引っ越し初日の事件
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Lとワタリさんに連れられ、私は初めてイギリスへ飛び立った。
英語皆無な私としては緊張と緊張の連続。
しかしほとんどのことはワタリさんが手続きなどしてくれてるし、私はただ付いて来ただけだった。
そして辿り着いたのが、今回Lが新たに準備したと言う高級マンションの最上階だった。
「う…わあああああ」
私はついて早々感嘆の声を上げた。
「広い!綺麗!広い!!」
Lはいつもの格好をしながらポケットに手を入れて隣に立っている。
「あなたも一緒に住むのでワタリが準備しておいてくれました」
「あ、ありがとうございます…!」
「私は他の国にもいくつか家を持ってます。その時の気分だったり関わってる事件だったりで時々変わりますので、覚えておいてください」
「す、凄い…」
普通付き合った相手がお金持ちだったら女は皆喜ぶのだろうが、
ここまで桁が違うと恐ろしくなってくるから人間とは不思議だ。
「ではご案内します」
ワタリさんが笑ってくれたのをきっかけに、私とLはワタリさんについて行った。
多くの部屋があった。一つ一つ見て回るが、どうやら殆ど Lの仕事に必要な物がはいってるらしかった。
日本でも一緒に暮らしてはいたけれど、その時は自分の部屋と捜査室しか入らなかったので、他の部屋はどんなものか知らなかった。
そっか、仕事の物も保管する場所がいるなら、それなりに広くなきゃなのは納得。
「ちなみにこの下の階もすべてLのものです」
さらりとワタリさんが言ったのを聞いてつい首がもげそうなくらい振り返ってしまった。
「な…」
「下も仕事で必要なものが殆どです。それと、私もそこで寝泊りしております。」
「あ、ワタリさんは下にいらっしゃるんですか」
「ええ、何かあればすぐ呼んでください」
この凄いマンション最上階とその下すべてLのものか…
こわい、こわいぞ。なぜか恐怖だ。
「私…こんないいところ住ませてもらっていいんですかね…」
「何を言ってるんですか。私の物はあなたのもの、あなたのものはあなたのものですよ」
某有名漫画のちょっと異質パターンをいわれた。
素直に喜んでおけばいいのかなあ…
私は恐れ多い気持ちでワタリさんについて行ってると、ある場所で見たことのないものを発見した。
「うわ…ワタリさん、この大きい洗濯機凄いですね!どうやって使うんですか?」
あったのは超巨大な洗濯機。何か特別な物を洗うのだろうか。
こんなの見たことない。業務用ってやつだろうか。
するとワタリさんではなく、隣にいたLが口を開いた。
「ああ、これは私を洗う物です」
「…?」
「全自動ヒューマンウォッシャーです。ワタリが開発しました。中に入れば洗浄も乾燥も全自動で行ってくれます」
…???
Lは悪びれもなくキョトンと私を見ている。
「どうしました?光さん。」
…待って。
「こ、これが…Lの入浴、ってことですか…?」
「そうです。あなたも使って構いませんよ」
使うかっ!!!!
というツッコミが出来ないほど、私は脱力した。
Lに生活力がないのは承知していた。お菓子しか食べないし寝ないし。
でもまさか、…入浴すらこんな形とは。
私ははっとしてLを見た。
「え、L、着替えくらいは自分で…」
「安心してください。できるようになりました」
なりましたって何!!!??
私今3歳児と話してるの!!?
目眩がした。何とか倒れないよう足を踏ん張る。
そんな私に気付いていないのかLはあっけらかんと続けた。
「あなたと出会ってからそこは自分でするようになりました。まあ元々出来たけどしなかっただけですが。」
項垂れた。
これほど生活力がないとは知らなかった…これもう人間じゃないよね…
私は今初めて、Lという男を好きになったことを少しだけ後悔した。
…いや、いかん。落ち込んでる場合じゃない。
私はばっと顔を上げる。
「L!!確かにあなたは難事件の捜査で忙しいのは分かりますが、あなたは人間!人間なのよ!」
「もちろんです私は人間です」
「風呂くらい、自分で入れるようにして!ワタリさんに甘えすぎです!今日の夜はこれを使うのを許しません!」
「!まさか光さんが一緒に入」
「るわけないでしょ!自分で洗うんです、自分で!」
こうなれば徹底的に教育しよう。
私は心に強く誓う。
そして夜。
見事なバスタブにお湯を張った後、私はしぶるLを連れてくる。
「L、お風呂です。湯船に浸かればあなたの頑固な肩こりも和らぎます、ちゃんと入ってください!」
私は浴室にある容器を指差す。
「いいですか、これはシャンプー、頭を洗う物、隣がリンス、髪に塗ったらちゃんと洗い流してください。そしてこれがボディソープです、ここにあるタオルでも手でもいいからしっかり体を洗ってください」
「光さんも一緒に入って説明し」
「いいですね?ちゃんと洗ってくださいね!」
私はそれだけキツく言うと、Lを浴室に置いてリビングへと戻っていった。
まさかイギリスへ来て一番初めにしたのがお風呂の指導だなんて…
世界一の頭脳の持ち主、多少変人でも目を瞑っていたけれど、必要最低限の生活はしてもらわねば。
私はふうとため息をつきながらLを待った。
それからおよそ30分。
Lはペタペタと足音を立てながらリビングへ戻ってきた。
「戻りました」
私はソファから飛び降りる。
「L!ちゃんと入れたんですね!」
「当然です、出来るけど面倒だからやらなかっただけです」
うーん、髪びっちょびちょだし体も濡れまくってる(さては拭いてない?)けど、初回は褒めよう。
やる気を無くされては困る。
「さすがですL!やれば出来るんですね!」
「しかし確かに湯船に浸かるのは心地いいですね」
「そうでしょう?はい、甘いアイスティーを用意しておきました」
私は氷の入ったアイスティーを差し出す。
Lは喉が乾いていたのかすぐに口をつけた。
「おいしいです」
「ね?自分ではいったあとの冷たい飲み物、別格でしょう?」
「そうですね、たまにはいいです」
「忙しい時はあの機械使うのもアリですが、ちゃんと自分でも入ってくださいね」
Lのびしょびしょの髪をタオルで拭いてあげながら、私は笑った。
その後、私は自分の入浴のために風呂場に来た。
「………」
世界の名探偵、知識の量ははかりしれず。
…のはずだけど…
「…量を…教えるの、忘れた…」
空っぽになったシャンプーたちと、流しきれない泡でいっぱいの洗い場を見て、私はがくっと項垂れた。
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