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「##NAME2##さーん! 寂しいよ、絶対日本くるときまた遊ぼうねえ!!」
大きな声で遠藤さんが嘆いてくれる。私は笑って答えた。
「ありがとう、帰ったら必ず連絡するね。今日すごく楽しかったよ」
会はついにお開きになり、私たちは解散の運びとなった。今回はやはり笑顔で気持ちの良い別れになった。寂しくて名残惜しいのは会が充実していた証拠なのだ。
吉沢くんが笑顔で言ってくれる。
「俺にも連絡ちょーだいな! 竜崎さんの許可があればいいけど!」
「あは、吉沢くんなら大丈夫だよ」
「ジェシーさんと竜崎さんにもよろしくな」
「うん、伝えるね」
私たちが別れを惜しんでいると、背後に車が止まった。先ほど連絡しておいたジェシーの迎えだった。その車を見て遠藤さんがギョッとする。
「ひえ。本当に玉の輿なんだ、すごい車じゃあん……」
「そ、そうかな」
「じゃあ、イギリス行っても頑張ってね。メールしてね!」
手を振ってくれる友人に振り返すと、私は車のドアを開けて中に入り込む。窓を開けて彼らの顔を見た。
「##NAME2##さんまたね!」
「##NAME2##、絶対また帰ってこいよー!」
私は笑顔でそれに答える。ジェシーはゆっくり車を発車させた。最後までこちらを見ている吉沢くんたちに名残惜しさを感じながら、ついにその姿が見えなくなり窓を閉めた。
ふう、とため息をつく。
「どうだった、同窓会」
ハンドルを握るジェシーが尋ねてくる。
「すっごく楽しかったージェシー、長い時間待たせてごめんね」
「いいのよそれが私の仕事だから。あの様子じゃクラスメイトもあなたを歓迎してたのね、そりゃそうだろうけど。Lはまた時間を作って日本に帰ってきてくれるわよ」
「うん、また会いたいな」
幸せな気持ちいっぱいになり微笑んだ。また日本で会いたい人が増えた。それは私にとってとても幸せなことなのだ。
だが同時に頭痛を感じて頭を抑える。バックミラーで見てきたジェシーがすぐに気づいて言った。
「頭痛いの?」
「うん、お酒飲んでないんだけど」
「人酔いかしら」
「あ、途中で変な人に会ってからだよ」
私ははあとため息をつく。多分、あれで疲れたっていうか緊張しちゃったんだ。あれ以降小さな頭痛が続いている。
ジェシーは車を左折させる。
「変な人?」
やや彼女の声が厳しくなった。私は頷く。
「エルにも報告しなきゃなんだけど……」
「どうして時計のボタン押さなかったの」
「至近距離にその人がいたし、ちょっとした動きでも勘付かれそうな相手だったの」
頭を抱える。思い出すだけでゾッとする人だった。カイドウとはまた違う不思議なオーラがある。少しの油断もならない、そんな空気感を感じる。
にこやかで爽やかなのに敵意と恐ろしさがある。あの人は一体何なんだろう。警察だって言ってたけど、私が知っている夜神さんたちとはまるで違う。
「なんか不思議な人で、エルにもちゃんと報告した」
「##NAME1##」
突然、ジェシーの低い声がした。私は運転席を見る。
ジェシーは両手でしっかりハンドルを握ったまま、どこか怖い顔をしている。ちらりとバックミラーを見た後、早口で言った。
「時計を押して」
「え?」
「早く! 誰かに付けられているわ」
私は後ろを振り返った。車は何台か背後を走っている、今見たばかりの私には、どの車が尾行しているのか分からない。
慌てて時計に手を伸ばす。カチッと、確かに感覚が伝わってきた。
尾行? どうして、もしかしてさっきの森田さん?
バクバクと心臓が高鳴り戸惑う私をよそに、ジェシーは荒い声で言った。
「##NAME1##、シートベルトをしっかり確認して、掴まるのよ!」
「えっ」
何か尋ねる隙もなかった。ジェシーは突然、とんでもなくスピードを上げたのだ。遠心力でぐんと体がシートに押しつけられる。
さらに車は、赤色に変わりそうな信号をギリギリで通過した。無理な右折をし、クラクションを大きく鳴らされる。私はシートにしがみついて、ただ唖然としているしかない。
「エル! ジェシーです、尾行されてるわ。スモークにより相手の顔までは見えない、黒色のセダン。ナンバーは※※※! 引き離すために加速中」
一体いつそんなに相手の車を見る暇があったんだ、と素直に感心してしまうほど、ジェシーは流暢に説明した。無論ハンドルを切りとんでもないスピードで街中を走っている最中に、だ。
「じぇ、ジェシーこれからどうするの!?」
「この運転じゃ警察が追ってくれるかしら、来てくれた方がありがたいからそれでいい。エルのところへは帰らない。エルの居場所がバレるかも! ここからなら警視庁が近いわ。Mr,夜神たちに保護してもらうのが一番よ!」
そう言いながらジェシーは再びハンドルを右に切った。直進してくる車とぶつかりそうになり、つい悲鳴をあげる。スレスレのところで車は右折し、裏路地にはいった。
(え、映画みたいな……! )
心臓がバクバク鳴っていた。舌を噛まないようにするだけで必死だ、もう無駄な言葉はやめよう。
細めの道に入り少し進んだところで、ジェシーがスピードを落とした。
「引き離したかしら」
「……あれは引き離されるよ」
「ふう、人を轢かなくてよかった」
「怖すぎ」
一旦息をはあと吐いた。いやでも、見事なハンドル捌きだった。おかげで引き離せたけれど、一体誰が何のために……
呆然としてる時だった。十字路にさしかかった時、私たちの乗る車を遮るように、一台黒い車が突然現れたのだ。ジェシーが急ブレーキを掛ける。体が前のめりになるのを、シートベルトが抑えてくれた。
「Got damn it!(しまった!)」
ジェシーのそんな声がしたかと思うと、今度はものすごい速さで車をバックさせた。タイヤがキュルキュルと回る音が響いてくる。
細い道を器用にUターンしたあと、再びジェシーはスピードを上げて路地を走っていく。
「エル! ただの相手ではないです、コースを見抜かれたか先回りされたわ!」
ジェシーの焦った声がする。私は何ができるわけでもなく、固まっているしかできない。
一体誰? 何のために?
そう思っていた時、私のもつ携帯電話が鳴り響いた。私に電話をかけてくるなんて一人しかいない。慌ててそれに出る。
「エル! 誰かに追われてる!」
半泣きで出ると、エルの冷静な声が耳に入ってきた。
『大丈夫、落ち着いて。ジェシー、そのまま真っ直ぐ進んで四本目の道を』
そう彼が話している時だった。
突然、パンという高い音が響いた。どこかで聞いたことがある音、私はそれを知っている。
そうだ、月くんとエルの決戦の日、発砲されて月くんが撃たれた、あの音。銃声だ。
車が激しく傾いた。持っていた携帯が手から離れる。真っ直ぐ走っていたはずの車は近くの店に突っ込んだ。ジェシーが私の名前を呼ぶ声を聞いた。
衝撃が自分を包む。痛みと驚きだけを一瞬感じたまま、私は意識を手放した。
「……ですか、……して」
遠くで声がする。
「を……開けて、……さい」
私の頬を誰かが叩いている。ううん、と唸り声をあげた。
全身に痛みが走る。顔を歪めて声を漏らした。
必死に目を開けると、私を心配そうに覗き込む顔があった。
「大丈夫ですか! しっかり! わかりますか?」
焦ったような声。ぼうっとしながら考える。
頭が回っていない。ええと、どうしたんだっけ。思い出せない、わからない。考えようとするとひどい頭痛に襲われる。
「いた……い」
「すぐに救急車が来ますよ。わかりますか?」
見上げた先に、懐かしい顔があった。訳がわからない状況のまま、その人だけはわかる。
「来て……くれたの」
「意識はありますね、大きな事故でした。動かないでそのまま救急車を待ちましょう」
遠くから、救急車の音が近づいてくるのがわかる。事故? 事故に遭ったの、私?
ぼんやりとした頭で混乱しつつ、ただ目の前の顔だけ見つめた。それだけは、忘れない人。
ああ、私の大事な人。一緒にいれば、いろんな世界を見せてくれる大好きな人。かけがえのない人が、助けに来てくれた。
ほっと安心したように微笑む。
「よさそうですね。もう安心してください」
私は力の入らない腕を伸ばす。それに答えるように、彼はこちらに体を倒した。
私は空色のシャツを抱きしめた。
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