5
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「ただいま戻りましたエル!」
松田さんたちに送ってもらった後、私はマンションへ戻った。
エルは相変わらずソファに座ってパソコンを眺めていた。
「おかえりなさい、光さん」
「あれ、ワタリさんとジェシーは?仕事?」
「ええ新たな依頼が入りましたので」
本当に次から次へと。私は感心しながら冷蔵庫から水を取り出す。
「さすがでしたね。」
突然エルがそんなことを言って、私は振り返る。
…さては。
「見てたの?」
「夜神さんに映像を送るよう頼んでおいたので。私が監視しないとでも思いますか」
もはや監視に開き直り。だがまあ、今回ばかりはたしかに心配だったろう。仕方ない。
私は冷えた水を持ってエルの隣に行く。
「私は何してないけど…」
「いいえ、これでカイドウは口を割るでしょうし、どうやら土井みさの計画を元に動いたようなので、彼女への対応も変わります。ただの結婚詐欺とテロリストのボスでは全く危険度が変わります」
「それもそうだね…」
ソファに座り水を喉に流す。ひんやりとした爽快感が襲う。
私はグラスを置くと、ふうとため息をついた。
「なんか…悲しい」
ゆっくりエルが私を見る。
「私は死のうとした日に出会ったのがエルだったから…今こうして幸せだけど。あんな絶望の淵にいた時、上手く丸め込まれたら、確かに心酔しちゃいそう」
「…あなたは優しすぎます」
「ほんとにそう思うんです。あの人を擁護するわけじゃないけど…人の運命って、ちょっとしたことで変わるんだなって」
勿論、子供の頃から絶望しか知らない彼とは全然立場は違うけど。
「…親に殺されかけたなんて、考えるだけで辛い。どこかで何か一つでも違ってたら、あの人はこうならなかったんじゃないかって思うと…辛い」
もしかしたら、今普通の人として笑ってたかもしれない。
好きな人と過ごして幸せになっていたかもしれない。
そんな未来が、彼にもあったはずなのに。
「…カイドウの言葉に一つ、気になることがありました」
「え?」
「愛したことも愛されたこともないと。私は殺されかけてはないですが、親に捨てられたのは通じてますし。私はワタリがいて自由に色々させてもらったのでよかったですが」
そう微笑むエルはどこか寂しげだ。
ワタリさんがいてくれてよかったと思った。
「私も愛というものはよく分からなかったので。光さんに会うまでは。あなたがいなければ、私は一人あのノートに自分で名前を書いていた…」
真っ直ぐ見つめられてどこか恥ずかしい。私は俯いた。
「私を補ったのは、あなたです」
「そんなこと…私だって…あの日出会えたのがエルでよかったって、改めて思います。幸せだなあって、本当に思い知らされた」
「世界一は私ですよ」
「まだ張り合ってたの!」
私は声を上げて笑う。エルも少しだけ微笑んだ。
ゆっくりエルが私の頬を触る。
「あなたは私には出来すぎた人です。もったいない程」
「私のセリフです。世界のLなんだよ?私なんてただの一般人だもの」
「そんな私をここまで翻弄するあなたがただの一般人であるわけがないでしょう」
エルは軽く私の頬にキスを落とす。つい笑う。
「エルのおかげで私も友達も命を救われたんです。正直、それを自慢して歩けないのが辛い」
「あなたがそう思ってくれてる事が何より嬉しいです。あなたさえ知っていてくれればいい」
「エルには命を救われてばっかり」
「ですからあなたもそうだと何度言わせるんですか」
呆れたようにエルは言う。いや、次元が違うよ。
エルは机の上に置いたフォークを持って私が朝焼いたタルトを食べる。私ははっと思いついて、エルに向き直った。
「ね!何かお礼したいな、エルに!何かないかな?」
「そんなものいりません、何もしてませんよ」
「もう。エルって変なところで遠慮するよね」
まあ、私が何を出来るわけじゃないんだけどさ。
何かプレゼントできるわけでもなし。養ってもらってる身なのですしね。
エルはもぐもぐとケーキを食べながら言った。
「では、約束してくれますか」
「え?」
「これからも一生、私の隣にいると。その約束が私にとっては何より嬉しい」
平然とそんな甘い台詞を吐いた彼は、何事もないかのように紅茶を飲んだ。
私はちょっと面食らう。
そんな約束を、命を救ったお礼にするなんて。
「…却下です」
私が言うとエルか目を丸くしてこちらを見た。
「そんな約束、私はとっくに結んでるつもりでした。だから、お礼になんてなりません」
「……」
「エルって実はとんでもなく無欲?」
笑って彼の顔を見る。フォークを持ったまま停止してる彼が、あの世界のLだなんてね。
少ししてエルはふっと小さく笑うと、またケーキに手を伸ばした。
「敵いませんね」
「こっちのセリフですよ」
「では光さんがミニスカートを履いてくれれば一件落着です。今回の件はそれでチャラです」
「え゛っ!!」
つい変な声が漏れた。目を丸くして彼を見る。…まさかここでそれを出してくるとは。
というか、こんな普通極まりないいい大人の女のミニスカートそんなに見たいの?絶対似合わないし足も綺麗じゃないんですけど。
何年越しの要望ですか。私は呆れて眉をひそめる。エルは無表情でケーキを食べ続けた。
…なんていうか、本当に変な人だなぁ、エルって。
こんなに沢山の命を救って、犯人たちも無事逮捕できた報酬がミニスカートって。
私はついぶはっと笑ってしまう。
「どうしました」
「いや、エル無欲すぎる」
「あなたに関しては欲まみれですよ」
「いやいや、もう。面白すぎます」
けらけらと笑う私をどこか不服そうに見るエルの顔は子供みたいでとてつもなく可愛い。実はエルが拗ねてる顔は好きだったりする。こんなこと彼には言えないけどね。
一頻り笑って涙を拭いた後、私はエルを見た。
「じゃ、夜にね。」
言った瞬間、彼は手からフォークを落として停止した。落ちたフォークがお皿に落下して大きな音を立てる。
「あ、ちょっと!」
「……」
「お皿欠けたかと思ったよ…」
慌ててお皿の無事を確認する。
「…私の長年の夢が叶うのですか」
「え、エルそんなのが夢だったの?」
「知らないなんて言わせません、何度頼んでも断られたのに」
「言っておきますけど似合いませんよ。断言します。」
「光さん、あと学生服と彼シャツのズボンなしバージョンと」
「コスプレなんかしないって!」
「では一緒にお風呂に入る約束を」
「しませんって!てゆうか急に強欲!?」
「あなたに関して欲まみれと言ったでしょう」
エルは残念そうに爪を噛むが、すぐに目を爛々と輝かせた。
「そうなればこの仕事は瞬時に終わらせます。ジェシーとワタリも今日はそのまま直帰させます」
(本気だ…)
「着るのは私が選びます。困りました、自分でも驚くほど気分が高揚してます。今夜とうとう二人の子供が出来そうですね」
「ちょっと!まだそこ考えておきますって言いましたよ!てゆうか下世話な話しないでください!」
「さてこの事件の容疑者などすぐに突き止めます」
(聞いてないなこいつ…)
目を見開いてパソコンを見るその姿に、私は苦笑した。
でも、まあ。
こんなことでここまで喜んでもらえるなんて、愛されてる証拠かな。
そう考えながら、ふと私は思い出す。
「コスプレと言えば、エルソマディアのメンバーのフリした時、最初猫背じゃなかったね」
「当たり前です、カイドウにバレては計画が台無しなので」
「そういえば銃を扱ってた…?」
「それぐらい扱いかた知ってますよ」
「…やっぱりLってすごい…」
新たな面だ。いつも動かず同じ格好で推理ばかりしてたのに、あんな風に動くなんて。
今のエルからは想像もつかない。
これだけ一緒にいても、まだ知らない面が出てくるなんて。ちょっと反則だな。
正直なところ…カッコいいよね。
「なんですかじっとみて」
キョトンと私を見るクマに、私はしみじみと言った。
「エルって不思議すぎる」
「はあ」
「やっぱり凄いよ。もうこれ以上好きの上限はないって思ってるのにどんどん上限解放させられる。怖くなってきた。」
もはや感心するように正直に述べたのだが、エルは面食らったように眉を潜めた。
「あなたのそのとんでもない言葉の武器はなんですか」
「え…?」
「無自覚なのですよね、末恐ろしい。あの爆発物よりはるかに威力が大きい」
「不謹慎にもほどがあります」
「私は心臓が持ちません。才能なんでしょうか。夜まで我慢できませんよこれじゃ」
「え、ええ?」
「はぁ…可愛すぎて我慢の限界です、光さん今すぐミニスカートに着替えて私に迫」
「ちょっと黙って仕事進めてもらえますか」
「こんなもの明日巻き返せますよ、そうしましょう、明るいうちにミニスカート姿のあなたをこの目に焼き付」
「夜だって言ったでしょ!」
「……夜覚えておいてください」
エルは口を尖らせて爪を噛む。そんな彼に苦笑しつつ、無くなりかけた紅茶をいれようと手を伸ばす。
すると突然、エルがその腕を掴んだ。ぐいっと力強く彼の胸に引かれれば、そのまま優しく抱きしめられる。
そして無言で、彼は強いキスを落とした。
エルのキスはいつも甘い。それは食べてる甘味のせいなのか、エル自身のキスの味なのか。
少しして離れたあと、エルはもう一度私を抱きしめた。
「それともう一つありました」
「えっ、ほんとに強欲だね。」
「必ず私より先に死なないでください」
顔をあげる。エルが私を見つめていた。
「1日でいいですから。私より長く生きてください。あなたを失う絶望を味わうなど、私には耐えられないので」
「……」
「今回のような危険なことはしないでください。」
エルのぬくもりが伝わる。真剣な眼差しだった。
「…でも」
「はい」
「私だって…エルがいなくなる日々なんて耐えられないです」
「では二人同時に召されましょう」
「そんな器用なことできるかな」
「きっと大丈夫です。それが一番ですね、そうしましょう」
そうしましょうって。決意してどうなるものでもないでしょうに。私はふふっと笑みを溢す。
ゆっくりエルから離れた。
「でもきっと何十年も先の話だよね。これからまだたくさん思い出作れる」
「そうですね。まだまだ先の話です。子供を育て終えなくては」
(まだ言ってる…)
爪を噛むまるで大きな子供のこの人を見ながら、私は心の中で思った。
あのね、エル。
死のうと思ってた私に生きる喜びを補ってくれたのはあなたなんだよ。
私たちは補い合って生きている。
これから先も永遠に、私はあなたなしでは生きられない。
そんなたった一人に出会えた奇跡を、私はどう感謝すればいいんだろう。
いつか永遠の眠りにつくまで、私はこの幸せを噛み締めて生きていく。
「さてエル、お茶入れるね。アイスティーにする?紅茶?」
「アイスティーで」
「はーい」
くるりとキッチンに向き直ったところで、エルが思い出したように言った。
「そういえば光さん」
「はい?」
「またしても怪奇現象がらみの依頼が来ました。どうしますか」
聞いた瞬間、私は目を見開いて振り返る。すぐさま彼の隣にまた腰掛け、ずいっと顔を寄せる。
「またしても…怪奇現象!?」
私のあからさまな態度の変化に、エルは眉を潜めた。
「相変わらずの食いつきぶりです」
「エル、よければ詳しく聞かせてください」
「この前の一件でもしや懲りたかと思ったのですが」
「だってやっぱりね。恋愛小説は物足りないの」
「……」
やや呆れたように私を見るエルは、少しして目を細めて笑った。
私もつい笑う。
やっぱりあなたとの毎日は笑顔も絶えない、そしてスリルも絶えない素敵な毎日だね。
日々が最高。最高に、幸せなんだから。
13/13ページ
