって、そんなこと出来るのだろうか。
私は慌てて否定した。
「む、昔の話だし結構です!未遂だったし!」
「未遂なのはあなたが上手く逃げたからでしょう。運が良かっただけです。結果論は必要ない」
「そ、そりゃそうですけど…」
確かに怖かったしムカつくし二度と顔も見たくないけど。未遂とはいえ、…色々されたし…
…でも。
私は冷たいグラスを両手で握った。
「叔父には、優しい奥さんがいて…つまりは叔母、と私は呼んでますが…叔母さんは本当によくしてくれたんです。あのクソ親父は許さないけど、叔母さんには罪はないから」
「クソ親父呼ばわりであなたの怒りはよく分かりました。当然ですが。…知らぬが仏、ということですか」
「はい、叔母のためになるのか分からないけど…それに、私自身、もう忘れたいんです。無関係な人間だと思って生きてますから」
苦しめばいいとは思ってるけど、実際苦しまれたら気になってしまう。
それまでは確かに、家族みたいに過ごしてきたんだから。
竜崎はどこか納得いかないような表情で眉を少しだけ潜めた。
「…私の気は済みませんが…あなたが言うのなら仕方ありません」
「はい…でも、ありがとうございます。そう言ってもらえただけで嬉しいしなんかスカッとしました」
笑いながら水を飲む。誰にも言ったことがなかったから、一緒に怒ってくれる人がいるってだけで何だか心が軽くなる気がする。
「当然です。私の大切な人にそんなことをしたんですから」
「ぶっ!!」
私は飲んでいた水を思い切り吹き出した。まるで漫画のワンシーンのように。
気管に入ったのか苦しくむせる。
竜崎は眉を潜めて言った。
「汚いですよ。あなた本当に女性ですか」
「だっ…げほ、竜崎がっ、変なこと言う…げほっ」
必死に咳き込みながら息を整える。竜崎はゆっくりとした動作でティッシュを差し出してくれた。急いで何枚か取って拭く。
「変なこと?もしやあなた昨日の事を夢だったなどと思ってませんか」
目を丸くして竜崎を見る。図星だった。
そんな私の表情を見て彼は呆れたようにはあとため息をついて私を哀れんだ。
「あなたは夢と現実の違いも分からないんですか…」
「ふ、普段なら私だってそれくらいつきますよ!ただ昨日のは…あまりに現実離れしてた…から…」
そこまで言って、一気に顔が熱くなった。
やっぱり夢じゃなかったんだ。
竜崎に抱きしめられて、キスをされたの。
…夢じゃなかった………
「私は一世一代の決心で話したと言うのに、夢と思われていたとは心外です」
竜崎はどこか拗ねたように口を尖らせた。
何の言い訳も出来ない。私が悪い。
素直に頭を下げた。
「す、すみません…」
「いえ。あなたらしいと言えばあなたらしいです」
「その…信じられなくて。自分の都合のいいように、夢でも見たのか、もしくは妄想だったのかと」
「…まあいいです。あなたにとってそれほど夢心地だったのでしょう」
竜崎はそういうと、ニヤリと口角を上げた。
「そんなに良かったですか?」
言われた途端、私は顔を真っ赤にした。
「い、意地悪!なんか言い方が意地悪だ!」
「顔凄く赤いですよ。タコのようです」
「あ、赤くなんかないですよ!」
「さすがにその否定は無理があります」
「部屋が暑いんですよ!あー暑い暑い!」
「ごまかし方が下手すぎて哀れです…」
恥ずかしすぎて死んでしまいそうだった。もう竜崎の顔が見れない。
あれが全て現実だったなんて信じられない。
あの竜崎と…?なんでそうなった…!
顔を両手で押さえて顔を隠す。
「どうしても信じられないなら、ここで思い出させてあげましょうか」
「うわー!大丈夫です!もう思い出しました!」
私は慌てて両手を振って拒否する。見ればどこか残念そうな竜崎がこちらを見ていた。
が、少し上がった口角が、面白がってるのも物語っている。
「竜崎、面白がってるでしょう!」
「面白いですからね」
「大切な人、じゃなかったんですか」
「大切で面白い人、です」
減らず口の竜崎を恨めしく睨むが、竜崎はただ面白そうに微笑んでいる。
…なんか今日は竜崎、よく笑ってるなぁ…
からかわれてムカついてるのも忘れて、私はつい見惚れてしまった。
やっぱりこの人笑ってる方がずっといい、能面みたい顔でいるより柔らかくてかわいい。
竜崎はふっと私から視線を外して言った。
「私は人を好いたのも好かれたのも初めてなので…なぜあなたなのかという疑問はありますが」
「なんですってこのやろう」
「自分でもよく分からないんです。怒りや喜びが突然襲ってくる。あなたを驚かせて呆れさせるかもしれない」
いつものように抱えた膝に顔を乗せる。どこか悲しげな表情で、彼はそう言った。
「凄い、喜んでいいですか」
「何を喜ぶところがありましたか」
「人を好いたのも好かれたのも初めてってとこです。失礼な一言で一瞬忘れたけど、めちゃくちゃ喜んでます」
「はあ、どこがですか」
「人間離れした竜崎が、初めて人間らしい事をした相手が私って事ですよ?そんなの嬉しいに決まってるじゃないですか!」
正直私も何で竜崎なんだ、という疑問は心にある(口には出さないでおこう)
でもそこにきっと理由なんかなくて、こう、何故山を登るんだ、そこに山があるからだ、みたいな感じなんだ。
説明つかない本能的な気持ちを抱けたのが私が初めてだなんて、最高の最高じゃないか。
竜崎はふっとまた笑った。
「相変わらず変な人です」
「本当に竜崎にだけはそれ言われたくないです」
「…仕事に戻ります。食事をとってはどうですか。」
竜崎はそういうと椅子から降りて、またいつものソファへと移動した。
「あの、竜崎…!」
私は声をかける。
「本当に、ありがとうございます…私の過去のことも一緒に怒ってくれて。嬉しかったです」
「…当然のことです」
相変わらずお礼を言われるのを素直に受け取れない彼は、小さな声でそれだけ言った。
