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夢小説設定
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その日昼食を終えて一人お茶を嗜みながら読書をしていると、ワタリさんが帰ってきて何やら大量の写真を私の目の前に並べた。
目をチカチカさせているところへ、竜崎が近寄ってくる。
「月島さん。まずはその写真。それは今まで捕まえたJのメンバーたちです。見覚えある者はいませんか」
様々なアングルからの写真だった。様々な男たちの顔と、その数の多さに驚く。
「え、Jこんなに捕まえてるんですか!」
「ほとんど下っ端ですがね。彼らの組織は中でもランクがはっきりしてるようで、ある一定のランクより上は現場には出ないようです」
「あーだから捕まるのは下っ端なのですか…」
「普通は下っ端でも捕まればそこから上へ辿るのは難しい事ではないのですが…Jに至ってはどうも上へ中々行けない」
私は並べられた写真をじっとみる。若い男から中年のおじさんまでいる。
いや、全然知らない顔だ。元々人の顔覚えるの苦手なんだけど。
「知ってる人は全然いません…」
「そうですか。」
竜崎は続ける。
「それとあなたが尾行され始めたのは、3ヶ月前からということが分かりました」
「え!」
私は顔をあげる。
「3ヶ月前の仕事の帰り道から時々尾行されていたようです。それ以前はされてた様子がない。」
「3ヶ月前…ですか」
「3ヶ月前に何かありませんでしたか。何でもいいです、人助けをしたとか、何か拾ったとか、新たな知り合いが出来たとか」
「………」
「………」
「………」
「………」
「………」
「……何も思い出せないようですね」
私はがくっと項垂れた。そうです記憶力悪いですよ!全然思い当たりません!
竜崎はふうと小さく息をつくとどこか遠くを眺める。
「すみません、全然役に立たなくて…」
「…いえ、普通まさか自分が事件に巻き込まれると思いながら生活してませんよね。仕方ないです」
記憶力が悪いなどと皮肉もなく、竜崎は意外とフォローしてくれた。
申し訳ないよなあ。匿ってくれてるのに全然協力できてない。
「先日捕まえたJたちは少しランクが上そうなので、何とかしてそこから情報を…」
竜崎が話したときだった。
パソコンからピピピッと音が響く。彼はゆっくり振り返った。
そしてソファへ移動すると、イヤホンとマイクを付けて誰かと通信を始める。
私は今一度手元の写真をじっと見つめ返してみた。…が、やっぱり記憶にないな。
小さなため息をついたとき、竜崎の声が響いた。
「2名ともですか!」
珍しく驚いて声を荒げている様子だった。私はびくっと体を反応させる。
竜崎を振り返ると、眉間にシワを寄せて普段よりかなり気難しい顔で話している。
私は不安になり横に立っているワタリさんを見た。彼は目で大丈夫ですよ、というように小さく頷いてくれる。
しばらく経って竜崎はパソコンの電源を落とし、イヤホンを外すと、はあっとため息をついて天井を見上げた。
「……あの竜崎…」
「やられましたね」
「え…」
竜崎は顔を正面に向けると、親指の爪をキツく噛んだ。
「我々を襲撃してきた2名…」
「あ、マイクたちが捕まえたやつ?」
「自殺しました」
息を飲む。持っていた写真が手からこぼれ落ちた。
竜崎は悔しそうに続ける。
「1名は死亡、1名は意識不明の重体で病院へ搬送されてます。」
「……」
「Jへの忠誠心は大したものですね…」
「そん、な…」
「あなたを保護してからやはり他にJの犯罪は見られない。随分と大人しくなっている。逆に言えば奴らを追う手立てがない。…やや長期戦になりそうですね」
竜崎はそういって、頭をかいた。
それからJは相変わらず動きを見せなかった。
私はと言えばホテルから出ることすらできず、毎日テレビを見たり本を読んだらして過ごす毎日。
竜崎に紅茶をいれて黙ってリビングに座る。繰り返し繰り返しそんな毎日を送った。
気がつけば、ここへ来て1ヶ月が経過していた。
誘拐されたあの日から、季節は表情を変え始めていた。
私はある日突然誘拐されてある日突然監禁されてある日突然ここにお世話になることになった。
あり得ないことだらけだけど、もう受け入れている。順応性が高いのが自分の良いところだと思ってる。
友達に会えないのは辛いし、普段は嫌な仕事も離れてみれば恋しい。
でもワタリさんは優しいし、ご飯は美味しいし、文句のつけようがない気遣いを見せてくれる。
しばらくJの動きがないことで、どこか平和でのほほんとした時間が流れていた。
ただひとつ。受け入れられないのは、
やはり竜崎という男なのである。
憎まれ口を叩く関係性は何も変わらないものの、彼は笑うことが多くなった。
笑うと言っても少し口角をあげるだけの微笑で、普通の人は気付かないかもしれないレベル。
そんな顔を見る時、私はどうもむず痒い気持ちになるのだ。
彼は突然素直な言葉を発したりして面食らう。
どうも読めないこの男は、私が生きていた中で一番不思議な男だった。
