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その時、部屋の扉が強く叩かれる音が響いた。
ピタリと、カイドウが止まる。
視線を出口に向けた。
立っていた見張りの男は首を傾げる。
「…誰か呼びましたか」
「いや」
「誰だ?」
問いかけるも、相手は答えなかった。
見張りは銃を抱え直すと、カイドウに視線を送る。
カイドウは見てみろ、とばかりに顎で指示した。
見張りの男は扉を勢いよく開けた。
が、誰も立っていない。
男は少し顔を出して外をキョロキョロと見渡すが、首を傾げてこちらに戻った。
「誰もいませんが…」
「様子を見てこい」
「はい」
男は返事をすると、そのまま部屋の外へと出ていく。
カイドウは一旦私の上から退いて立ち上がった。じっと扉を見ている。
私もゆっくり体を起こした。
まさか、エル??
そんな期待が拭えない。
二人でじっと扉をみつめたが、そこからは何も聞こえない。そして、開かない。
出て行った男は戻ってこない。
「…変だな」
カイドウは小声でどこかに通信を取ろうとしていた。しかし、どうやら相手から返事がないようだった。
一気にやつの視線が鋭くなる。拳銃を手にとり、私の腕を強く掴んで立ち上がらせた。
「立て、お前は人質だ」
カイドウは私を腕に匿い、拳銃を当てながら歩き出す。されるがまま、私はゆっくり歩数を進めた。
出口に近づき、カイドウは私に開けろと指示をする。
少し緊張しながら、私は扉を開けた。
しんとした静けさが広がっている。二人で足を踏み出した。彼は私をしっかり腕に拘束し拳銃を当てたままゆるめない。
部屋の前は一本の長い廊下だった。客室がいくつも並んでいる。
右手を突き当たりまで進んで曲がればエレベーターだ。私はそれに乗ってここまで来た。
左手に伸びる廊下の先はどうなっているのかは知らない。自動販売機が突き当たりに一つ置いてあった。
「…静かだ」
カイドウがポツリと言った。
彼は先にエレベーターのある廊下の方を向いてじっと眺める。
とその時、曲がり角からちらりと人影が見えた。
はっとしたカイドウは私から銃を離しそちらへ向けた。
「誰だ」
低く重い声が廊下に響く。私は強い力でカイドウに拘束されながら、今一瞬見えた物に驚いていた。
見覚えのある茶色の髪の気がした。
…まさか、ジェシー…?
私のそんな疑問に答えるかのように、姿は見せないまま奥から声が響いた。
「その子を解放して」
流暢な日本語。でも私には分かる。これはジェシーの声だ。
彼女の名前を呼んでしまいそうになってなんとか飲み込んだ。
カイドウは鼻で笑った。
「女か。しかしなぜここに?警察か?他の見張りはどうした。まさか。」
ジェシーは答えなかった。カイドウは拳銃を構えたままじっとしている。
しばらく沈黙が続いたところで、カイドウは足を踏み出した。
はっとする。このままジェシーの元へ行っていいのだろうか、私が盾になって、カイドウに攻撃ができないのでは…
振り払って逃げた方がいいのか、しかし振り払えるのか。
混乱している時、背後から声が聞こえた。
「カイドウさん」
絶望をおぼえた。見張りをしていた男の声だった。
カイドウも少しほっとしたように笑い、足を止める。じっとジェシーがいる陰から視線を離さず、彼は小声で言う。
「あそこにネズミが一匹入り込んだぞ。殺せ」
後ろから目出し帽の男が銃を構えたまま私たちを通り過ぎた。素早い足でツカツカと進む。
「っ…だ!」
私が声を上げようとした瞬間、カイドウは強く私の喉を握って声を潰された。
ジェシー、逃げて!
男は廊下を突き当たると、少し様子を伺うように一瞬足を止め、素早く体を出した。
そして瞬時に発砲する。
耳を塞ぎたくなるような音が何度も響き、声にならない悲鳴が私の喉から漏れた。
火薬のような臭いが廊下に立ち込めていく。音はしばらく続いて、そして、止まった。
「殺したか」
カイドウが問う。男はこくりと頷いた。カイドウが構えていた銃を下ろした。
まさか。
そんな。
ジェシー??
エルは、ワタリさんは?
カイドウはほっとしたように私を離した。そのまま私は膝から崩れ落ちる。
私は目を見開いたまま廊下を眺めた。
「警察か?どうやって入り込んだ…他にもいるかもしれんな。しかし1階のやつらは通信に答えたが…」
カイドウは首を傾げて考える。
ジェシー?ほんとうに?
見張りの男がこちらに向き直り戻ってくる。
私は瞬時に立ち上がり、ジェシーの元へ行こうと走り出した。
「おい、止まれ!」
カイドウの声が背後から聞こえる。目から溢れ出た涙もそのままに、私は走った。見張りの男が私に銃を構えた。
それでも私に止まる気はない。ジェシーの姿を、この目で見なくては。
その時だった。
銃が発砲された音と、苦しそうな声が背後から聞こえて、つい私は驚きで足を止めて振り返る。
そこには、カイドウが二人の人間に攻撃されている姿が目に入った。
そしてその人物を見て目が点になる。
ジェシーとワタリさんだった。
すでにカイドウの手からは拳銃が落とされ、ジェシーがやつの腕を捻り上げている。カイドウの手からは少しだが真っ赤な血が流れ出ていた。
やや離れたところでワタリさんが銃を構えているのを見て、彼がカイドウの武器を撃ち落としたんだと理解する。
そして唖然とする私の横を素早く走り抜けた影があった。見張りの男だった。はっとしてついワタリさんの名前を呼んだ。しかし彼は発砲しなかった。
男はジェシーがなんとか腕を捻り上げているカイドウに近づく。男を止めなくてはと私が足を踏み出したとき、予想外のことが起きた。
暴れるカイドウになんと手加減なしの蹴りを放ったのである。カイドウも一瞬驚愕したように目を見開いた。
ぽかんと、その様子を見ていた。
だが、その男がかました綺麗な蹴りには見覚えがあった。昔月くんと喧嘩をしていた時のエルの動きにそっくりだった。
「…エル?」
よく見れば見張りの男はひどい猫背になっていた。さっきはそんなことなかったのに。
カイドウは大きな音を立てて床に倒れ込む。すかさずエルはまたカイドウを強く蹴った。カイドウは小さく呻きながら、落ちた拳銃を取ろうと必死に手を伸ばした。ワタリさんが銃を素早く蹴る。
ジェシーはどこから出したのか手錠を手に持ち、カイドウの両手を背後で拘束した。
ワタリさんは銃を構えたまま紐のような物を取り出してジェシーに渡した。ジェシーはそれでカイドウの足まで縛り上げる。
一瞬の出来事だった。私はただ口を開けてその一連の流れを見ていた。
カイドウも呆気に取られたように寝そべったまま3人を見上げる。
「…誰だ、警察か」
ワタリさんは変わらず銃を構え、ジェシーはふうと息をついて肩を鳴らした。
目出し帽の男はひどい猫背で、ポケットに手を入れた。
「爆弾を解除しにきました」
声が発せられる。カイドウは驚愕の表情でそれを見ていた。
「な…に?」
「警察ではありません。…まあ説明してる暇もないので。あなたは気を失っててください。」
そうエルは言うと私に向き直る。そして呆然としてる私の腕を取ると、カイドウの部屋に連れ込んだ。
背後でガンッと大きな音が響いた。一体誰が何を施したのか…知る由もない。
部屋に入った瞬間、エルはようやく目出し帽を取った。
「…エル」
見覚えのある顔が見えて、私は脱力する。
ああ、エルだ。やっぱりエルだった。
格好は普段と違うけど、紛れも無くエルだ。
その顔を見て、つい私の目から涙がこぼれ落ちた。
ああ、やっぱり私、怖かったんだ。
エルに会いたかった。
彼は無言で私を強く抱きしめた。
「…生きた心地がしませんでしたよ…」
「エル…来てくれた…」
「あなたの強い所は魅力でもありますが、あまりに無謀すぎです」
「ごめんなさい、エル…」
強く強く抱きしめる。ああやっぱり、彼は世界のLだ。
こんなところにまでたどり着いてきたなんて。
エルは私を離すと、軽く頬にキスを落とした。
「もっとゆっくりしたいですが時間がないので。それですね?」
エルは床を指差す。銀色のスーツケースだった。
「あ、そう!」
「分かりました」
そういうとエルは突然服を脱ぎ出したのでギョッとする。
「え、エル!?」
「こんな暑い服装では推理力が落ちます」
まさか!と思って慌てたが、なんと彼は下にちゃんといつもの服を着ていた。白い服にジーンズ。てゆうか、ズボン2枚も重ねててよくあの動き出来たな。
エルは普段通りになると、スーツケースに近づく。
「エル、カイドウの誕生日わかったの??」
「カイドウはボスではありませんよ」
「へっ」
「ボスはカイドウが解放を求めた犯罪者たちの中にいました。その誕生日が答えです」
エルはじっとスーツケースを見た。ケースにはやはり暗証番号を入力する小さなボタンがあった。
長く綺麗な指で、彼はなんの躊躇いもなく4桁の数字を押した。
エルを信じてないわけではないが、私はどうしても身構えてしまった。当の本人は眉一つ動かさない。
カチッと小さな音が響く。エルは摘み上げるようにケースを開けた。
「開いた…!」
あっけなく。ケースは開かれた。
「さすがです、L」
背後から声が聞こえたので振り返る。ジェシーが笑ってたっていた。
私はその姿を見てわっとジェシーに抱きつく。
「ジェシー!撃ち殺されたのかと思った!!」
「ごめんなさい驚かせて。ここのホテルはエレベーター前からぐるりと一周回れるのよ。あなたを解放するよう発言したあと、すぐにカイドウの背後まで走って回ったの。カイドウを背後から襲ったってわけ。油断させるために一芝居打ったのよ」
「よかった…!エルだって気づかなかったし…」
「ここに来るまでに眠らせたり倒したりした奴らから服を拝借したの。目出し帽だとぱっと見じゃ仲間じゃなくても判別しにくいからね。声はレコーダーよ。あなたから届いた音声の一部を切り取って、カイドウを呼ぶ声を再生させただけ」
「…はあ〜…あ、カイドウは?」
「ワタリが見張ってる。気を失ってるけど念のためね」
私は再びジェシーにぎゅっと抱きついた。彼女は恥ずかしそうに笑う。
しかしすぐに表情を固めた。
「L、どうですか」
「時限式です。カイドウがやたら時間通りにジェット機を用意させようとしたのもこれがあるからですね。あと30分です。警察にジェット機を用意させ、自分たちが乗り飛び立ったら即爆発するよう計算して動くつもりだったんでしょうね」
振り返って見れば、もはや一般素人の私にはまるでよくわからない配線などがめぐらされた複雑な物がケースの中に見えた。
ジェシーは胸ポケットから小さなハサミを出してエルに手渡す。
エルは受け取って爪を噛んだ。
「ですが仕組みはまあ簡単です。」
そう言って、じっと爆弾を見つめながら指先で触り始める。
…え、まさか、エルが解除する気!!?
そんな私の心の叫びが聞こえたのか、エルはこちらを見ないまま言った。
「私を誰だと思ってるんですか。」
「…Lです」
「比較的簡単なものなら平気です」
そりゃ映画やアニメではそんなシーンたくさんあるけど、本当にそんな場面を目の当たりにできるだなんて夢にも思ってなかった。
私はどうしてもハラハラしながらエルを見守る。
ジェシーは何も心配してないのか、腕を組んでふうと息を吐いて力を抜いていた。
「さすがに爆弾の解除は勉強してなかったわ…まだまだ私も勉強不足ね…」
「いや普通知らないよ…」
私たちはじっとエルの手先を見つめる。彼は鋭い目つきでじっくり眺めながら、時折配線を切った。
このビルが吹き飛ぶくらいの爆発物だなんて、もし知識があったとしても怖くて私なら触れない。
やっぱり彼はとんでもない人間だなって心から思った。
固唾を飲んでじっとエルを見つめる。随分長い時間が流れているように感じても、時計を見て見ればほんの少しの時間だった。
何度かパチンと音を立てて配線を切り、ゴソゴソと作業をしている。
今一体何がされているのか見当もつかない私とジェシーは、ただ黙ってエルを見ていた。
少し経ち、エルはふうと息を小さく吐いた。
そして立ち上がる。
「え、エル!?終わったの?」
「はい終わりました」
ズッコケるかと思った。映画みたいなドラマチックな盛り上がりもなく、彼はまるで歯磨き終わりました、ぐらいのテンションで言ったのだ。
はあーと脱力する。
爆発が止まった。こんなアッサリ。この2時間、それに怯え続けていたのに。
エルはポケットから個装された飴を取り出して口に入れる。
ほっとしたのも束の間、私は思い出して聞いた。
「爆弾処理は終わったけど…ほかのソマディアからの人質解放はどうするの?」
ここのホテルには銃を持った男たちがたくさんいて、クラスメイト達はまだ人質となっているのだ。
エルはもぐもぐと口を動かしながら答える。
「それについてですが、一つ計画があります」
「計画?」
「正直成功するかどうかは賭けです、確率的には40%でしょうか。しかし警察の突入は難しいですし、試してみる価値はあるかと」
「確かに突入は難しそう…みんな銃持ってたし」
私はうんと考える。
「それでエル、計画って?何するの?」
これだけの人質をテロリスト達からどうやって救い出せると言うのか…
エルは言った。
「爆弾を爆発させます」
「は」
ぽかんとした。しかし当の本人は冗談を言ったわけではなさそうだった。
「エル?何を…」
「4階へ行きましょう。この爆弾を持って。カイドウは身動きしにくいよう浴槽にでも入れていきましょう。時間がないです、行きますよ」
まるで理解できない天才の頭の中に私は?をたくさん浮かべた。
誰か、説明してください。
彼は一体、何を言っているの??
