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少し乱れた息を整えてると、竜崎は1人歩いてあるドアの前に立った。
「ここですね」
「…あ、そこですか」
私も急いでそこへ向かう。竜崎は指先でつまみながらドアノブを捻って開けた。
「私はここにおりますので。どうぞ見てきてください」
振り返れば階段のすぐそばにワタリさんが立っていた。高齢であるワタリさんですら息を弾ませてないのを見て、私は素直に落ち込んだ。
「はい、行ってきます」
少し緊張しながら、竜崎の開けたドアから中は入る。
「うわ…」
つい声が漏れる。
よく映画で見るような社長椅子に社長机(って言うのか?)、
あまり大きくはないが柔らかそうなソファとガラスのお洒落なローテーブルがある。そこにはさっきみたいな灰皿はなく指紋ひとつもなかった。
そして右手には、真っ白な清潔そうなシーツが敷かれたベッドがあった。
「……」
「ここのベッドに、あなたは寝かされていた。目隠しと手を縛られて…」
私はゆっくり近づいて、そのベッドを見た。
竜崎はじっと私を見ている。
「触ってもいいですか」
「どうぞ」
私はそっとシーツを触って、思い切ってそこに腰掛けた。そして上半身をポスンと沈めた。
「Jのトップの部屋でしょうね。やはり綺麗好きなようです」
「…ですね」
「見覚えありますか」
竜崎が猫背のまま私を覗き込む。
私はゆっくり深呼吸をした。
「見覚えはありません」
「…そうですか」
竜崎はポケットに手を入れながら考えるように上を見上げた。
「まあ、あなたは目隠しもされてましたしね。」
「見覚えはありませんが…」
私はゆっくり上半身を起こす。
部屋を見渡した。どの家具も初めて目にするもので懐かしさはまるでない。
ただ…
「…匂い」
私がポツリと呟くと、竜崎はこちらを見た。
「横になった途端、なんか…匂いが蘇ったんです」
「なんの匂いですか」
「上手く言えませんけど、多分香水でしょうか。甘めの…うーん、説明しにくい…」
「Jのボスが愛用してる香水かもしれません」
「それぐらいです、ここに来て思い出したの。あとは何も記憶にない」
ここにいた人はどんな人だったんだろう。
私はここに3日間も寝かされていて、かといって乱暴されるわけでもなく、一体Jは何のためにさらったんだろう。
「すみません。あまり役に立たなくて」
「いえ、期待はしてませんでしたから。あなたの体の中には薬が大量に投与されていたのが分かってましたし、目隠しされてたことも承知でした。香りだけでも覚えていたなら大したものです」
「顔見れてればよかったんですけど…」
「Jの顔、私も早く拝みたいものです」
悔しそうに竜崎は爪を噛んだ。
私はベッドから立ち上がる。
「他には正直何も思い出せません。」
「分かりました。では…」
竜崎は言いかけて、はっとした顔になる。
目を見開いて、ほんの少し眉間にシワを寄せる。そして出入り口の方を見た。
「…?りゅ…」
私が疑問に思い声を掛けようとすると、彼はしっ、と長い人差し指を立てて口に当てた。
その様子に、私も出かけた言葉を飲み込む。
竜崎のように耳をすましてみる。…が、私には何も聞こえないのだが…
私は疑問に思いつつも沈黙を守る。すると竜崎は突然、私の手首を掴んだ。
手首から伝わるひんやりとした体温に驚く。
そして彼は音を立てないよう私の手を引きながら素早く動いた。
されるがまま私はついていく。相変わらず何も聞こえない。
竜崎は例の社長机の背後に回ると、指先でそっと椅子を引き、その下に私を押し込んだ。
もう彼に従うしかない私は素直に小さくなり、体育座りをして机の下に丸くなる。
(な、なに…?まさか、J…?)
ぶつけたい疑問も今は口に出せない。混乱しながら竜崎を見上げると、
なんと彼は自らも机の下に潜り込み、私を庇うようにして両手を広げて押し入った。ぎょっとして固まる。
竜崎の広げた腕に挟まれるようになる私。すでに高鳴っていた心臓は、さらに大きく響いた。
それは得体の知れない者に対してなのか。
隙間ゼロの竜崎の胸に対してなのか。
正直、分からなかった。
竜崎はぐっと私の方に体を寄せる。竜崎からは少しだけ甘い香りがした。彼の黒髪が私に当たっている。
あまり高くない体温が触れ、私は頭が爆発しそうだった。
竜崎の首筋がすぐ目の前にある。いつだかパンダの置物だと思っていた彼は、当たり前だが置物などではなく、1人の男性だった。
その首筋と鎖骨が、綺麗だ、と思った。
しかし次の瞬間、遠くでパンパン、と言った鈍い音が響いたのが分かり思考が停止する。
はっと息を飲む。
…一般人の私にはよく分からないけど…
もしかして、銃声…?!
私はとにかく物音を出さないように息すら微かに、そしてゆっくり行う。
マイクたちや部屋の外にいたワタリさんの顔が浮かんだ。何かなければいいけど、みんな無事なのかな…!?
竜崎はなにも言わず、見上げれば鋭い目で集中していた。
普段の彼とはまるで違う表情に、ああこれは非常事態なんだ、と改めて感じる。
緊張感が流れる。今来るとすれば、やっぱりJ。
もうバレたアジトに何で?
もしかしてほんとうに、私をーーーー?
次の瞬間下から足音が上ってくるのが聞こえた。はっと震える。
と、突然部屋の扉が開く音が響いた。
「竜崎!」
それは聴き慣れた優しい声の、ワタリさんだった。
ほっと息を吐く。竜崎は私を押さえつけていた力を緩め、ゆらりと立ち上がる。
「3人の襲撃でした。マイク達が追っています。今のうちに参りましょう」
「すぐに出る」
竜崎は頭を垂らして私を見た。
「立てますか。走りますよ」
私は慌てて立ち上がろうとし、机に頭を酷くぶつけた。鈍い音が響いて目の前に稲妻が走る。しかし痛がってる時間もない、すぐに立ち上がった。
「さあ月島さん、参りましょう」
ワタリさんに促され、私は彼の後ろを追った。
部屋を出るも、いまは来た時と変わりない静かさだった。
すぐに階段を降りる。やや自分の足が震えているのに気が付いたが、何とか奮い立たせる。震えるな、足。
5階分の階段はえらく長い。私はとにかくワタリさんの背中だけを見て降りた。周りを見渡せば何か恐ろしい物でも目に入ってしまうかもしれないと感じていた。
マイクやメリーの姿は見えなかった。
なんとか1階までたどりつき、目の前に泊まっていた車に飛び乗る。竜崎も隣に入り込んだ。
「つかまってください」
ワタリさんはそういうと、車を一気に発進させた。遠心力で体が揺れる。
私は慌ててシートベルトを止めた。
あの優しいワタリさんとは到底思えないほどの乱暴な運転が、ただ事ではない事を表している。
「…追われてるな」
ポツンと竜崎が呟く。えっと私は声を漏らす。
「巻いてくれ」
「かしこまりました。月島さん、お気をつけください」
そう声が聞こえたと思うと、車はさらにスピードを上げていく。時速何キロなのこれ?てゆうか私たちが警察に捕まらないの?
私はもう顔が真っ青だったと思う。命の危機をこんなに感じたのは生まれて初めてのことだった。
隣を見ると、こんな状態なのに竜崎はいつもと変わらない表情でいつのまにか携帯を取り出してどこかに電話を掛けていた。
「長官……Jのアジト…2名…発砲……応援…」
エンジン音と揺れる車で途切れ途切れにしか聞こえない。よくこんな状況で電話などできるなと感心する。
少しして電話を切ると、竜崎はいつもの体制で親指の爪を噛んで考え事をしていた。なんと余裕綽々な態度。私は呆気にとられた。
私は体を揺らさないようひたすらシートにしがみ付いていた。
「ここですね」
「…あ、そこですか」
私も急いでそこへ向かう。竜崎は指先でつまみながらドアノブを捻って開けた。
「私はここにおりますので。どうぞ見てきてください」
振り返れば階段のすぐそばにワタリさんが立っていた。高齢であるワタリさんですら息を弾ませてないのを見て、私は素直に落ち込んだ。
「はい、行ってきます」
少し緊張しながら、竜崎の開けたドアから中は入る。
「うわ…」
つい声が漏れる。
よく映画で見るような社長椅子に社長机(って言うのか?)、
あまり大きくはないが柔らかそうなソファとガラスのお洒落なローテーブルがある。そこにはさっきみたいな灰皿はなく指紋ひとつもなかった。
そして右手には、真っ白な清潔そうなシーツが敷かれたベッドがあった。
「……」
「ここのベッドに、あなたは寝かされていた。目隠しと手を縛られて…」
私はゆっくり近づいて、そのベッドを見た。
竜崎はじっと私を見ている。
「触ってもいいですか」
「どうぞ」
私はそっとシーツを触って、思い切ってそこに腰掛けた。そして上半身をポスンと沈めた。
「Jのトップの部屋でしょうね。やはり綺麗好きなようです」
「…ですね」
「見覚えありますか」
竜崎が猫背のまま私を覗き込む。
私はゆっくり深呼吸をした。
「見覚えはありません」
「…そうですか」
竜崎はポケットに手を入れながら考えるように上を見上げた。
「まあ、あなたは目隠しもされてましたしね。」
「見覚えはありませんが…」
私はゆっくり上半身を起こす。
部屋を見渡した。どの家具も初めて目にするもので懐かしさはまるでない。
ただ…
「…匂い」
私がポツリと呟くと、竜崎はこちらを見た。
「横になった途端、なんか…匂いが蘇ったんです」
「なんの匂いですか」
「上手く言えませんけど、多分香水でしょうか。甘めの…うーん、説明しにくい…」
「Jのボスが愛用してる香水かもしれません」
「それぐらいです、ここに来て思い出したの。あとは何も記憶にない」
ここにいた人はどんな人だったんだろう。
私はここに3日間も寝かされていて、かといって乱暴されるわけでもなく、一体Jは何のためにさらったんだろう。
「すみません。あまり役に立たなくて」
「いえ、期待はしてませんでしたから。あなたの体の中には薬が大量に投与されていたのが分かってましたし、目隠しされてたことも承知でした。香りだけでも覚えていたなら大したものです」
「顔見れてればよかったんですけど…」
「Jの顔、私も早く拝みたいものです」
悔しそうに竜崎は爪を噛んだ。
私はベッドから立ち上がる。
「他には正直何も思い出せません。」
「分かりました。では…」
竜崎は言いかけて、はっとした顔になる。
目を見開いて、ほんの少し眉間にシワを寄せる。そして出入り口の方を見た。
「…?りゅ…」
私が疑問に思い声を掛けようとすると、彼はしっ、と長い人差し指を立てて口に当てた。
その様子に、私も出かけた言葉を飲み込む。
竜崎のように耳をすましてみる。…が、私には何も聞こえないのだが…
私は疑問に思いつつも沈黙を守る。すると竜崎は突然、私の手首を掴んだ。
手首から伝わるひんやりとした体温に驚く。
そして彼は音を立てないよう私の手を引きながら素早く動いた。
されるがまま私はついていく。相変わらず何も聞こえない。
竜崎は例の社長机の背後に回ると、指先でそっと椅子を引き、その下に私を押し込んだ。
もう彼に従うしかない私は素直に小さくなり、体育座りをして机の下に丸くなる。
(な、なに…?まさか、J…?)
ぶつけたい疑問も今は口に出せない。混乱しながら竜崎を見上げると、
なんと彼は自らも机の下に潜り込み、私を庇うようにして両手を広げて押し入った。ぎょっとして固まる。
竜崎の広げた腕に挟まれるようになる私。すでに高鳴っていた心臓は、さらに大きく響いた。
それは得体の知れない者に対してなのか。
隙間ゼロの竜崎の胸に対してなのか。
正直、分からなかった。
竜崎はぐっと私の方に体を寄せる。竜崎からは少しだけ甘い香りがした。彼の黒髪が私に当たっている。
あまり高くない体温が触れ、私は頭が爆発しそうだった。
竜崎の首筋がすぐ目の前にある。いつだかパンダの置物だと思っていた彼は、当たり前だが置物などではなく、1人の男性だった。
その首筋と鎖骨が、綺麗だ、と思った。
しかし次の瞬間、遠くでパンパン、と言った鈍い音が響いたのが分かり思考が停止する。
はっと息を飲む。
…一般人の私にはよく分からないけど…
もしかして、銃声…?!
私はとにかく物音を出さないように息すら微かに、そしてゆっくり行う。
マイクたちや部屋の外にいたワタリさんの顔が浮かんだ。何かなければいいけど、みんな無事なのかな…!?
竜崎はなにも言わず、見上げれば鋭い目で集中していた。
普段の彼とはまるで違う表情に、ああこれは非常事態なんだ、と改めて感じる。
緊張感が流れる。今来るとすれば、やっぱりJ。
もうバレたアジトに何で?
もしかしてほんとうに、私をーーーー?
次の瞬間下から足音が上ってくるのが聞こえた。はっと震える。
と、突然部屋の扉が開く音が響いた。
「竜崎!」
それは聴き慣れた優しい声の、ワタリさんだった。
ほっと息を吐く。竜崎は私を押さえつけていた力を緩め、ゆらりと立ち上がる。
「3人の襲撃でした。マイク達が追っています。今のうちに参りましょう」
「すぐに出る」
竜崎は頭を垂らして私を見た。
「立てますか。走りますよ」
私は慌てて立ち上がろうとし、机に頭を酷くぶつけた。鈍い音が響いて目の前に稲妻が走る。しかし痛がってる時間もない、すぐに立ち上がった。
「さあ月島さん、参りましょう」
ワタリさんに促され、私は彼の後ろを追った。
部屋を出るも、いまは来た時と変わりない静かさだった。
すぐに階段を降りる。やや自分の足が震えているのに気が付いたが、何とか奮い立たせる。震えるな、足。
5階分の階段はえらく長い。私はとにかくワタリさんの背中だけを見て降りた。周りを見渡せば何か恐ろしい物でも目に入ってしまうかもしれないと感じていた。
マイクやメリーの姿は見えなかった。
なんとか1階までたどりつき、目の前に泊まっていた車に飛び乗る。竜崎も隣に入り込んだ。
「つかまってください」
ワタリさんはそういうと、車を一気に発進させた。遠心力で体が揺れる。
私は慌ててシートベルトを止めた。
あの優しいワタリさんとは到底思えないほどの乱暴な運転が、ただ事ではない事を表している。
「…追われてるな」
ポツンと竜崎が呟く。えっと私は声を漏らす。
「巻いてくれ」
「かしこまりました。月島さん、お気をつけください」
そう声が聞こえたと思うと、車はさらにスピードを上げていく。時速何キロなのこれ?てゆうか私たちが警察に捕まらないの?
私はもう顔が真っ青だったと思う。命の危機をこんなに感じたのは生まれて初めてのことだった。
隣を見ると、こんな状態なのに竜崎はいつもと変わらない表情でいつのまにか携帯を取り出してどこかに電話を掛けていた。
「長官……Jのアジト…2名…発砲……応援…」
エンジン音と揺れる車で途切れ途切れにしか聞こえない。よくこんな状況で電話などできるなと感心する。
少しして電話を切ると、竜崎はいつもの体制で親指の爪を噛んで考え事をしていた。なんと余裕綽々な態度。私は呆気にとられた。
私は体を揺らさないようひたすらシートにしがみ付いていた。
